蔓荊子(まんけいし)
まずは要点
- どんな生薬? 蔓荊子(まんけいし)はハマゴウ(Vitex trifolia L.)またはハマゴウの近縁種の果実を乾燥した生薬で、伝統的に疏散風熱・清利頭目・止痛のはたらきが知られます。風熱による頭痛・頭重、目の充血やかゆみ、のぼせ・めまいなどに配合されます。*①②
- 中身は? フラボノイドやジテルペン、精油成分(ボルネオール類など)が報告されています。*①
- 注意点 突然の激しい頭痛や神経症状(しびれ・言語障害など)、視力障害や強い眼痛を伴う場合は受診を検討します。自己判断での長期連用や過量は避け、用法・用量を守ります。*④
蔓荊子の基礎データ
- 読み方: まんけいし
- 基原・由来: ハマゴウ(Vitex trifolia L., クマツヅラ科)等の果実。日本薬局方に準じる生薬基準に記載。*①②
- 主要成分: フラボノイド、ジテルペン、揮発成分(精油)など。*①
- 性味: 苦・辛 / 微寒 帰経: 膀胱・肝・胃(清利頭目・疏散風熱)。*①
伝統的な使われ方
風熱による頭痛・頭重、目の充血やかゆみ、耳鳴りやのぼせ・めまいなどに応用されます。菊花や決明子と配合して上部の熱をさまし、羌活・防風などと合わせて頭痛を鎮めます(清上防風湯など)。*①②
この生薬を含む漢方薬例
- 滋腎明目湯(じじんめいもくとう)(目のかすみ、目の疲れ、目の痛みなど)
- 清上蠲痛湯(せいじょうけんつうとう)(顔面痛、頭痛など)
- 洗肝明目湯(せんかんめいもくとう)(目の充血、目の痛み、目の乾燥など)
- 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
安全性と受診の目安
雷鳴頭痛(急激で激しい頭痛)、ろれつが回らない・手足の脱力、視力の急な低下や激しい眼痛などの際は直ちに受診してください。小児・高齢者、基礎疾患や他剤併用がある場合は専門家に相談を。自己判断での長期連用・過量は避けます。*④
- すぐ相談: 突然の激しい頭痛、麻痺・言語障害、視覚異常・激しい眼痛。
- 服薬中: 症状が改善しない/悪化する場合は受診。
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
よくある質問
Q. 菊花(きっか)との違いは?
A. どちらも頭目の熱を冷ます目的で使われますが、蔓荊子は頭痛・頭重の止痛に寄り、菊花は目の充血・かゆみなど眼症状への比重がやや高いとされます。症状に応じて併用や使い分けを行います。*①
Q. どんな体質・症状に向きますか?
A. 風熱による頭痛・のぼせ・めまい、眼の充血・かゆみ、耳鳴りなどに向きます。寒が強い体質では単用は避け、配合で調整します。*①②
*参考・出典
- 富山大学 和漢医薬学総合研究所「伝統医薬DB:蔓荊子」 ①
- 公益社団法人 東京生薬協会「マンケイシ(蔓荊子)」 ②
- ツムラ「漢方ビュー|生薬辞典」 ③
- MSDマニュアル家庭版「頭痛の概要(警戒すべき徴候)」 ④