升麻(しょうま)とは?風熱の頭痛のど腫れ口内炎・麻疹じんましんの発疹・痔脱肛内臓下垂に使う生薬を体質別に解説

升麻(しょうま)は、キンポウゲ科サラシナショウマの根茎を用いる生薬です。体表の風熱をさばいて発疹を促し、こもった熱・毒をさばき、下がった陽気を引き上げる働き(発表透疹・清熱解毒・升陽挙陥)から、風熱による頭痛・のどの腫れ・口内炎、麻疹・じんましんの発疹、痔・脱肛・内臓下垂のケアに用いられてきました。柴胡と組んで陽気を引き上げる補中益気湯・乙字湯、葛根と組んで発疹を促す升麻葛根湯などに配合されます。KanpoNowでは、この生薬を「熱毒をさばき、陽気を引き上げる生薬」として整理します。
- 升麻(しょうま)はキンポウゲ科サラシナショウマ(Cimicifuga simplex 等)の根茎を乾燥した生薬で、発表透疹・清熱解毒・升陽挙陥のはたらきが知られます。鼻・のどの炎症や発疹、痔・脱肛などに配合されます
- 主成分はフェノール酸(フェルラ酸・イソフェルラ酸)、クロモン類(シミフジン等)、トリテルペノイド(シミゲノール等)です
- 漢方では、体表の風熱をさばいて発疹を促し(発表透疹)、こもった熱・毒をさばき(清熱解毒)、下がった陽気を引き上げる(升陽挙陥)働きで用いられます
- 強い炎症や高熱が続く、脱肛・下垂などの症状が長引く場合は受診を検討します
升麻は、高熱や激しい咽喉痛、出血をともなう痔、強い脱肛などの際は、自己判断で対処せず医療機関へご相談ください。小児・高齢者、基礎疾患や他剤併用がある場合は専門家に確認を。自己判断での長期連用・過量は避けてください。
升麻とは
升麻(しょうま)は、キンポウゲ科のサラシナショウマ(Cimicifuga simplex = Actaea simplex)や、中国産のCimicifuga属(foetida・dahurica・heracleifolia)の根茎を乾燥させた生薬で、日本薬局方にも収載されています。サラシナショウマは落葉樹林や草原に生え、長さ20〜30cmの太く白い花穂をつけます。「晒菜升麻(さらしなしょうま)」の和名は、昔、若菜をゆでて水でさらし(晒し)、アク抜きをして食べたことに由来します。かつては日本産も用いられましたが、現在は中国産が主に流通しています。『神農本草経』の上品に収載された、歴史の古い生薬です。
漢方薬剤師の視点では、升麻は「発散風熱薬」に分類され、三つの働きをもちます。体表の風熱をさばいて発疹を体表へ促し(発表透疹)、こもった熱・毒をさばき(清熱解毒)、下がった陽気を引き上げます(升陽挙陥)。風熱による頭痛・のどの腫れ・口内炎、麻疹(はしか)・じんましんの発疹が出にくいとき、気の落ち込み(気虚下陥)による脱肛・内臓下垂・慢性の下痢に用いられます。柴胡とともに陽気を引き上げる補中益気湯・乙字湯、葛根とともに発疹を促す升麻葛根湯、辛夷とともに鼻症状に用いる辛夷清肺湯などに配合されます。
基原・成分データ
升麻の基本データを整理します。トリテルペノイドを含むこと、発表透疹・升陽挙陥の生薬であることが、用いられ方を理解する鍵になります。

