冬虫夏草(とうちゅうかそう)とは?肺腎両虚の虚弱倦怠や慢性の咳に使う生薬を体質別に解説
冬虫夏草(とうちゅうかそう)は、コウモリガ科昆虫の幼虫に寄生した菌が、虫体と一体化して作る子座を乾燥した、めずらしい生薬です。肺と腎を補う働き(補肺益腎)や、出血を止め痰をさばく働き(止血化痰)から、肺腎両虚による虚弱・倦怠感、慢性の咳・喘息などのケアに用いられてきました。冬は虫の姿で過ごし夏になると草になるとチベットで考えられたことが名前の由来とされる、不老長寿・強壮の象徴として珍重されてきた生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「肺と腎を補い、虚弱と慢性の咳を整える生薬」として整理します。
- 冬虫夏草(とうちゅうかそう)はバッカクキン科の菌(Ophiocordyceps sinensis)がコウモリガ科昆虫の幼虫に寄生し、虫体と融合してできる子座を乾燥した生薬です*①②
- 主成分はコルジセピン、多糖類(β-グルカン等)、必須アミノ酸、マンニトール、微量元素(亜鉛・鉄・マンガン等)などです*②③
- 漢方では、肺と腎を補い(補肺益腎)、出血を止め痰をさばく(止血化痰)働きで用いられます*①②
- 採取地・希少性から高値で取引され、偽物や品質のばらつきが問題となることがあります。妊娠中・授乳中の方は使用を控えてください
冬虫夏草は杜仲・淫羊藿や杏仁など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。長引く咳に血痰や高熱を伴う、著しい倦怠感が続く場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。
冬虫夏草とは
冬虫夏草(とうちゅうかそう)は、バッカクキン科の菌類(虫草菌、代表的にはOphiocordyceps sinensis)が、コウモリガ科昆虫(Hepialus armoricanus Ober.など)の幼虫に寄生し、冬の間に虫体内で菌核を形成したあと、夏に地上へ子座(キノコ状の子実体)を伸ばしたものを、虫体ごと乾燥させた生薬です。「冬は虫の姿で過ごし、夏になると草になる」とチベットで古くから考えられたことが名前の由来とされ、標高3,000〜5,000mの高原地帯で採取される希少な生薬として珍重されてきました。
漢方薬剤師の視点では、冬虫夏草は「補陽薬・補気薬(肺腎の気を補う生薬)」に分類されます。肺を滋養し腎を強める働きから、衰弱や弱った衛気の強壮に、鴨・鶏・豚などと薬膳として調理されることも多く、杜仲・淫羊藿と配合して腎陽虚に関連する腰痛や性機能低下に、杏仁などの生薬とともに慢性の咳や喘息に応用されます。希少性から高値で取引されるため、偽物や品質にばらつきのある製品が流通することもあり、購入時には注意が必要です。
基原・成分データ
冬虫夏草の基本データを整理します。虫草菌がコウモリガ科昆虫の幼虫に寄生してできる子座を用いること、コルジセピンなどの成分を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。冬虫夏草は、甘く、偏りのない性質(平)で、肺・腎に働きます。
「甘」は補い養う味とされます。肺と腎をやさしく補う働きと結びつきます。
「平」は偏りのない性質で、体を過度に温めたり冷やしたりせず、おだやかに補う方向に働きます(文献により温性とする記載もあります)。
肺に働いて陰を助け咳と闘い、腎に働いて陽を強め、虚弱・倦怠感や慢性の咳に関わります。
漢方的な働きの軸
冬虫夏草の働きは、大きく二つの軸で整理できます。肺と腎を補う軸、出血を止め痰をさばく軸が重なり、肺腎両虚・慢性の咳を整えます。
伝統的な使われ方
冬虫夏草は古くから、補肺益腎・止血化痰を目的に用いられてきました。衰弱や弱った衛気の強壮、肺腎両虚による虚弱・倦怠感、慢性の咳・喘息などのケアに用いられてきた歴史があります。冬虫夏草は肺・腎に入り、鴨・鶏・豚などと薬膳として調理されることも多いのが特徴です。
杜仲・淫羊藿などと組み合わせて、腎陽虚に関連する腰痛や性機能低下を整える目的で用いられ、杏仁などの生薬とともに慢性の咳や喘息のケアにも応用されます。希少で高価な生薬のため、健康食品としてエキス抽出物やドリンク剤の形で摂取されることも多くあります。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。
