更年期の不眠に漢方|眠れない・夜中に目が覚める原因を8つの体質から考える

監修:堀口和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)|更新日:2026-06-14

疲れているのに眠れない。夜中に何度も目が覚める。夢ばかり見て、朝からぐったりする。

更年期の不眠は、体力不足だけでなく、心と体の「夜への切り替え」がうまくいかないサインかもしれません。

更年期の不眠は、単なる寝不足ではありません。女性ホルモンの変動、自律神経の乱れ、ホットフラッシュ、動悸、不安感、冷え、夜間頻尿などが重なり、寝つきの悪さ、中途覚醒、早朝覚醒、熟睡感のなさとして現れることがあります。

漢方では、眠りを「脳を強制的に止めること」ではなく、陽が静まり、陰が心身を包むこととして考えます。日中の活動を支える陽が夜になっても静まらず、心を潤す血や水が不足すると、疲れているのに目だけが冴える状態になります。

このページでは、更年期の不眠を、堀口和彦メソッドの8つの体質から整理します。同じ「眠れない」でも、陰虚、気滞、血虚、血瘀、気虚、湿痰、陽虚、湿熱では、原因も漢方の考え方も変わります。

あなたの不眠は、どの体質から来ているでしょうか。

寝つき・中途覚醒・夢の多さ・夜間尿・ほてり・不安感まで含めて、体質を見ていきましょう。

AI漢方診断をしてみる(無料)

更年期の不眠とは

更年期の不眠とは、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚める、眠ったはずなのに熟睡感がないといった状態です。

更年期には、女性ホルモンの変動により自律神経が揺らぎやすくなります。その影響で、ホットフラッシュ、寝汗、動悸、不安感、イライラ、冷え、夜間頻尿などが起こり、眠りが浅くなりやすくなります。*①②

不眠が続くと、日中の集中力低下、疲労感、気分の落ち込み、イライラ、食欲の乱れ、体重増加などにもつながります。更年期の不眠は、夜だけの問題ではなく、翌日の心身全体に影響する症状です。

「疲れていれば眠れる」は、更年期には通用しないことがあります。

更年期の不眠では、体は疲れているのに、脳や自律神経だけが興奮したままになることがあります。漢方では、この状態を陰陽の切り替えがうまくいかない状態として見ていきます。

なぜ更年期に眠れなくなるのか

更年期の不眠は、ホルモン、自律神経、体温調節、精神的ストレス、体質が重なって起こります。とくに重要なのは、夜になっても交感神経の緊張が下がりにくくなることです。

1ホルモンの変動

更年期には女性ホルモンが大きく変動します。体はその変化に対応しようとして、ホルモン分泌の司令系が忙しく働きます。

2自律神経の揺らぎ

ホルモンの変動は、自律神経のバランスにも影響します。夜になっても交感神経が優位なままだと、心身が休息モードに入りにくくなります。

3眠りの分断

ほてり、寝汗、動悸、不安感、夜間尿、冷えなどが重なると、寝つきが悪くなり、夜中に目が覚めやすくなります。

西洋医学では、更年期症状に対してホルモン補充療法などが選択肢となることがあります。ホットフラッシュや発汗が不眠のきっかけになっている場合、婦人科で相談することも大切です。*③④

漢方では「陰陽の切り替え不良」として見る

漢方では、日中の活動を支える力を「陽」、夜に心身を休ませる力を「陰」と考えます。よい眠りとは、夜になると陽が静まり、陰が心と体を包む状態です。

しかし更年期には、女性ホルモンと自律神経の揺らぎにより、陽が静まらず、陰が不足しやすくなります。その結果、疲れているのに眠れない、布団に入ると考え事が止まらない、寝ても夢ばかり見る、夜中に汗や動悸で目が覚めるといった状態が起こります。

眠りの悩み 漢方で見たい背景 よくある体質
疲れているのに目が冴える 陰が不足し、心の熱を冷ませない 陰虚
考え事が止まらない 気が上に滞り、交感神経が高ぶる 気滞
夢が多く、熟睡感がない 血が不足し、心が落ち着かない 血虚
顔は熱いのに足が冷える 血の巡りが悪く、熱が上に偏る 血瘀
夜間尿で何度も起きる 体を温め、締める力が弱っている 陽虚
頭が重く、すっきり眠れない 余分な水分や痰が気の巡りを塞ぐ 湿痰

