苓姜朮甘湯とは?腰の冷え・重だるい腰痛・夜尿症・神経痛に使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月14日 監修:堀口和彦
苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)

苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)は、腰から下肢に冷えと痛みがあり、尿量が多い方に用いられる漢方薬です。古典では「腎着」と呼ばれる、腰に冷たい水がまとわりついたような重だるい状態に用いられてきました。乾姜で内側から温め、茯苓・白朮で下半身に停滞した余分な水をさばき、甘草で痛みと緊張をやわらげます。KanpoNowでは、この処方を「腰から下にたまった冷えと水を、温めながらさばく漢方薬」として整理します。

苓姜朮甘湯はこんな人に向いています
  • 腰から下が冷水に浸かったように冷える
  • 腰や下肢が重だるく痛む
  • 冷えると腰痛・神経痛が悪化する
  • 尿量が多い、夜間尿、夜尿症が気になる
  • 下半身に冷えと湿気がたまっている感じがある
  • 温めると腰や足の重だるさが楽になる

強い腰痛、発熱、外傷後の痛み、足の麻痺、排尿・排便障害、血尿、急な尿量変化、むくみの急増がある場合は、整形外科・泌尿器科・内科での確認を優先してください。

苓姜朮甘湯とは

苓姜朮甘湯は、茯苓乾姜白朮甘草から構成される漢方薬です。

乾姜は、体の内側、とくにお腹から腰回りを温め、冷えによる痛みを散らします。茯苓と白朮は、胃腸を支えながら余分な水をさばき、下半身にたまった湿気を動かします。甘草は処方全体を調和し、冷えと湿気でこわばった筋肉の緊張をやわらげます。

ポイント:苓姜朮甘湯は、熱を持つ急性痛ではなく、腰から下が冷え、水がたまったように重だるく、尿量が多いタイプを目標にする処方です。

古典における位置づけ

苓姜朮甘湯は、中国の古典『金匱要略』に記される処方です。処方名は、茯苓、乾姜、白朮、甘草という4つの構成生薬から一文字ずつ取ったものです。

古典では「腎着」という病態に用いる処方として知られます。これは、腎そのものの病気というより、腰のあたりに冷たい水がまとわりついたように停滞し、腰が重く、冷え、動きにくい状態として理解できます。

KanpoNow掲載の効能効果では、体力中等度以下で、腰から下肢に冷えと痛みがあり、尿量が多い方の、腰痛、腰の冷え、夜尿症、神経痛に用いる処方として整理されています。

苓姜朮甘湯らしさ:腰から下が冷たい。重だるい。冷えると痛む。温めると楽。尿量が多い。夜間尿や夜尿がある。この「腰下の寒湿」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、苓姜朮甘湯が合う状態を、陽虚、寒湿、湿痰、腎着、下焦の水分停滞として考えます。体を温める力が弱ると、水を巡らせる力も落ち、余分な水が腰から下へたまりやすくなります。

  • 陽虚:体を温める力が不足し、腰から下が冷えやすい状態
  • 寒湿:冷えと湿気が重なり、重だるい痛みや冷えを起こす状態
  • 湿痰:余分な水分が停滞し、重さ、むくみ、動きにくさを起こす状態
  • 腎着:腰に冷たい水が付着したように、冷えと重だるさが腰に居座る状態

水は冷えると動きが鈍くなり、下へたまりやすくなります。腰から下に冷たい水が停滞すると、血流や気の巡りが妨げられ、腰痛、下肢の神経痛、しびれ、重だるさが出やすくなります。さらに下焦が冷えると、膀胱の締まりや尿の調整が不安定になり、尿量が多い、夜間尿、夜尿症につながることがあります。

苓姜朮甘湯は、乾姜で内側から温め、茯苓・白朮で水をさばき、甘草で痛みと緊張をやわらげます。補う力は強すぎず、攻める力も強すぎない、冷えと水に集中したシンプルな処方です。

注意:腰痛や神経痛には、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折、腎・尿路疾患、感染症などが隠れることがあります。足の麻痺、排尿・排便障害、発熱、外傷後の痛み、血尿、強い夜間痛がある場合は医療機関で確認してください。

構成生薬と配合バランス

苓姜朮甘湯は、茯苓・乾姜・白朮・甘草の4生薬で構成されます。冷えを温める軸、水をさばく軸、緊張と痛みをやわらげる軸が、非常にシンプルにまとまっています。
苓姜朮甘湯の構成イメージを示す円グラフです。 苓姜朮甘湯
茯苓32%
乾姜32%
白朮24%
甘草12%
苓姜朮甘湯の内部構造
下半身を温め、水をさばき、冷えによる重だるい痛みを整える構成です。
温中散寒の軸 乾姜 内側から強く温め、腰から下に居座る冷えを追い出し、冷えによる痛みを散らします。
利水燥湿の軸 茯苓・白朮 胃腸を支えながら余分な水をさばき、下半身の重だるさと水分停滞を整えます。
調和緩急の軸 甘草 処方全体を調和し、冷えと湿気でこわばった筋肉の緊張をやわらげます。