性味・帰経でみる性質
漢方では、生薬の性質を「性味(せいみ)」と「帰経(きけい)」で捉えます。性味は味と温度の傾向、帰経は主にどの臓腑に働きかけるかを示します。升麻は、甘く辛く、わずかに冷やす微寒で、肺・脾・胃・大腸に働きます。
「辛」は発散させる味、「甘」は調え引き上げる味とされます。体表の風熱をさばき、陽気を引き上げる働きと結びつきます。
「微寒(涼に近い)」はおだやかに冷やす性質で、こもった熱・毒をさばきながら、体表の風熱を発散する方向に働きます。
肺・胃の熱をさばいて発疹・のどの腫れ・口内炎をやわらげ、脾・大腸に働いて下がった陽気を引き上げる方向に働きます。発疹・のど・脱肛・下垂に関わります。
漢方的な働きの軸
升麻の働きは、大きく三つの軸で整理できます。発疹を促す軸、熱毒をさばく軸、陽気を引き上げる軸が重なり、風熱・熱毒・気虚下陥を整えます。
伝統的な使われ方
升麻は古くから、発表透疹・清熱解毒・升陽挙陥を目的に用いられてきました。風熱による頭痛・咽喉腫痛・口内炎・歯ぐきの腫れ、麻疹・じんましんなどの発疹が出にくいとき、気の落ち込み(気虚下陥)による脱肛・内臓下垂・慢性の下痢・倦怠感などのケアに用いられてきた歴史があります。解熱・発汗・解毒作用があり、じんましんの初期にも効果的とされます。単独では作用が穏やかなため、目的に応じて他の生薬と組み合わせて用いられます。
柴胡とともに陽気を引き上げて(升提)、疲労・食欲不振・術後の衰弱・内臓下垂を整える処方(補中益気湯)、同じく柴胡とともに痔核・きれ痔・脱肛を整える処方(乙字湯)、葛根とともに発疹を促して麻疹などを整える処方(升麻葛根湯)、辛夷とともに慢性鼻炎・蓄膿症を整える処方(辛夷清肺湯)、紫根・牡蛎とともに乳腺の痛み・痔・湿疹を整える処方(紫根牡蛎湯)に配合されます。このほか、立効散(歯痛・抜歯後の痛み)にも配合されます。
形状・味・使われ方の体感
升麻は、ゴツゴツした塊状の根茎が特徴の生薬です。
ゴツゴツした塊状の根茎
不規則に枝分かれした、ゴツゴツと硬い塊状の根茎。外面は暗褐色〜黒褐色で、多数のくぼんだ茎の跡があります。質が軽く、堅いのが特徴です。
わずかに苦く渋い
味は、わずかに苦く渋みがあります。この性質が、こもった熱・毒をさばく働きの一端を担います。
透疹には生、升提には炙
煎じ液として処方に配合されます。発疹を促す(透疹)・熱毒をさばくには生のまま、陽気を引き上げる(升提)目的には、蜜炙(みつしゃ)したものを用いることがあります。
体質別の向き・不向き
升麻は熱毒をさばき、陽気を引き上げる生薬です。風熱・熱毒・気虚下陥があるか、逆に陰虚・のぼせが強くないかを見極めることが大切です。
気虚下陥の脱肛・内臓下垂・倦怠感
気の落ち込み(気虚下陥)による脱肛・内臓下垂・慢性の下痢・倦怠感が出るタイプに向きます。升麻の中心的な使い道で、補中益気湯・乙字湯の升提を担います。
判断ポイント:脱肛・下垂・慢性の下痢・だるさ。風熱の頭痛・のどの腫れ、発疹
風熱による頭痛・のどの腫れ・口内炎、麻疹・じんましんの発疹が出にくいときのケアに用いられてきました。熱毒・発疹で候補になります。
判断ポイント:のどの腫れ・口内炎、発疹が出にくい。単独では使わず組み合わせる
単独では作用が穏やかなため、目的に応じて柴胡(升提)・葛根(透疹)などと組み合わせて用います。証に応じた配合が大切です。
判断ポイント:目的に応じて配合を選ぶ。のぼせ・陰虚が強い方、麻疹が十分出ている場合
引き上げ・発散する性質のため、のぼせ・陰虚が強い方、上半身に熱が突き上げるタイプには慎重にします。麻疹がすでに十分に出ている場合には用いません。
判断ポイント:のぼせが強い・発疹が十分出ていれば向かない。安全性と受診の目安
升麻は処方の中で穏やかに用いられますが、高熱や激しい咽喉痛、出血をともなう痔、強い脱肛などの際は、自己判断で対処せず、医療機関へご相談ください。引き上げ・発散する性質のため、のぼせ・陰虚が強い方は慎重にします。小児・高齢者、基礎疾患や他剤併用がある場合は専門家に確認し、自己判断での長期連用・過量は避けてください。
- すぐに相談:高熱が続く、強いのどの腫れ・嚥下困難、出血をともなう痔、脱肛の増悪
- 服薬中:症状が改善しない・悪化する場合は受診する。小児・高齢者、基礎疾患・他剤併用がある場合は専門家に相談する
※このページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療の決定には医療専門家の判断が必要です。
症状から理解を深める
升麻が気になる方は、だるさ、かゆみ、肌荒れとの関係も確認すると理解が深まります。
升麻を含む漢方薬
升麻は、陽気を引き上げる処方や、発疹・熱毒を整える処方に配合されます。同じ升麻を含む処方でも、組み合わせる生薬によって向く症状は変わります。
よくある質問
Q. 「補中益気湯」に入っている意味は?
升麻は、柴胡とともに陽気を引き上げる(升陽挙陥・升提)役割を担い、疲労感・食欲不振・術後の衰弱・内臓下垂などの改善を狙います。「気を持ち上げる」働きが、この処方での升麻の要です。
Q. 「サラシナ」とはどういう意味ですか?
「晒菜(さらしな)」に由来します。昔、サラシナショウマの若菜をゆでて水にさらし(晒し)、アク抜きをして食べたことから、この和名がついたといわれます。根茎が生薬「升麻」です。
Q. 性味・帰経は?
性味は甘・辛/微寒、帰経は肺・脾・胃・大腸とされます。体表の風熱をさばいて発疹を促し、こもった熱・毒をさばき、下がった陽気を引き上げる働きがあります。
参考・出典
自分に合う漢方薬を知りたい方へ
升麻は、熱毒をさばき、陽気を引き上げる生薬ですが、のどの腫れや発疹、脱肛・倦怠感の背景は人によって異なり、向く漢方薬も変わります。自分の体質にどんな処方が合うのかを知りたい方は、AI漢方診断をご利用ください。

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AI漢方診断をする免責:本ページは生薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断や治療・服薬指示を行うものではありません。高熱や激しい咽喉痛、出血をともなう痔、強い脱肛などがある場合は、医師・薬剤師など専門家にご相談ください。のぼせ・陰虚が強い方は慎重にします。症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、他のお薬を服用中の場合も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。