山茱萸(さんしゅゆ)とは?腎虚の頻尿夜尿尿もれ・めまい耳鳴り・腰膝のだるさ・ほてり寝汗に使う生薬を体質別に解説

山茱萸(さんしゅゆ)は、秋に赤い実をつけるサンシュユの果肉を用いる、補腎の代表的な生薬です。肝腎を補い、精気のもれを引きしめる働き(補益肝腎・収斂固渋)から、腎虚にともなう頻尿・夜尿・尿もれ、めまい・耳鳴り、腰や膝のだるさ、ほてり・寝汗のケアに用いられてきました。八味地黄丸・六味丸・牛車腎気丸など、腎を補う多くの処方に欠かせない要薬です。KanpoNowでは、この生薬を「肝腎を補い、もれを引きしめる生薬」として整理します。
- 山茱萸(さんしゅゆ)はミズキ科サンシュユ(Cornus officinalis)の果肉を乾燥した生薬で、補益肝腎・収斂固渋のはたらきが知られます。腎虚にともなう頻尿・夜尿・尿もれ、遺精、めまい・耳鳴り、腰膝のだるさ、ほてり・寝汗などに配合されます
- 主成分はイリドイド配糖体(ロガニン、モロニサイド等)、有機酸(酒石酸など)、多糖などです
- 漢方では、肝腎を補い(補益肝腎)、精気のもれを引きしめる(収斂固渋)働きで用いられます
- 体質により胃部膨満・軟便などが出ることがあり、排尿痛・血尿など湿熱の強い場合は単独では向きません
山茱萸は、体質により胃部膨満・軟便などの消化器症状が出ることがあります。排尿痛・血尿・発熱をともなう泌尿器症状(湿熱)が強い場合は単独では向きません。泌尿器・生殖器症状が長引く場合は、自己判断で続けず医療機関へご相談ください。
山茱萸とは
山茱萸(さんしゅゆ)は、ミズキ科のサンシュユ(Cornus officinalis Siebold et Zucc.)の成熟した果実から種子を除いた果肉を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。サンシュユはミズキやハナミズキに近縁の落葉小高木で、中国・朝鮮半島に自生し、日本には江戸中期に薬用として導入されました。早春に木一面に黄色い花をつけることから「ハルコガネバナ(春黄金花)」、秋に枝一面にグミに似た赤い実をつけることから「アキサンゴ(秋珊瑚)」の別名があります。『神農本草経』の中品に収載された、歴史の古い生薬です。
漢方薬剤師の視点では、山茱萸は「肝腎不足の要薬」です。肝腎を補い、精気のもれを引きしめます(収斂固渋)。腎虚にともなう頻尿・夜尿・尿もれ・遺精、めまい・耳鳴り、腰や膝のだるさ(腰膝酸軟)、ほてり・寝汗に用いられます。滋陰にも補陽にも働く点が特長で、甘寒の滋養薬と組めば陰血を補う方向に、甘温・辛熱の薬と組めば陽気を補う方向に働きます。八味地黄丸・六味丸・牛車腎気丸など、地黄・山薬とともに「三補」を構成し、腎を補う処方の中心となります。
基原・成分データ
山茱萸の基本データを整理します。ロガニンを含むこと、補益肝腎・収斂固渋の生薬であることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。山茱萸は、酸っぱく、ほんのり温かい微温で、肝・腎に働きます。
「酸」は引きしめ、もれを止める味とされます。精気のもれを引きしめ、頻尿・寝汗・遺精を止める働きと結びつきます。
「微温(ほんのり温)」はおだやかに温める性質で、冷えを助長しすぎず、肝腎を穏やかに補う方向に働きます。
肝を養ってめまい・耳鳴りをやわらげ、腎を補って頻尿・夜尿・遺精・腰膝のだるさをやわらげる方向に働きます。腎虚の諸症に関わります。
漢方的な働きの軸
山茱萸の働きは、大きく三つの軸で整理できます。肝腎を補う軸、もれを引きしめる軸、汗を止める軸が重なり、腎虚による不調を整えます。
伝統的な使われ方
山茱萸は古くから、補益肝腎・収斂固渋を目的に用いられてきました。腎虚にともなう頻尿・夜尿・尿もれ・遺精、めまい・耳鳴り、腰や膝のだるさ(腰膝酸軟)、ほてり・寝汗などのケアに用いられてきた歴史があります。滋養強壮・強精の目的で、果実酒(サンシュユ酒)としても親しまれてきました。滋陰にも補陽にも働くため、組み合わせる生薬によって、陰を補う方向にも陽を補う方向にも用いられます。
地黄・山薬・茯苓・牡丹皮・沢瀉と組み合わせて腎陰虚を補う処方(六味丸)、六味丸に桂皮・附子を加えて腎陽虚を温め補う処方(八味地黄丸)、八味地黄丸に牛膝・車前子を加えてむくみ・排尿トラブルを整える処方(牛車腎気丸)、六味丸に知母・黄柏を加えてほてり・のぼせを冷ます処方(知柏地黄丸)に配合されます。虚脱して汗が止まらないときには、竜骨・牡蛎とともに用いて、もれを引きしめます。
