前胡(ぜんこ)とは?咳・痰が多く切れにくい状態や感冒による発熱に使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月13日 監修:堀口和彦

前胡(ぜんこ)は、セリ科植物の根を乾燥した生薬です。気を降ろし痰をさばく働き(降気化痰)や、風熱をさばく働き(疏散風熱)から、咳・痰が多く切れにくい状態、感冒による発熱・頭痛などのケアに用いられてきました。日本薬局方に「白前胡」「紫花前胡」の2系統が並記される、基原植物が複数ある珍しい生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「気を降ろし、痰と風熱をさばく生薬」として整理します。

まずは要点
  • 前胡(ぜんこ)はPeucedanum praeruptorum Dunnの根(白前胡)またはノダケAngelica decursiva(Peucedanum decursivum)の根(紫花前胡)で、日本薬局方に収載されています(生薬名:PEUCEDANI RADIX)*①②
  • 主成分はクマリン類(プラエルプトリンなど)、精油などです*①②
  • 漢方では、気を降ろし痰をさばき(降気化痰)、風熱をさばく(疏散風熱)働きで用いられます*①②
  • 基原植物が2系統(白前胡・紫花前胡)あり、いずれも日本薬局方の並列規格として認められています

前胡は蘇葉・葛根・半夏など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。高熱が続く、血痰、呼吸困難がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。

前胡とは

前胡(ぜんこ)は、セリ科の異なる2種の植物に由来する生薬です。日本薬局方には「本品は1) Peucedanum praeruptorum Dunnの根(白前胡)又は2) ノダケAngelica decursiva Franchet et Savatier(Peucedanum decursivum Maximowicz)の根(紫花前胡)である」と、並列規格として異なる属の植物が記載されています。基原植物がひとつではないことを示す珍しい生薬で、日本ではセリ科多年草のノダケが基原とされることが多いです。

漢方薬剤師の視点では、前胡は「化痰薬(痰をさばく生薬)」に分類されます。気を降ろし痰をさばく(降気化痰)、風熱をさばく(疏散風熱)働きがあり、咳・痰が多く切れにくい状態、感冒による発熱・頭痛などに用いられてきました。前胡を含む代表的な漢方薬として参蘇飲が知られており、感冒・気管支炎などに配合される生薬です。

ポイント:前胡は「気を降ろし、痰と風熱をさばく」生薬です。咳・痰が多く切れにくい状態、感冒による発熱・頭痛が気になるタイプに用いられてきました。基原植物が2系統ある珍しい生薬なのが特徴です。

基原・成分データ

前胡の基本データを整理します。セリ科植物の根を用いること、クマリン類を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

前胡の基礎データ
セリ科植物の根を乾燥した生薬。気を降ろし、痰と風熱をさばく働きがあります。
読み ゼンコ(セリ科植物の根を用いる生薬)
基原・由来 Peucedanum praeruptorum Dunnの根(白前胡)またはノダケAngelica decursiva(Peucedanum decursivum)の根(紫花前胡)(日本薬局方収載、生薬名:PEUCEDANI RADIX) *①②
主成分 クマリン類(プラエルプトリンなど)、精油 *①②

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。前胡は、苦く辛く、やや冷やす性質(微寒)で、肺・脾に働きます。

味(五味)

「苦」は気を降ろし痰をさばく味、「辛」は風熱を発散させる味とされます。降気化痰・疏散風熱の働きと結びつきます。

性(四気)

「微寒」はやや涼〜寒寄りの性質で、風熱による発熱・咳をおだやかに冷ます方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)

肺に働いて咳・痰・発熱を、脾に働いて気の降ろしに関わります。

漢方的な働きの軸

前胡の働きは、大きく二つの軸で整理できます。気を降ろし痰をさばく軸、風熱をさばく軸が重なり、咳・痰・感冒による発熱を整えます。

気を降ろし痰をさばく軸 降気化痰 上逆した気を降ろして、咳・痰が多く切れにくい状態をやわらげる方向に働きます。
風熱をさばく軸 疏散風熱 体表の風熱をさばいて、感冒による発熱・頭痛をやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:前胡は「気を降ろし、痰と風熱をさばく」生薬です。咳・痰が多く切れにくい状態、感冒による発熱・頭痛のタイプに輪郭がはっきりします。基原植物が2系統ある珍しい生薬なのが持ち味です。

