蘇木(そぼく)とは?月経痛・無月経や打撲による腫れ・痛みに使う生薬を体質別に解説

更新日:2026年7月13日 監修:堀口和彦

蘇木(そぼく)は、スオウの心材を乾燥した生薬です。血をめぐらせ月経の通りをよくする働き(活血通経)や、瘀血を消し痛みを止める働き(消瘀止痛)から、月経痛・無月経、打撲による腫れや痛み、産後の瘀血などのケアに用いられてきました。紅花と効能がよく似ており、通導散にも配合される、赤色の染料としても使われてきた歴史ある生薬です。KanpoNowでは、この生薬を「瘀血をめぐらせ、打撲と月経痛を鎮める生薬」として整理します。

まずは要点
  • 蘇木(そぼく)はマメ科スオウ(Caesalpinia sappan L.)の心材を乾燥した生薬です*①②
  • 主成分はブラジリン(brazilin)等の色素成分、タンニン、フラボノイドなどです*①③
  • 漢方では、血をめぐらせ月経の通りをよくし(活血通経)、瘀血を消し痛みを止める(消瘀止痛)働きで用いられます*①②③
  • 走散動血する性質があるため、血虚無瘀の方や妊婦には禁忌とされています

蘇木は当帰・川芎や紅花・大黄など他の生薬と組み合わせて用いられることが多い生薬です。大量出血、強い腹痛、妊娠の可能性がある場合は自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。

蘇木とは

蘇木(そぼく)は、マメ科スオウ(Caesalpinia sappan L.)の心材を乾燥させた生薬です。インドからマレー半島原産で、中国南部や台湾でも生育する常緑小高木です。日本には飛鳥時代に伝来したといわれ、古くから赤色の染料として使用されてきました。葉や果実も染料として使われ、タンニンが含まれているため鉄媒染で布を黒く染めることができます。正倉院にも、スオウとスオウで染めた布や木工品が保存されています。外皮と辺材を取り除き、黄赤色の心材を乾燥させたものが蘇木で、外皮は白色、内部の木心はなるべく深紅色をしているものが良品とされています。

漢方薬剤師の視点では、蘇木は「活血化瘀薬(血のめぐりを促し瘀血を除く生薬)」に分類されます。蘇木と紅花は効能がよく似ており、活血通経・消瘀止痛に働き、婦人病や外傷による痛みの常用薬とされます。少量では和血しますが多用すると破血し、紅花が温性で催生堕胎に働くのに対し、蘇木は偏涼で祛風和血に働くという違いがあります。血瘀の月経痛・無月経あるいは産後瘀阻の腹痛などの症状に、当帰や川芎などと一緒に用いられ、打撲外傷の腫脹・疼痛などにも用いられます。

ポイント:蘇木は「瘀血をめぐらせ、打撲と月経痛を鎮める」生薬です。月経痛・無月経、打撲による腫れや痛み、産後の瘀血が気になるタイプに用いられてきました。紅花と効能がよく似た、赤色の染料としても使われてきた歴史ある生薬なのが特徴です。

基原・成分データ

蘇木の基本データを整理します。スオウの心材を用いること、ブラジリンなどの色素成分を含むことが、用いられ方を理解する鍵になります。

蘇木の基礎データ
スオウの心材を乾燥した生薬。瘀血をめぐらせ、打撲と月経痛を鎮める働きがあります。
読み ソボク(スオウの心材を用いる生薬)
基原・由来 マメ科スオウ(Caesalpinia sappan L.)の心材 *①②
主成分 ブラジリン(brazilin)等の色素成分、タンニン、フラボノイド *①③

性味・帰経でみる性質

漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。蘇木は、甘く鹹く、偏りのない性質(平、一部でやや涼とも)で、心・肝・脾に働きます。

味(五味)

「甘」はやわらげる味、「鹹」は血をやわらげめぐらせる味とされます。瘀血をめぐらせる働きと結びつきます。

性(四気)

「平」は偏りのない性質で、紅花(温性)よりやや涼寄りとされ、祛風和血の方向に働きます。

帰経(働きかける臓腑)

心・肝に働いて瘀血をめぐらせ、脾に働いて打撲による腫れ・痛みに関わります。

漢方的な働きの軸

蘇木の働きは、大きく二つの軸で整理できます。血をめぐらせ月経の通りをよくする軸、瘀血を消し痛みを止める軸が重なり、月経痛・打撲・産後の瘀血を整えます。

血をめぐらせ月経の通りをよくする軸 活血通経 瘀血をめぐらせて、血瘀の月経痛・無月経、産後瘀阻の腹痛をやわらげる方向に働きます。
瘀血を消し痛みを止める軸 消瘀止痛 瘀血を消して、打撲外傷の腫脹・疼痛をやわらげる方向に働きます。
一言でいうと:蘇木は「瘀血をめぐらせ、打撲と月経痛を鎮める」生薬です。月経痛・無月経、打撲による腫れや痛み、産後の瘀血のタイプに輪郭がはっきりします。紅花と効能がよく似た生薬なのが持ち味です。

