更年期太り|お腹まわり・内臓脂肪が気になる湿熱タイプ
監修:堀口和彦|更新日:2026-06-19
食べる量は大きく変わっていないのに、お腹まわりだけ増える。下腹部や腰まわりに、浮き輪のように脂肪がつく。
更年期太りの中でも、「お腹まわり」「内臓脂肪」「便秘」「暑がり」「汗をかきやすい」が目立つ方は、漢方でいう湿熱(しつねつ)タイプとして考えることがあります。
湿熱とは、余分な栄養・水分・熱が体の内側にこもり、排泄や代謝が追いつかなくなっている状態です。単なるカロリーオーバーではなく、「食べたものを燃やし切れず、出し切れず、腹部にこびりついている」ようなイメージです。
このページでわかること
- 更年期にお腹まわり・内臓脂肪が増えやすい理由
- 湿熱タイプの更年期太りの特徴
- 湿熱と湿痰・血瘀・気虚との違い
- 防風通聖散・大柴胡湯などを考えるときの目安
- お腹まわりを整える食事・運動・水分の養生
目次
お腹まわりに脂肪がつくメカニズム
更年期に入ると、「若いころと同じ量しか食べていないのに太る」「体重よりもお腹まわりの変化が気になる」という方が増えます。背景には、女性ホルモンの変動、筋肉量や基礎代謝の低下、睡眠不足、ストレス、自律神経の乱れ、活動量の低下などが重なります。*①②
特にお腹まわりや内臓脂肪が気になる場合、漢方では「余分な栄養と熱が腹部にこもっている」と見ます。これが湿熱タイプの基本です。
更年期以降は消費する力が落ちやすく、食べた栄養を使い切れないと、湿や脂肪として体に残りやすくなります。
栄養過多、飲酒、脂っこい食事、便秘、ストレスが重なると、体の内側に熱がこもりやすくなります。
余分な水分や老廃物である湿と、こもった熱が混ざると、粘り気のある湿熱として停滞しやすくなります。
「精」の過剰と、使い切れない栄養
漢方では、心身を維持する生命の源を精(せい)として考えます。食べ物から作られる栄養、ホルモンの働き、代謝を支える力も、この精の働きと関係します。
更年期には、ホルモンバランスが大きく変わります。体はその変化に対応しようとして、さまざまな調整を行います。しかし、食事量が以前と同じでも、消費する力や巡らせる力が落ちてくると、余った栄養が体内に残りやすくなります。
湿熱タイプでは、この余った栄養が「湿」となり、さらに体内にこもった熱と結びつきます。すると、さらさら流れる水ではなく、ドロドロしたヘドロのように体内へこびりつき、気血の巡りや排泄を妨げます。
湿熱は、腹部にたまりやすい
お腹は、胃腸を中心とした消化吸収の場です。食べ過ぎ、飲み過ぎ、脂っこいもの、甘いもの、夜食、アルコールが続くと、まず腹部に湿熱がたまりやすくなります。
その結果、下腹部が張る、お腹まわりに脂肪がつく、便秘がちになる、便がすっきり出ない、汗をかきやすい、顔が赤い、のぼせやすいといった症状につながります。
湿熱タイプは「入る量」と「出る量」のバランスが崩れた状態です。
食べる量だけでなく、便通、尿、汗、運動量、睡眠、ストレスまで含めて、「余ったものを外へ出せているか」を見ることが大切です。
湿熱タイプの更年期太りとは
湿熱タイプは、食べた栄養や水分を使い切れず、熱を帯びた老廃物として体内に停滞している状態です。更年期太りでは、特にお腹まわり・内臓脂肪・便秘・暑がり・多汗が目立ちやすくなります。
湿熱タイプの方は、食欲が落ちにくく、むしろ更年期に入ってから食欲や飲酒量が増えることがあります。体格はがっちりしていることが多く、顔色が赤い、皮膚にツヤがある、汗をかきやすい、のどが渇いて冷たいものを欲しがるといった特徴が出ることがあります。
また、湿熱は「熱」と「停滞」が一緒にあるため、肥満だけでなく、高血圧、脂質異常、血糖、尿酸、便秘などの生活習慣病リスクとも関係して考える必要があります。内臓脂肪型肥満は、血圧・血糖・脂質異常などと重なるとメタボリックシンドロームとして扱われます。*③④
