樸樕(ぼくそく)とは?打撲・捻挫による腫れや痛み、化膿性皮膚疾患に使う生薬を体質別に解説
樸樕(ぼくそく)は、クヌギやコナラなどの樹皮を乾燥した生薬です。瘀血をめぐらせる働き(活血化瘀)や、毒を解しはれを消す働き(解毒消腫)から、打撲・捻挫による腫れや痛み、化膿性の皮膚疾患、痔・下血などのケアに用いられてきました。十味敗毒湯・治打撲一方に配合される、タンニンを豊富に含む収斂性の生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「瘀血をめぐらせ、うっ血と化膿を鎮める生薬」として整理します。
- 樸樕(ぼくそく)はブナ科クヌギ(Quercus acutissima)、コナラ(Q. serrata)、ミズナラ(Q. mongolica var. crispula)またはアベマキ(Q. variabilis)の樹皮を乾燥した生薬で、日本薬局方に収載されています(生薬名:QUERCUS CORTEX)*①②
- 主成分はタンニン類、クマリン類(スポコリン)、フラボノイドなどです*①②
- 漢方では、瘀血をめぐらせ(活血化瘀)、毒を解しはれを消す(解毒消腫)働きで用いられます*①②③
- タンニンを豊富に含む収斂性の生薬です。自己判断での長期連用・過量は避けてください
樸樕は柴胡・独活・桔梗や川芎・川骨など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。強い腫れ・発熱を伴う打撲、広範囲の化膿、多量の下血がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。
樸樕とは
樸樕(ぼくそく)は、ブナ科クヌギ・コナラ・ミズナラまたはアベマキの樹皮を乾燥させた生薬です。日本薬局方に収載され、別名を朴樕・槲皮・槲樕などともいいます。タンニンが多量に含まれており、炎症や皮膚病に対する収斂作用があるのが特徴です。十味敗毒湯は江戸時代の医師・華岡青洲の『瘍科方筌』に初めて見られる処方ですが、当初は樸樕ではなく桜筎(現在の桜皮)を用いていました。後に浅田宗伯が『勿誤薬室方函』の中で、青洲の開発した十味敗毒湯の桜皮を樸樕に入れ替え、現在では桜皮を用いたものと樸樕を用いたものの両方が流通しています。
漢方薬剤師の視点では、樸樕は「活血祛瘀薬(血のめぐりを促し瘀血を除く生薬)」に分類されます。打撲・捻挫・内出血・腱鞘炎・痔疾・下血・下痢など、跌打損傷(打撲による損傷)や瘀血腫痛、筋骨疼痛、腸風下血(腸からの出血)に応用されます。十味敗毒湯では、柴胡・独活・桔梗との組み合わせにより排膿を促進し、治打撲一方では、川芎・川骨との組み合わせにより血をめぐらし瘀血を除いて、打ち身・はれ及び痛みを治療します。
基原・成分データ
樸樕の基本データを整理します。クヌギなどの樹皮を用いること、タンニン類を豊富に含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。樸樕は、苦く渋く、偏りのない性質(平)で、心に働きます。
「苦・渋」は収斂し瘀血をめぐらせる味とされます。タンニンによる収斂作用と結びつきます。
「平」は偏りのない性質で、体を過度に温めたり冷やしたりせず、おだやかに瘀血をめぐらせる方向に働きます。
心に働いて血のめぐりを整え、打撲・瘀血・化膿性疾患に関わります。
漢方的な働きの軸
樸樕の働きは、大きく二つの軸で整理できます。瘀血をめぐらせる軸、毒を解しはれを消す軸が重なり、打撲・化膿・下血を整えます。
伝統的な使われ方
樸樕は古くから、活血化瘀・解毒消腫を目的に用いられてきました。血液の停滞、循環障害、皮膚の化膿性疾患、打撲損傷による血液のうっ滞などのケアに用いられてきた歴史があります。樸樕は心に入り、打撲・捻挫・内出血・腱鞘炎・痔疾・下血・下痢など、跌打損傷や瘀血腫痛、筋骨疼痛、腸風下血に応用されるのが特徴です。