※円グラフは、茯苓・乾姜・白朮・甘草の配合を、見やすく整数化した構成イメージです。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:苓姜朮甘湯は、腰から下にたまった冷えと水を、温めながらさばく処方です。

苓姜朮甘湯の味・香り・服用時の体感

苓姜朮甘湯は、乾姜のピリッとした辛味と、甘草のしっかりした甘みが合わさった、少しスパイシーで甘い味です。構成が4生薬とシンプルなので、乾姜の温かみを感じやすい処方です。

辛味と甘み

乾姜のピリッとした辛味に、甘草の甘みが重なります。冷えを温める処方らしい味です。

乾姜のスパイシーな香り

乾姜の温かくスパイシーな香りが立ち上がり、胃腸から温める印象があります。

褐色〜淡褐色

製品により異なりますが、粉末・顆粒では褐色から淡褐色に見えます。

腰下が温まる感覚

合う方では、お腹から腰、足先に向かってじんわり温まり、重だるさが軽くなる感覚があります。

体験の流れ:乾姜の辛味を感じる → お腹と腰が内側から温まる → 下半身の冷えと水っぽい重さが動く → 尿量が整い、腰の重だるい痛みが軽くなる感覚。苓姜朮甘湯は、腰下の寒湿を温めて抜く処方です。

症状別の向き・不向き

苓姜朮甘湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、腰から下の冷え、重だるい腰痛、尿量が多い、夜尿症、冷えで悪化、温めると楽です。

腰から下が冷水に浸かったように冷える

下半身に冷えと水が停滞し、腰から足先まで冷たく重く感じる場合に向きます。

判断ポイント:腰下の冷えと水。

重だるい腰痛・腰の冷え

鋭い熱性の痛みではなく、冷えて重く、温めると楽になる腰痛で比較します。

判断ポイント:温めると軽くなる。

冷えに伴う夜尿症・尿量が多い

下焦の冷えで尿のコントロールが弱くなり、尿量が多い、夜間に尿が気になる場合に比較します。

判断ポイント:冷え+尿量が多い。

冷えと湿気が絡む神経痛

腰から下肢にかけて、冷えと湿気で神経の巡りが妨げられ、しびれや痛みが出る場合に比較します。

判断ポイント:冷えると神経痛が悪化。
×

赤く腫れて熱を持つ急性痛

熱感が強く、赤く腫れて炎症が前面に出る場合は、乾姜で温めると悪化することがあります。

判断ポイント:寒湿か、風湿熱か。
×

足腰の衰えが強い慢性腰痛・膝痛

筋力低下、足腰の衰え、長引く慢性痛が中心なら、八味地黄丸料や独活寄生丸など補う処方を比較します。

判断ポイント:寒湿を抜くだけで足りるか。

体質別の向き・不向き

苓姜朮甘湯は、陽虚に寒湿・湿痰が重なった体質に向く処方です。温めて水をさばく方向が中心なので、熱がこもる方、乾燥が強い方には合いません。

陽虚+寒湿タイプ

温める力が弱く、腰から下に冷えと湿気が停滞しているタイプです。

判断ポイント:冷えと水が痛みを作る。

湿痰・水分停滞タイプ

下半身に余分な水がたまり、重だるさ、冷え、尿量の多さが出るタイプです。

判断ポイント:腰下に水が停滞。

体力中等度以下タイプ

強く攻める処方ではなく、冷えと水に絞って整えるため、中等度以下の体力でも比較されます。

判断ポイント:シンプルに温めてさばく。
×

実熱・湿熱タイプ

患部に熱感、赤み、炎症、黄色い分泌物がある場合は、温める処方で悪化することがあります。

判断ポイント:冷えか、熱か。
×

陰虚・乾燥タイプ

ほてり、寝汗、口渇、乾燥が強い方では、乾姜・白朮でさらに乾燥や熱感が悪化することがあります。

判断ポイント:水を抜いてよいか。

効能・効果

KanpoNowの苓姜朮甘湯ページ・商品ページでは、効能・効果は次のように整理されています。

体力中等度以下で、腰から下肢に冷えと痛みがあって、尿量が多いものの次の諸症:腰痛、腰の冷え、夜尿症、神経痛

※医療用添付文書では「腰に冷えと痛みがあって、尿量が多い次の諸症:腰痛、腰の冷え、夜尿症」と記載されています。実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

苓姜朮甘湯は、腰から下の冷えと水分停滞に用いられる処方ですが、甘草を含むため、長期服用や他の漢方薬との併用では偽アルドステロン症に注意します。また、腰痛や尿トラブルには、検査が必要な病気が隠れることがあります。

