排膿散及湯とは?化膿・歯肉炎・扁桃炎・おできに使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月10日 監修:堀口和彦
排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)

排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)は、『金匱要略』に記される排膿散と排膿湯を合わせた、化膿性疾患に用いられる漢方薬です。赤く腫れて熱を持ち、膿がたまり始めた初期から軽度の化膿状態を、膿を外へ導きながら、腫れの張りやズキズキする痛みをやわらげる方向で整えます。KanpoNowでは、この処方を「膿を導き、腫れを動かし、痛みと緊張をゆるめる漢方薬」として整理します。

排膿散及湯はこんな人に向いています
  • 歯ぐきが赤く腫れ、膿が出そうな感じがある
  • 歯肉炎、歯槽膿漏、扁桃炎などで腫れ・痛みがある
  • おでき、にきび、ものもらいなどが赤く腫れて化膿しやすい
  • 黄色く粘る膿、熱感、ズキズキする痛みがある
  • 初期又は軽い化膿性皮膚疾患で、局所の膿を外へ出したい
  • 排膿散単独よりも、痛みや緊張、胃腸への配慮も含めて考えたい

強い発熱、急速に広がる赤み、顔面や首の腫れ、息苦しさ、飲み込みにくさ、大きな膿瘍、強い痛み、糖尿病や免疫低下がある場合は、漢方で様子を見る前に歯科・耳鼻咽喉科・皮膚科などへ相談してください。

排膿散及湯とは

排膿散及湯は、桔梗甘草枳実芍薬大棗生姜から構成される漢方薬です。

桔梗は膿を外へ導く中心生薬です。枳実は、腫れや張り、気の詰まりを動かし、膿の出口を作る方向で働きます。芍薬と甘草は、炎症による痛みや緊張をやわらげます。大棗と生姜は、胃腸の働きを助け、処方全体の刺激を和らげながら、回復の土台を支えます。

ポイント:排膿散及湯は、赤く腫れて膿がたまる「化膿」の処方です。透明な鼻水や水っぽい分泌物、冷えによる水毒をさばく処方ではありません。

古典における位置づけ

排膿散及湯は、『金匱要略』に記される「排膿散」と「排膿湯」を合わせた処方です。排膿散は枳実・芍薬・桔梗、排膿湯は桔梗・甘草・大棗・生姜を中心とする処方で、排膿散及湯はその二つの考え方を一つにまとめた形です。

名前の「排膿」は、膿を外へ排することを意味します。「散」と「湯」を合わせることで、腫れの張りを動かす力、膿を外へ導く力、痛みや緊張をやわらげる力、胃腸を守る力が組み合わさります。

現代では、化膿性皮膚疾患の初期又は軽いもの、歯肉炎、扁桃炎などで比較されます。大きな膿瘍や重い感染症を自力で治す処方ではなく、あくまで初期又は軽い化膿を早めに外へ導く処方として考えます。

排膿散及湯らしさ:赤い。腫れる。熱を持つ。ズキズキ痛む。膿がある、または膿が出そう。そこに、痛みや緊張、胃腸への配慮も必要。この「湿熱・熱毒が局所に集まった化膿」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、排膿散及湯が合う状態を、湿熱と熱毒が局所に集中した化膿として考えます。余分な熱と老廃物がこもると、局所に赤み、腫れ、痛み、粘り気のある膿が生じます。膿が出口を失うと、患部はさらに張り、痛みが強くなります。

  • 湿熱:熱と湿が絡み、黄色く粘る膿やじゅくじゅくした炎症を作る状態
  • 熱毒:局所の炎症が強く、赤み、腫れ、痛み、化膿を起こす状態
  • 気滞:腫れや張りにより、膿や熱の逃げ場がなくなっている状態
  • 化膿:膿が形成され、外へ出る必要がある状態

桔梗は、膿を外へ導く主役です。枳実は、強い理気作用により、張って詰まった局所を動かします。芍薬と甘草は、痛みや緊張をやわらげます。大棗と生姜は、胃腸を守り、急性期の消耗をやわらげます。

