酸棗仁(さんそうにん)とは?心身が疲れて眠れない不眠・多夢・不安動悸・寝汗に使う生薬を体質別に解説

酸棗仁(さんそうにん)は、サネブトナツメの種子を用いる、眠りを助ける代表的な生薬です。心を養って気持ちを落ち着け、汗のもれを引きしめる働き(養心安神・斂汗)から、心身が疲れているのに眠れない不眠、多夢・浅い眠り、不安・動悸、寝汗・多汗のケアに用いられてきました。「酸棗仁湯」の名のもととなる主薬で、心神不安による不眠に幅広く用いられます。KanpoNowでは、この生薬を「心を養い、気持ちを落ち着けて眠りを助ける生薬」として整理します。
- 酸棗仁(さんそうにん)はクロウメモドキ科サネブトナツメ(Ziziphus jujuba var. spinosa)の成熟種子を乾燥した生薬で、養心安神・斂汗のはたらきが知られます。心身の疲れによる不眠・多夢・不安・動悸、寝汗・多汗などに配合されます
- 主成分はサポニン(ジュジュボシド類)、フラボノイド(スピノシン等)、脂肪油などです
- 漢方では、心(心神)を養って気持ちを落ち着け(養心安神)、汗のもれを引きしめる(斂汗)働きで用いられます
- 体力が旺盛な実証タイプの不眠には向かず、体力中等度以下で心身が疲れているタイプに用いられます
酸棗仁を含む処方は、体力が旺盛な実証タイプの不眠には向きません。まれに胃部不快・軟便が出ることがあります。強い気分の落ち込みや不眠が続く、希死念慮があるなどの場合は、自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。
酸棗仁とは
酸棗仁(さんそうにん)は、クロウメモドキ科のサネブトナツメ(Ziziphus jujuba Miller var. spinosa)の成熟した種子を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。食用のナツメ(大棗)と同じ仲間ですが、酸棗仁は野生種の種子(仁)を用います。『神農本草経』の上品に「酸棗」として収載された、歴史の古い生薬です。中国では、生のまま用いると眠気をさまし、炒って用いると眠りを助けるとされ、日本では通常、眠りを助ける目的で用いられます。
漢方薬剤師の視点では、酸棗仁は代表的な「養心安神薬(心を養って気持ちを落ち着ける生薬)」です。心(心神)を養い、気持ちを落ち着け、汗のもれを引きしめます。心身が疲れて心血が不足し、精神が落ち着かないことで生じる不眠・多夢・浅い眠り、不安・動悸、寝汗・多汗に用いられます。とくに、知母・茯苓・川芎・甘草とともに酸棗仁湯を構成し、その主薬として、心身が疲れているのに目がさえて眠れない不眠に用いられます。加味帰脾湯にも配合されます。
基原・成分データ
酸棗仁の基本データを整理します。サポニンを含むこと、養心安神薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。酸棗仁は、甘く酸っぱく、偏りのない平で、心・肝に働きます。
「甘」は補い養う味、「酸」は引きしめる味とされます。心を養って気持ちを落ち着け、汗のもれを引きしめる働きと結びつきます。
「平」は温めも冷やしもしない偏りのない性質で、幅広い体質にやさしく、穏やかに用いやすい傾向です。
心を養って気持ちを落ち着け、肝を養って気の高ぶりをしずめる方向に働きます。不眠・多夢・不安・動悸・寝汗に関わります。
漢方的な働きの軸
酸棗仁の働きは、大きく三つの軸で整理できます。心を養う軸、気持ちを落ち着ける軸、汗を引きしめる軸が重なり、心身の疲れによる不眠・不安を整えます。
伝統的な使われ方
酸棗仁は古くから、養心安神・斂汗を目的に用いられてきました。心身が疲れて心血・肝血が不足し、精神が落ち着かないことで生じる不眠・多夢・浅い眠り、不安・動悸・驚きやすさ、寝汗(盗汗)・多汗などのケアに用いられてきた歴史があります。「収斂性の神経強壮・鎮静薬」と評され、神経が高ぶって眠れないタイプに広く用いられます。炒って用いると、眠りを助ける働きが高まるとされます。
知母・茯苓・川芎・甘草と組み合わせて、心身が疲れて眠れない不眠をやわらげる処方(酸棗仁湯)に配合されます。酸棗仁湯は、酸棗仁が安神の中核を担い、茯苓・知母・川芎・甘草が補助する、不眠の代表処方です。また、人参・黄耆・当帰・遠志などと組み合わせて、心脾両虚による不眠・不安・動悸を整える処方(加味帰脾湯・帰脾湯)にも配合されます。体質に応じて、茯苓・当帰・人参・知母などと組み合わせられます。
形状・味・使われ方の体感
