気虚・陽虚傾向:更年期世代の女性の相談例
以前は45〜48kgほどでしたが、生活や食事量が大きく変わっていないのに体重が急増し、80kgまで増えたという相談です。空手の指導やジム通いを続けても体重が落ちず、不眠、生理不順、月経過多、強いストレスも重なっていました。
この例では、運動不足だけでなく、気力や代謝を支える力の低下と、睡眠・自律神経・月経の乱れを含めて体質を確認し、柴胡加竜骨牡蛎湯と防風通聖散が選定されました。
食べる量は減らしているのに太る。若い頃と同じダイエットをしても体重が落ちない。冷え、疲労感、むくみも強い。
更年期太りの中でも、食べすぎより「疲れて動けない」「体が冷える」「胃腸が弱い」「少し食べただけで増える」ことが目立つ方は、漢方でいう気虚(ききょ)・陽虚(ようきょ)の傾向を考えることがあります。
更年期には女性ホルモンの変動に加え、筋肉量や活動量、睡眠、気分、体温調節が変化しやすくなります。気虚・陽虚タイプでは、極端な食事制限を続けると、疲労、冷え、胃腸の不調が強まり、かえって活動量が下がることがあります。
体を動かし、食べたものを消化・利用する力が不足した状態。疲労感、息切れ、胃腸の弱さが目立ちます。
体を温める力が不足した状態。手足や下半身の冷え、むくみ、夜間頻尿、軟便が重なりやすくなります。
体重だけでなく、食欲、便通、冷え、尿、睡眠、疲労、持病、服薬状況まで確認して漢方薬を検討します。
むくみだけが主症状の場合は、別の見方が必要です。
数日単位で体重が変動する、夕方だけ脚が張る、靴下の跡が残る場合は、脂肪増加より水分停滞が中心のことがあります。その場合は更年期のむくみも確認してください。このページでは、数か月以上続く体重・腹囲の増加に、冷えや疲労が重なる状態を中心に扱います。
更年期の体重変化は、食事量だけで決まりません。女性ホルモンの変動、加齢に伴う筋肉量の減少、睡眠不足、ストレス、活動量の低下などが重なると、以前と同じ生活でもエネルギーを消費しにくくなります。
だるさや関節痛、睡眠不足があると日常の歩数や家事量が減り、消費エネルギーも下がります。
体温を作る力が弱ると、下半身が冷え、水分が停滞しやすく、体が重く感じられます。
少食でも胃もたれや軟便がある場合、必要な栄養を利用しにくく、筋肉や活動力を保ちにくくなります。
このタイプでは、「食べる量が多いから太る」と決めつけず、活動量を落としている原因や、冷え、胃腸、睡眠を一緒に確認することが大切です。
朝からだるい、少し動くと疲れる、息切れする、食後に眠くなる、胃腸が弱いといった特徴が目立ちます。
手足や腰回りが冷える、温かい場所を好む、下半身がむくむ、夜間頻尿や軟便があるといった特徴が目立ちます。
気虚と陽虚は重なって現れることがあります。
疲労が長く続くと体を温める力まで低下し、冷えやむくみが強くなることがあります。一方、冷えが強いからといって全員が陽虚とは限りません。血瘀、血虚、湿痰などが重なる場合もあります。
※該当数だけで体質は決まりません。強い疲労、急な体重増加、甲状腺疾患、心臓・腎臓の病気、薬の影響なども確認が必要です。
| タイプ | 太り方・主な特徴 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| 気虚・陽虚 | 食べていないのに太る、疲れて動けない、冷える | 疲労、冷え、胃腸虚弱、軟便、夜間頻尿 |
| 湿痰 | 水太り、下半身太り、むくみ | 靴下跡、体の重さ、天候で変化 |
| 湿熱 | お腹まわり、内臓脂肪、便秘 | 暑がり、汗、食欲、便秘、赤ら顔 |
| 血瘀 | 下腹部太り、冷えのぼせ、肩こり | 便秘、頭痛、月経トラブル、シミ |
| 気滞・血虚 | ストレス過食、甘いものが止まらない | イライラ、不安、不眠、気分と食欲の波 |
気虚・陽虚タイプでも、漢方薬は「代謝を上げる薬」を一律に選ぶものではありません。胃腸、冷え、汗、尿、便通、むくみ、年齢、体力、併用薬によって候補が変わります。
疲れやすい、食欲がない、胃腸が弱い、気力が続かないなど、気虚が中心のときに検討される処方です。肥満そのものを目的に機械的に選ぶ処方ではありません。
下半身の冷え、腰のだるさ、夜間頻尿、年齢とともに感じる衰えなど、腎陽虚の傾向がある場合に検討されます。
