知柏地黄丸とは?更年期のほてり・寝汗・口渇・手足の熱感に使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月9日 監修:堀口和彦
知柏地黄丸(ちばくじおうがん)

知柏地黄丸(ちばくじおうがん)は、六味丸を土台に、熱を冷ます知母と黄柏を加えた漢方薬です。体の潤いが不足して、内側から空焚きのような熱がこもり、顔や手足のほてり、寝汗、口の渇き、排尿の乱れ、むくみなどが出る状態に用いられてきました。KanpoNowでは、この処方を「潤いを補いながら、強い虚熱を冷ます漢方薬」として整理します。

知柏地黄丸はこんな人に向いています
  • 顔や手足が強くほてり、暑くないのに熱感が続く
  • 夜中に寝汗をかき、口やのどが渇きやすい
  • 更年期前後でホットフラッシュや急な発汗がある
  • 疲れやすく、排尿困難・頻尿・むくみも気になる
  • 乾燥感や皮膚のかゆみがあり、体の内側に熱がこもる感じがある

反対に、腰から下が冷える、夜間尿が冷えとともに悪化する、水っぽい下痢をしやすい、胃腸が弱い方では、知柏地黄丸の冷ます力が負担になることがあります。

知柏地黄丸とは

知柏地黄丸は、地黄山茱萸山薬沢瀉茯苓牡丹皮知母黄柏から構成される漢方薬です。

基本構造は、六味丸の「腎の潤いを補いながら、水と熱の偏りを整える」考え方です。そこに、知母と黄柏という清熱薬を加えることで、単なる乾きや軽いほてりよりも、さらに熱感が強い状態に対応しやすくなっています。

ポイント:知柏地黄丸は、冷えを温める処方ではありません。潤い不足による強いほてり、寝汗、口渇、手足の熱感など、「陰虚火旺」と呼ばれる状態を冷ましながら整える処方です。

古典における位置づけ

知柏地黄丸は、中国古典に由来する六味地黄丸系の加味処方です。六味地黄丸を土台に、知母と黄柏を加えることで、腎陰虚に熱が強く絡む状態、つまり「腎陰虚火旺」を整える処方として用いられてきました。

クラシエの製品情報では、古典『医宗金鑑』に収載されている薬方として説明されています。一方、文献や流派によっては『症因脈治』などを関連出典として挙げる整理もあります。いずれにしても、処方の骨格は「六味地黄丸で潤いを補い、知母・黄柏でこもった熱を冷ます」点にあります。

現代では、顔や四肢のほてり、口渇、排尿困難、頻尿、むくみなどに使われます。更年期のホットフラッシュや寝汗のように、体の潤いが不足して熱が上がる状態でも比較される処方です。

知柏地黄丸らしさ:「乾いているのに熱い」「疲れているのにほてる」「夜に汗をかく」「口が渇く」「手足の裏が熱くて落ち着かない」。このような、潤い不足と強い虚熱が同時にある状態を中心に考えます。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、知柏地黄丸が合う状態を、陰虚火旺として考えます。陰虚とは、体を潤し冷ます水分・血・精のような土台が不足している状態です。そこに熱がこもり、空焚きのように燃え上がると、ほてり、寝汗、口渇、イライラ、皮膚の乾燥、手足の熱感などが出やすくなります。

  • 陰虚:体を潤し冷ます力が不足し、のど・皮膚・粘膜が乾きやすい状態
  • 虚熱:潤い不足により、実際の高熱ではないのに内側から熱っぽく感じる状態
  • 陰虚火旺:陰虚が進み、ほてり・寝汗・口渇・イライラなどの熱症状が強く出る状態
  • 腎陰虚:加齢・更年期・慢性消耗などにより、下半身、排尿、潤い、熱の調整が乱れる状態

地黄・山茱萸・山薬は、腎の潤いと土台を補います。沢瀉・茯苓は、余分な水分の偏りを整え、牡丹皮はこもった熱に配慮します。さらに知母と黄柏が加わることで、ほてりや口渇の背景にある強い虚熱を冷ます方向がはっきりします。

そのため知柏地黄丸は、「潤いを補う」「虚熱を冷ます」「水の偏りを整える」という3つの方向を同時に持つ処方です。

注意:強い冷え、下痢、食欲不振、腰から下の冷え、夜間尿が冷えで悪化する方では、知柏地黄丸の冷ます力が合わないことがあります。症状名だけで選ばず、熱と冷えのどちらが主役かを見極めることが大切です。

構成生薬と配合バランス

知柏地黄丸は、8種類の生薬で構成されます。六味丸の6生薬に、知母と黄柏を加えた構成です。知母・黄柏が入ることで、六味丸よりも「熱を冷ます」方向が強くなります。

知柏地黄丸の構成を、地黄28%、山茱萸14%、山薬14%、牡丹皮10%、茯苓10%、沢瀉10%、知母7%、黄柏7%として合計100%で示した構成イメージです。 知柏 地黄丸
地黄28%
山茱萸14%
山薬14%
牡丹皮10%
茯苓10%
沢瀉10%
知母7%
黄柏7%
知柏地黄丸の内部構造
腎の潤いを補い、強い虚熱を冷まし、水の偏りを整える構成です。
潤いを補う軸 地黄・山茱萸・山薬 腎陰を補い、乾きや消耗によって不足した体の潤いの土台を支えます。
虚熱を冷ます軸 知母・黄柏・牡丹皮 潤い不足から生じるほてり、寝汗、口渇、手足の熱感を冷ます方向で働きます。
水を整える軸 沢瀉・茯苓 水分代謝の偏りを整え、むくみや排尿の乱れを見ながら補いすぎを防ぎます。

