気滞(イライラ)の女性

気滞が肺・胃・大腸・肝にある方の体質改善の方法をお伝えします

著者:堀口和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)|更新日:2025-09-02

気滞とは?

気滞とは、生命エネルギーである気が充満し停滞している状態です。

気滞は、呼吸と消化、精神の機能に支障が出やすく、肺や胃、大腸、肝の臓腑に異常がある場合が多く見受けられます。ここでは、臓腑と結び付いた気滞体質の改善(養生方法)について解説します。

目次

  1. 肺気滞
  2. 胃気滞
  3. 大腸気滞
  4. 肝気滞

1. 肺気滞

胸部からのどに気の充満あるいは渋滞が生じて、呼吸機能が乱れている状態です。

ストレスを受けると心だけでなく、身体も緊張して硬くなります。肩や背中、のどから胸元などの呼吸筋が強張り、胸郭が大きく開き難くなり、呼吸は浅くなります。その結果、体内への酸素供給量が減り、心身ともに苦しくなってくるのです。

このような状態が持続すると、体内の酸欠を感知した延髄や自律神経の刺激が加わり、呼吸回数を調整します。この調整が乱れると過呼吸を起こすことがあります。

症状としては、「胸苦しい・胸がつかえる・呼吸が速く浅い・胸痛・咳・風邪引き易い」が出る場合があります。

「肺気滞体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。

腹式呼吸で深呼吸ができる身体に

腹式呼吸をすると、背筋が伸び、胸がはって、横隔膜が大きく動き、肺にたくさんの空気が入ります。これを実践していけば、全身に酸素を多く含んだ良い血液がめぐり、筋肉の緊張や凝りが取れ、さらに自律神経の機能が向上し、全身の働きも良くなります。

2. 胃気滞

上腹部に気の充満あるいは渋滞が生じて、消化機能が乱れている状態です。

胃腸のある腹部は、肋骨など骨に覆われていないので、空間的に拡がりを確保できて、さらに外部から触ることで刺激を送ることもできます。本来、胃腸は自由に動くことができて、外から胃腸の蠕動運動を応援できる構造となっています。

それが、気滞によって胃が緊張して、適時に蠕動運動が行なえなくなります。胃の捏ねる作用が適切に行なえれば、胃酸や消化酵素の分泌は必要最低限の量で収まりますが、胃酸分泌が増えると胃の粘膜を溶かし、胃炎や潰瘍を起こすのです。

症状としては、「上腹部の膨満感や痛み・食欲不振・悪心・嘔吐・胃酸過多・胸焼け・呑酸・しゃっくり」が出る場合があります。

「胃滞体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。

お腹のマッサージと腹式呼吸

お腹の「の」の字のマッサージは、胃から小腸、大腸と食べ物の流れに従って、刺激を送ることができます。また、ストレスなどで緊張したお腹を弛めるためには、腹式呼吸がお勧めです。腹筋と横隔膜を大きく動かすことで、腹部に余裕ができて、動きやすい胃腸にすることができます。

薬に頼り過ぎない

胃酸の分泌を抑える薬が開発されてから、胃潰瘍は劇的に減少しましたが、膨満感や食欲不振など胃腸の動きが低下する機能性胃腸症が増加しています。胃酸を抑えるだけでなく、胃腸の運動を改善することが必要です。

3. 大腸気滞

下腹部に気の充満あるいは渋滞が生じて、消化吸収や排便の機能が乱れている状態です。

症状としては、「腹部膨満感・腹痛・腹鳴・おなら・排便困難・裏急後重(渋り腹)」があります。

「大腸気滞体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。

食生活を乱さない

ストレスに負けないように、早めに気分転換を図り、暴飲暴食をしないようにしましょう。生活リズムを乱さないようにして、規則正しい食生活に努めましょう。

血便や激しい腹痛は注意

過敏性大腸炎は、ストレスや神経緊張などで誘発される腹痛や 下痢、便秘などの大腸の病気です。粘血便が出たり、排便後も激しい腹痛が続く場合は、炎症性腸疾患の可能性があります。このような場合は、無理をせず医療機関に相談ください。

やさしくマッサージ

仰向けになって、おなかの痛く硬いところや緊張しているところを探って、やさしくマッサージをしてみましょう。柔らかく緊張が解けるとおなかの痛みが緩和され、腸の動きが穏やかになり、排便もすっきりします。温めたり腹巻もお勧めです。

4. 肝気滞(肝気うっ結)

