鹿茸(ろくじょう)とは?冷えや倦怠、腰膝のだるさ、頻尿に使う生薬を体質別に解説

鹿茸(ろくじょう)は、シカの幼角(袋角)を乾燥した生薬です。腎陽を温め補う働き(温補腎陽)、精と血を益す働き(益精血)、筋骨を強くする働き(強筋骨)から、冷えや倦怠、腰膝のだるさ、頻尿・夜間尿などのケアに用いられてきました。中国では古来から牛黄や麝香と並ぶ珍貴な補陽薬として位置づけられてきた、動物由来の代表的な強壮生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「腎の陽気を補い、体の芯から力づける生薬」として整理します。
- 鹿茸(ろくじょう)はシカ(Cervus spp., シカ科)の幼角(袋角)を乾燥した生薬で、日本薬局方に収載されています(生薬名:CERVI CORNU PANTOTRICHUM)*①②
- 主成分はタンパク質・コラーゲン様成分、脂質、ミネラルなどです(加工・部位により組成は異なります)*①
- 漢方では、腎陽を温め補い(温補腎陽)、精と血を益し(益精血)、筋骨を強くする(強筋骨)働きで用いられます*①②
- のぼせ・口渇・便秘などの熱証、高血圧や動悸・不眠が強い場合には不向きのことがあります
鹿茸は地黄・山茱萸・山薬や桂皮・附子など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。胸痛・息切れの急な悪化、排尿困難や血尿、発熱を伴う腰痛がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。
鹿茸とは
鹿茸(ろくじょう)は、シカ科シカ(Cervus spp.)の雄の旧角が春に脱落した後に新生する幼角(袋角)を乾燥させた生薬です。梅花鹿(ばいかろく)または馬鹿(ばろく)の幼角が用いられ、前者を花鹿茸(かろくじょう)、後者を馬鹿茸(ばろくじょう)と称します。角が皮膚で包まれ、まるでキノコのように柔らかい生え始めの状態のものを採取して加工します。中国では古来から牛黄や麝香などと並べて、強壮・強精・長寿を目的とした珍貴な漢方薬に位置づけられており、日本にもずっと昔から貴重な生薬として使用されてきました。
漢方薬剤師の視点では、鹿茸は「補陽薬(体を温め陽気を補う生薬)」に分類されます。腎陽虚に伴う冷え・倦怠・腰膝のだるさ、頻尿・夜間尿、性機能の低下などに応用されます。地黄・山茱萸・山薬などと合わせて腎を補い、桂皮・附子など温陽薬と併用して回陽を助けます(右帰丸・右帰飲など)。強壮・強精を目的とした滋養強壮系の家庭薬にも配合される、動物由来の代表的な補陽薬です。
基原・成分データ
鹿茸の基本データを整理します。シカの幼角を用いること、タンパク質・コラーゲン様成分を豊富に含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。鹿茸は、甘く鹹く、温める性質で、腎・肝に働きます。
「甘」は補い養う味、「鹹」は腎に働きかける味とされます。腎陽を補い、精と血を益す働きと結びつきます。
「温」は温める性質で、腎陽虚による冷え・倦怠を、あたためて力づける方向に働きます。
腎に働いて冷え・頻尿・性機能の低下を、肝に働いて筋骨のだるさに関わります。
漢方的な働きの軸
鹿茸の働きは、大きく三つの軸で整理できます。腎陽を温め補う軸、精と血を益す軸、筋骨を強くする軸が重なり、冷え・倦怠・腰膝のだるさを整えます。
伝統的な使われ方
鹿茸は古くから、温補腎陽・益精血・強筋骨を目的に用いられてきました。腎陽虚に伴う冷え・倦怠・腰膝のだるさ、頻尿・夜間尿、性機能の低下などのケアに用いられてきた歴史があります。鹿茸は腎・肝に入り、地黄・山茱萸・山薬などと合わせて腎を補い、桂皮・附子など温陽薬と併用して回陽を助けるのが特徴です。
鹿茸は、動悸・息切れ・気つけを目的とした強壮系の家庭薬(霊鹿参・活命参・律鼓心)に配合されます。また、右帰丸・参茸補血丸などの古典的な処方にも用いられてきました。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。
形状・味・使われ方の体感
鹿茸は、シカの幼角ならではの特徴をもつ生薬です。
皮膚に包まれた幼角
