土鼈甲(どべっこう)とは?骨蒸発熱や寝汗、腹腔内のしこりに使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月11日 監修:堀口和彦
土鼈甲(どべっこう)

土鼈甲(どべっこう)は、スッポンの背甲(背中側の甲羅)を乾燥した生薬です。「鼈甲(べっこう)」と同じ基原をもつ生薬で、陰を養い高ぶった陽気を鎮める働き(滋陰潜陽)や、かたく凝り固まったしこりをやわらげ血の滞りを通す働き(軟堅散結・破瘀通経)から、陰虚火旺による骨蒸発熱・寝汗、腹腔内のしこりや無月経などのケアに用いられてきました。KanpoNowでは、この生薬を「陰を養い、高ぶった熱としこりを静かに鎮める生薬」として整理します。

まずは要点
  • 土鼈甲(どべっこう)はスッポン科スッポンまたはシナスッポンの背甲(背中側の甲羅)を乾燥した生薬で、「鼈甲」とも呼ばれます*①②
  • コラーゲンなどのタンパク質やミネラルを含むことが報告されています*①
  • 漢方では、陰を養い高ぶった陽気を鎮め(滋陰潜陽)、かたく凝り固まったしこりをやわらげ血の滞りを通す(軟堅散結・破瘀通経)働きで用いられます*①③
  • 脾胃が虚弱で食欲不振・下痢のある方、妊娠中の方は自己判断での使用を避け、専門家に相談してください

土鼈甲は青蒿・鱉甲などの名でも処方に配合され、他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。高熱が続く、下腹部のしこりが急に大きくなるなどの場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。

土鼈甲とは

土鼈甲(どべっこう)は、スッポン科スッポン(Pelodiscus sinensis)またはシナスッポンの背甲(背中側の甲羅)を乾燥させた生薬です。「土別甲」とも表記され、一般には「鼈甲(べっこう)」の名でよく知られています。細工物の「鼈甲」がウミガメの一種である玳瑁(たいまい)の甲羅を用いるのに対し、薬用の鼈甲(土鼈甲)はスッポンの背甲を用いる点で区別されます。

漢方薬剤師の視点では、土鼈甲は「滋陰薬(陰を補う生薬)」に分類されます。滋陰潜陽の働きから、陰虚火旺による骨蒸発熱・寝汗・夜間の高熱などに、熱病により陰が傷つき起こる四肢の引きつり・痙攣にも用いられます。また、軟堅散結・破瘀通経の働きから、肝腫・脾腫などの腹腔内のしこりや無月経にも応用されます。同じスッポンの腹側の甲羅である亀板とあわせて配合される処方もあり、天(背側の鼈甲)と地(腹側の亀板)を組み合わせる考え方が伝えられています。

ポイント:土鼈甲は「陰を養い、高ぶった熱としこりを静かに鎮める」生薬です。陰虚火旺による骨蒸発熱・寝汗、腹腔内のしこりや無月経が気になるタイプに用いられてきました。スッポンの背甲を用いる、なじみ深い滋陰薬なのが特徴です。

基原・成分データ

土鼈甲の基本データを整理します。スッポンの背甲を用いること、コラーゲンなどのタンパク質を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

土鼈甲(ドベッコウ)の生薬
土鼈甲の基礎データ
スッポンの背甲を乾燥した生薬。陰を養い、高ぶった熱としこりを静かに鎮める働きがあります。
読み ドベッコウ(別名:鼈甲/べっこう)
基原・由来 スッポン科スッポン(Pelodiscus sinensis)またはシナスッポンの背甲 *①②
主成分 コラーゲンなどのタンパク質、ミネラル ほか *①

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。土鼈甲は、鹹く、冷やす性質(寒)で、肝・脾・腎に働きます。

味(五味)

「鹹」はやわらげ軟化させる味とされます。かたく凝り固まったしこりをやわらげる働きと結びつきます。

性(四気)

「寒」は冷やす性質で、陰虚火旺による骨蒸発熱・寝汗をおだやかに冷ましながら潤す方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)

肝に働いて熱による痙攣を、脾に働いて腹腔内のしこりを、腎に働いて陰虚火旺の熱に関わります。

漢方的な働きの軸

土鼈甲の働きは、大きく二つの軸で整理できます。陰を養い陽気を鎮める軸、しこりをやわらげ血の滞りを通す軸が重なり、骨蒸発熱・しこり・無月経を整えます。

陰を養い陽気を鎮める軸 滋陰潜陽 陰を養い高ぶった熱を鎮めて、骨蒸発熱・寝汗・夜間の高熱、熱病後の四肢の引きつり・痙攣をやわらげる方向に働きます。
しこりをやわらげ血の滞りを通す軸 軟堅散結・破瘀通経 かたく凝り固まったしこりをやわらげ、肝腫・脾腫などの腹腔内のしこりや無月経をやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:土鼈甲は「陰を養い、高ぶった熱としこりを静かに鎮める」生薬です。陰虚火旺による骨蒸発熱・寝汗、腹腔内のしこりや無月経のタイプに輪郭がはっきりします。スッポンの背甲を用いる滋陰薬なのが持ち味です。