漢方薬は、睡眠薬とは考え方が違います。

睡眠薬が脳の覚醒を直接抑える方向に働くのに対し、漢方では「眠れる体内環境」を整えることを重視します。熱を冷ます、血を補う、気を巡らせる、水をさばく、冷えを温めるなど、体質に合わせて考えます。

更年期の不眠を8つの体質で見る

更年期の不眠では、特に陰虚、気滞、血虚が中心になりやすい体質です。ただし、冷えのぼせが強い血瘀、疲労が強い気虚、頭重感がある湿痰、夜間頻尿がある陽虚、暑がりで便秘がある湿熱も関係することがあります。

目が冴える・寝汗

陰虚

潤い不足で心の熱を冷ませず、疲れているのに眠れないタイプです。

考え事・イライラ

気滞

気が頭や胸に滞り、布団に入っても脳が興奮しているタイプです。

多夢・熟睡感なし

血虚

心を養う血が不足し、夢が多く眠りが浅いタイプです。

冷えのぼせ

血瘀

血の巡りが悪く、頭に熱がこもって眠れないタイプです。

疲労・朝起きられない

気虚

気血を作る力が弱く、眠るための体力が不足しているタイプです。

頭重・胃もたれ

湿痰

余分な水分や痰が停滞し、頭が重く眠りがすっきりしないタイプです。

冷え・夜間尿

陽虚

体を温める力が弱く、冷えや夜間頻尿で眠りが分断されるタイプです。

暑がり・便秘

湿熱

余分な熱と老廃物がこもり、体が興奮して眠りにくいタイプです。

「眠れない原因」は、ひとつとは限りません。

不眠に、ほてり、動悸、冷え、夜間尿、イライラ、疲労感が重なる方は、体質をまとめて確認してみましょう。

AI漢方診断をしてみる(無料)
1. 疲れているのに目が冴える

陰虚(いんきょ)体質の不眠

陰虚は、心と体を潤し、熱を鎮める「陰」が不足している体質です。更年期の不眠では、疲れているのに眠くならない、目が冴える、夜中に目が覚める、寝汗をかくといった形で現れます。

病態の考え方

本来、夜になると陽が静まり、陰が心身を包むことで眠りに入ります。しかし陰虚では、陽を静めるだけの陰の力が足りません。

そのため、体は疲れているのに、脳や心だけがオーバーヒートしたように興奮し、眠りに入れなくなります。手足のほてり、口の渇き、寝汗、焦燥感を伴う場合は、陰虚の要素を考えます。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

このタイプでは、心と肝を養い、潤いを補いながら精神を落ち着かせる考え方をとります。代表的には、酸棗仁湯(さんそうにんとう)などが用いられることがあります。

神経が過敏で、些細な刺激で目が覚める、動悸や不安を伴う場合には、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などを検討することもあります。

養生のポイント

陰虚タイプでは、夜更かし、スマートフォン、強い光、辛い食べ物、アルコール、長風呂での発汗が負担になりやすいです。夜は「活動の時間」ではなく、「陰を回復する時間」と考えましょう。

2. 考え事・イライラで眠れない

気滞(きたい)体質の不眠

気滞は、気の巡りが滞りやすい体質です。更年期では、ストレス、怒り、不安、緊張により、布団に入っても考え事が止まらず、眠りに入れないことがあります。

病態の考え方

気がスムーズに巡らず、頭や胸に滞ると、心身が興奮したままになります。夜になっても交感神経のスイッチが切れず、日中の緊張を引きずったまま布団に入る状態です。

このタイプの不眠では、「眠れない」こと自体よりも、考え続けてしまう、怒りが残る、胸が張る、呼吸が浅くなるといった気の停滞が背景にあります。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

このタイプでは、気の滞りをほどき、内側にこもった熱や緊張を鎮める考え方をとります。代表的には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが用いられることがあります。

怒りやイライラ、筋肉の緊張、歯ぎしり、神経の高ぶりが強い場合には、抑肝散(よくかんさん)などを検討することもあります。

養生のポイント

気滞タイプでは、「眠らなければ」と考えるほど気が上がり、かえって眠れなくなることがあります。寝る前に予定整理や悩みごとをしない、深く吐く呼吸をする、肩や胸をゆるめることが大切です。

