
湿熱が肺・腎・肝・心・皮膚にある方の体質改善の方法をお伝えします
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著者:堀口和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)|更新日:2025-09-03
湿熱とは?
湿熱とは、生命を維持成長させる精が過剰にあり、湿と熱が停滞している状態です。
湿熱は呼吸と消化、免疫、代謝の機能に支障が出やすく、肺や脾胃、肝胆、大腸、膀胱、肺(皮膚)、三焦(関節)の臓腑や部位に異常が出る場合があります。
このページでは、各体質ごとの改善方法などを解説します。
目次
1.肺湿熱
胸部の肺や気管に湿と熱が充満して腫れや炎症を起こして、呼吸機能が乱れている状態です。
症状は、「咳・痰・粘る痰・口が苦く粘る・体がだるい・息苦しい・呼吸困難・喘息・喘鳴・胸痛」が見受けられます。
「肺湿熱体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
アレルギー体質の改善が必要
気管支炎や喘息は、アレルギー反応と自律神経の働きが関与しています。アレルギー反応によって、気管などの粘膜に炎症や腫れを引起す主な原因物質は、ヒスタミンやロイコトリエンです。食べ物によってはヒスタミンを含むものや、ロイコトリエンの原料になるものがあります。
喘息の症状が出ている時に、このようなものを多く食べると、咳や痰、喘鳴がいつまでも治らない状態を作ります。食物アレルギーと違い、ヒスタミンなどアレルギー発症の原因物質を増やすのです。食物アレルギーがある方は控えてください。
アレルギー誘発食品と言われているものは次のとおりです。
- 肉類(牛肉・鶏肉など特に鮮度の低いもの)
- 魚介類(青魚や甲殻類などで鮮度低いもの)
- ナッツ類(ピーナッツ・アーモンドなど)
- 油脂類(ラード・スナック菓子など酸化した油脂)
- その他刺激物(トウガラシ・コショウ・チョコレート・アルコール飲料)
腹式呼吸を実践
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。リラックスした状態では副交感神経が優位になり、興奮した状態では交感神経が先頭に立って働きます。また、仰臥は副交感優位で、うつ伏せは交感神経優位となります。気管は副交感神経が優位な状態で収縮するので、仰向けで心身ともにリラックスした時に、気道が狭くなり喘息発作が起こりやすいのです。
夜間睡眠の邪魔をする喘息発作は、肉体的な疲労と精神の緊張を増幅させ、病の悪循環を引き起こします。ただ発作を心配し常に身体を強ばらせ緊張していたのでは、横隔膜の動きが悪くなり、肺が閉がり、さらに呼吸が浅くなってしまいます。
腹式呼吸を実践しましょう。
喘息予防に乾布摩擦
もう一つ是非実践したい対処術は、乾布摩擦です。皮膚を刺激することは、皮膚感覚や末梢血管を刺激して、自律神経に働きかけることができます。さらに肩背部には、気管や肺に関連するツボがあり、特にこの部分を温めるような気持ちで擦ってください。
皮膚が少し赤くなるまで続けます。発作予防には就寝前と起床時がお勧めです。また、発作時も効果的です。
2.脾胃湿熱
口内から胃、小腸に湿と熱が充満して腫れや炎症を起こして、消化機能が乱れている状態です。
症状は、「腹部膨満・口が粘る・口が苦い・口内炎・体がだるい・食欲不振・悪心・嘔吐・下痢・尿が濃い・糖尿」が見受けれます。
「脾胃湿熱体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
急性胃腸炎は漢方
急性胃腸炎に半夏瀉心湯などの漢方薬を服用すると、一時的に嘔吐や下痢が強くなることがあります。これは、胃腸内に停滞する細菌やウイルスなどの毒素を、体外に素早く出して血中に毒素が吸収されないようにする作用です。