シカの角が春に脱落した後に新生する、皮膚で包まれたやわらかい幼角(袋角)です。見た目も育ち方も、まるでキノコのように見えることから「茸」の字が使われています。
甘み・鹹みで温性
味は甘み・鹹みが中心で、性質は温性。腎陽虚による冷え・倦怠を、あたためて力づける方向に働きます。
他の生薬と組み合わせて使用
地黄・山茱萸・山薬や桂皮・附子など、他の補腎薬・温陽薬と組み合わせて配合されるのが一般的です。強壮系の家庭薬にも用いられます。
体質別の向き・不向き
鹿茸は腎の陽気を補い体の芯から力づける生薬です。腎陽虚による冷え・倦怠があるか、逆にのぼせ・口渇などの熱証でないかを見極めることが大切です。
冷え・倦怠タイプ
腎陽虚に伴う冷え・倦怠がみられるタイプに向きます。鹿茸の中心的な使い道です。
判断ポイント:腎陽虚による冷え・倦怠。腰膝のだるさ・頻尿タイプ
腰膝のだるさ、頻尿・夜間尿のケアに用いられてきました。
判断ポイント:強筋骨・益精血の働き。性機能の低下タイプ
性機能の低下には、他の補腎薬と組み合わせて用います。
判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。熱証・高血圧のタイプ
のぼせ・口渇・便秘などの熱証、高血圧や動悸・不眠が強い場合には不向きのことがあります。
判断ポイント:熱証・高血圧には不向き。安全性と受診の目安
鹿茸は処方の中で用いられる補陽薬ですが、のぼせ・口渇・便秘などの熱証、高血圧や動悸・不眠が強い場合には不向きのことがあります。持病(高血圧・心疾患・腎疾患)や他剤併用がある場合は専門家へ相談してください。自己判断での長期連用・過量は避けます。胸痛・息切れの急な悪化、めまい・失神、血尿・排尿困難、発熱を伴う腰痛がある場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。
- すぐに相談:胸痛・息切れの急な悪化、めまい・失神、血尿・排尿困難、発熱を伴う腰痛
- 服薬中:症状が改善しない・悪化する場合は受診する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
鹿茸が気になる方は、冷え、だるさとの関係も確認すると理解が深まります。
鹿茸を含む漢方薬
鹿茸は、冷え・倦怠・動悸を整える処方に配合されます。鹿茸の腎の陽気を補う働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 鹿角(ろっかく)や鹿角膠との違いは?
鹿茸は幼角(袋角)で温補腎陽・益精血の力が強いとされます。鹿角(成長した角)や鹿角膠(ゼラチン化したもの)は収斂・補益の性質がやや異なります。
Q. なぜ「茸」という字が使われるのですか?
シカの角は毎年春になると抜け落ち、そこから新しい角が生えてきます。幼角は、この生え始めの、皮膚で包まれた柔らかい角のことで、見た目も育ち方も、まるでキノコのように見えることから「鹿茸」と名付けられたと伝えられています。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
冷えや倦怠、腰膝のだるさ・痛み、頻尿・夜間尿など腎陽虚の傾向に向きます。のぼせ・口渇・便秘などの熱証が強い場合は不向きです。
参考・出典
- 富山大学 和漢医薬学総合研究所「伝統医薬データベース:鹿茸」 ①
- 日本薬局方名称データベース「鹿茸(CERVI CORNU PANTOTRICHUM)」②
- 中屋彦十郎薬局「鹿茸(ロクジョウ、ろくじょう)」 ③
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
鹿茸は、腎の陽気を補い体の芯から力づける生薬ですが、冷えや倦怠の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。胸痛・息切れの急な悪化、めまい・失神、血尿・排尿困難がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。持病(高血圧・心疾患・腎疾患)がある方は事前に相談し、症状が長引く・悪化する場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。