3. 夢が多く、熟睡感がない

血虚(けっきょ)体質の不眠

血虚は、心身を養う「血」が不足しやすい体質です。更年期の不眠では、夢が多い、眠りが浅い、熟睡感がない、不安感があるといった形で現れます。

病態の考え方

漢方では、血は身体に栄養を届けるだけでなく、心を落ち着かせる働きも持つと考えます。血が不足すると、心が十分に養われず、精神が安定しにくくなります。

そのため、眠っているつもりでも夢が多い、少しの物音で目が覚める、朝起きても寝た気がしないといった状態になりやすくなります。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

このタイプでは、胃腸の働きを助けて血を作り、心を養う考え方をとります。代表的には、加味帰脾湯(かみきひとう)などが用いられることがあります。

不安、イライラ、のぼせ、冷えが混在する更年期の不眠では、加味逍遙散(かみしょうようさん)などを検討することもあります。

養生のポイント

血虚タイプでは、睡眠時間だけでなく、血を作る食事と胃腸の状態が大切です。無理なダイエット、夜更かし、長時間の目の酷使は、血の消耗につながります。

4. 冷えのぼせが眠りを妨げる

血瘀(けつお)体質の不眠

血瘀は、血の巡りが滞りやすい体質です。更年期の不眠では、顔や頭は熱いのに足は冷える、肩こりや頭痛が強い、寝る前にのぼせるといった形で現れることがあります。

病態の考え方

血の巡りが悪いと、体の熱が均等に分配されません。頭や上半身には熱がこもり、足元や下半身は冷えたままになります。

この「上熱下寒」の状態では、頭だけが覚醒し、足元が冷えて眠りに入りにくくなります。寝る前に顔がカーッと熱くなる、肩や首がこって寝つけないという方は、血瘀の要素を考えます。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

このタイプでは、血の巡りを整え、上に偏った熱を全身に分配する考え方をとります。代表的には、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などが用いられることがあります。

便秘、のぼせ、イライラが強い場合には、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などを検討することもあります。

養生のポイント

血瘀タイプでは、頭を冷やすだけでは根本的な改善につながりにくいことがあります。足首、ふくらはぎ、下腹部を冷やさず、軽い運動や入浴で巡りを整えることが大切です。

5. 疲れ果てているのに眠れない

気虚(ききょ)体質の不眠

気虚は、生命エネルギーである「気」を作る力が不足しやすい体質です。疲れているのに眠れない、日中もだるい、朝起きられない方に見られます。

病態の考え方

眠るためには、ただ疲れているだけでは不十分です。心身を休息モードに切り替えるための気血や体力も必要です。

気虚では、胃腸の働きが弱く、気血を十分に作れません。そのため、心を落ち着かせる栄養が不足し、疲労困憊なのに眠れないという状態になります。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

このタイプでは、まず胃腸を立て直し、気血を補い、眠るための体力を養う考え方をとります。代表的には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などが用いられることがあります。

養生のポイント

気虚タイプでは、寝る直前まで頑張り続けると、かえって眠れなくなります。夜は予定を詰め込まず、消化に良い温かい食事をとり、早めに横になることが大切です。

6. 頭が重く、眠りがすっきりしない

湿痰(しったん)体質の不眠

湿痰は、体内の水はけが悪く、余分な水分や濁りが停滞しやすい体質です。更年期の不眠では、頭が重い、胃がもたれる、眠ってもすっきりしないといった形で現れます。

病態の考え方

胃腸の働きが弱くなると、体内に余分な水分や痰が生じやすくなります。この痰が胸や頭の気の巡りを塞ぐと、心が落ち着かず、眠りが浅くなります。

湿痰タイプの不眠は、強い興奮というよりも、頭が重くぼんやりしているのに、眠りが深くならないという特徴があります。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

このタイプでは、胃腸の働きを助け、体内に溜まった痰や余分な水分を取り除く考え方をとります。代表的には、温胆湯(うんたんとう)などが用いられることがあります。

喉のつかえ感、胸のつかえ、不安感があり、気が詰まって眠れない場合には、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などを検討することもあります。

養生のポイント

湿痰タイプでは、夜遅い食事、甘いもの、冷たい飲み物、食べ過ぎが眠りを重くします。寝る前に胃腸を働かせすぎないことが、眠りの質を整える第一歩です。

7. 冷えと夜間尿で目が覚める

陽虚(ようきょ)体質の不眠

陽虚は、体を温める力が不足しやすい体質です。更年期の不眠では、布団に入っても体が温まらない、夜間に何度もトイレに起きる、冷えで眠りが浅いといった形で現れます。

病態の考え方

陽気は、体を温め、内臓や膀胱の働きを支える力です。陽気が不足すると、下半身が冷え、膀胱を締める力も弱くなり、夜間頻尿が起こりやすくなります。

夜中にトイレで何度も起きると、睡眠は分断されます。また、足先や腰が冷えていると、体が安心して眠りに入りにくくなります。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