※円グラフは、知柏地黄丸の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:知柏地黄丸は、六味丸の「潤す力」に、知母・黄柏の「強く冷ます力」を加えた、陰虚火旺向けの処方です。

知柏地黄丸の味・香り・服用時の体感

知柏地黄丸は、知母と黄柏に由来するはっきりした苦味があり、地黄や山薬によるやや重く甘い風味も感じます。六味丸よりも苦味と冷ます印象が強く、乾きと熱感が強い方に合わせて設計された味わいです。

強い苦味と重い甘み

知母・黄柏の苦味に、地黄・山薬の甘みとねっとりした重さが重なります。

深く落ち着いた漢方香

地黄系の濃い香りに、少し焦げたような、苦味を思わせる香りがあります。

褐色〜黒褐色

製品により異なりますが、粉末・顆粒・丸剤では褐色から黒褐色寄りに見えます。

奥の熱が引く感覚

合う方では、手足のほてり、寝汗、口の渇きが少しずつ落ち着く感覚があります。

体験の流れ:苦味を感じる → 体の奥にこもった熱が少し引く → 夜間の寝汗や手足のほてりが落ち着く → 口やのどの乾きがやわらぐ感覚。知柏地黄丸は、瞬間的に冷やすというより、潤いを補いながら空焚きの熱を鎮める処方です。

症状別の向き・不向き

知柏地黄丸は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、強いほてり、寝汗、口渇、手足の熱感、疲れやすさ、排尿トラブル、胃腸の弱さ、冷えの有無です。

更年期の強いホットフラッシュ・寝汗

潤い不足を背景に、顔や上半身が急に熱くなり、寝汗や口渇を伴うタイプに向きます。

判断ポイント:ほてり+寝汗+口渇。

手足のほてり・口渇・乾燥感

手のひらや足の裏が熱く、夜に悪化しやすく、口や皮膚の乾燥を伴う場合に比較します。

判断ポイント:陰虚火旺の熱感。

頻尿・排尿困難・むくみを伴うほてり

腎の潤い不足と水分代謝の乱れが重なり、排尿の不調やむくみも気になる場合に比較します。

判断ポイント:ほてりと水の乱れが同時にある。

高齢者の乾燥性のかゆみ・熱感

乾燥感、口渇、手足のほてりを背景に、皮膚のかゆみが出る場合に比較されることがあります。

判断ポイント:乾燥とかゆみ、熱感。
×

冷え症・腰から下の冷え・夜間尿

腰から下が冷え、温めると楽になり、夜間尿や下半身のだるさが中心の場合は方向が異なります。

判断ポイント:冷えが主役なら八味地黄丸系を比較。

胃腸虚弱・下痢しやすいタイプ

地黄の重さに加え、知母・黄柏の冷ます性質があるため、胃もたれや下痢が出やすい方では注意が必要です。

判断ポイント:胃腸が受け止められるか。

体質別の向き・不向き

知柏地黄丸は、陰虚に強い虚熱が加わったタイプに向きます。体力が十分にある実熱というより、潤いが不足して熱を冷ませない「空焚きの熱」を見る処方です。

陰虚火旺タイプ

潤い不足により、ほてり、寝汗、口渇、手足の熱感、イライラが強く出るタイプに合いやすい処方です。

判断ポイント:乾いて熱い。

腎陰虚タイプ

加齢、更年期、慢性消耗を背景に、潤い不足、排尿の乱れ、むくみ、ほてりが重なるタイプです。

判断ポイント:腎の潤い不足。

血虚・陰虚が重なるタイプ

肌や粘膜の乾燥、寝つきの悪さ、ほてり、疲れやすさがある場合に、陰虚の強さを見て比較します。

判断ポイント:乾燥と熱感の組み合わせ。

脾気虚・胃腸虚弱タイプ

胃腸が弱く、食欲不振、胃もたれ、軟便がある方では、地黄や清熱薬が負担になることがあります。

判断ポイント:飲んで胃が重くならないか。
×

陽虚・冷えタイプ

体を温める力が不足し、寒がり、腰から下の冷え、下痢、夜間尿が中心のタイプには合いにくい処方です。

判断ポイント:冷えている人をさらに冷まさない。

効能・効果

知柏地黄丸の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、代表的には次のように整理できます。

体力中等度以下で、疲れやすく胃腸障害がなく、口渇があるものの次の諸症:顔や四肢のほてり、排尿困難、頻尿、むくみ

※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

知柏地黄丸は、ほてりや口渇を伴う陰虚火旺に用いられる処方ですが、地黄・知母・黄柏などを含むため、胃腸虚弱、冷え、下痢傾向がある方では注意が必要です。

胃腸が弱い方・下痢しやすい方への注意

知柏地黄丸には、消化に負担をかけやすい地黄と、胃腸を冷やす方向に働く知母・黄柏が含まれます。胃腸の弱い方、下痢しやすい方では、吐き気、胸やけ、食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢が出ることがあります。

