阿仙薬(あせんやく)とは?下痢や種々の出血、口腔内の荒れに使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月13日 監修:堀口和彦

阿仙薬(あせんやく)は、ガンビールノキの葉と若枝を煮出して得たエキスを乾燥した生薬です。下痢と出血を止める働き(止瀉止血)、痰をさばき組織の修復を助ける働き(化痰生肌)から、下痢、種々の出血、口腔内の荒れなどのケアに用いられてきました。マレー半島などで古くから嗜好品としても親しまれてきた、強い収斂性をもつ生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「渋みで漏れを引き締め、下痢と出血を鎮める生薬」として整理します。

まずは要点
  • 阿仙薬(あせんやく)はアカネ科ガンビールノキ(Uncaria gambir Roxb.)の葉および若枝を水で煮て得た抽出液を乾燥させたもので、別名を児茶(じちゃ)といいます*①②
  • 主成分はカテキンなどのタンニン、ケルセチン、アルカロイドのガンビリンなどです*③
  • 漢方では、下痢と出血を止め(止瀉止血)、痰をさばき組織の修復を助ける(化痰生肌)働きで用いられます*①②③
  • 強い収斂性があり、口に入れると苦くて渋みがあります。自己判断での長期連用・過量は避けてください

阿仙薬は他の収斂薬・止瀉薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。血便・黒色便、高熱を伴う下痢、大量出血がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。

阿仙薬とは

阿仙薬(あせんやく)は、アカネ科ガンビールノキ(Uncaria gambir Roxburgh)の葉および若枝を水で煮て製した乾燥水性エキスです。灌木状のつる性常緑低木で、同じ科の日本にも自生するカギカズラ(釣藤鈎の基原植物)とよく似た、特有のトゲをもつ植物です。別名を児茶(じちゃ)、方児茶(ほうじちゃ)、孩児茶(がいじちゃ)ともいいます。マレーシアの現地名「ガンビール」の名でも知られ、主な栽培地はマレー半島南部・スマトラ・ボルネオです。葉のついたままの小枝を撹拌しながら煮沸し、浸出液を煮詰めてよく練りながら冷やすと黄褐色になり、粘りが出て粘土状の塊となります。この塊をサイコロ状にカットしたものが薬用として用いられ、Cube Gambirとも呼ばれます。

漢方薬剤師の視点では、阿仙薬は「収斂薬(体液の漏出を防ぐ生薬)」に分類されます。渋いクスリ=収斂剤の代表的なもののひとつで、主成分は渋いタンニンです。止瀉・止血・化痰の効能があり、種々の出血や下痢、口腔清涼剤などに用いられてきました。マレー人は古来、ガンビールを水で練り、石灰を加えてビンロウジに塗布し、キンマの葉で包んだものを嗜好品として咀嚼する習慣(ベテルチューイング)があり、口内清涼剤としても親しまれてきました。

ポイント:阿仙薬は「渋みで漏れを引き締め、下痢と出血を鎮める」生薬です。下痢、種々の出血、口腔内の荒れが気になるタイプに用いられてきました。マレー半島などで古くから嗜好品としても親しまれてきた、強い収斂性をもつ生薬なのが特徴です。

基原・成分データ

阿仙薬の基本データを整理します。ガンビールノキの葉・若枝の水性エキスを用いること、タンニンを豊富に含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

阿仙薬の基礎データ
ガンビールノキの葉・若枝を煮出したエキスを乾燥した生薬。渋みで漏れを引き締め、下痢と出血を鎮める働きがあります。
読み アセンヤク(ガンビールノキの水性エキスを用いる生薬、別名:児茶)
基原・由来 アカネ科ガンビールノキ(Uncaria gambir Roxb.)の葉および若枝を水で煮て得た抽出液を乾燥させたもの *①②
主成分 カテキンなどのタンニン、ケルセチン、アルカロイドのガンビリンなど *③

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。阿仙薬は、苦く渋く、やや冷やす性質(涼)で、肺・大腸に働きます。

味(五味)

「苦・渋」は収斂し漏出を防ぐ味とされます。渋みで漏れを引き締め、下痢と出血を鎮める働きと結びつきます。

性(四気)

「涼」は冷やす性質で、出血や口腔内の荒れをおだやかに冷ましながらさばく方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)
大腸

肺に働いて痰・口腔内の荒れを、大腸に働いて下痢に関わります。

漢方的な働きの軸

阿仙薬の働きは、大きく二つの軸で整理できます。下痢と出血を止める軸、痰をさばき組織の修復を助ける軸が重なり、下痢・出血・口腔内の荒れを整えます。

下痢と出血を止める軸 止瀉止血 強い収斂性により、下痢や種々の出血をやわらげる方向に働きます。
痰をさばき組織の修復を助ける軸 化痰生肌 痰をさばき組織の修復を助けて、口腔内の荒れをやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:阿仙薬は「渋みで漏れを引き締め、下痢と出血を鎮める」生薬です。下痢、種々の出血、口腔内の荒れのタイプに輪郭がはっきりします。マレー半島などで古くから嗜好品としても親しまれてきたのが持ち味です。