酸棗仁は、見た目・味・使われ方に特徴があります。平たい種子が生薬になります。
平たい円盤状の種子
径5〜9mm、平たい円盤状〜卵円形の種子。表面は赤褐色〜紫褐色でつやがあります。粒がそろい、充実したものが良品とされます。
ほのかな甘みと酸味
味はほのかな甘みと酸味があります。この甘酸っぱさが、心を養い、気持ちを落ち着け、汗を引きしめる働きの中心です。
炒って砕いて煎じる
眠りを助ける目的では、炒って(炒酸棗仁)から砕いて煎じます。炒ることで安眠の働きが高まるとされ、酸棗仁湯などに配合されます。
体質別の向き・不向き
酸棗仁は心を養い気持ちを落ち着ける、穏やかな生薬です。心身の疲れによる不眠・不安があるか、逆に体力旺盛な実証でないかを見極めることが大切です。
心身が疲れて眠れない不眠
心身が疲れているのに目がさえて眠れない、多夢・浅い眠りのタイプに向きます。酸棗仁の中心的な使い道で、酸棗仁湯の主薬です。
判断ポイント:疲れているのに眠れない。不安・動悸、寝汗・多汗
神経の高ぶりによる不安・動悸・驚きやすさ、寝汗(盗汗)・多汗のケアに用いられてきました。心血・肝血の不足で候補になります。
判断ポイント:不安・動悸、寝汗が気になる。胃腸が弱く下しやすい方
脂肪油を含み、まれに胃部不快・軟便が出ることがあります。胃腸が弱く下しやすい方は、用量や配合に注意します。
判断ポイント:胃部不快・軟便が出れば調整。体力旺盛な実証タイプの不眠
心身の虚弱を補う生薬のため、体力が旺盛で、のぼせ・便秘・実熱が強い実証タイプの不眠には向きません。滑瀉(激しい下痢)のある方も慎重にします。
判断ポイント:体力旺盛・実熱の不眠には向かない。安全性と受診の目安
酸棗仁は穏やかで用いやすい生薬ですが、体力が旺盛な実証タイプの不眠には向きません。まれに胃部不快・軟便が出ることがあります。強い気分の落ち込みや不眠が長く続く、日常生活に支障がある、希死念慮があるなどの場合は、うつ病など別の病気が背景にあることもあるため、自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。妊娠・授乳中や持病・併用薬のある方は専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い気分の落ち込みが続く、眠れない状態が長引く、日常生活に支障がある、希死念慮がある
- 服薬中:胃部不快・軟便が続く、症状が改善しない/悪化する場合は中止し受診する。妊娠・授乳中、持病や他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。こころの不調がつらいときは、ひとりで抱えず、専門の窓口にご相談ください。
症状から理解を深める
酸棗仁が気になる方は、不眠、不安、多汗との関係も確認すると理解が深まります。
酸棗仁を含む漢方薬
酸棗仁は、不眠を整える処方や、心脾両虚を補う処方に配合されます。同じ酸棗仁を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 酸棗仁湯(さんそうにんとう)ではどんな役割ですか?
酸棗仁湯は、心神不安による不眠を目標とした処方で、酸棗仁が安神(気持ちを落ち着ける)の中核を担い、茯苓・知母・川芎・甘草が補助します。神経が高ぶって眠れない、多夢で熟睡できず眠りが短い、不安・寝汗が気になるような傾向に用いられます。
Q. 大棗(ナツメ)とは違うのですか?
同じナツメの仲間ですが、大棗は食用ナツメの果実、酸棗仁は野生種サネブトナツメの種子(仁)です。大棗は補い和らげる、酸棗仁は心を養い眠りを助ける点が中心で、働きが異なります。
Q. 性味・帰経は?
性味は甘・酸/平、帰経は心・肝とされます。心を養って気持ちを落ち着け、汗のもれを引きしめる働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
酸棗仁は、心を養い気持ちを落ち着けて眠りを助ける生薬ですが、不眠や不安の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い気分の落ち込みや不眠が続く、日常生活に支障がある、希死念慮があるなどの場合は、自己判断で対処せず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。体力が旺盛な実証タイプの不眠には向きません。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。