粳米(こうべい)とは?胃腸の虚弱・食欲不振下痢・熱の口の渇きに使う身近な生薬を体質別に解説

粳米(こうべい)は、私たちの主食であるうるち米(玄米)を用いる、最も身近な生薬です。胃腸を元気にして気を補い、胃をやわらげ、いらだちと口の渇きをしずめる働き(補中益気・健脾和胃・除煩止渇)から、胃腸の虚弱、食欲不振・下痢、熱による口の渇き・いらだちのケアに用いられてきました。麦門冬湯・白虎加人参湯に欠かせない生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「胃腸を元気にし、いらだちと渇きをしずめる、身近な滋養の生薬」として整理します。
- 粳米は、イネ科イネ(Oryza sativa L.)のもみ殻を去った玄米(うるち米)を用いる生薬です
- 主成分はデンプン(約75%以上)、タンパク質、少量の脂肪、ビタミンB類です
- 漢方では、胃腸を元気にして気を補い(補中益気・健脾和胃)、いらだちと口の渇きをしずめ(除煩止渇)、下痢を止める働きで用いられます
- とくに、粥(かゆ)や重湯(おもゆ)にすると、胃腸をいたわる働きが高まるとされます
粳米は主食としても食される、きわめて穏やかで安全性の高い生薬です。糖質を含むため、糖尿病など糖質制限が必要な方は摂取量に注意してください。強い下痢や高熱・脱水が続く場合は受診してください。
粳米とは
粳米(こうべい)は、イネ科のイネ(Oryza sativa L.)のもみ殻を去った玄米、すなわち「うるち米」を用いる生薬で、日本薬局方にも収載されています。私たちの主食そのものであり、最も身近な食材が薬にもなる好例です。『名医別録』の中品に「粳」の名で収載され、「気を益し、煩を止め、洩(下痢)を止める」と記されています。ねばりの強い「糯米(もち米=じゅべい)」とは区別され、うるち米が粳米にあたります。医食同源・薬食同源を代表する生薬です。
漢方薬剤師の視点では、粳米は代表的な「補気薬」で、脾・胃・肺に働きます。胃腸(脾胃)を元気にして気を補い、胃をやわらげ、熱によるいらだち(煩)と口の渇きをしずめ、下痢を止めます。とくに粥(かゆ)や重湯(おもゆ)にすると、その働きが高まるとされます。病人食に粥や重湯が用いられるのは、単なる消化のよさだけでなく、この「健脾和胃」の働きを期待してのことです。麦門冬湯・白虎加人参湯などに欠かせない生薬です。
基原・成分データ
粳米の基本データを整理します。デンプンが主成分であること、補気薬に分類されること、うるち米であることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。粳米は、甘く、偏りのない平で、脾・胃・肺に働きます。
「甘」は補い養う味とされます。胃腸を元気にして気を補い、胃をやわらげる働きと結びつきます。
「平」は温めも冷やしもしない偏りのない性質で、毎日の主食として、幅広い体質にやさしく用いられます。
脾・胃を元気にして気を補い、胃をやわらげ、肺のうるおいを助けて口の渇きをしずめる方向に働きます。虚弱・下痢・口渇に関わります。
漢方的な働きの軸
粳米の働きは、大きく三つの軸で整理できます。胃腸を元気にする軸、胃をやわらげる軸、いらだちと渇きをしずめる軸が重なり、胃腸の弱りや熱による不調を整えます。
伝統的な使われ方
粳米は古くから、補中益気・健脾和胃・除煩止渇・止瀉を目的に用いられてきました。胃腸の虚弱、食欲不振、下痢、熱病による口の渇き・いらだち、病後の体力低下などのケアに配合された歴史があります。とくに、粥や重湯にするとその働きが高まるとされ、病人食の定番とされてきました。単なる消化のよさではなく、「健脾和胃」の作用を期待してのことです。
麦門冬・人参などと組み合わせて、むせ返るような激しい乾いた咳をしずめる処方(麦門冬湯)、石膏・知母・人参などと組み合わせて熱による口の渇き・ほてりをさばく処方(白虎加人参湯)、石膏・麦門冬などと組み合わせて熱の余りと消耗を整える処方(竹葉石膏湯)に配合されます。これらの処方で、粳米は胃腸をいたわり、石膏など冷やす生薬の胃への刺激をやわらげる役割を担います。