疲れやすく汗をかきやすい、水太り、下半身のむくみ、関節の重さなどが重なる場合に知られる処方です。むくみがなく、脂肪増加が中心の場合には別の見方も必要です。
強い冷え、めまい、軟便、尿の変化、むくみなど、体を温め水分を動かす力の低下が目立つ場合に検討されます。
防風通聖散が合うとは限りません。
便秘、腹部脂肪、暑がりなどが目立つ体力のある方では候補になりますが、冷え、軟便、胃腸虚弱、強い疲労がある場合は慎重な判断が必要です。
極端な欠食や単品ダイエットは、筋肉量や活動力をさらに落とすことがあります。主食、たんぱく質、野菜を無理なく組み合わせ、まず食事のリズムを整えます。
いきなり長時間運動するのではなく、5〜10分の散歩、椅子からの立ち座り、軽い筋力運動から始めます。翌日に疲れを残さない強さを目安にします。
冷たい飲み物を続けず、汁物や温かい料理を取り入れます。入浴は高温・長時間を避け、気持ちよく温まる程度にします。
睡眠不足は日中の疲労と活動量低下につながります。就寝時間を整え、夜遅い食事やスマートフォンの使用を見直します。
膝や股関節の痛み、強い息切れ、動悸がある場合は、運動の種類を医療機関や専門職に相談してください。
以下は、堀口和彦先生による過去の漢方相談・処方選定データのうち、体重増加に冷え、疲労、活動量低下などが重なった例を、個人が特定されないよう公開用に要約したものです。KanpoNow薬局の販売実績や改善実績を示すものではなく、効果を保証するものでもありません。
以前は45〜48kgほどでしたが、生活や食事量が大きく変わっていないのに体重が急増し、80kgまで増えたという相談です。空手の指導やジム通いを続けても体重が落ちず、不眠、生理不順、月経過多、強いストレスも重なっていました。
この例では、運動不足だけでなく、気力や代謝を支える力の低下と、睡眠・自律神経・月経の乱れを含めて体質を確認し、柴胡加竜骨牡蛎湯と防風通聖散が選定されました。
30代の頃は食事や運動で体重を調整できていましたが、更年期に入ってから気力が続かず、運動を始めても継続できないことに悩んでいました。膝を痛めて外で運動する機会が減り、下腹部の張り、むくみ、便秘と軟便の繰り返し、汗、肩こり、イライラも見られました。
この例では、体を動かす力の低下だけでなく、水分代謝や自律神経の乱れも重なっていると考え、真武湯と柴胡加竜骨牡蛎湯が選定されました。
長年続けた仕事を辞めて生活が変わった頃から、体重増加と体の重さが気になるようになった相談です。股関節の痛みで思うように動けず、手指のこわばり、ホットフラッシュ、むくみ、便秘傾向も重なっていました。
この例では、活動量の低下だけでなく、水分や血の巡り、更年期症状を含めて、九味檳榔湯と桂枝茯苓丸料が選定されました。
※現在、原資料上で症状・年齢・単独処方名まで確認できた3件を掲載しています。処方記録を十分に確認できない候補は掲載していません。
代謝や活動量の低下は一因ですが、それだけとは限りません。睡眠不足、薬の影響、甲状腺機能、むくみ、便秘、食事内容の変化なども確認が必要です。
単純に量を増やすのではなく、欠食を避け、たんぱく質や野菜を含む食事を規則的に取ることが基本です。体重や持病によって適切な量は異なります。
冷えだけでは決まりません。腰や下半身の状態、尿、口渇、胃腸、年齢、体力などを確認して選びます。
水太り、汗かき、疲労、下半身のむくみなどで知られますが、むくみの原因や体質によって選択は変わります。心臓・腎臓・肝臓の病気が疑われるむくみは、先に受診が必要です。
5分程度の散歩や、椅子からの立ち座りなど、翌日に疲労を残さない強さから始めます。痛みや息切れがある場合は医療機関へ相談してください。
次のような場合は、更年期太りや体質の問題と決めつけず、医療機関へ相談してください。
生活に支障が出る更年期症状は、婦人科で相談できます。体重増加の背景に甲状腺疾患、心臓・腎臓・肝臓の病気、睡眠時無呼吸、薬剤の影響などが隠れていることもあります。
本ページは一般的な情報提供を目的としています。診断や治療を代替するものではありません。漢方薬にも副作用や相互作用があり、体質、持病、妊娠・授乳、服薬状況によって適否が異なります。治療中の方や症状が強い方は、医師・薬剤師へご相談ください。
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。