冷えが強い方への注意

知柏地黄丸は、体を温める処方ではありません。腰から下が冷える、寒がり、下痢しやすい、夜間尿が冷えで悪化する場合は、八味地黄丸料など温める方向の処方と鑑別します。

六味丸・八味地黄丸料との使い分け

同じ地黄丸系でも、冷えと熱の見極めが重要です。軽いほてりと口渇なら六味丸、腰から下の冷えや夜間尿が中心なら八味地黄丸料、強いほてり・寝汗・口渇・手足の熱感が目立つ場合に知柏地黄丸を比較します。

妊娠中・授乳中・小児・高齢者

妊娠中または妊娠している可能性がある方、授乳中の方、小児、高齢者、持病のある方、医師の治療を受けている方は、自己判断で服用せず、医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。製品によっては15才未満は服用しないこととされています。

生活習慣の注意

陰虚火旺では、唐辛子、胡椒、強い香辛料、過度な飲酒、夜更かし、サウナやホットヨガでの強制的な発汗が、乾きと熱感を悪化させることがあります。夜は陰を養う時間です。寝汗やほてりが強い方ほど、睡眠時間の確保が大切です。

相談・受診を優先したいサイン

  • 服用後に吐き気、胸やけ、食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢が強く出る
  • ほてり、寝汗、口渇が長く続き、生活に支障がある
  • 体重減少、強い倦怠感、発熱、動悸、強い不眠がある
  • 口渇が強く、多飲・多尿が続く
  • 血尿、排尿痛、尿が出にくい状態が続く
  • 妊娠中、授乳中、小児、高齢者、持病や併用薬がある
すぐ相談:強い口渇、多尿、急な体重減少、発熱、血尿、排尿痛、強い倦怠感、動悸、不眠、服用後の激しい下痢や胃痛がある場合は、知柏地黄丸で様子を見ず医療機関に相談してください。

症状から理解を深める

知柏地黄丸が気になる方は、ほてり、寝汗、多汗、口の渇き、かゆみ、むくみとの関係を確認すると理解が深まります。

地黄丸系の処方は、似ているようで方向が大きく異なります。潤い不足が中心か、熱が強いか、冷えが主役か、排尿の乱れが中心かで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 知柏地黄丸は更年期のホットフラッシュに使えますか?

顔や手足のほてり、寝汗、口渇、乾燥感があり、潤い不足による熱が強いタイプでは比較されます。ただし、ストレス性ののぼせ、血流の滞り、冷えのぼせなどでは別の処方が合うこともあります。

Q. 六味丸との違いは何ですか?

六味丸は、腎の潤い不足を補う基本処方です。知柏地黄丸は、六味丸に知母と黄柏を加えて、強いほてり、寝汗、口渇などの虚熱をよりしっかり冷ます方向にした処方です。

Q. 八味地黄丸料との違いは何ですか?

八味地黄丸料は、冷えや下半身の衰えを温めながら支える処方です。知柏地黄丸は、潤い不足による強い熱感を冷ます処方です。腰から下が冷える方には、知柏地黄丸が合いにくいことがあります。

Q. 胃腸が弱くても飲めますか?

胃腸が弱い方、下痢しやすい方では注意が必要です。地黄が重く感じたり、知母・黄柏で胃腸が冷えたりして、胃もたれ、食欲不振、腹痛、下痢が出ることがあります。

Q. どれくらい続ければよいですか?

製品の添付文書では、一定期間服用しても症状がよくならない場合は中止して相談するよう案内されています。特に1か月程度服用しても改善しない場合や、胃腸症状が出る場合は、医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。

参考・出典

  • PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
  • クラシエ「知柏地黄丸」漢方セラピー 処方解説・製品情報
  • クラシエ 漢方療法推進会「知柏地黄丸」商品情報
  • 古典:『医宗金鑑』知柏地黄丸関連記載、および六味地黄丸系処方の古典的運用
  • 公益社団法人 東京生薬協会・富山大学 和漢医薬学総合研究所等の生薬資料

知柏地黄丸が合うか迷った方へ

知柏地黄丸は、強いほてり、寝汗、口渇、手足の熱感、排尿の乱れ、むくみなどに使われる漢方薬ですが、すべての更年期症状やほてりに合うわけではありません。冷えが主役なのか、潤い不足による熱が主役なのか、胃腸が受け止められるかまで含めて判断することが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。強い口渇、多飲・多尿、急な体重減少、発熱、血尿、排尿痛、強い倦怠感、動悸、不眠、服用後の吐き気・胸やけ・食欲不振・胃部不快感・腹痛・下痢などがある場合は、医療機関にご相談ください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、冷え症、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。