伝統的な使われ方

前胡は古くから、降気化痰・疏散風熱を目的に用いられてきました。咳・痰が多く切れにくい状態、感冒による発熱・頭痛などのケアに用いられてきた歴史があります。前胡は肺・脾に入り、日本薬局方に白前胡・紫花前胡の2系統が並列規格として記載されているのが特徴です。

蘇葉・葛根・半夏などと組み合わせて、感冒・気管支炎による咳・発熱を整える処方(参蘇飲)に配合されると伝えられています。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

前胡は、セリ科植物の根ならではの特徴をもつ生薬です。

円錐形〜円柱形の根

円錐形〜円柱形の根で、白前胡と紫花前胡の2系統があります。表面には縦じわがみられるのが特徴です。

苦みと辛みで微寒性

味は苦みと辛みがあり、性質は微寒。風熱による発熱・咳をおだやかに冷ます方向に働きます。

他の生薬と組み合わせて使用

蘇葉・葛根・半夏など、他の解表薬・化痰薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。

体質別の向き・不向き

前胡は気を降ろし痰と風熱をさばく生薬です。咳・痰・感冒による発熱があるか、逆に冷えの強い体質でないかを見極めることが大切です。

咳・痰タイプ

咳・痰が多く切れにくい状態がみられるタイプに向きます。前胡の中心的な使い道です。

判断ポイント:降気化痰の働き。

感冒による発熱タイプ

感冒による発熱・頭痛のケアに用いられてきました。

判断ポイント:疏散風熱の働き。

気管支炎を伴うタイプ

気管支炎による咳・発熱には、蘇葉・葛根など他の生薬と組み合わせて用います。

判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。
×

冷えの強い体質のタイプ

やや冷やす性質のため、冷えの強い体質の方は注意が必要です。

判断ポイント:冷えの強い体質には注意。

安全性と受診の目安

前胡は処方の中で用いられる化痰薬ですが、体質や体調により胃部不快などが出ることがあります。高熱が続く、血痰、呼吸困難がある場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。

  • すぐに相談:高熱が続く、血痰、呼吸困難
  • 服薬中:症状が改善しない、悪化する場合は受診する
すぐ相談:高熱が続く、血痰、呼吸困難がある場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

前胡が気になる方は、咳・喘息との関係も確認すると理解が深まります。

前胡を含む漢方薬

前胡は、感冒・咳を整える処方に配合されると伝えられています。前胡の気を降ろし痰と風熱をさばく働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

蘇子降気湯(そしこうきとう)

前胡を含む代表的な漢方薬として参蘇飲が知られています。

※お使いの製品にどの生薬が含まれるかは、製品の添付文書・成分表示をご確認ください。処方の選択や併用については、薬剤師・登録販売者など専門家にご相談ください。

よくある質問

Q. 白前胡と紫花前胡の違いは何ですか?

日本薬局方には並列規格として、Peucedanum praeruptorumの根(白前胡)とノダケ(紫花前胡)の2系統が記載されています。基原植物が2系統あることを示していますが、働きは似ているとされています。

Q. 柴胡(さいこ)と名前が似ていますが違うものですか?

はい、前胡と柴胡は名前が似ていますが、基原植物も働きも異なる別の生薬です。前胡はセリ科の根で降気化痰・疏散風熱に、柴胡はミシマサイコの根で疏肝解鬱・和解表裏に用いられます。

Q. どんな体質・症状に向きますか?

咳・痰が多く切れにくい状態、感冒による発熱・頭痛のタイプに向きます。冷えの強い体質の方は注意が必要です。

参考・出典

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免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。高熱が続く、血痰、呼吸困難がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。