芍薬甘草湯とは?こむら返り・筋肉のけいれん・腹痛に使う漢方薬を体質別に解説

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、体力に関わらず使用でき、筋肉の急激なけいれんを伴う痛みに用いられる漢方薬です。こむらがえり、筋肉のけいれん、差し込むような腹痛、筋肉の突っ張りを伴う腰痛など、「いま起きている急なけいれん」をゆるめる目的で使われます。KanpoNowでは、この処方を「芍薬と甘草の2味で、急な筋肉のこわばりをほどく頓服向きの漢方薬」として整理します。
- 夜中や明け方に、ふくらはぎが急につる
- 運動後や発汗後に、筋肉がけいれんしやすい
- 胃やお腹がキューッと差し込むように痛む
- 筋肉が急にこわばり、動かそうとすると痛む
- 「今つっている」「今けいれんしている」状態を早くゆるめたい
芍薬甘草湯は、体質改善薬というより、急な筋肉のけいれんをゆるめる標治薬です。甘草量が多いため、毎日予防的に飲み続ける使い方には注意が必要です。
芍薬甘草湯とは
芍薬甘草湯は、芍薬と甘草の2つだけで構成される、非常にシンプルな漢方薬です。
芍薬は、血を養い、筋肉のひきつりや痛みを和らげる代表的な生薬です。甘草は、急な痛みや緊張を緩和し、芍薬と協力して筋肉の急迫したこわばりをほどきます。
古典における位置づけ
芍薬甘草湯は、中国の古典『傷寒論』に記載される処方です。古典では、筋肉が急に引きつり、強くこわばる状態に用いられてきました。クラシエでは、別名「去杖湯」とも呼ばれ、筋肉や四肢のけいれん・疼痛に用いられる薬方として紹介されています。
処方名の通り、構成は芍薬と甘草のみです。漢方薬の中でも例外的に構成が少なく、作用点が明確です。体質を大きく動かすというより、急に高まった筋肉の緊張をほどき、痛みのピークを下げることを目的にします。
現代では、こむらがえり、筋肉のけいれん、胃痙攣のような腹痛、腰痛、尿管結石や胆石発作に伴う疝痛、生理痛など、筋肉・平滑筋の急なけいれんを伴う痛みで比較されます。ただし、痛みの原因によっては受診が必要です。
漢方的な病態とメカニズム
東洋医学では、筋肉は血によって養われ、潤いによってしなやかさを保つと考えます。血や津液が不足したり、冷え・発汗・運動負荷で筋肉が急に緊張したりすると、筋肉が引きつって戻らなくなります。
- 筋脈失養:筋肉を養う血や潤いが不足し、つりやすくなる状態
- 急迫:痛みや緊張が急に強まり、体がこわばる状態
- 攣急:筋肉や平滑筋が急に収縮し、強い痛みを出す状態
- 標治:体質改善ではなく、今あるつらい症状をまず楽にする考え方
芍薬は、筋肉をしなやかにし、ひきつりや腹痛を和らげる方向で働きます。甘草は、急な痛みと緊張のピークを緩め、芍薬と組み合わさることで鎮痙の働きが強く出ます。
そのため、芍薬甘草湯は、夜中のこむら返り、運動後の筋けいれん、差し込むような腹痛など、「筋肉が急に縮んで戻らない」状態で使いやすい処方です。
構成生薬と配合バランス
芍薬甘草湯は、2種類の生薬から構成されます。クラシエの一般用製品では、芍薬甘草湯エキスとしてシャクヤク・カンゾウ各3.0gから抽出した1/2量が成人1日量に含まれます。医療用製剤では、芍薬・甘草を各6.0g相当とするものがあります。
※円グラフは、芍薬甘草湯の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。
芍薬甘草湯の味・香り・服用時の体感
芍薬甘草湯は、甘草の強い甘みに、芍薬のほのかな酸味と苦味が重なります。漢方薬の中では甘く飲みやすい部類ですが、甘草が多いため、独特の甘さを強く感じます。
かなり甘い
甘草の甘みが前面に出ます。芍薬のほのかな酸味・苦味が後味に残ります。
やわらかな甘い香り
強い芳香というより、ほんのり甘く、穏やかな漢方薬らしい香りです。
淡褐色〜黄褐色
製品により異なりますが、粉末・顆粒では淡い褐色から黄褐色寄りに見えます。
筋肉がほどける感覚
合う方では、ガチッと固まった筋肉が少しずつゆるみ、痛みの山が下がる感覚があります。
体験の流れ:甘みを感じる → お湯とともに体へ入る → つった筋肉の緊張がゆるむ → 痛みのピークが引いていく感覚。芍薬甘草湯は、慢性痛をじっくり変える薬ではなく、急なけいれんをほどく頓服向きの処方です。