そのため排膿散及湯は、「膿を外へ導く」「腫れの張りを動かす」「痛みと緊張をやわらげる」「胃腸を守りながら急性期を支える」という方向を持つ処方です。

注意:大きな膿瘍、強い発熱、急速に広がる赤み、強い痛み、顔面や首の腫れ、息苦しさ、飲み込みにくさがある場合は、切開排膿や抗菌薬など西洋医学的処置が必要なことがあります。

構成生薬と配合バランス

排膿散及湯は、桔梗・甘草・枳実・芍薬・大棗・生姜の6生薬で構成されます。桔梗が膿を外へ導き、枳実が腫れや張りを動かし、芍薬と甘草が化膿による痛みや緊張をやわらげ、大棗と生姜が胃腸を守りながら処方全体を調和します。

排膿散及湯の構成を、桔梗20%、甘草20%、枳実15%、芍薬15%、大棗15%、生姜15%として合計100%で示した構成イメージです。 排膿散及湯
桔梗20%
甘草20%
枳実15%
芍薬15%
大棗15%
生姜15%
排膿散及湯の内部構造
膿を導き、腫れの張りを動かし、痛みと緊張をやわらげる構成です。
排膿・利咽の軸 桔梗・甘草 膿を外へ導き、のどや歯ぐきなど局所の腫れ・炎症を整える中心の組み合わせです。
理気・散結の軸 枳実 パンパンに張った腫れや詰まりを動かし、膿の逃げ場を作る方向で働きます。
鎮痛・調和の軸 芍薬・大棗・生姜 炎症による痛みや緊張をやわらげ、胃腸への負担と急性期の消耗を抑えます。

※円グラフは、排膿散及湯の構成理解用イメージです。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:排膿散及湯は、赤く腫れて熱を持ち、膿がたまってズキズキ痛む初期〜軽い化膿を、外へ出す方向に導きながら、痛みと緊張をやわらげる処方です。

排膿散及湯の味・香り・服用時の体感

排膿散及湯は、桔梗のえぐみや苦味、枳実の苦味に、甘草・大棗の甘み、生姜のわずかな辛味が重なります。排膿散単独よりも甘みと調和があり、急性期の化膿に使う処方としては比較的飲みやすい印象です。

苦味・えぐみ・甘み

桔梗と枳実の苦味、桔梗のえぐみに、甘草・大棗の甘みが加わります。

薬草と生姜の香り

桔梗や枳実の薬草らしい香りに、生姜の温かい香りが少し重なります。

淡褐色〜黄褐色

製品により異なりますが、粉末・顆粒では淡い褐色から黄褐色に見えます。

張りが抜ける感覚

合う方では、赤く腫れてズキズキする患部の緊張がゆるみ、膿が外へ向かう感覚があります。

体験の流れ:苦味と甘みを感じる → 腫れて張った感じが少しゆるむ → ズキズキする痛みが落ち着く → 膿が出口を見つける → 腫れが軽くなる感覚。排膿散及湯は、慢性の体質改善薬というより、初期〜軽い化膿に対する標治の処方です。

症状別の向き・不向き

排膿散及湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、赤み、腫れ、熱感、痛み、黄色い膿、化膿の初期〜軽度、重症感染の有無です。

歯肉炎・歯槽膿漏の腫れ

歯ぐきが赤く腫れ、膿が出そう、押すと痛い、口臭が強いような化膿傾向で比較します。

判断ポイント:歯ぐきの赤み・腫れ・膿。

扁桃炎・のどの化膿傾向

のどが赤く腫れ、膿栓や膿のような所見があり、痛みを伴う場合に比較します。

判断ポイント:のどの腫れと化膿。

化膿したにきび・おでき・ものもらい

赤く腫れ、中心に膿があり、ズキズキ痛む初期又は軽い化膿性皮膚疾患で比較します。

判断ポイント:膿があるか。

黄色く粘る分泌物を伴う炎症

透明な水っぽい分泌物ではなく、黄色く粘る膿や熱感がある場合に方向性が合います。

判断ポイント:