遠志(おんじ)

まずは要点

  • どんな生薬? 遠志(おんじ)はヒメハギ科オンジ(Polygala tenuifolia など)の根を乾燥した生薬で、安神益智・化痰開竅・祛痰止咳のはたらきが知られます。不眠・不安・動悸、物忘れ、咳・痰の改善を狙って配合されます。*①②③
  • 中身は? オリゴ糖エステル(テニュフォリウム酸、シビリコシド類)、サポニン(オンジサポニン、テニュフォリン)などを含みます。*②③
  • 注意点 体質により胃部不快・動悸増強・不眠感が出ることがあります。妊娠中は慎重に用います。強い不眠・胸痛や動悸の悪化は受診を検討します。*②④

遠志の基礎データ

  • 読み方: おんじ
  • 基原・由来: オンジ(Polygala tenuifolia Willd.)または同属近縁種の根(日本薬局方収載)。*①②
  • 主要成分: オリゴ糖エステル(テニュフォリウム酸、シビリコシド類)、サポニン(オンジサポニン、テニュフォリン)ほか。*②③
  • 性味: 苦・辛 / 微温 帰経: 心・肺・腎。*①③

伝統的な使われ方

心脾両虚・心腎不交などに伴う不眠・不安・動悸、健忘、咳・痰に用いられてきました。人参・当帰・酸棗仁等と配合して心脾を補い安神を図る(帰脾湯・加味帰脾湯)、半夏・陳皮などと併用して痰熱をさばく使い方もあります(温胆湯)。*①②③

この生薬を含む漢方薬例

安全性と受診の目安

体質や体調により胃部不快・不眠感・動悸などが出ることがあります。胸痛や失神に近い動悸、抑うつの増悪、長引く不眠などは医療機関へ。自己判断での長期連用は避けます。*②④

  • すぐ相談: 胸痛・息切れを伴う動悸、連続する強い不眠、著しい不安・抑うつ。
  • 服薬中: 持病や他剤を併用している場合は自己判断での継続・中止を避け、専門家へ。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

よくある質問

Q. 帰脾湯(きひとう)での役割は?

A. 本方は心脾両虚による不眠・不安・動悸・健忘などを目標にし、遠志は安神益智と化痰の両面を担います。*②③

Q. どんな体質・症状に向きますか?

A. 不眠・不安・物忘れ、咳・痰を伴う神経過敏などの心脾両虚〜痰熱傾向に向きます。体質に応じて人参・当帰・酸棗仁・半夏・陳皮などと組み合わせます。*①②③

*参考・出典

  1. 公益社団法人 東京生薬協会「オンジ(遠志)」
  2. ツムラ「漢方ビュー|生薬辞典:遠志」
  3. 富山大学 和漢医薬学総合研究所「伝統医薬DB:遠志」
  4. MSDマニュアル家庭版(受診目安の一般情報)

堀口和彦(漢方薬剤師) 監修:堀口 和彦(漢方薬剤師)

執筆: KanpoNow編集部

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