症状別の向き・不向き
芍薬甘草湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、急に起きた筋肉のけいれんか、筋肉が引きつって痛むか、慢性痛ではないか、甘草リスクがないかです。
こむら返り・足のつり
夜間や明け方、運動後、発汗後にふくらはぎが急につる場合に、頓服的に使いやすい代表処方です。
判断ポイント:急につる・筋肉が固まる。筋肉のけいれん・急な筋緊張
スポーツ後や冷え、疲労、脱水などで筋肉がこわばり、急に痛む場合に候補になります。
判断ポイント:攣縮による痛み。差し込むような腹痛
胃腸の平滑筋がキューッとけいれんするような腹痛で比較します。ただし、発熱・嘔吐・下血・激痛では受診が必要です。
判断ポイント:痙攣性の腹痛か。痙攣性の生理痛
子宮の過剰な収縮によるキューッとした痛みでは比較されます。ただし、強い月経痛や急な悪化は婦人科確認が必要です。
判断ポイント:収縮痛・けいれん痛。慢性的な腰痛・関節痛
急なこわばりには使われますが、慢性腰痛や関節の変形、神経痛の根本治療には別の体質対応が必要です。
判断ポイント:今つっている痛みか、慢性痛か。むくみ・高血圧・低カリウム傾向がある方の連用
甘草量が多いため、むくみ、血圧上昇、低カリウム血症、筋力低下のリスクがあります。漫然とした長期連用は避けます。
判断ポイント:甘草リスクが高いか。体質別の向き・不向き
芍薬甘草湯は、急性の筋肉のけいれんに対して、体力に関わらず使用できる処方です。ただし、甘草による副作用リスクが高い方では慎重に考えます。
急性の筋緊張タイプ
体質よりも、今起きている急な筋肉のけいれん・こわばり・痛みを重視して使う処方です。
判断ポイント:急な攣急がある。血虚・陰虚でつりやすいタイプ
筋肉を養う血や潤いが不足し、夜間や疲労時につりやすい方では、芍薬甘草湯を頓服で使いながら本治も考えます。
判断ポイント:血と潤い不足でつる。冷え・疲労でつりやすいタイプ
冷えや疲労で筋肉が硬くなり、明け方につる方では、保温やミネラル補給と併せて考えます。
判断ポイント:冷え・疲労・明け方。水毒・むくみタイプ
むくみやすい方、高血圧傾向の方では、甘草による水分貯留・血圧上昇に注意が必要です。
判断ポイント:むくみやすい体質か。甘草リスクが高い方の長期連用
低カリウム血症、アルドステロン症、ミオパチー、心疾患、腎疾患、利尿薬使用中などでは、自己判断の連用は避けます。
判断ポイント:偽アルドステロン症リスク。効能・効果
芍薬甘草湯の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、KanpoNowでは代表的に次のように整理しています。
体力に関わらず使用でき、筋肉の急激なけいれんを伴う痛みのあるものの次の諸症:こむらがえり、筋肉のけいれん、腹痛、腰痛
※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。
服用上の注意
芍薬甘草湯は、甘草を多く含む処方です。こむら返りに使いやすい一方で、漢方薬の中でも甘草による偽アルドステロン症に特に注意が必要な処方です。
甘草による偽アルドステロン症への強い注意
甘草の主成分であるグリチルリチン酸により、低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加、筋力低下、こむら返り、脱力感、四肢のけいれん・麻痺などが起こることがあります。芍薬甘草湯は甘草量が多いため、他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用にも注意が必要です。
連用ではなく、頓服を基本に考える
芍薬甘草湯は、痛い時、つった時、けいれんした時に使う標治薬として考えます。毎日予防的に飲み続ける場合は、甘草リスクが高くなるため、医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。
心疾患・腎疾患・高血圧・むくみがある方
心臓病、腎臓病、高血圧、むくみ、低カリウム血症、アルドステロン症、ミオパチーがある方、利尿薬・ステロイド薬を服用中の方は、自己判断で使用しないでください。
