丁子(ちょうじ)とは?胃寒のしゃっくりや嘔吐、冷え、歯痛に使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月12日 監修:堀口和彦
丁子(ちょうじ)

丁子(ちょうじ)は、チョウジの花蕾を乾燥した生薬です。胃を温め逆流した気を降ろす働き(温中降逆)、腎の陽気を温め助ける働き(温腎助陽)、痛みを止める働き(止痛)から、胃寒によるしゃっくり・嘔吐、冷えによる症状、歯痛などのケアに用いられてきました。西洋ではクローブと呼ばれ、香辛料としても身近な、香り高い生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「胃と体を温め、しゃっくりと痛みを鎮める生薬」として整理します。

まずは要点
  • 丁子(ちょうじ)はフトモモ科チョウジ(Syzygium aromaticum)の花蕾を乾燥した生薬です*①②④
  • 主成分は精油(eugenol、acetyleugenol等)、β-カリオフィレン、タンニン(eugeniin等)です*①②③
  • 漢方では、胃を温め逆流した気を降ろし(温中降逆)、腎の陽気を温め助け(温腎助陽)、痛みを止める(止痛)働きで用いられます*①②③④
  • 子宮収縮作用の報告があるため妊娠中は慎重に用います。熱証・口渇・便秘が強い場合や胃炎傾向では適さないことがあります

丁子は柿蒂・生姜など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。激しい腹痛・吐血やコーヒー残渣様の嘔吐、妊娠中の腹痛、歯痛の強い腫脹・発熱を伴う場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。

丁子とは

丁子(ちょうじ)は、フトモモ科チョウジ(Syzygium aromaticum、別名Eugenia caryophyllata)の花蕾を乾燥させた生薬です。インドネシアのモルッカ諸島原産で、西洋では「クローブ」と呼ばれ、香辛料や香料としても広く親しまれています。蕾の形が釘に似ることから、中国で「丁」の字があてられ、日本でも「丁子」の名がつけられました。宋代の『開宝本草』には「丁香」の名で収載されています。

漢方薬剤師の視点では、丁子は「温裏薬(体の内側を温める生薬)」に分類されます。胃寒によるしゃっくり・嘔吐・食欲不振に温中降逆として、冷え症状の補助に温腎助陽として、歯痛や上腹部痛に止痛として応用されます。柿蒂湯・丁香柿蒂湯などに配合され、打撲痛やうっ血に用いる丸剤で桂皮と併用されることもあります。精油主成分のオイゲノールには局所麻酔・鎮痛・抗菌性があり、歯科領域でも古くから用いられてきました。

ポイント:丁子は「胃と体を温め、しゃっくりと痛みを鎮める」生薬です。胃寒によるしゃっくり・嘔吐、冷えによる症状、歯痛が気になるタイプに用いられてきました。クローブとして香辛料にも使われる、香り高い生薬なのが特徴です。

基原・成分データ

丁子の基本データを整理します。チョウジの花蕾を用いること、オイゲノールなどの精油成分を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

丁子(チョウジ)の生薬
丁子の基礎データ
チョウジの花蕾を乾燥した生薬。胃と体を温め、しゃっくりと痛みを鎮める働きがあります。
読み チョウジ(チョウジの花蕾を用いる生薬)
基原・由来 フトモモ科チョウジ(Syzygium aromaticum = Eugenia caryophyllata)の花蕾 *①②④
主成分 精油(eugenol、acetyleugenol等)、β-カリオフィレン、タンニン(eugeniin等) *①②③

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。丁子は、辛く、温める性質で、脾・胃・腎に働きます。

味(五味)

「辛」は発散させ温める味とされます。胃を温め逆流した気を降ろし、痛みを止める働きと結びつきます。

性(四気)

「温」は温める性質で、胃寒によるしゃっくり・嘔吐や、冷えによる症状を、あたためてやわらげる方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)

脾・胃に働いて胃寒によるしゃっくり・嘔吐を、腎に働いて冷え症状の補助に関わります。

漢方的な働きの軸

丁子の働きは、大きく三つの軸で整理できます。胃を温め気を降ろす軸、腎の陽気を助ける軸、痛みを止める軸が重なり、しゃっくり・冷え・痛みを整えます。

胃を温め気を降ろす軸 温中降逆 胃寒を温めて逆流した気を降ろし、しゃっくり・嘔吐・食欲不振をやわらげる方向に働きます。
腎の陽気を助ける軸 温腎助陽 腎の陽気を温め助けて、冷え症状の補助をやわらげる方向に働きます。
痛みを止める軸 止痛 局所麻酔・鎮痛の力で、歯痛や上腹部痛、打撲痛をやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:丁子は「胃と体を温め、しゃっくりと痛みを鎮める」生薬です。胃寒によるしゃっくり・嘔吐、冷えによる症状、歯痛のタイプに輪郭がはっきりします。クローブとして香辛料にも使われる香り高さが持ち味です。

