天麻(てんま)とは?めまいや頭痛頭重、ひきつけやしびれに使う生薬を体質別に解説
天麻(てんま)は、ラン科オニノヤガラの塊茎を乾燥した生薬です。上昇した肝の陽気を抑える働き(平抑肝陽)、風を鎮めひきつけを止める働き(熄風止痙)、風を除き経絡の通りをよくして痛みを止める働き(祛風通絡・止痛)から、めまい・頭痛頭重、ひきつけ・振戦、しびれ・関節痛などのケアに用いられてきました。葉緑素をもたずナラタケの菌と共生して育つ、めずらしい生態をもつ生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「上昇した気とひきつけを鎮め、風によるしびれを整える生薬」として整理します。
- 天麻(てんま)はラン科オニノヤガラ(Gastrodia elata Blume)の塊茎の外皮を除き湯通しして乾燥した生薬です*①②
- 主成分はガストロジン、バニリルアルコール、パリシンなどです*①③
- 漢方では、上昇した肝の陽気を抑え(平抑肝陽)、風を鎮めひきつけを止め(熄風止痙)、風を除き経絡の通りをよくして痛みを止める(祛風通絡・止痛)働きで用いられます*①②③
- 燥・潤に偏らないおだやかな性質で使いやすいとされますが、体質や体調によりまれに胃部不快が出ることがあります
天麻は半夏・白朮・茯苓など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。突然の激しい頭痛や意識障害、片側の麻痺がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。
天麻とは
天麻(てんま)は、ラン科の腐生ラン、オニノヤガラ(Gastrodia elata Blume)の塊茎の外皮を除き、湯通ししてから乾燥させた生薬です。『神農本草経』の上品に「赤箭(せきせん)」の名で収載され、後に『開宝本草』で「天麻」の名で記載されました。雑木林に生え、ナラタケの菌糸と共生して栄養をつくるため葉緑素をもたない、めずらしい生態をもつ植物です。茎が黄赤色で背丈1mほどに直立し、赤っぽい棒状の姿を鬼の矢に例えて「鬼の矢柄(オニノヤガラ)」と呼ばれています。
漢方薬剤師の視点では、天麻は「平肝熄風薬(上昇した肝の気を鎮め、風を止める生薬)」に分類されます。肝風内動による驚癇・痙攣、めまい、頭痛、四肢の麻痺・不随、風湿痺痛などに応用されます。天麻は肺経に入り水道と血をおだやかに整えるため風木を制する上薬とされ、燥・潤どちらにも偏らない使いやすさが特徴です。半夏・白朮などと配合してめまいという内風を鎮め(半夏白朮天麻湯)、鈎藤と配合して振戦やめまいを和らげます(天麻鈎藤飲)。
基原・成分データ
天麻の基本データを整理します。オニノヤガラの塊茎を用いること、ガストロジンなどの成分を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。天麻は、甘く、偏りのない性質(平)で、肝に働きます。
「甘」はやわらげ鎮める味とされます。上昇した肝の気をおだやかに鎮め、ひきつけをしずめる働きと結びつきます。
「平」は偏りのない性質で、燥・潤どちらにも傾かず、おだやかに風を鎮める方向に働きます。
肝に働いて上昇した気を鎮め、風によるめまい・ひきつけ・しびれに関わります。
漢方的な働きの軸
天麻の働きは、大きく三つの軸で整理できます。上昇した肝の陽気を抑える軸、風を鎮めひきつけを止める軸、風を除き痛みを止める軸が重なり、めまい・ひきつけ・しびれを整えます。
伝統的な使われ方
天麻は古くから、平抑肝陽・熄風止痙・祛風通絡止痛を目的に用いられてきました。肝風内動による驚癇・痙攣、めまい、頭痛頭重、四肢の麻痺・不随、風湿痺痛などのケアに用いられてきた歴史があります。天麻は肝に入り、燥・潤どちらにも偏らないおだやかな性質のため、使いやすい熄風薬として知られています。
半夏・白朮・茯苓などと組み合わせて、胃腸が弱く下肢が冷えるタイプのめまい・頭痛・頭重を整える処方(半夏白朮天麻湯)、鈎藤と組み合わせて振戦やめまいを和らげる処方(天麻鈎藤飲)に配合されます。このほか、小児の驚癇を整える定癇丸、経絡の通りをよくする大活絡丹などにも用いられます。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。