湿熱タイプで見られやすい症状
- お腹まわり、下腹部、腰まわりに脂肪がつきやすい
- 内臓脂肪、腹囲、メタボ傾向が気になる
- 暑がりで汗をかきやすい
- 顔が赤い、のぼせやすい
- のどが渇き、冷たいものを欲しがる
- 便秘がち、または臭いの強い泥状便が出る
- 尿の色が濃い
- 脂っこいもの、味の濃いもの、アルコール、甘いものが好き
- 吹き出物、皮膚の赤み、口の苦みが出やすい
- 血圧、脂質、血糖、尿酸値が気になる
湿熱タイプは「食欲があるのに、排泄が追いつかない」ことが多いです。
食べられる体力はある一方で、消費・排泄・解毒の流れが詰まり、腹部に余分なものが残りやすくなります。
湿熱タイプのセルフチェック
以下に当てはまる項目が多いほど、湿熱タイプの更年期太りを考えます。
太り方の特徴
- 体重よりも腹囲が気になる
- 下腹部が張る、硬い感じがする
- 内臓脂肪型・リンゴ型の太り方
- 食事量は減っていない、または増えている
- 夜食・飲酒・外食が多い
体調の特徴
- 暑がりで汗をかきやすい
- 便秘がち、便がすっきり出ない
- 顔が赤い、のぼせる
- 口が渇き、冷たいものが欲しい
- 血圧・脂質・血糖・尿酸値が気になる
ただし、湿熱に見えても、実際には湿痰、血瘀、気滞、気虚、陽虚が重なっていることがあります。たとえば「お腹まわりは気になるが、冷えが強い」「胃腸が弱く、便秘ではなく下痢しやすい」「疲れて動けない」という場合は、単純な湿熱だけで見ない方がよいことがあります。
ほかの更年期太りタイプとの違い
更年期太りは、体重だけで判断しないことが大切です。お腹まわり、むくみ、冷え、便秘、ストレス食い、疲労感などを組み合わせて見ていきます。
| 太り方 | 漢方で見たい背景 | よくある体質 |
|---|---|---|
|
お腹まわり・内臓脂肪が気になる |
余分な栄養と熱がこもっている | 湿熱 |
|
むくみ・水太り・下半身太り |
水分代謝が悪く、湿や痰が停滞している | 湿痰 |
|
冷えのぼせ・肩こり・便秘を伴う |
血の巡りが悪く、脂肪燃焼が落ちている | 血瘀 |
|
ストレスで甘いものが止まらない |
気の巡りが滞り、摂食中枢が乱れている | 気滞・血虚 |
|
食べていないのに太る |
気や陽気が不足し、燃焼する力が弱い | 気虚・陽虚 |
湿熱タイプは、比較的「余っている」タイプです。食欲、熱、脂肪、便秘、汗、のぼせが目立ちます。一方で、気虚・陽虚タイプは「足りない」タイプで、疲れやすい、冷える、胃腸が弱い、動けない、食べていないのに太るという形で現れやすくなります。
更年期太り=防風通聖散と決めつけないことが大切です。
防風通聖散は湿熱・便秘・腹部脂肪タイプで候補になりますが、冷えが強い方、胃腸が弱い方、体力が落ちている方、水太りタイプの方には合わない場合があります。
漢方薬を考えるときの処方鑑別
湿熱タイプの更年期太りでは、単に食欲を抑えるのではなく、体内に停滞している余分な熱・湿・老廃物を外へ出すことを考えます。便通、尿、汗、代謝、肝胆の巡りを整え、「入る量より出す量が少ない」状態を変えていくことが重要です。
目安:体力が比較的あり、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちで、のぼせ・肩こり・むくみ・肥満症などを伴う場合に検討されます。
考え方:体内に停滞した余分な熱や湿、脂肪分、老廃物を、便・尿・汗などから外へ出す方向に働かせる処方です。湿熱タイプの「お腹まわり・内臓脂肪・便秘・暑がり」に対して、代表的に考えられる漢方薬です。
目安:がっちりした体格で、便秘傾向があり、みぞおちから脇腹にかけて張る、イライラしやすい、ストレスで食べすぎるような場合に検討されます。