腰痛・神経痛の危険サイン

足の麻痺、排尿・排便障害、発熱、外傷後の強い痛み、体重減少、夜間に強くなる痛み、血尿、背中から腰にかけての強い痛みがある場合は、整形外科・泌尿器科・内科で確認してください。

甘草による偽アルドステロン症への注意

甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意してください。

温めすぎに注意するケース

患部が赤く腫れて熱を持つ、炎症が強い、ほてりや寝汗がある、口が渇く、便秘が強いなど、熱や乾燥が前面に出る方では、乾姜で温める方向が合わないことがあります。

下半身を徹底して冷やさない

苓姜朮甘湯が合う方では、冷えが痛みと尿トラブルの中心にあります。腰、仙骨、下腹部、足首を冷やさないことが重要です。腹巻、レッグウォーマー、湯たんぽ、入浴を活用し、冷えた床や椅子に長く座らないようにします。

冷たい飲食と夕方以降の水分を見直す

氷水、冷たいビール、生野菜、果物の摂りすぎは、胃腸を冷やし、水分代謝を落とします。夕方以降の過剰な水分摂取、緑茶、アルコールは、夜間尿や冷えを悪化させることがあります。温かいものを少量ずつ摂るようにします。

相談・受診を優先したいサイン

  • 足の麻痺、力が入らない、しびれが急に強くなった
  • 排尿・排便障害がある
  • 発熱、外傷後の腰痛、強い夜間痛がある
  • 血尿、尿が出にくい、急な尿量変化がある
  • 腰痛が長引く、体重減少がある
  • 患部に熱感や赤みがある
  • むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下がある
  • 服用しても改善しない、又は悪化する
すぐ相談:苓姜朮甘湯は、腰から下の冷えと水分停滞に使う処方ですが、麻痺、排尿・排便障害、発熱、血尿、外傷後の強い痛み、急な尿量変化がある場合は医療機関を優先してください。

症状から理解を深める

苓姜朮甘湯が気になる方は、冷え、腰痛、しびれ、むくみ、下痢、症状一覧をあわせて見ると、寒湿・陽虚・水分停滞の全体像がつかみやすくなります。

腰痛や冷えに使う漢方薬でも、冷えと水が中心なのか、腎虚による足腰の衰えなのか、関節の冷え痛みなのか、全身の陽虚なのかで選び方が変わります。苓姜朮甘湯は、腰から下にたまった冷えと水を中心に考える処方です。

よくある質問

Q. 苓姜朮甘湯はどんな腰痛に向いていますか?

腰から下が冷え、重だるく、温めると楽になる腰痛に向きます。尿量が多い、夜間尿がある、冷えると神経痛が悪化する場合に比較します。

Q. 夜間頻尿にも使えますか?

効能効果として夜尿症があり、腰から下の冷えと尿量の多さがある場合に比較されます。加齢による足腰の衰えや尿漏れが中心なら、八味地黄丸料なども比較します。

Q. 八味地黄丸料との違いは何ですか?

八味地黄丸料は、腎陽虚による足腰の衰え、夜間頻尿、尿漏れ、加齢性の冷えに比較します。苓姜朮甘湯は、腰から下に冷えと水が停滞した「寒湿」の重だるい痛みを中心に見ます。

Q. 真武湯との違いは何ですか?

真武湯は、全身の陽虚が強く、冷え、下痢、めまい、ふらつき、むくみがある場合に比較します。苓姜朮甘湯は、より腰から下の冷えと水、腰痛・夜尿症に焦点が合います。

Q. 甘草の注意はありますか?

甘草を含むため、長期服用や他の漢方薬との併用では、むくみ、血圧上昇、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下に注意します。

参考・出典

苓姜朮甘湯が合うか迷った方へ

苓姜朮甘湯は、腰から下の冷え、重だるい腰痛、尿量の多さ、夜尿症、神経痛に使われる漢方薬ですが、すべての腰痛や頻尿に合うわけではありません。寒湿なのか、腎陽虚なのか、関節痛なのか、全身の陽虚なのか、熱性の炎症なのかを見極めることが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。腰痛、腰の冷え、夜尿症、神経痛、頻尿、尿量の多さは、整形外科疾患、泌尿器疾患、腎疾患、神経疾患などが関係することがあります。足の麻痺、排尿・排便障害、発熱、外傷後の強い腰痛、血尿、尿が出にくい、急な尿量変化、強い夜間痛がある場合は医療機関にご相談ください。服用後にむくみ、血圧上昇、急な体重増加、こむら返り、筋力低下、脱力感、発疹、発赤、かゆみ、胃部不快感、悪心、下痢、ほてり、口渇などがある場合は、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、心疾患、腎疾患、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。