形状・味・使われ方の体感
天麻は、オニノヤガラの塊茎ならではの特徴をもつ生薬です。
扁平で楕円形の塊茎
長径10cmほどの扁平で楕円形の塊茎です。中国雲南省昭通産のものが良品とされ、日本各地や台湾にも自生します。
甘みがあり平性
味は甘みがあり、性質は平性。燥・潤どちらにも偏らず、おだやかに気を鎮める方向に働きます。
他の生薬と組み合わせて使用
半夏・白朮・茯苓・鈎藤など、他の生薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。
体質別の向き・不向き
天麻は上昇した気とひきつけを鎮める生薬です。めまい・ひきつけ・しびれがあるか、逆に急性の重い神経症状でないかを見極めることが大切です。
めまい・頭痛頭重タイプ
胃腸が弱く下肢が冷えるタイプのめまい・頭痛頭重・立ちくらみがみられるタイプに向きます。天麻の中心的な使い道です。
判断ポイント:胃腸虚弱によるめまい・頭重。ひきつけ・振戦タイプ
ふるえ・痙攣、小児の驚癇のケアに用いられてきました。
判断ポイント:内風によるひきつけ。風湿痺痛・しびれタイプ
四肢のしびれ・関節痛には、他の生薬と組み合わせて用います。
判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。急性の重い神経症状タイプ
突然の激しい頭痛、意識障害、片側の麻痺がある場合は自己判断で対処せず、直ちに受診してください。
判断ポイント:緊急受診が必要。安全性と受診の目安
天麻は処方の中で用いられる平肝熄風薬ですが、体質や体調によりまれに胃部不快が出ることがあります。突然の激しい頭痛、意識障害、片側の麻痺・言語障害、持続するひきつけ・痙攣がある場合は、自己判断で対処せず直ちに受診してください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。
- すぐに相談:突然の激しい頭痛、意識障害、片側の麻痺・言語障害、持続するひきつけ
- 服薬中:症状が改善しない・悪化する場合は受診する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
天麻が気になる方は、めまい、頭痛、しびれとの関係も確認すると理解が深まります。
天麻を含む漢方薬
天麻は、めまい・ひきつけ・しびれを整える処方に配合されます。天麻の上昇した気とひきつけを鎮める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 半夏白朮天麻湯とはどんな処方ですか?
半夏・白朮・茯苓・天麻・黄耆・沢瀉・人参などからなる処方で、体力中等度以下で胃腸が弱く下肢が冷える方の頭痛・頭重・立ちくらみ・めまいに用いられます。天麻はめまいという内風を鎮める熄風薬として配合されています。
Q. 釣藤鈎との違いは?
どちらも平肝熄風に働きますが、釣藤鈎はやや涼性で上衝によるのぼせ・頭痛を冷ましながら鎮めるのに対し、天麻は平性でめまい・ひきつけ・しびれなど風によるさまざまな症状に幅広く使いやすいのが特徴です。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
胃腸虚弱によるめまい・頭痛頭重、ひきつけ・振戦、風湿によるしびれ・関節痛のタイプに向きます。突然の激しい神経症状がある場合は受診を優先してください。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
天麻は、上昇した気とひきつけを鎮め風によるしびれを整える生薬ですが、めまいや頭痛の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

あなたに合う漢方薬を確認しませんか?
KanpoNowでは、症状と体質をもとに、あなたに合った漢方薬の候補をAIが提案します。漢方薬剤師・堀口和彦先生の理論に基づき、AIがあなたの体質を判定します。【AI漢方診断】をご利用ください。
AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。突然の激しい頭痛、意識障害、片側の麻痺がある場合は、直ちに医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。