逆流性食道炎で悩む女性

逆流性食道炎の漢方とツボを3体質別に解説します(堀口メソッド)

著者:堀口和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)|更新日:2025-09-10

説明者:堀口和彦 | インタビュー:KanpoNow 横山伸行

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逆流性食道炎に漢方は有効か?

漢方では、体質や症状に合わせて選んでいきます。今回は3つのタイプに分けてご紹介したいと思います。

湿熱体質

一番目が30代、40代に多いと思いますが、お仕事を頑張ってらっしゃる世代です。深夜遅くまで残業してその後ご飯を召し上がり、すぐ横になりお休みになるとどうなるか。

夜中や遅い時間に食べて寝るというのは、逆流性食道炎を引き起こす主な原因の一つなんです。食べたものがそのまま寝てしまうことによって、胃から食道へ上がってきてしまうのです。

加えて食べすぎ、暴飲暴食のタイプは御法度です。

胃の粘膜や胃がアルコールや食べすぎによって炎症を持ってしまいます。しかも食べすぎ、飲みすぎによって体の中に湿り気が多くなります。

漢方ではこういうタイプを「湿熱(しつねつ)」といい、湿り気の湿と炎症で熱を持った体質に当たります。この湿熱タイプの方の特徴は、チリチリしたり熱を持ち、痛みを伴う場合もあります。

ゲップが出た時に酸っぱさを感じた時は、酸が一緒に上がっている証拠です。

こういう方によく使うのが、大柴胡湯(だいさいことう)という漢方薬です。

もう一つ、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)です。このお薬は、体が疲れて胃と食道の間の筋肉が低下し締められないような状態で、特に筋肉の緊張を取りながら、胃や食道の働きを高めるような作用もあります。

気滞体質

このタイプは、いわゆるストレスから来るタイプと言っていいかと思います。漢方ではストレスを受けて症状が起こるタイプのことを「気滞(きたい)」と言います。

精神と関係する気が滞り、停滞するという意味を気滞と言います。精神的にストレスを受けると胃や食道に響いてきます。よく胃炎や胃潰瘍もストレスから起こると言われますが、これは体が緊張してくると、どうしても消化器である胃が動かなくなったり、硬くなってしまうのです。

この状態で胃に食べ物が入ってきたり、飲み物が入ってきますと、消化するため動く力がなくなっていることから胃酸をたくさん分泌します。

結果、食べ物を消化するような方向に胃は働き、胃酸が増え胃潰瘍に発展してしまうのです。夜遅い時間に食べて寝たりすれば、併せて上に上がってきて逆流性食道炎になってくるのです。

こういったのタイプで、喉にチリチリと上がってきてしまうタイプには、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)というお薬を使います。咳払いしたくなるような喉の違和感に用います。

もう一つは、胸の痛みが強いタイプには四逆散(しぎゃくさん)いうお薬があります。

これは割と緊張感が強くて手足が冷えたり、手足に汗をかいちゃうようなタイプの方で、胸の周辺が痛いようなタイプの人によく使います。

気虚体質

このタイプは、元から胃弱なタイプです。食べても太れないようなタイプで、どちらかというと胃下垂気味の傾向の方になります。

こういった方は胃が下に下がることもありますが、消化が進みにくいのです。食事後にそれらが溜まったままになりやすいのです。

そうなるとその先の小腸に進みませんので、どうしても胃に停滞している時間が長くなってしまいます。それが上に上がる機会が増えてしまう原因です。食道に逆戻りするようなイメージです。

このタイプは漢方的には「気虚(ききょ)」といいます。特に脾という内臓の機能の低下で、気虚という言い方をします。

漢方薬では、一番よく使うのは安中散(あんちゅうさん)です。胃酸を抑える作用もありまして、胃下垂を緩和する作用も見込めます。

もう1 つは六君子湯(りっくんしとう)という漢方薬です。これも胃弱の方、消化不良、あるいは食欲が低下してる方によく使います。

逆流性食道炎のツボ

陽陵泉(ようりょうせん)

まずは、食道や胃の緊張に支障がある気滞体質に有効なツボです。

足のすね、膝の下の外側にある陽陵泉(ようりょうせん)というツボです。これは胆経という経絡上にあり、胃酸を抑える作用もあります。胃酸を押さえ、胸から脇腹の緊張感を取る際もあります。

陰陵泉(いんりょうせん)

もう1つは胃弱のタイプの方、気虚タイプの逆流性食道炎に有効なツボです。

膝の内側にある陰陵泉(いんりょうせん)というツボです。これは脾経という消化吸収につがる経絡上にあります。こちらは気虚のタイプによく使います。

消化吸収あるいは、胃を上げるような作用もありますので、それによって胃の滞り、気の滞りを解消するような作用があります。

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FAQ(よくあるご質問)

逆流性食道炎の代表的な症状は?
胸やけ、酸っぱい逆流、胸の痛み、のどの違和感・咳などが代表的です。詳しくは米国国立衛生研究所NIDDKの解説をご参照ください(英語)。
参考:NIDDK: Symptoms & Causes of GER & GERD
生活習慣で気をつけることは?
就寝前3時間以内の飲食を避ける、体重管理、ベッド頭側の挙上、脂肪分の多い食事やアルコール・喫煙の回避などが推奨されます。
参考:MSDマニュアル:胃食道逆流症(GERD)
病院での治療は?
制酸薬、H2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などが用いられます。症状や合併症の有無によって内視鏡検査・外科的治療が検討されることがあります。
参考:MSDマニュアルNIDDK: GER & GERD

受診の目安・免責

  • 胸痛が強い/締め付ける/左腕・顎に放散するなど心疾患が疑われる場合
  • 吐血・黒色便、繰り返す嘔吐など
  • 生活改善や市販薬で改善しない胸やけが持続する場合等

参考:NIDDK: Definition & Facts for GER & GERDMSDマニュアル:GERD

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。持病や服薬中の方、妊娠中・授乳中の方は自己判断で服用せず、事前にご相談ください。

著者プロフィール

堀口 和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)

光和堂薬局 院長

埼玉県生まれ
東京理科大学薬学部卒
同大学院修士課程修了
総合漢方研究会 学術部員
元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員
公益法人埼玉県鍼灸師会会員
さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)
一般財団法人日本漢方連盟 会員
著書:やさしい漢方入門(健友館)、パプアニューギニアの薬草文化(アボック社)、体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐(万来舎)など

販売薬局:光和堂薬局(さいたま市西区指扇領別所326-1)・許可(さ局)第7105号。

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