良姜(りょうきょう)とは?胃痛や腹痛、げっぷ・胸やけ、吐き気に使う生薬を体質別に解説

良姜(りょうきょう)は、コウリョウキョウの根茎を乾燥した生薬です。別名を高良姜(こうりょうきょう)といいます。冷えをさばき痛みを止める働き(散寒止痛)や、胃を温め吐き気を鎮める働き(温中止嘔)から、胃痛・腹痛、げっぷ・胸やけ、吐き気・食欲不振などのケアに用いられてきました。安中散の構成生薬として知られ、乾姜・生姜と作用が似ながらも止痛作用に優れた生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「冷えた胃をあたため、痛みを鎮める生薬」として整理します。
- 良姜(りょうきょう)はショウガ科コウリョウキョウ(Alpinia officinarum Hance)の根茎を乾燥した生薬です(別名:高良姜)*①②
- 主成分は精油(シネオール、ピネン、オイゲノールなど)、辛味成分ガランゴール、フラボノイド(ガランギン等)などです*①③
- 漢方では、冷えをさばき痛みを止め(散寒止痛)、胃を温め吐き気を鎮める(温中止嘔)働きで用いられます*①②③
- 作用は乾姜・生姜とほぼ同じとされますが、良姜は止痛作用にすぐれているのが特徴です
良姜は桂皮・延胡索・牡蛎・茴香・縮砂・甘草など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。強い腹痛や吐血・下血、高熱を伴う腹痛がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。
良姜とは
良姜(りょうきょう)は、ショウガ科コウリョウキョウ(Alpinia officinarum Hance)の根茎を乾燥させた生薬です。『名医別録』の中品に「高良姜」の名で収載され、「大温、暴冷、胃中の冷逆、霍乱腹痛を主治する」と記されています。名前の由来は、高良郡(現在の広東省茂名県付近)に多く産したことによると伝えられています。ショウガ科植物由来の生薬には他に、生姜・ウコン・ガジュツ・縮砂などがあり、いずれも根茎や種子に芳香と辛味をもつのが特徴です。
漢方薬剤師の視点では、良姜は「散寒薬(体を温め冷えをさばく生薬)」に分類されます。乾姜と同じく散寒止痛・温中止嘔に働くよく似た生薬ですが、作用する臓腑には違いがあり、良姜は胃寒による腹痛・げっぷ・吐き気に適するのに対し、乾姜は脾寒による腹痛・下痢に適するとされます。安中散では、桂皮・延胡索・茴香・縮砂とともに温める働きの中心を担い、日本では家庭薬に配合されるほか、酒類の芳香付けや口中清涼剤にもわずかに使用されています。
基原・成分データ
良姜の基本データを整理します。コウリョウキョウの根茎を用いること、ガランゴールなどの辛味成分を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。良姜は、辛く、強く温める性質(熱)で、脾・胃に働きます。
「辛」は発散させ温める味とされます。冷えをさばき、痛みを止める働きと結びつきます。
「熱」は強く温める性質で、生姜よりも辛味より熱が強く、胃中の冷えを強くあたためる方向に働きます。
脾・胃に働いて胃痛・腹痛、げっぷ・胸やけ、吐き気に関わります。
漢方的な働きの軸
良姜の働きは、大きく二つの軸で整理できます。冷えをさばき痛みを止める軸、胃を温め吐き気を鎮める軸が重なり、胃痛・腹痛・吐き気を整えます。
伝統的な使われ方
良姜は古くから、散寒止痛・温中止嘔を目的に用いられてきました。胃中の冷逆、霍乱腹痛(急な胃腸の冷えによる腹痛)などのケアに用いられてきた歴史があります。良姜は脾・胃に入り、乾姜・生姜と作用がほぼ同じとされながらも、良姜は止痛作用にすぐれているのが特徴です。江戸時代の『和語本草綱目』にも、心腹痛や胸先の痛みに香附子と組み合わせて用いる記載が残されています。
桂皮・延胡索・牡蛎・茴香・縮砂・甘草などと組み合わせて、神経性胃炎・慢性胃炎・胃腸虚弱を整える処方(安中散)に配合されます。日本では漢方処方に用いられることは比較的まれで、むしろ酒類の芳香付けや口中清涼剤などにわずかに使用されてきました。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。
形状・味・使われ方の体感
良姜は、コウリョウキョウの根茎ならではの特徴をもつ生薬です。
赤褐色でよく肥った根茎
色相が赤褐色でよく肥ったものが良品とされ、両端の切面がゆでだこの切り口のように肥厚しているものが上質とされてきました。
強い辛みで熱性
味は強い辛みがあり、性質は熱性。生姜に比べて辛味より熱が強く、散寒の作用にすぐれ、裏(体の内部)をよく温める方向に働きます。
他の生薬と組み合わせて使用
桂皮・延胡索・牡蛎・茴香・縮砂・甘草など、他の温裏薬・理気薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。
体質別の向き・不向き
良姜は冷えた胃をあたため痛みを鎮める生薬です。胃寒による胃痛・腹痛があるか、逆に熱証や体力の充実したタイプでないかを見極めることが大切です。
胃痛・腹痛タイプ
胃中の冷えによる胃痛・腹痛がみられるタイプに向きます。良姜の中心的な使い道です。
判断ポイント:胃寒による冷痛。げっぷ・胸やけタイプ
げっぷ・胸やけ、吐き気・食欲不振のケアに用いられてきました。
判断ポイント:温中止嘔の働き。やせ型で体力の低下したタイプ
やせ型で腹部の力がなく、体力が低下している方に、安中散などとして用いられてきました。
判断ポイント:虚弱タイプに配合薬として。熱証・体力充実タイプ
強い温性のため、熱証や体力の充実したタイプには基本的に不向きです。
判断ポイント:熱証には不向き。安全性と受診の目安
良姜は処方の中で用いられる散寒薬ですが、強い温性のため、体質や体調によりのぼせ・口渇などが出ることがあります。強い腹痛や吐血・下血、高熱を伴う腹痛がある場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い腹痛や吐血・下血、高熱を伴う腹痛
- 服薬中:症状が改善しない、悪化する場合は受診する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
良姜が気になる方は、食欲不振、冷えとの関係も確認すると理解が深まります。
良姜を含む漢方薬
良姜は、胃痛・腹痛・胃腸虚弱を整える処方に配合されます。良姜の冷えた胃をあたため痛みを鎮める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 乾姜(かんきょう)との違いは?
良姜と乾姜はともに散寒薬に分類され、散寒止痛・温中止嘔に働くよく似た生薬です。ただし作用する臓腑に違いがあり、良姜は胃寒による腹痛・げっぷ・吐き気に、乾姜は脾寒による腹痛・下痢に適するとされます。
Q. 「高良姜」という名前の由来は?
高良郡(現在の広東省茂名県付近)に多く産したことに由来すると伝えられています。「涼」が「良」に変わったという説もあり、山が高くて清く涼しいことから地名がつけられたとされます。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
胃中の冷えによる胃痛・腹痛、げっぷ・胸やけ、吐き気・食欲不振に向きます。生姜・乾姜に比べて散寒の作用が強く、止痛作用に優れるとされます。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
良姜は、冷えた胃をあたため痛みを鎮める生薬ですが、胃痛や腹痛の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い腹痛や吐血・下血、高熱を伴う腹痛がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。