伝統的な使われ方

蘇木は古くから、活血通経・消瘀止痛を目的に用いられてきました。血瘀の月経痛・無月経あるいは産後瘀阻の腹痛、打撲外傷の腫脹・疼痛などのケアに用いられてきた歴史があります。蘇木は心・肝・脾に入り、祛風和血の効能があることから、蕁麻疹の瘙痒や中風・破傷風などにも使用されるのが特徴です。

紅花・大黄などと組み合わせて、頭痛・頭重・肩こり・めまいを整える処方(通導散)に配合されます。また、当帰・川芎などと一緒に、血瘀の月経痛・無月経あるいは産後瘀阻の腹痛を整える使い方も伝えられています。他の生薬と組み合わせ、量や配合を調整して用いるのが一般的です。

形状・味・使われ方の体感

蘇木は、スオウの心材ならではの特徴をもつ生薬です。

深紅色の心材

外皮と辺材を取り除いた黄赤色の心材で、木心はなるべく深紅色をしているものが良品とされます。赤色の染料としても古くから使われてきました。

甘み・鹹みで平性

味は甘み・鹹みが中心で、性質は平性(やや涼寄り)。紅花より偏涼で、祛風和血の方向に働きます。

他の生薬と組み合わせて使用

当帰・川芎や紅花・大黄など、他の活血薬・瀉下薬と組み合わせて煎じ薬に配合されるのが一般的です。

体質別の向き・不向き

蘇木は瘀血をめぐらせ打撲と月経痛を鎮める生薬です。月経痛・打撲があるか、逆に血虚無瘀の状態や妊娠中で自己判断が難しくないかを見極めることが大切です。

月経痛・無月経タイプ

血瘀の月経痛・無月経がみられるタイプに向きます。蘇木の中心的な使い道です。

判断ポイント:血瘀による月経トラブル。

打撲外傷タイプ

打撲外傷の腫脹・疼痛のケアに用いられてきました。

判断ポイント:消瘀止痛の働き。

蕁麻疹の瘙痒タイプ

祛風和血の効能から、蕁麻疹の瘙痒には他の生薬と組み合わせて用います。

判断ポイント:他の生薬と組み合わせて調整。
×

血虚無瘀・妊娠中のタイプ

走散動血するので、血虚無瘀の方や妊婦には禁忌です。

判断ポイント:血虚無瘀・妊娠中は禁忌。

安全性と受診の目安

蘇木は処方の中で用いられる活血化瘀薬ですが、走散動血する性質があるため、血虚無瘀の方や妊婦には禁忌とされています。多用すると破血する性質もあり、少量での使用が基本です。大量出血、強い腹痛、妊娠の可能性がある場合は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。持病や併用薬のある方も、事前に専門家に相談してください。

  • すぐに相談:大量出血、強い腹痛、妊娠の可能性がある場合
  • 服薬中:血虚無瘀の方、妊娠中の方は禁忌のため使用を避け、専門家に相談する
すぐ相談:大量出血、強い腹痛、妊娠の可能性がある場合は、自己判断で続けず、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。

症状から理解を深める

蘇木が気になる方は、生理不順、しびれとの関係も確認すると理解が深まります。

蘇木を含む漢方薬

蘇木は、頭痛・肩こり・めまいを整える処方に配合されます。蘇木の瘀血をめぐらせ打撲と月経痛を鎮める働きが、処方の中でどう活きるかを整理しました。

よくある質問

Q. 紅花との違いは?

蘇木と紅花は効能がよく似ており、ともに活血通経・消瘀止痛に働きます。紅花は温性で催生堕胎に働くのに対し、蘇木は偏涼で祛風和血に働くという違いがあります。

Q. 染料としても使われてきたのですか?

はい、日本には飛鳥時代に伝来したといわれ、古くから赤色の染料として使用されてきました。正倉院にも、スオウとスオウで染めた布や木工品が保存されています。

Q. どんな体質・症状に向きますか?

血瘀の月経痛・無月経、産後瘀阻の腹痛、打撲外傷の腫脹・疼痛のタイプに向きます。血虚無瘀の方や妊婦には禁忌です。

参考・出典

自分に合う漢方薬を知りたい方へ

蘇木は、瘀血をめぐらせ打撲と月経痛を鎮める生薬ですが、月経痛や打撲の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

AI漢方診断の案内

あなたに合う漢方薬を確認しませんか?

KanpoNowでは、症状と体質をもとに、あなたに合った漢方薬の候補をAIが提案します。漢方薬剤師・堀口和彦先生の理論に基づき、AIがあなたの体質を判定します。【AI漢方診断】をご利用ください。

AI漢方診断をする

免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。大量出血、強い腹痛がある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。血虚無瘀の方、妊娠中の方は使用を避け、症状が長引く・悪化する場合、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。