著者:堀口和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)|更新日:2025-08-15
はじめに
私が経営する漢方薬局兼鍼灸治療院には、女性が多く来院されます。このページでは、女性にまつわる症状に関し漢方や鍼灸の視点で解説します。少しでもセルフケアのお役に立てば幸いです。
東洋医学は女性の強い味方
漢方では原因を「気・血・水(ときに精)」の要因に分けて考えます。それぞれ、一般的に使われる基本的な漢方薬を最初にお示しします。
目次以降では、女性のお困りごと別に解説をしてまいります。よく使われる漢方薬やツボなどを参考にしてください。
「気」は精神的要因によります。例えば、イライラや落ち込みなど。
桃核承気湯~便秘が強い方に用います。
「水」は体内水分の偏りに影響を与えます。例えば、むくみ・冷え・膀胱炎など。
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目次
※東洋医学や漢方に用いる基本となる「気(き)・血(けつ)・水(すい)・精(せい)」について解説した記事です。こちらも参考にしてください。
〇PMS(月経前症候群)
多くの女性がPMS(月経前症候群)に悩んでいます。生理の1週間〜10日前から起こる身体・精神の不調が特徴です。
下腹部痛や腰痛、首肩こり、便秘、胃痛、むくみなどのほか、うつ状態・不安感・焦りなど精神面の不調が出ることもあります。
一般に生理が来ると症状は軽減・消失するため、その間を我慢して過ごす方が少なくありません。
我慢する必要はありません。
一時的とはいえ、つらい症状を我慢しなくて大丈夫。ホルモンや自律神経が関与する症状には、漢方や鍼灸など東洋医学が有効で、ホルモン剤を使わず体のバランスを整えます。
PMSには、次の漢方薬を用います。
※「おりもの」でお悩みであるならば、こちらの記事も参考にしてください。
〇子宮内膜症
激しい月経痛や過多月経、生理時以外の腰痛・下腹部痛がある場合は子宮内膜症の可能性があります。
子宮内膜の機能が子宮以外(子宮筋層や卵巣など)で起こる病態です。
剥離が子宮外で起こるため痛みが強く月経血が多くなります。卵巣や子宮外側で起こると、剥離した細胞・血液が溜まり組織と癒着することもあります(卵巣子宮内膜症:チョコレート嚢胞)。
必要に応じて手術が検討されます。
現代女性は生涯月経回数が多い
初潮から出産までの期間が長く、出産数も減ったため、閉経までの月経回数は昔より大幅に増えています。20〜30代に子宮内膜症が増えている背景の一つと考えられます。
体質に応じて次の漢方薬を用います。
芎帰膠艾湯~出血傾向があるとき
〇子宮筋腫
子宮体部にできる子宮腺筋症は30〜40代に多く、子宮筋腫を合併することもあります。過多月経により慢性貧血を起こすことがあります。
漢方では、子宮に滞った古い血を取り除くため、まず全身の血流を促します。
桃核承気湯~便秘がある場合
鍼灸や指圧で血流を阻害するコリを取り除きます。骨盤周りのうっ血が原因となることが多く、骨盤内循環の改善がポイントです。
目安として、筋腫が手拳以下なら漢方を強くお勧めします。
進行防止・縮小が見込め、過多月経・下腹部痛・不正出血・貧血などの軽減が期待できます。
手術を選択する場合でも、体質の立て直しや術後ののぼせ・冷え・肩こりの改善に漢方・鍼灸は有用です。
〇更年期障害
40〜50代、閉経を前後して起こる多彩な症状を指します。
ホットフラッシュ(上半身ののぼせ・発汗)、肩こり、頭痛、めまい・ふらつき、動悸・胸痛、足の冷え、膀胱炎傾向、落ち込み・イライラ、不眠など。
更年期には女性ホルモンが大きく変動します。
分泌を調整する脳下垂体と、自律神経を調整する視床下部は隣接し連携しているため、ホルモンの変動が自律神経にも波及し、症状が生じます。
ホットフラッシュには、次の漢方薬を用います。
〇微小血管狭心症
更年期にみられる胸痛・動悸の一因です。
冠動脈以外の細い血管が一時的に痙攣して狭くなり、心筋が一時的虚血となって胸痛・動悸を生じます。
エストロゲン低下と自律神経の乱れが関与します。
次の漢方薬が候補になります。
ツボで心臓を刺激
胸部〜腕内側には心包経が走行し冠動脈に関連します。
腋下〜腕内側の心経は心拍のリズムを調節する自律神経に関連。
鍼灸では心兪(しんゆ)(背部)や郄門(げきもん)(前腕内側)を用います。
〇東洋医学は女性の味方
ホルモンの働きを正常に保つにはバランスが大切です。東洋医学は常にバランスを重視します。
更年期特有の不定愁訴は心身が一体となって現れるため、「心身一如」の考えに基づき全体を整えます。
桂枝茯苓丸~血行を促し冷えのぼせを軽減し、ホルモンと自律神経の調和へ
半夏厚朴湯~微小血管狭心症に
〇不妊
避妊せず夫婦生活を営んでも1年以上妊娠しない場合を不妊症とします。
女性の原因にはホルモン・自律神経の乱れによる生理不順・無排卵、卵管通過障害、子宮筋腫・内膜症など。
男性の原因には精子減少症、精子無力症、勃起不全、膣内射精障害などがあります。近年の調査では原因の約半数に男性側が関与します。
協力して解決しよう!