根本治療との組み合わせ
夜間のこむら返りを繰り返す方は、芍薬甘草湯で「今のけいれん」を止めるだけでなく、冷え、血虚、陰虚、水分・ミネラル不足、腎虚などの背景を整えることが大切です。八味地黄丸料、当帰芍薬散、牛車腎気丸など、体質に応じた本治を別に考える場合があります。
生活養生:水分・ミネラル・保温
こむら返りは、発汗、脱水、ミネラル不足、冷え、筋疲労、睡眠中の血流低下で起こりやすくなります。就寝前の水分補給、汗をかいた日のミネラル補給、足元の保温、ふくらはぎの軽いストレッチを併せて行うと予防に役立ちます。
相談・受診を優先したいサイン
- こむら返りが頻繁に起きる、急に増えた
- 片足だけ強く痛む、腫れる、赤くなる、熱を持つ
- 強い腹痛、発熱、嘔吐、下血、血尿を伴う
- 服用後にむくみ、血圧上昇、体重増加、こむら返り、筋力低下が出る
- 利尿薬、ステロイド薬、グリチルリチン酸製剤、他の漢方薬を併用している
- 心臓病、腎臓病、高血圧、糖尿病、低カリウム血症がある
症状から理解を深める
芍薬甘草湯が気になる方は、腹痛、腰痛、肩こり、便秘、冷えとの関係も確認すると理解が深まります。
似ている漢方薬・構成生薬
こむら返りや痛みに使う漢方薬でも、急性のけいれんか、慢性の足腰の衰えか、冷えが主役か、血虚・水毒が主役かで選び方が変わります。
よくある質問
Q. 芍薬甘草湯はどんな時に飲む漢方薬ですか?
こむら返り、筋肉のけいれん、差し込むような腹痛、筋肉が急につっぱる腰痛など、急激な筋肉のけいれんを伴う痛みに使われます。毎日予防的に飲むより、痛い時・つった時の頓服として考える処方です。
Q. すぐ効きますか?
芍薬甘草湯は漢方薬の中でも比較的即効性を期待して使われる処方です。ただし、効果の感じ方には個人差があります。強い痛みが続く、頻繁に繰り返す、原因が分からない場合は医療機関で確認してください。
Q. 毎日飲んでもいいですか?
自己判断で毎日飲み続けることはおすすめしません。甘草量が多く、偽アルドステロン症、低カリウム血症、むくみ、血圧上昇、筋力低下などのリスクがあります。繰り返し使う場合は専門家に相談してください。
Q. 生理痛にも使えますか?
キューッと収縮するような痙攣性の生理痛では比較されます。ただし、痛みが強い、急に悪化した、出血が多い、発熱がある場合は婦人科で確認してください。
Q. 甘草は入っていますか?
はい。芍薬甘草湯は、芍薬と甘草の2味構成です。特に甘草量が多いため、むくみ、血圧上昇、体重増加、こむら返り、筋力低下、だるさなどが出る場合は服用を中止し、専門家に相談してください。
参考・出典
- PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
- ツムラ「芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)」添付文書
- クラシエ「漢方芍薬甘草湯エキス顆粒」製品情報
- 古典:『傷寒論』芍薬甘草湯関連条文
- 公益社団法人 東京生薬協会・富山大学 和漢医薬学総合研究所等の生薬資料
芍薬甘草湯が合うか迷った方へ
芍薬甘草湯は、こむら返りや筋肉のけいれんに使われる漢方薬ですが、すべての痛みに合うわけではありません。急な筋けいれんなのか、冷えや腎虚が背景にある慢性症状なのか、血虚・水毒が関係するのか、甘草リスクが高い方なのかまで含めて判断することが大切です。

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AI漢方診断をする免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。強い腹痛、発熱、嘔吐、下血、血尿、片足だけの腫れや強い痛み、胸痛、息切れ、服用後のむくみ・血圧上昇・体重増加・こむら返り・筋力低下・脱力感・手足の麻痺などがある場合は、医療機関にご相談ください。妊娠中・授乳中、小児、高齢者、低カリウム血症、アルドステロン症、ミオパチー、高血圧、心臓病、腎臓病、むくみがある方、他のお薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。