形状・味・使われ方の体感
粳米は、見た目・味・使われ方に、私たちのよく知る特徴があります。玄米が生薬になります。
見慣れた玄米
もみ殻を去った、私たちのよく知る玄米(うるち米)。生薬としては、精白していない玄米の状態のものを用います。
やさしい甘み
味はやさしい甘みで、癖がありません。最も食材らしい食材でありながら薬用に供される、めずらしい生薬です。この甘みが補い養う働きの中心です。
煎じる・粥や重湯に
煎じ液として処方に配合されます。虚弱な方には、粥や重湯にして用いると、胃腸をいたわる働きが高まります。1日5〜8gが用量の目安とされます。
体質別の向き・不向き
粳米は胃腸を元気にする、身近で穏やかな生薬です。ほぼ誰にでも用いやすい生薬ですが、いくつか目安があります。
胃腸の虚弱・食欲不振・下痢
胃腸が弱く、食欲不振や下痢が出るタイプに向きます。粳米の中心的な使い道で、粥や重湯にすると働きが高まります。
判断ポイント:胃腸が弱い・食欲不振・下痢。熱による口の渇き・いらだち、病後
熱病による口の渇き・いらだちや、病後の体力低下のケアに用いられてきました。うるおいと胃腸をいたわりたいときに候補になります。
判断ポイント:熱の口渇・いらだち、病後の弱り。糖質制限が必要な方
デンプン(糖質)が主成分のため、糖尿病など糖質制限が必要な方は、摂取量に注意してください。食事の一部として考え、専門家に相談します。
判断ポイント:糖質制限中は摂取量に注意。特に強い不向きはありません
主食としても食される穏やかな生薬で、特に強い不向きはありません。ただし、下痢を止めるには糯米(もち米)の粥がより優れるともされ、症状により使い分けられます。
判断ポイント:穏やかで、強い禁忌はない。安全性と受診の目安
粳米は主食としても食される、きわめて穏やかで安全性の高い生薬です。特別な毒性の心配はほとんどありませんが、デンプン(糖質)が主成分のため、糖尿病など糖質制限が必要な方は摂取量に注意してください。強い下痢や嘔吐、高熱・脱水が続く場合は、別の原因の確認が必要です。持病や併用薬がある場合は専門家に相談してください。
- すぐに相談:激しい下痢・嘔吐が続く、高熱・脱水、血便
- 服薬中:糖質制限が必要な方は摂取量に注意する。持病や他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
粳米が気になる方は、食欲不振、下痢、口の渇きとの関係も確認すると理解が深まります。
粳米を含む漢方薬
粳米は、乾いた咳を整える処方や、熱による口の渇きをさばく処方に配合されます。同じ粳米を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 糯米(もち米)との違いは?
粳米はうるち米、糯米(じゅべい)はもち米です。どちらも胃腸を補いますが、下痢を止めるには糯米(もち米)の粥がより優れるともされ、症状によって使い分けられます。
Q. なぜ処方に「お米」が入るのですか?
粳米は、胃腸を元気にして気を補うほか、石膏など胃を刺激しやすい生薬の作用をやわらげ、胃をいたわる役割も担います。麦門冬湯や白虎加人参湯では、こうした働きが重要です。
Q. 性味・帰経は?
性味は甘/平、帰経は脾・胃・肺とされます。胃腸を元気にして気を補い、胃をやわらげ、いらだちと口の渇きをしずめ、下痢を止める働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
粳米は、胃腸を元気にし、いらだちと渇きをしずめる身近な生薬ですが、胃腸の不調や口の渇きの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。激しい下痢・嘔吐が続く、高熱・脱水、血便などがある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。糖質制限が必要な方は摂取量に注意してください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。