形状・味・使われ方の体感
冬虫夏草は、虫とキノコが一体化しためずらしい生薬です。
虫体と子座が一体化した形状
幼虫の虫体に、細長い棒状の子座(キノコ状の部分)が生えた、独特の形状をしています。虫体部分に栄養が多いとされます。
淡い甘みと平性
味は淡い甘みがあり、性質は平性(文献により温性とも)。体を過度に温めたり冷やしたりせず、おだやかに補う方向に働きます。
薬膳やエキス剤として使用
鴨・鶏・豚などと薬膳として調理されるほか、他の生薬と組み合わせて煎じ薬に、または健康食品のエキス剤として摂取されることも多い生薬です。
体質別の向き・不向き
冬虫夏草は肺と腎を補う生薬です。肺腎両虚・慢性の咳があるか、逆に妊娠中や品質不明な製品でないかを見極めることが大切です。
肺腎両虚・虚弱倦怠タイプ
衰弱や弱った衛気、虚弱・倦怠感がみられるタイプに向きます。冬虫夏草の中心的な使い道です。
判断ポイント:肺腎両虚による虚弱。慢性の咳・喘息タイプ
慢性の咳・喘息、痰がらみのケアに用いられてきました。
判断ポイント:肺陰を助け咳と闘う。健康食品として摂る目的のタイプ
希少性から偽物や品質のばらつきが問題となることがあるため、産地・品質表示を確認します。
判断ポイント:品質・産地表示に注意。妊娠中・授乳中のタイプ
妊娠中・授乳中の方は使用を控えてください。病気の治療で服薬中・通院中の方は医師や薬剤師と相談のうえで使用します。
判断ポイント:妊娠中・授乳中は控える。安全性と受診の目安
冬虫夏草は妊娠中・授乳中の方は使用を控えてください。病気の治療で服薬中・通院中の方は医師や薬剤師と相談のうえで使用します。長引く咳に血痰や高熱を伴う、著しい倦怠感が続く、体重減少が続くなどの症状がある場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。希少で高価な生薬のため、購入時は産地・品質表示のしっかりした製品を選ぶことも大切です。
- すぐに相談:血痰を伴う咳、高熱が続く、原因不明の著しい体重減少・倦怠感
- 服薬中:妊娠中・授乳中の方、病気の治療で服薬中・通院中の方は医師や薬剤師と相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
冬虫夏草が気になる方は、咳・喘息、だるさとの関係も確認すると理解が深まります。
冬虫夏草を含む漢方薬
冬虫夏草は、肺腎両虚・慢性の咳を整える目的で用いられる生薬です。冬虫夏草の肺と腎を補う働きが、製品の中でどう活きるかを整理しました。
※お使いの製品にどの生薬が含まれるかは、製品の添付文書・成分表示をご確認ください。処方の選択や併用については、薬剤師・登録販売者など専門家にご相談ください。
よくある質問
Q. 冬虫夏草はキノコですか、それとも虫ですか?
どちらの要素も含みます。冬の間に虫の幼虫に寄生した菌(キノコの仲間)が、夏になると地上に子座を伸ばして虫体と一体化するため、「虫」と「キノコ」が合体した生薬とされています。
Q. 偽物が多いと聞きますが、選び方は?
希少で高価な生薬のため、別の種類の虫草を偽って販売したり、金属粉や液体でかさ増しする事例が問題になることがあります。産地・品質表示がしっかりした信頼できる販売元から購入することが大切です。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
肺腎両虚による虚弱・倦怠感、慢性の咳・喘息のタイプに向きます。妊娠中・授乳中の方は使用を控え、治療中の方は医師や薬剤師と相談してください。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
冬虫夏草は、肺と腎を補い虚弱と慢性の咳を整える生薬ですが、倦怠感や咳の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。血痰を伴う咳、高熱が続く、原因不明の著しい体重減少がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。妊娠中・授乳中の方は使用を控え、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。