水分とともに塩分も失われていますので、必ず経口補水液を少量ずつ十分に摂取してください。水を飲んでも吐いてしまう時は、五苓散をお湯溶きして、その上澄みをお猪口一杯ずつ服用すると、吐くことなく飲水ができるようになります。
下痢や嘔吐を漢方で早めに対処して脱水状態にならないようにすることです。予防策として手洗いやうがいも大切です。また、食事にショウガやネギなどの薬味を上手に取り入れることも、急性胃腸炎の予防に役立ちます。
3.肝胆湿熱
肝臓や胆のうに湿と熱が充満して腫れや炎症を起こして、肝機能や胆汁分泌が乱れている状態です。
症状は、「腹部膨満・口が粘る・口が苦い・体がだるい・両胸脇部の張った痛み・いらいら・悪心・便秘または下痢ですっきりしない・痔・黄疸・尿濃く出難い・痛風・多汗・肥満・脂質異常(コレステロール・中性脂肪)」が見受けられます。
「肝胆湿熱体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
漢方でメタボ対策
メタボリックシンドロームは、脂肪分や糖分などの代謝異常から起こる病気の総称です。血中脂質(中性脂肪・コレステロール)と血圧、肥満、血糖の4つの因子の中で、異常が2つ以上ある場合は、動脈硬化からの心筋梗塞や脳梗塞を発症する確率が10倍高くなるといわれています。
これら4つの因子は、漢方で代謝を活性化することで改善できます。代謝を活性化するためには、発汗と排便、排尿を十分に促進させることが重要です。
有酸素運動が大切
脂肪を効率よく燃焼させるためには、有酸素運動が必要です。体内に十分な酸素を取り込みながら、苦しくない程度で、20~30分間持続しましょう。速足ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳、縄跳びなどから、日常生活に取り入れ長く継続できるものを選びましょう。
早めの水分を補給
尿酸は、プリン体の多く含む食事の影響もありますが、むしろ筋肉や肝臓など内臓組織の損傷から排出する尿酸の方が多いといわれています。過度の運動や肉体労働、さらにアルコール(ビールだけでなく焼酎やウイスキーも)は尿酸値を高めます。
尿酸は、小便と大便から排泄されます。汗が多くなり、小便が減ると、血中尿酸値は上がります。発汗の多い季節に、痛風発作が出やすい理由です。尿酸値の高い方は、発汗で小便の量や回数が減ったら、早めに水分を補給してください。
痔は食事と排便に注意
食生活を規則正しくして、便秘にならないように気を付けましょう。香辛料系刺激物とアルコールを控えましょう。痔患部を常に清潔にして、血液循環を良くするため手足を冷やさないようにしましょう。また、長時間の座り仕事では、肛門部がうっ血して、再発や悪化の原因となります。1時間に1度は椅子から立って歩きましょう。
4.大腸湿熱
大腸に湿と熱が充満して腫れや炎症を起こして、消化吸収機能が乱れている状態です。
症状は、「腹部膨満・口が粘る・口が苦い・体がだるい・腹痛・下痢してすっきりしない・裏急後重(渋り腹)・悪臭便・肛門灼熱感・便に膿や粘液や血が混じる・細菌性下痢・赤痢」が見受けられます。
「大腸湿熱体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
大腸でのアレルギー
食物に細菌やカビ菌が混じることがありますが、病原菌が体内に入り込まないように二重のガードがあります。まず胃の強力な酸で一般的な病原菌は解かされます。さらに腸では免疫細胞や抗体が外敵を攻撃して侵入を阻みます。これを腸管免疫と呼びます。
ところが炎症性腸疾患では、腸管免疫が乱れて本来外敵のみを狙うはずの抗体が、誤って自分の腸粘膜を攻撃してしまうのです。その結果、粘膜は炎症を起こし傷ついてしまうのです。
食事の注意点
憩室炎や炎症性腸疾患では、消化し難いものを食べると悪化する傾向が強いです。脂肪や動物性タンパク質、水溶性でない食物繊維などは、胃や小腸での消化と分解が困難で、大腸へ高分子のままたどり着くことがあります。