伝統的な使われ方

阿仙薬は古くから、止瀉止血・化痰生肌を目的に用いられてきました。種々の出血や下痢、口腔清涼剤などのケアに用いられてきた歴史があります。阿仙薬は肺・大腸に入り、渋いクスリ=収斂剤の代表的なもののひとつとして知られています。

他の収斂薬・止瀉薬と組み合わせて、下痢・出血傾向を整える処方に配合されることが伝えられています。また、東南アジア・台湾などでは葉を茶の代用としたり、ガンビールと椰子をキンマの葉でくるんで咀嚼する習慣(口内清涼剤)としても親しまれてきました。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

阿仙薬は、ガンビールノキの水性エキスならではの特徴をもつ生薬です。

粘土状に固めた黄褐色の塊

葉のついたままの小枝を撹拌しながら煮沸し、浸出液を煮詰めてよく練りながら冷やすと黄褐色の粘土状の塊となります。これをサイコロ状にカットしたものが薬用として流通します。

強い苦みと渋みで涼性

口に入れると苦くて渋みがあり、性質は涼性。強い収斂性が特徴で、出血や下痢をおだやかに鎮める方向に働きます。

煎じて服用または口中清涼剤として使用

水で長時間煎じて服用するほか、口内清涼剤として用いられる伝統的な使い方もあります。他の生薬と組み合わせて用いられることも多いです。

体質別の向き・不向き

阿仙薬は渋みで漏れを引き締め下痢と出血を鎮める生薬です。下痢・出血傾向があるか、逆に便秘傾向や熱証の強いタイプでないかを見極めることが大切です。

下痢タイプ

下痢がみられるタイプに向きます。阿仙薬の中心的な使い道です。

判断ポイント:止瀉の働き。

種々の出血タイプ

種々の出血のケアに用いられてきました。

判断ポイント:止血の働き。

口腔内の荒れタイプ

口腔内の荒れには、口内清涼剤としての使い方が伝えられています。

判断ポイント:化痰生肌の働き。
×

便秘傾向のタイプ

強い収斂性があるため、便秘傾向のある方は自己判断での長期連用を避けてください。

判断ポイント:便秘傾向には注意。

安全性と受診の目安

阿仙薬は処方の中で用いられる収斂薬ですが、強い収斂性があり、口に入れると苦くて渋みがあります。自己判断での長期連用・過量は避けてください。血便・黒色便、高熱を伴う下痢、大量出血がある場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。小児・高齢者、基礎疾患や他剤併用がある場合は事前に専門家へ確認してください。

  • すぐに相談:血便・黒色便、高熱を伴う下痢、大量出血
  • 服薬中:症状が改善しない、悪化する場合は受診する
すぐ相談:血便・黒色便、高熱を伴う下痢、大量出血がある場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

阿仙薬が気になる方は、咳・喘息との関係も確認すると理解が深まります。

阿仙薬を含む漢方薬

阿仙薬は、下痢・出血傾向を整える処方に配合されることが伝えられています。阿仙薬の渋みで漏れを引き締める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

響声破笛丸(きょうせいはてきがん)

阿仙薬は他の収斂薬・止瀉薬と組み合わせて、下痢・出血傾向を整える処方に配合されることが伝えられています。

※お使いの製品にどの生薬が含まれるかは、製品の添付文書・成分表示をご確認ください。処方の選択や併用については、薬剤師・登録販売者など専門家にご相談ください。

よくある質問

Q. 「ガンビール」とはどういう意味ですか?

ガンビールはマレーシアの現地名で、主な栽培地はマレー半島南部・スマトラ・ボルネオです。マレー人は古来、ガンビールを水で練り、石灰を加えてビンロウジに塗布し、キンマの葉で包んだものを嗜好品として咀嚼する習慣(ベテルチューイング)があります。

Q. 児茶(じちゃ)と阿仙薬は同じものですか?

はい、阿仙薬は別名を児茶(じちゃ)、方児茶、孩児茶ともいいます。中国ではマメ科のアセンヤクノキから作るものもあり、ペグ阿仙薬・孩児茶などと呼ばれ、区別されることがあります。

Q. どんな体質・症状に向きますか?

下痢、種々の出血、口腔内の荒れなどに向きます。強い収斂性があるため、便秘傾向のある方は自己判断での長期連用を避けてください。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

阿仙薬は、渋みで漏れを引き締め下痢と出血を鎮める生薬ですが、下痢や出血の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。血便・黒色便、高熱を伴う下痢、大量出血がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。