牛膝(ごしつ)とは?月経不順・腰ひざのだるさ痛み・下半身のむくみに使う生薬を体質別に解説

牛膝(ごしつ)は、ヒユ科イノコヅチの根を用いる生薬です。滞った血をめぐらせ、肝腎を補って筋骨を強くし、血を下へ導く働き(活血祛瘀・補肝腎強筋骨・引血下行)から、瘀血による月経不順・月経痛、腰やひざのだるさ・痛み、下半身のむくみのケアに用いられてきました。名は、茎の節が牛の膝のようにふくらむことに由来します。KanpoNowでは、この生薬を「血をめぐらせ、腰ひざを強くし、血を下へ導く生薬」として整理します。
- 牛膝は、ヒユ科イノコヅチ(Achyranthes fauriei/A. bidentata)の根を乾燥した生薬です
- 主成分はサポニン、ステロイド(イノコステロン、エクダイステロン)、ステロール類、カリウム塩です
- 漢方では、滞った血をめぐらせ(活血祛瘀)、肝腎を補って筋骨を強くし(補肝腎・強筋骨)、血を下へ導く(引血下行)働きで用いられます
- 血をめぐらせ下へ導く性質のため、妊娠中や月経過多の方には使用を避けるべきとされます
牛膝は妊娠中・月経過多の方には禁忌とされます。胃腸が弱く下しやすい方も注意します。強い痛みや腫れ、不正出血が続く場合は受診してください。持病や併用薬のある方は、専門家に相談してください。
牛膝とは
牛膝(ごしつ)は、ヒユ科のイノコヅチ(ヒナタイノコズチ Achyranthes fauriei、または懐牛膝 Achyranthes bidentata)の根を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。中国産の「懐牛膝」と日本産の「和牛膝」があり、川牛膝(Cyathula officinalis)も同様に用いられます。名の「牛膝」は、茎の葉が出る部分が牛の膝のように丸くふくらんだ節になることに由来します。『神農本草経』の上品に収載された、歴史の古い生薬です。
漢方薬剤師の視点では、牛膝は代表的な「活血祛瘀薬」です。滞った血(瘀血)をめぐらせ、肝腎を補って腰やひざの筋骨を強くします。あわせて、水のめぐりを整えて排尿を通し(利水通淋)、上half身にのぼった血や熱を下へ導く(引血下行)働きももちます。婦人科の瘀血の要薬とされ、また腰・ひざの痛みやだるさ、下半身のむくみに用いられます。
基原・成分データ
牛膝の基本データを整理します。サポニン・ステロイドを含むこと、活血祛瘀薬に分類されることが、用いられ方を理解する鍵になります。
性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。牛膝は、苦くほのかに酸味があり、偏りのない平で、肝・腎に働きます。
「苦」はさばいて下げる味、「酸」は引き締め収める味とされます。血をめぐらせて下へ導く働きと結びつきます。
「平」は温めも冷やしもしない偏りのない性質で、幅広い体質に合わせやすい傾向です。
肝の血をめぐらせ、腎を補って腰・ひざの筋骨を強くする方向に働きます。月経・腰ひざの痛み・むくみに関わります。
漢方的な働きの軸
牛膝の働きは、大きく三つの軸で整理できます。血をめぐらせる軸、腰ひざを強くする軸、下へ導く軸が重なり、瘀血や肝腎の不足による下半身の不調を整えます。
伝統的な使われ方
牛膝は古くから、活血祛瘀・補肝腎・強筋骨・利水通淋・引血下行を目的に用いられてきました。瘀血による月経不順・月経痛・無月経、産後の腹痛、腰やひざのだるさ・痛み、下肢の無力、下半身のむくみ、排尿の異常、上半身にのぼった血熱(鼻血・歯痛・頭痛)などのケアに配合された歴史があります。婦人の瘀血を治す要薬とされます。
地黄・車前子などと組み合わせて下半身のむくみ・だるさをさばく処方(牛車腎気丸)、当帰・芍薬などと組み合わせて痛み・しびれを伴う関節痛・神経痛をやわらげる処方(疎経活血湯)、桃仁・紅花などと組み合わせて月経のトラブルを整える処方(折衝飲・牛膝散)、独活・桑寄生などと組み合わせて腰・ひざの痛みをさばく処方(独活寄生湯・大防風湯)に配合されます。
形状・味・使われ方の体感