漢方・鍼灸の知恵を活用し、現代の不妊に向き合います。子宮は大地の畑のように、着床・育成には適度な温もりと栄養が必要なのです。
漢方では女性不妊の主な体質を、血瘀体質・血虚体質・気滞体質と捉えます。
血瘀体質:
桂枝茯苓丸~肩こり・眼精疲労があれば
桃核承気湯~便秘があれば
血虚体質:
当帰芍薬散~腰から下の冷えが強い
温経湯~手足のほてり
気滞体質:
加味逍遙散~ストレス・緊張
※ストレスや緊張感によって、よくイライラすることはありませんか?もしそのようなことが起こる場合は、こちらの記事も参考になるかと思います。
〇妊娠・出産・産後
つわり対策で用いる漢方をご案内します。
半夏厚朴湯~気持ち悪さ・吐き気
半夏瀉心湯~むかむかして食べられない
乾姜半夏人参丸~嘔吐がひどい
五苓散~水も吐いてしまう(お湯溶きの上澄みを少量ずつ)
ツボ療法も有効。
即効指圧は足裏の裏内庭。妊娠5ヵ月(16週)以降は安産のツボ三陰交にお灸を。
安産の名薬といえばこちら。古くから用いられてきました。
産後はの汁分泌不全・乳房痛にはこちら。
乳腺炎予防にはこちらをもいます。
出産に向けて
妊娠後期は腰痛・こむら返り・むくみ等が増えます。安産体操や指圧で骨盤周りをほぐしましょう。
便秘は食事・運動で改善し、難しい場合は安全な漢方の便秘薬も検討します。
産後の体力回復には約3週間が目安。
この時期はホルモンの再調節も行われます。無理せず休養を優先し、母乳は回復にも有利に働きます。
産後に用いる漢方薬はこちら。
※産後のダイエットに漢方を利用したいという声も多く寄せられています。よろしければ、この記事も参考にしてください。
〇冷え症・貧血・低血圧
漢方では、これらの病症を次の4タイプに分けて考えます。
1 婦人科の働きの悪いタイプ
※「おりもの」でお悩みであるならば、こちらの記事も参考にしてください。
2 胃腸虚弱なタイプ
胃下垂・過敏・冷えなどで下痢しやすく、疲れやすい方はこちら。胃腸の働きを助け、新陳代謝を高めます。
3 血液成分が薄く全体に気力不足のタイプ
だるさ・発熱しやすい方はこちら。血を補い、全身の気を巡らせます。
4 腎が弱く水滞があるタイプ
夜間頻尿、腰〜下肢の冷えなどがある方はこちら。体の芯から温めます。
※あなたがもし、「おりもの」でお悩みであるならばこちらの記事も参考にしてください。
受診と相談の目安
強い痛み・大量出血・発熱・急な貧血、しこりや腫れなどがある場合は、迷わず医療機関を受診してください。
漢方・鍼灸は、病院の治療と併走しつつ体質面を立て直すための選択肢です。
どうぞお身体をご自愛いただきますようお願い申し上げます。
※本稿は一般的な情報であり、診断や治療に代わるものではありません。具体的な処方や併用は、必ず専門家にご相談ください。
出典:やさしい漢方入門、体質で決まる漢方と養生
執筆・監修:堀口和彦/編集:KanpoNow横山伸行
著者プロフィール
〇FAQ(よくあるご質問)
漢方薬はどれくらいで効きますか?
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病院の漢方薬との違いは?
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