考え方:気の滞りをさばきながら、肝胆・胃腸の詰まりを動かし、便通を整える処方です。ストレスや緊張が強く、湿熱が腹部にこもるタイプで候補になります。
使用前に確認したいこと
防風通聖散や大柴胡湯には、便通を動かす生薬が含まれる製剤があります。下痢しやすい方、胃腸が弱い方、体力が落ちている方、高齢の方、妊娠中・授乳中の方、持病がある方、服薬中の方は、自己判断せず医師または薬剤師にご相談ください。
湿熱に見えて、別の処方を考えることがあるケース
- むくみ・水太り・下半身太りが中心なら、湿痰タイプを考えます。
- 冷えのぼせ・肩こり・便秘・下腹部の張りが強いなら、血瘀タイプを考えます。
- ストレスで甘いものが止まらないなら、気滞・血虚タイプを考えます。
- 食べていないのに太り、疲れて動けないなら、気虚・陽虚タイプを考えます。
湿熱タイプの生活養生
湿熱タイプの更年期太りでは、漢方薬だけでなく、日々の食事・運動・睡眠・便通の整え方が非常に重要です。湿熱は、毎日の飲食と生活リズムの中で作られやすいからです。
1. 食べる前に「量」を決める
更年期は、ホルモンや自律神経の揺らぎによって、食欲のコントロールが乱れやすくなります。湿熱タイプでは、食欲が落ちにくく、美味しそうなものを見る、匂いを嗅ぐ、疲れて帰宅する、といった刺激で食べすぎにつながることがあります。
意志の力だけで我慢しようとせず、食べる前に量を決める、皿に盛ってから食べる、袋ごと食べない、手の届く場所にお菓子を置かないなど、環境を整えることが大切です。
2. 湿熱を生む食べ物を控える
脂っこいもの、揚げ物、味の濃いもの、甘い飲み物、菓子類、アルコール、夜食は、体内に湿と熱を作りやすくなります。特に「飲酒+脂っこい食事+締めの炭水化物」は、お腹まわりの湿熱を増やしやすい組み合わせです。
食事は、あっさりした和食を中心に、野菜、海藻、きのこ、大豆製品、魚、適量のたんぱく質を取り入れましょう。極端な断食より、毎日の過剰分を減らす方が続けやすく、湿熱タイプには合いやすいです。
3. 便通を整える
湿熱タイプでは、便秘によって熱と老廃物が体内にこもりやすくなります。便がすっきり出ない、何日も出ない、お腹が張るという方は、体重だけでなく便通も重要な指標です。
朝食を抜きすぎない、食物繊維をとる、朝にトイレへ行く時間を作る、軽い運動で腸を動かすなど、自然な排泄リズムを整えましょう。
4. 有酸素運動で「在庫」を燃やす
お腹まわりにたまった脂肪や老廃物は、食事を減らすだけでは動きにくいことがあります。ウォーキング、軽いジョギング、水泳、自転車などの有酸素運動で、無理なく燃焼させることが大切です。
目安は、息が上がりすぎない強度で20〜30分程度です。最初から頑張りすぎるより、週に数回、継続できる範囲で始めましょう。
5. 冷たい飲み物をガブ飲みしない
湿熱タイプは体に熱がこもるため、冷たい飲み物を欲しがることがあります。しかし、冷たい飲み物を大量にとると、胃腸が冷えて代謝が落ち、湿がさらに動きにくくなることがあります。
のどが渇くときは、常温または温かい飲み物を少しずつとりましょう。水分のとりすぎでお腹が重い、むくむ、だるいという方は、量だけでなく飲み方も見直してください。
6. 睡眠不足と夜食をセットで見直す
睡眠不足は、自律神経や食欲、代謝に影響します。夜遅くまで起きていると、空腹ではないのに食べる、甘いものやアルコールが欲しくなる、翌日に動けないという悪循環が起こりやすくなります。
湿熱タイプでは、夜更かしと夜食が重なると、お腹まわりに湿熱がたまりやすくなります。まずは「夜に食べる時間」を早めることから始めましょう。
関連ページ
更年期太りは、むくみ、冷え、便秘、ストレス食い、疲労感などと重なって現れることがあります。以下のページもあわせてご覧ください。
よくある質問
更年期にお腹まわりだけ太るのは湿熱ですか?