このような脂肪やタンパク質などの高分子は、抗原性が高く外敵である細菌などと勘違いされて、免疫細胞が活性化され、大腸の炎症を助長します。
食材を選んで大腸への負担を減らしましょう
- 脂肪分を少なく(鮮度が低い肉類は不可)
- 牛乳に注意(乳糖を分解したヨーグルトや乳製品は可)
- 食物線維を少なく(果物などの水溶性の食物繊維は可)
- お米を主食に(ごはんやお粥が消化によく腸の負担が少ない)
- タンパク質に注意(植物性タンパク質がお勧め)
- 灰汁のある野菜に注意(ほうれん草は灰汁抜きを)
- 嗜好品に注意(アルコール類、コーヒー、香辛料などは適量を)
5.膀胱湿熱
膀胱や尿路に湿と熱が充満して腫れや炎症を起こして、排尿機能が乱れている状態です。
症状は、「頻尿・尿意促迫・排尿痛・尿混濁・残尿感・血尿・結石」が見受けられます。
「膀胱湿熱体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
水分量は具合を見ながら
水分摂取量を増やして、膀胱や尿道の雑菌を洗い流し、炎症を鎮めることはお勧めですが、湿熱の方は体内に水分が停滞しやすい体質ですので、小便の排出量とむくみ具合を見ながら加減してください。
もち米類とギンナンは小便の出を悪くするので控えてください。また、血尿がある場合は、香辛料系刺激物やアルコール類は控えましょう。
激痛は尖った石
尿路結石とは、腎臓から尿管、膀胱、尿道までの尿の通り道にできる石のことです。家の水道管にカルシウム塩が析出し付着するように、体内でも尿路に尿中のカルシウムや尿酸が析出し結晶化して石ができます。
お酒を多飲し焼き鳥など肉類を多食すると、体内の尿酸値が高くなります。アルコールは尿を酸性にしますので、尿酸が結晶化しやすくなります。これを繰り返すと、小さな結晶がだんだん大きく成長していきます。結晶化してできた石は、サンゴのように尖っていることが多く、それが膀胱や尿管を動くのですから、激痛を発するのです。
食事に配慮
結石の種類は日頃の食生活が大きく影響しています。アルコールが多く肉食の好きな方は、尿酸結石の可能性が高いので、バランスの良い食事を心掛け、排便と排尿を滞らせないようにしましょう。特に発汗が多い時はご注意ください。
それ以外の方は、乳製品や鉱物イオンの多い硬水によるカルシウムの摂り過ぎや、ホウレン草やトマトなどシュウ酸の摂り過ぎの可能性があります。
野菜の灰汁成分であるシュウ酸は、カルシウムと結合して結晶化します。また、結石は再発率が高いので、石が流れて痛みが去っても、日頃の食生活に十分注意してください。
6.肺(皮膚)湿熱
皮膚に湿と熱が充満して腫れや炎症を起こして、発汗やバリア機能が乱れている状態です。
症状は、「蕁麻疹・痒み・水疱・膿疱・びらん・滲出」が見受けられます。
「肺(皮膚)湿熱体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
食物アレルギーと蕁麻疹
蕁麻疹は、食物や薬物アレルギーによる場合が一般的ですが、寒冷や温熱、日光(紫外線)などの外部環境の変化による刺激や、接触や引っ掻きなどの物理的な刺激で発症することもあります。
食物アレルギーを起すものは、卵や牛乳、大豆などタンパク質を含むものなら何でも反応する可能性があります。
原因の特定が難いこともありますが、反応が短時間で出ることが多いので、注意深く観察して原因を究明し、原因を除去することが必要です。
アレルギー誘発食品を控える
蕁麻疹は、免疫抗体が反応して肥満細胞を刺激して、痒みや炎症を引起すヒスタミンやロイコトリエンを大量放出します。食事によるアレルギー体質の改善が必要です。アレルギー誘発食品の摂取を控えましょう。
リンパ液の流れを促進させる
掌蹠膿疱症の原因は、慢性的な扁桃炎によってできた免疫抗体が、手足の皮膚表面にある似た抗原を誤って攻撃することにあります。のどにある扁桃と手の掌や足の裏にある皮膚の抗原には、共通性があるといわれています。