伝統的な使われ方

丁子は古くから、温中降逆・温腎助陽・止痛を目的に用いられてきました。胃寒によるしゃっくり・嘔吐・食欲不振、冷え症状の補助、歯痛や上腹部痛などのケアに用いられてきた歴史があります。丁子は脾・胃・腎に入り、精油主成分のオイゲノールによる局所麻酔・鎮痛・抗菌の力が特徴です。

柿蒂・生姜などと組み合わせて、胃寒によるしゃっくりを整える処方(柿蒂湯・丁香柿蒂湯)に配合されます。また、のぼせ・めまい・いらいらなどを整える処方(女神散)にも用いられます。桂皮と併用して打撲痛やうっ血を整える丸剤にも配合されることがあります。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

丁子は、釘に似た形の花蕾ならではの特徴をもつ生薬です。

釘に似た花蕾

乾燥させた花蕾は釘に似た形で、錆びた古釘のような色をしています。この形から「丁子」の名がつけられました。

強い芳香と辛み

クローブとして親しまれる強い芳香があり、味は辛みが中心です。温性で、胃と体を内側からあたためる方向に働きます。

他の生薬と組み合わせて使用

柿蒂・生姜・桂皮など、他の生薬と組み合わせて煎じ薬や丸剤に配合されるのが一般的です。

体質別の向き・不向き

丁子は胃と体を温める生薬です。胃寒によるしゃっくり・冷えがあるか、逆に熱証・妊娠中で自己判断が難しくないかを見極めることが大切です。

胃寒のしゃっくり・嘔吐タイプ

胃寒によるしゃっくり・嘔吐・食欲不振がみられるタイプに向きます。丁子の中心的な使い道です。

判断ポイント:胃寒によるしゃっくり・嘔吐。

冷えによる症状タイプ

冷え症状の補助や歯痛・上腹部痛のケアに用いられてきました。

判断ポイント:温腎助陽・止痛の働き。

打撲痛・うっ血タイプ

打撲痛やうっ血には桂皮と併用する丸剤として用いられます。

判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。
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熱証・妊娠中のタイプ

子宮収縮作用の報告があるため妊娠中は慎重に。熱証・口渇・便秘が強い場合や胃炎傾向では適さないことがあります。

判断ポイント:妊娠中・熱証は慎重に。

安全性と受診の目安

丁子は処方の中で用いられる温裏薬ですが、子宮収縮作用の報告があるため妊娠中は慎重に用います。熱証・口渇・便秘が強い場合や胃炎傾向では適さないことがあります。精油の過量は胃腸刺激を生じ得るため、用法・用量を守ります。激しい腹痛・吐血やコーヒー残渣様の嘔吐、妊娠中の腹痛、歯痛の強い腫脹・発熱を伴う場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。

  • すぐに相談:高熱が続く、持続する激痛、強い出血、意識障害
  • 服薬中:症状が改善しない・悪化する、胃部不快・悪心が強い場合は中止し受診する
すぐ相談:高熱が続く、持続する激痛、強い出血、意識障害がある場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

丁子が気になる方は、冷え、食欲不振との関係も確認すると理解が深まります。

丁子を含む漢方薬

丁子は、胃寒のしゃっくり・冷え・痛みを整える処方に配合されます。丁子の胃と体を温める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

よくある質問

Q. 歯痛に使えますか?

丁子の精油主成分オイゲノールには局所麻酔・鎮痛・抗菌性があり、歯科領域で古くから用いられてきました。急性の強い腫れや発熱を伴う歯痛は必ず受診してください。

Q. 縮砂(しゅくしゃ)との違いは?

いずれも温中・健胃に使いますが、丁子は降逆(しゃっくり・嘔吐)により重点があり、縮砂は理気・止嘔と妊娠期のつわりなどに応用され、体質や症状で使い分けられます。

Q. どんな体質・症状に向きますか?

胃寒によるしゃっくり・嘔吐・食欲不振、冷え症状の補助、歯痛や上腹部痛のタイプに向きます。熱証・口渇・便秘が強い場合や妊娠中は慎重に用います。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

丁子は、胃と体を温めしゃっくりと痛みを鎮める生薬ですが、しゃっくりや冷えの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。激しい腹痛・吐血やコーヒー残渣様の嘔吐、妊娠中の腹痛がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。妊娠中の方は慎重に用い、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。