当帰(とうき)とは?冷えや貧血、月経不順・月経痛に使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月10日 監修:堀口和彦
当帰(とうき)

当帰(とうき)は、セリ科トウキの根を乾燥した生薬です。不足した血を補う働き(補血)、滞った血の巡りを促す働き(活血)、月経を整える働き(調経)から、冷えや貧血傾向、月経不順・月経痛、産後の体力低下などのケアに幅広く用いられてきました。婦人科領域でとくに頻用される、補血薬の代表的な生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「血を補いめぐらせ、月経を整える生薬」として整理します。

まずは要点
  • 当帰(とうき)はセリ科Angelica acutiloba(トウキ)またはその変種の根を乾燥した生薬で、日本薬局方に収載されています*①②
  • 主成分はフェルラ酸などのフェニルプロパノイド、リグスチリドなどの精油成分です*②③
  • 漢方では、血を補い(補血)、血のめぐりを促し(活血)、月経を整える(調経)働きで用いられます*①②③
  • 体質や用量により胃部不快・下痢などが出ることがあります。感作性のある精油成分を含むため、敏感な方は光・接触への反応に注意が必要です

当帰は芍薬・川芎・地黄など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。妊娠中・授乳中や抗凝固薬を服用中の方は、事前に専門家へご相談ください。

当帰とは

当帰(とうき)は、セリ科トウキ(Angelica acutiloba (Siebold et Zucc.) Kitag.)またはその変種の根を、そのまま、または湯通ししてから乾燥させた生薬です。『神農本草経』の中品に収載される歴史ある生薬で、日本では奈良県を中心に栽培されてきた大和当帰が良品とされ、北海道を中心に栽培される北海当帰とともに広く流通しています。セロリに似た強い芳香をもち、味はわずかに甘く苦みも残るのが特徴です。

漢方薬剤師の視点では、当帰は「補血薬(血を補う生薬)」に分類されます。血を補いながら血のめぐりを促す両面の働きをもち、処方によりどちらの側面が主眼になるかが異なります。冷えや貧血傾向、月経不順・月経痛、産後の体力低下などに、芍薬・川芎・地黄などと組み合わせて用いられます。「子ができず実家に戻された嫁が当帰を服用して元気になり、夫のもとへ『当(まさ)に帰る』ことができた」という逸話が名前の由来のひとつとされ、古くから婦人薬の主薬として頻用されてきました。

ポイント:当帰は「血を補いめぐらせ、月経を整える」生薬です。冷えや貧血傾向、月経不順・月経痛、産後の体力低下が気になるタイプに用いられてきました。婦人科領域で古くから頻用される要薬なのが特徴です。

基原・成分データ

当帰の基本データを整理します。セリ科トウキの根を用いること、リグスチリドなどの精油成分を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

当帰(トウキ)の生薬
当帰の基礎データ
セリ科トウキの根を乾燥した生薬。血を補いめぐらせ、月経を整える働きがあります。
読み トウキ(セリ科植物の根を用いる生薬)
基原・由来 セリ科 Angelica acutiloba(トウキ)またはその変種の根(日本薬局方収載) *①②
主成分 フェルラ酸などのフェニルプロパノイド、リグスチリドなどの精油成分 ほか *②③

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。当帰は、甘く辛く、温める性質で、肝・心・脾に働きます。

味(五味)

「甘」は補い養う味、「辛」はめぐらせる味とされます。血を補いながらめぐらせる働きと結びつきます。

性(四気)

「温」は温める性質で、冷えて滞った血を、あたためてめぐらせる方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)

肝に働いて血を蔵し、心に働いて血をめぐらせ、脾に働いて血を生み出し、冷え・貧血・月経不順に関わります。

漢方的な働きの軸

当帰の働きは、大きく三つの軸で整理できます。血を補う軸、血をめぐらせる軸、月経を整える軸が重なり、冷え・貧血・月経不順を整えます。

血を補う軸 補血 不足した血を補って、貧血傾向・立ちくらみ・肌の乾燥をやわらげる方向に働きます。
血をめぐらせる軸 活血 滞った血の巡りを促して、冷え・瘀血にともなう痛みをやわらげる方向に働きます。
月経を整える軸 調経 血を補いめぐらせることで、月経不順・月経痛をやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:当帰は「血を補いめぐらせ、月経を整える」生薬です。冷えや貧血傾向、月経不順・月経痛、産後の体力低下のタイプに輪郭がはっきりします。婦人科領域の要薬なのが持ち味です。