牛膝は、見た目・味・使われ方に特徴があります。細長い根が生薬になります。
細長い円柱状の根
細長い円柱状の根で、外面は淡褐色〜黄褐色。まっすぐで長く、太いものが良品とされます。
ほのかな苦みと酸味
味はほのかに苦く、わずかに酸味があります。サポニンによる、独特の風味があります。
煎じる・酒で炒る
煎じ液として、活血・補肝腎の処方に配合されます。酒で炒った「酒牛膝」は、血をめぐらせ腰ひざを強くする働きを高めるとされます。
体質別の向き・不向き
牛膝は血をめぐらせ下へ導く生薬です。瘀血や腰ひざの不調があるか、逆に妊娠中・月経過多でないかを見極めることが大切です。
瘀血による月経不順・月経痛
血が滞って、月経不順・月経痛・無月経などが出るタイプに向きます。牛膝の中心的な使い道で、婦人の瘀血の要薬とされます。
判断ポイント:月経のトラブル・瘀血がある。腰・ひざのだるさ痛み、下半身のむくみ
肝腎の不足による腰やひざのだるさ・痛み、下肢の無力、下半身のむくみのケアに用いられてきました。下半身の不調で候補になります。
判断ポイント:腰ひざのだるさ・下半身のむくみ。胃腸が弱く下しやすい方
血をめぐらせ下へ導く性質のため、胃腸が弱く下しやすい方では、軟便・下痢が出ることがあります。用量や配合に注意します。
判断ポイント:下しやすい方は用量に注意。妊娠中・月経過多の方
血をめぐらせ下へ導く性質のため、妊娠中や月経過多の方は使用を避けるべきとされます。妊娠中・妊娠の可能性がある場合は使用を控え、専門家に相談してください。
判断ポイント:妊娠中・月経過多は避ける。安全性と受診の目安
牛膝は血をめぐらせ下へ導く生薬のため、妊娠中・月経過多の方は使用を避けるべきとされます。胃腸が弱く下しやすい方も注意します。強い月経痛や不正出血が続く場合、腰・ひざの強い痛みや腫れ、下肢の急なむくみ・しびれがある場合は、別の原因の確認が必要です。持病や併用薬がある場合は専門家に相談してください。
- すぐに相談:不正出血や月経過多が続く、強い腰・ひざの痛み・腫れ、下肢の急なむくみ・しびれ
- 服薬中:妊娠中・妊娠の可能性がある、持病や他の薬を併用している場合は、自己判断での使用を避け、専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
牛膝が気になる方は、生理不順、しびれ、むくみとの関係も確認すると理解が深まります。
牛膝を含む漢方薬
牛膝は、下半身の痛み・むくみを整える処方や、瘀血のトラブルを整える処方に配合されます。同じ牛膝を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. どんな体質・症状に向きますか?
瘀血による月経不順・月経痛、腰やひざのだるさ・痛み、下肢の無力、下半身のむくみなどに向きます。妊娠中・月経過多の方には使用を避けるべきとされます。
Q. 懐牛膝(かいごしつ)と川牛膝(せんごしつ)の違いは?
懐牛膝(Achyranthes bidentata)は補肝腎・強筋骨に優れ、川牛膝(Cyathula officinalis)は活血・利水に優れるとされます。日本産の和牛膝はヒナタイノコズチの根を用います。
Q. 性味・帰経は?
性味は苦・酸/平、帰経は肝・腎とされます。滞った血をめぐらせ、肝腎を補って筋骨を強くし、血を下へ導く働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
牛膝は、血をめぐらせ腰ひざを強くする生薬ですが、月経のトラブルや腰ひざの痛み、むくみの背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。不正出血や月経過多が続く場合、強い腰・ひざの痛み・腫れ、下肢の急なむくみ・しびれがある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。妊娠中・月経過多の方は使用を避けてください。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。