柴胡・独活・桔梗などと組み合わせて、化膿性の腫れ物・湿疹を整える処方(十味敗毒湯)に配合されます。また、川芎・川骨などと組み合わせて打撲・捻挫による腫れや痛みを整える処方(治打撲一方)にも用いられます。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。
形状・味・使われ方の体感
樸樕は、クヌギなどの樹皮ならではの特徴をもつ生薬です。
クヌギ・コナラなどの樹皮
クヌギ、コナラ、ミズナラまたはアベマキの樹皮を乾燥させたもの。ブナ科の身近な樹木の皮を用いるのが特徴です。
強い苦みと渋みで平性
タンニンを豊富に含み、味は苦みと渋みが中心です。性質は平性で、体を過度に温めたり冷やしたりせず、おだやかに瘀血をめぐらせる方向に働きます。
他の生薬と組み合わせて使用
柴胡・独活・桔梗や川芎・川骨など、他の活血薬・排膿薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。
体質別の向き・不向き
樸樕は瘀血をめぐらせうっ血と化膿を鎮める生薬です。打撲・化膿性皮膚疾患があるか、逆に胃腸が虚弱で下痢傾向でないかを見極めることが大切です。
打撲・捻挫タイプ
打撲損傷による血液のうっ滞、腫れや痛みがみられるタイプに向きます。樸樕の中心的な使い道です。
判断ポイント:打撲による瘀血。化膿性皮膚疾患タイプ
皮膚の化膿性疾患のケアに用いられてきました。
判断ポイント:解毒消腫の働き。痔・下血タイプ
痔・下血には、他の止血薬と組み合わせて用います。
判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。胃腸虚弱・下痢傾向のタイプ
著しく胃腸の虚弱な方、下痢・軟便のある方は注意が必要です。
判断ポイント:胃腸虚弱には注意。安全性と受診の目安
樸樕は処方の中で用いられる活血祛瘀薬ですが、タンニンを豊富に含む収斂性の生薬です。下痢・軟便のある方、著しく胃腸の虚弱な方は注意が必要です。強い腫れ・発熱を伴う打撲、広範囲の化膿、多量の下血がある場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。
- すぐに相談:強い腫れ・発熱を伴う打撲、広範囲の化膿、多量の下血
- 服薬中:下痢・軟便のある方、著しく胃腸の虚弱な方は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
樸樕が気になる方は、かゆみ、しびれとの関係も確認すると理解が深まります。
樸樕を含む漢方薬
樸樕は、化膿性の腫れ物・打撲を整える処方に配合されます。樸樕の瘀血をめぐらせうっ血と化膿を鎮める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。
よくある質問
Q. 桜皮(おうひ)との違いは?
十味敗毒湯には、桜皮を用いたものと樸樕を用いたものの両方が知られています。もともとは桜筎(現在の桜皮)が用いられていましたが、浅田宗伯が桜皮を樸樕に入れ替えました。漢方医学的には、樸樕は桜皮の代用として用いられることがあります。
Q. どんな樹木の皮が使われますか?
ブナ科のクヌギ、コナラ、ミズナラまたはアベマキの樹皮が用いられます。いずれも身近などんぐりの木として知られる樹木です。
Q. どんな体質・症状に向きますか?
打撲・捻挫による血液のうっ滞、化膿性の皮膚疾患、痔・下血のタイプに向きます。タンニンを豊富に含むため、下痢・軟便のある方や著しく胃腸の虚弱な方は注意が必要です。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
樸樕は、瘀血をめぐらせうっ血と化膿を鎮める生薬ですが、打撲や化膿の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。強い腫れ・発熱を伴う打撲、広範囲の化膿、多量の下血がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。