そこで、抗体と免疫細胞を手足の抗原に停滞させないように、リンパ液と血液の流れを促進することが重要です。
頚部リンパ節や腋窩リンパ節、鼠径リンパ節周辺をよく揉み解すようにマッサージします。炎症が起きているので、これらのリンパ節を圧すと痛いと思いますが、痛みが少なくなるまでゆっくりと加減しながら続けてください。
毎日継続することがお勧めです。リンパ節を刺激することで、免疫細胞の働きを正常化する作用もあります。
7.三焦(関節)湿熱
関節に湿と熱が充満して腫れや炎症を起こして、関節運動機能が乱れている状態です。
症状は、「関節炎・関節水腫・関節痛」が見受けられます。
「三焦(関節)湿熱体質」の方にお勧めの養生方法は、次のとおりです。
炎症を改善して予防
骨変性がまだ起こっていない膝関節炎は、膝蓋靭帯や十字靭帯、副側靭帯、筋腱に炎症が生じ、腫れや痛みを起こします。関節の腫れは、生体の防御反応の現れです。関節面にある軟骨や靭帯を衝撃から守るために一生懸命働いた結果が炎症や腫れなのです。
膝を休めていたわりましょう。患部の熱感が強い場合は冷やします。熱感が引いたら、徐々に血液やリンパの流れを促進させて、患部の炎症と腫れを取り除いていきます。
根本的な原因を改善する
膝関節水腫は、膝の関節腔に関節液が余分に溜まり腫脹した状態です。この関節液は、動きをスムーズにする潤滑油と軟骨を養う大切な役割を担っています。滑液包は、膝のまわりに15個程あり、靭帯や腱の摩擦を防ぎ、さらに衝撃を吸収する自動車のエアバックのような役目をしています。
膝の使い過ぎやリウマチなど免疫の異常によって刺激され、関節液や滑液包が炎症を起こし、液の分泌が促進され膨張し腫脹を引き起こします。
腫れがひどい場合は、整形外科で膝に穿刺し溜まった水を抜くことも検討します。この時点で腫れた原因をよく見出して、その原因を改善するように努めましょう。さもないと水抜きを繰り返すことになり、さらに骨の変形を進行させてしまいます。
湿熱も含め、その他の体質改善方法をまとめた記事になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。
執筆・監修:堀口和彦/編集:KanpoNow横山伸行
出典:やさしい漢方入門、体質で決まる漢方と養生
著者プロフィール
堀口 和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)
光和堂薬局 院長
埼玉県生まれ
東京理科大学薬学部卒
同大学院修士課程修了
総合漢方研究会 学術部員
元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員
公益法人埼玉県鍼灸師会会員
さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)
一般財団法人日本漢方連盟 会員
著書:やさしい漢方入門(健友館)、パプアニューギニアの薬草文化(アボック社)、体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐(万来舎)など
販売薬局:光和堂薬局(さいたま市西区指扇領別所326-1)・許可(さ局)第7105号。
FAQ
腹式呼吸でなくて深呼吸でもいいか?
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体質改善に向かっている目安は?
例えば、小便や大便の量が増えているようであれば、改善方向に向かっているといえます。体内の水分代謝の活性化や血行促進による疲労物質の解毒が進んでいるということです。そうなると、例えば、足のむくみ腫れや膝の痛みなどは治っていくことでしょう。
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