伝統的な使われ方

土鼈甲は古くから、滋陰潜陽・軟堅散結・破瘀通経を目的に用いられてきました。陰虚火旺による骨蒸発熱・寝汗・夜間の高熱、熱病傷陰による四肢の引きつり・痙攣、肝腫・脾腫などの腹腔内のしこり、無月経などのケアに用いられてきた歴史があります。土鼈甲は肝・脾・腎に入り、陰を養いながらしこりをやわらげる二つの力をあわせもつのが特徴です。

青蒿・地骨皮などと組み合わせて骨蒸発熱・寝汗を整える処方(秦艽鼈甲湯・青蒿鼈甲湯)、他の生薬と組み合わせて腹腔内の腫瘤を整える処方(鼈甲煎丸)、無月経を整える処方(鼈甲養陰煎)などに配合されます。腹側の甲羅である亀板とあわせて用いられることもあります。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

土鼈甲は、スッポンの甲羅ならではの特徴をもつ生薬です。

平たい楕円形の甲羅

平たい楕円形の背甲で、ふちが薄くやわらかいのが特徴です。乾燥させたものを生薬として用います。

鹹みがあり寒性

味は鹹みが中心で、性質は寒性。陰を養いながら、高ぶった熱をおだやかに冷ます方向に働きます。

他の生薬と組み合わせて使用

青蒿・地骨皮など、他の滋陰薬・清虚熱薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。

体質別の向き・不向き

土鼈甲は陰を養い熱としこりを鎮める生薬です。陰虚火旺による骨蒸発熱・しこりがあるか、逆に脾胃が虚弱で食欲不振・下痢のあるタイプでないかを見極めることが大切です。

陰虚火旺の骨蒸発熱・寝汗タイプ

骨蒸発熱・寝汗・夜間の高熱がみられるタイプに向きます。土鼈甲の中心的な使い道です。

判断ポイント:陰虚火旺による熱。

腹腔内のしこり・無月経タイプ

肝腫・脾腫などの腹腔内のしこりや無月経のケアに用いられてきました。

判断ポイント:軟堅散結・破瘀通経の働き。

熱病後の痙攣タイプ

熱病傷陰による四肢の引きつり・痙攣には、他の滋陰薬と組み合わせて用います。

判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。
×

脾胃虚弱・妊娠中のタイプ

脾胃が虚弱で食欲不振・下痢のある方、妊娠中の方は自己判断での使用を避け、専門家に相談してください。

判断ポイント:脾胃虚弱・妊娠中は要相談。

安全性と受診の目安

土鼈甲は処方の中で用いられる滋陰薬ですが、脾胃が虚弱で食欲不振・下痢のある方、妊娠中の方は自己判断での使用を避け、専門家に相談してください。高熱が続く、下腹部のしこりが急に大きくなる、月経が長期間止まっている場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。

  • すぐに相談:高熱が続く、下腹部のしこりが急に大きくなる、月経が長期間止まっている
  • 服薬中:脾胃が虚弱な方、妊娠中の方、持病や他剤を併用している場合は専門家に相談する
すぐ相談:高熱が続く、下腹部のしこりが急に大きくなる場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

土鼈甲が気になる方は、ほてり、生理不順との関係も確認すると理解が深まります。

土鼈甲を含む漢方薬

土鼈甲は、骨蒸発熱・腹腔内のしこりを整える処方に配合されます。土鼈甲の陰を養い熱としこりを鎮める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

土鼈甲が配合される代表的な処方には、秦艽鼈甲湯・青蒿鼈甲湯(骨蒸発熱・寝汗を整える)、鼈甲煎丸(腹腔内のしこりを整える)、鼈甲養陰煎(無月経を整える)などがあります。いずれも古典的な処方として知られています。

※お使いの製品にどの生薬が含まれるかは、製品の添付文書・成分表示をご確認ください。処方の選択や併用については、薬剤師・登録販売者など専門家にご相談ください。

よくある質問

Q. 鼈甲(べっこう)と同じものですか?

土鼈甲は一般に「鼈甲」とも呼ばれる同じ生薬です。装飾品の「鼈甲細工」はウミガメの一種である玳瑁の甲羅を用いるのに対し、薬用の鼈甲(土鼈甲)はスッポンの背甲を用いる点で区別されます。

Q. 亀板(きばん)との違いは?

土鼈甲(鼈甲)はスッポンの背側の甲羅であるのに対し、亀板はクサガメなどの腹側の甲羅を指します。処方によっては両者が天と地を象徴する組み合わせとして併用されることもあります。

Q. どんな体質・症状に向きますか?

陰虚火旺による骨蒸発熱・寝汗、腹腔内のしこりや無月経のタイプに向きます。脾胃が虚弱で食欲不振・下痢のある方、妊娠中の方は自己判断での使用を避けてください。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

土鼈甲は、陰を養い高ぶった熱としこりを静かに鎮める生薬ですが、骨蒸発熱やしこりの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。高熱が続く、下腹部のしこりが急に大きくなる場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。脾胃が虚弱な方、妊娠中の方は自己判断を避け、症状が長引く・悪化する場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。