伝統的な使われ方

当帰は古くから、補血・活血・調経を目的に用いられてきました。冷え、月経不順・月経痛、産後の体力低下などのケアに配合されてきた歴史があります。当帰は肝・心・脾に入り、処方によって血を補う面と、血をめぐらせる面のどちらが主眼になるかが異なるのが特徴です。

芍薬・茯苓・白朮などと組み合わせて、冷え・むくみ・月経不順を整える処方(当帰芍薬散)、地黄・阿膠などと組み合わせて月経不順・更年期障害を整える処方(温経湯)、黄耆・地黄・芍薬・川芎などと組み合わせて病後・術後の体力低下を整える処方(十全大補湯)に配合されます。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

当帰は、セロリに似た芳香をもつ根ならではの特徴をもつ生薬です。

茶色で多肉質な根

主根と多数の支根からなる、茶色で多肉質な根です。空心がなく、質が緻密で重みのあるものが良品とされます。

セロリに似た強い芳香

セロリに似た強い香りがあり、味はわずかに甘く苦みも残ります。温性で、冷えて滞った血をあたためてめぐらせる方向に働きます。

他の生薬と組み合わせて使用

芍薬・川芎・地黄など、他の補血薬・活血薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。

体質別の向き・不向き

当帰は血を補いめぐらせる生薬です。冷え・血虚傾向があるか、逆に妊娠中や抗凝固薬を服用中でないかを見極めることが大切です。

血虚・冷えタイプ

貧血傾向・立ちくらみ、冷えがみられるタイプに向きます。当帰の中心的な使い道です。

判断ポイント:血虚・冷えの改善。

瘀血・月経不順タイプ

月経不順・月経痛、産後の体力低下のケアに用いられてきました。

判断ポイント:調経の要薬として。

皮膚が敏感なタイプ

感作性のある精油成分を含むため、皮膚が敏感な方は光・接触への反応に注意しながら用います。

判断ポイント:光・接触反応に注意。
×

妊娠中・抗凝固薬併用タイプ

妊娠中・授乳中、抗凝固薬などを服用中の方は事前に専門家へ相談してください。

判断ポイント:妊娠中・抗凝固薬併用は要相談。

安全性と受診の目安

当帰は通常用量での短期使用では概ね安全に用いられますが、体質や用量により胃部不快・軟便・下痢などが出ることがあります。皮膚が敏感な方では光・接触に対する反応に注意が必要です。発疹、強い腹痛や下痢が続く、出血傾向の変化などがみられるときは、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。妊娠中・授乳中、抗凝固薬等を服用中の方は事前に専門家へ相談してください。

  • すぐに相談:発疹、強い腹痛や下痢が続く、出血傾向の変化などがみられるとき
  • 服薬中:妊娠中・授乳中、抗凝固薬等を服用中の方は事前に専門家へ相談する
すぐ相談:発疹、強い腹痛や下痢が続く、出血傾向の変化などがみられるときは、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

当帰が気になる方は、冷え、生理不順、貧血との関係も確認すると理解が深まります。

当帰を含む漢方薬

当帰は、冷え・血虚・月経不順を整える処方に配合されます。当帰の血を補いめぐらせる働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

よくある質問

Q. 補血と活血の違いは?

補血は不足した血を補うこと、活血は滞った血の巡りを促すことを指します。当帰は処方により両面で用いられます。

Q. どんな体質に合いますか?

冷えや血虚傾向(月経不順・貧血傾向など)に配合されることが多いですが、体質や症状により適応は異なります。専門家に相談してください。

Q. 川芎との違いは?

どちらも婦人科領域でよく併用されますが、当帰は補血に重点があり血を補いながらめぐらせるのに対し、川芎は「血中の気薬」と呼ばれ、血をめぐらせる力に重点があります。四物湯では両者がともに配合され、役割を分担します。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

当帰は、血を補いめぐらせ月経を整える生薬ですが、冷えや不調の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。発疹、強い腹痛や下痢が続く、出血傾向の変化などがみられる場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。妊娠中・授乳中、抗凝固薬等を服用中の方は事前に相談し、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。