自律神経から視床下部に気の充満あるいは渋滞が生じて、感情や精神機能が乱れます。

症状としては、「神経質・イライラ怒りっぽい・手足の振るえ・動悸・動作不安定・のぼせ・頭汗・充血した鋭い目つき・胸や腹が張って苦しい・体のあちらこちらが痛む・不眠・寝つき悪い」などがあります。

「肝気滞体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。

気分転換をする

肝気滞では、自律神経の働きが乱れています。まずは、大脳と自律神経を仲良くさせることが大切です。それには感情を安定させることです。

人間として生きている上でのストレスや緊張、不安などでの感情の乱れは避ける事ができませんが、早めの気分転換で、悪い感情を引きずらないことです。

更年期を上手に乗り越える

更年期には女性ホルモンが大きく入れ替わり、大脳の下にある脳下垂体がフル稼働します。それによって、他のホルモンのバランスを乱し、さらに脳下垂体上部の自律神経の中枢である視床下部も影響を受けて、自律神経も乱れます。

自律神経の乱れは腹式呼吸が効果的です。朝起床前、夜就寝前にできれば毎日継続いただきたいです。

産後は目を使い過ぎない

産前産後で女性ホルモンが劇的に変動します。その際、眼の奥にある脳下垂体が非常に忙しく働きます。更年期と同様に産後は、ホルモンと自律神経の働きが大きく揺さぶられて変動します。

産後は安静にして、目を使い過ぎないようにしましょう。

腹式呼吸をしましょう

不安や焦燥感に襲われたら、腹式呼吸をしましょう。朝起床時、夜就寝前の腹式呼吸を習慣化しておけば、日中など予期不安が現れた時に、すぐに腹式呼吸ができるようになります。

美味しさがこころを満たす

こころの栄養を満たすために、本当に食べたいものを厳選してしっかりと味わうことです。栄養面はもちろんですが、見た目で選ぶことも大切です。

本当に美味しいと感じ、幸福感を得られるようにしましょう。

気滞も含め、その他の体質改善方法をまとめた記事になります。

漢方・東洋医学の「8つの体質」の改善方法を解説します

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。

執筆・監修:堀口和彦/編集:KanpoNow横山伸行

出典:やさしい漢方入門、体質で決まる漢方と養生

著者プロフィール

堀口 和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)

光和堂薬局 院長

埼玉県生まれ
東京理科大学薬学部卒
同大学院修士課程修了
総合漢方研究会 学術部員
元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員
公益法人埼玉県鍼灸師会会員
さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)
一般財団法人日本漢方連盟 会員
著書:やさしい漢方入門(健友館)、パプアニューギニアの薬草文化(アボック社)、体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐(万来舎)など

販売薬局:光和堂薬局(さいたま市西区指扇領別所326-1)・許可(さ局)第7105号。

FAQ

腹式呼吸でなくて深呼吸でもいいか?
腹式呼吸が難しいようならば、深呼吸でもOKです。深呼吸でたっぷり良い空気が体内に取り込まれるようになると、新陳代謝が上がり、各症状が緩和します。免疫力が活性化します。さらに、脳の酸欠もなくなりますので、頭がすっきりしてきます。
リンパマッサージのやり方は?
腋の下から胸、鎖骨から首筋までを手のひらで、リンパが流れるようにスライドさせるのが、お勧めのリンパマッサージです。入浴時などにゆっくりと下から上へ、のどや声帯にリンパ液がめぐっていくようにマッサージしてみてください。
休日のお勧めの過ごし方は?
休日であっても適度に運動を行うことがおすすめです。お休みモードであまり身体を動かさないと、関節やのどなどに血液やリンパ液の循環が悪くなります。運動ができない場合は、関節のストレッチや屈伸運動をするだけでも相当違います。
体質改善に向かっている目安は?

例えば、小便や大便の量が増えているようであれば、改善方向に向かっているといえます。体内の水分代謝の活性化や血行促進による疲労物質の解毒が進んでいるということです。そうなると、例えば、足のむくみ腫れや膝の痛みなどは治っていくことでしょう。

体質が改善すれば漢方薬をやめてよいか?
漢方薬の服用を終了してください。生活習慣に気を付けてお過ごしください。詳しくは、薬剤師等にご相談いただくことをお勧めいたします。
※これらは歴史的・伝統的文献に基づく一般的な情報であり、現代医学的な診断・治療を置き換えるものではありません。

体質について改めて確認されたい方は、こちらをお読みください。

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