形状・味・使われ方の体感
山茱萸は、見た目・味・使われ方に特徴があります。赤い果肉が生薬になります。
暗赤色のしわのある果肉
種子を除いた、暗紫赤色でしわの寄った果肉。やわらかく、肉厚で、色の濃いものが良品とされます。グミに似た赤い実の果肉です。
強い酸味
味は強く酸っぱく、わずかに渋みがあります。この酸味が、精気のもれを引きしめ、汗を止める働きの中心です。
煎じる・丸薬・果実酒
煎じ液や丸薬(八味地黄丸・六味丸など)として補腎の処方に配合されます。滋養強壮を目的に、果実酒(サンシュユ酒)としても親しまれています。
体質別の向き・不向き
山茱萸は肝腎を補い、もれを引きしめる生薬です。腎虚の傾向があるか、逆に湿熱による排尿トラブルがないかを見極めることが大切です。
腎虚の頻尿・夜尿・尿もれ
腎が弱って、頻尿・夜尿・尿もれ・遺精が出るタイプに向きます。山茱萸の中心的な使い道で、八味地黄丸・六味丸の要薬です。
判断ポイント:頻尿・夜尿・尿もれがある。めまい・耳鳴り、腰膝のだるさ、寝汗
肝腎不足によるめまい・耳鳴り、腰や膝のだるさ、ほてり・寝汗のケアに用いられてきました。滋養強壮を目的としたいときに候補になります。
判断ポイント:めまい・耳鳴り・腰膝のだるさ・寝汗。胃腸が弱く下しやすい方
体質により胃部膨満・軟便などの消化器症状が出ることがあります。胃腸が弱く下しやすい方は、用量や配合に注意します。
判断ポイント:胃部膨満・軟便が出れば調整。湿熱による排尿痛・血尿がある方
引きしめる性質のため、排尿痛・血尿・発熱をともなう湿熱の強い排尿トラブルがある場合は、単独では向きません。この場合は清熱・利湿の処方を優先します。
判断ポイント:排尿痛・血尿・発熱があれば単独では使わない。安全性と受診の目安
山茱萸は穏やかな補腎の生薬ですが、体質により胃部膨満・軟便・腹痛などの消化器症状が出ることがあります。排尿痛・血尿・発熱をともなう泌尿器症状(湿熱)が強い場合は単独では向きません。持続する泌尿器の異常(血尿・排尿痛・発熱)や、強いめまい、激しい腰痛や排尿困難などの際は医療機関へご相談ください。自己判断での長期連用は避け、持病や併用薬のある方は専門家に相談してください。
- すぐに相談:激しい腰痛や排尿困難、高熱、血尿、強い腹痛
- 服薬中:胃部膨満・軟便が続く、症状が改善しない/悪化する場合は中止し受診する。持病や他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
山茱萸が気になる方は、めまい、多汗、だるさとの関係も確認すると理解が深まります。
山茱萸を含む漢方薬
山茱萸は、腎を補う地黄丸系の処方に配合されます。同じ山茱萸を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 六味丸(ろくみがん)との関係は?
六味丸は腎陰虚の代表処方で、地黄・山茱萸・山薬に茯苓・牡丹皮・沢瀉を加えた組成です。山茱萸は収斂固渋で精気のもれを防ぎ、頻尿・夜尿・遺精などを目標に用いられます。八味地黄丸は、これに桂皮・附子を加えたものです。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
腎虚(頻尿・夜尿・遺精、めまい・耳鳴り、ほてり・寝汗、腰膝のだるさ)に向いています。体質に応じて、山薬・地黄・茯苓などと組み合わせます。排尿痛・血尿など湿熱の強いタイプには単独では向きません。
Q. 性味・帰経は?
性味は酸/微温、帰経は肝・腎とされます。肝腎を補い、精気のもれを引きしめる働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
山茱萸は、肝腎を補い、もれを引きしめる生薬ですが、頻尿やめまい、腰膝のだるさの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。激しい腰痛や排尿困難、高熱、血尿、強い腹痛などがある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。排尿痛・血尿・発熱をともなう湿熱の強いタイプには単独では向きません。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。