このタイプでは、下半身を芯から温め、腎の働きを補い、夜間尿や冷えを整える考え方をとります。代表的には、八味地黄丸(はちみじおうがん)などが用いられることがあります。

養生のポイント

陽虚タイプでは、寝る前に体を冷やさないことが大切です。冷たい飲み物、薄着、足元の冷えを避け、足首や下腹部を温めると、眠りに入りやすくなることがあります。

8. 熱と老廃物で興奮して眠れない

湿熱(しつねつ)体質の不眠

湿熱は、余分な水分と熱が体内にこもりやすい体質です。更年期の不眠では、体が熱っぽい、暑がり、汗が多い、便秘、過食、肥満傾向を伴う場合に関係します。

病態の考え方

湿熱では、余分な栄養や水分が体内で停滞し、熱を持ちます。体の内側に熱がこもるため、夜になっても陽が静まりにくく、眠りに入りづらくなります。

夕食の食べ過ぎ、夜食、飲酒、便秘が重なると、体内の熱がさらにこもり、寝つきの悪さや夜間の発汗につながることがあります。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

このタイプでは、体内にこもった熱と老廃物を便や尿から排出し、興奮状態を鎮める考え方をとります。代表的には、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などが用いられることがあります。

ただし、防風通聖散は体力や便通、胃腸の状態を見て選ぶ処方です。冷えが強い方、胃腸が弱い方、体力が落ちている方が自己判断で使うと合わない場合があります。

養生のポイント

湿熱タイプでは、寝る前の食事、飲酒、脂っこいもの、甘いものが不眠の引き金になります。まずは夕食を軽くし、便通と食事時間を整えることが大切です。

更年期の不眠を整える生活養生

漢方薬は、眠りを強制する薬ではなく、眠れる体内環境を整えるために使われます。その効果を引き出すためには、夜に陽を静め、陰を養う生活習慣が欠かせません。

1. 眠れなくても焦らない

「眠らなければ」と思うほど、気が上がり、交感神経が高ぶります。眠れない日でも、横になって目を閉じるだけで、筋肉や心臓は重力から解放され、体は休息に向かいます。

不眠への恐怖そのものが不眠を長引かせることがあります。まずは「眠る努力」よりも、「休む許可」を自分に出すことが大切です。

2. 夜は照明を落とし、画面を遠ざける

夜は陰の時間です。強い光、スマートフォン、テレビ、仕事のメールは、脳に「まだ昼だ」と知らせ、陽を高ぶらせます。

夕方以降は照明を少し暗めにし、寝る前は画面から離れる時間を作りましょう。特に陰虚、気滞、血虚タイプでは、光と情報刺激の減らし方が重要です。

3. 布団の中で腹式呼吸をする

仰向けになり、鼻からゆっくり吸ってお腹をふくらませ、口から細く長く吐きます。これを10回ほど繰り返します。

吐く息を長めにすると、上にのぼった気が下りやすくなります。動悸、不安感、考え事がある方は、眠ろうとする前に、まず呼吸を整えましょう。

4. 昼は軽く動き、夜は静かに過ごす

日中に適度に体を動かすことで、夜に陰へ切り替わりやすくなります。散歩、軽いストレッチ、家事、日光を浴びる習慣は、眠りのリズムを整える助けになります。

ただし、夕方以降の激しい運動は交感神経を刺激し、寝つきを悪くすることがあります。夜は体を追い込む時間ではなく、静める時間にしましょう。

5. 夜の食べ方を整える

寝る直前の食事、飲酒、甘いもの、脂っこい食事は、胃腸を働かせ、湿痰や湿熱タイプの不眠を悪化させることがあります。

一方で、血虚や気虚の方が夕食を極端に減らすと、血や気が足りず、かえって眠りが浅くなることもあります。体質に合った量と時間を整えることが大切です。

不眠の養生は、体質によって変わります。

冷やすべきか、温めるべきか。食事を軽くすべきか、補うべきか。まずは体質を確認してみましょう。

AI漢方診断で体質を確認する

更年期の不眠は、ホットフラッシュ、イライラ、動悸、めまい、むくみ、体重増加と重なって現れることがあります。症状別に詳しく知りたい方は、以下のページもご覧ください。