湿熱が関係することはあります。特に、内臓脂肪、暑がり、多汗、便秘、顔の赤み、のぼせ、脂っこいものや飲酒が多い場合は、湿熱タイプを考えます。ただし、冷えやむくみが強い場合は湿痰や陽虚、肩こりや冷えのぼせが強い場合は血瘀も見ます。
防風通聖散は更年期太りに合いますか?
腹部に脂肪が多く、便秘がちで、体力が比較的ある湿熱タイプでは候補になることがあります。一方で、冷えが強い方、胃腸が弱い方、下痢しやすい方、疲れやすい方には合わない場合があります。自己判断で長く続けず、体質を確認して選ぶことが大切です。
内臓脂肪が気になる場合、食事制限だけでよいですか?
食事の見直しは重要ですが、湿熱タイプでは「出す力」と「燃やす力」も大切です。便通、運動量、睡眠、飲酒、夜食を含めて整える必要があります。極端な食事制限で疲れて動けなくなると、かえって代謝が落ちることがあります。
暑がりなので冷たい水をたくさん飲んでもよいですか?
のどが渇くときの水分補給は大切ですが、冷たい飲み物のガブ飲みは胃腸を冷やし、湿を増やすことがあります。常温または温かい飲み物を少しずつとる方が、湿熱タイプには合いやすいです。
湿熱タイプでもむくむことはありますか?
あります。湿熱は湿と熱が結びついた状態なので、むくみや重だるさが出ることもあります。ただし、むくみや水太りが中心で、冷えや胃腸虚弱が強い場合は、湿痰や陽虚タイプとして見た方がよいことがあります。
受診の目安
以下のような場合は、更年期太りや湿熱タイプと決めつけず、医療機関で相談してください。
- 短期間で急に体重が増えた、または急に減った場合
- 強いむくみ、息切れ、動悸、胸痛がある場合
- 血圧、血糖、脂質、尿酸値の異常を指摘されている場合
- 腹囲や内臓脂肪、脂肪肝、メタボリックシンドロームを指摘されている場合
- 便秘が長く続く、血便、強い腹痛、嘔吐を伴う場合
- 甲状腺疾患、糖尿病、心疾患、腎疾患、肝疾患などの持病がある場合
- 服薬中、妊娠中・授乳中、ホルモン補充療法を受けている場合
お腹まわりの変化は、生活習慣病のサインであることもあります。
更年期太りに見えても、血糖、脂質、血圧、肝機能、甲状腺などの確認が必要なことがあります。健診結果に異常がある方は、漢方だけで判断せず医療機関で確認しましょう。
参考・出典
- *① 厚生労働省「女性の健康相談に関わる方」
- *② 厚生労働省 e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」
- *③ 厚生労働省 スマート・ライフ・プロジェクト「肥満・メタボリックシンドローム」
- *④ 日本肥満学会「肥満と肥満症について」
- *⑤⑥ PMDA添付文書
体質チェックへ
更年期のお腹まわり太りは、身体の中に「余分な栄養と熱がこもり、排泄が追いついていない」サインかもしれません。
湿熱なのか、湿痰なのか、血瘀や気虚が重なっているのか。体重だけでなく、便秘、汗、暑がり、冷え、むくみ、ストレス食い、疲労感まで含めて体質を見ていきましょう。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものであり、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。漢方薬は体質や症状、持病、服薬状況によって適否が異なります。持病がある方、服薬中の方、妊娠中・授乳中の方、ホルモン補充療法を受けている方は、自己判断で服用せず、事前に医師または薬剤師にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。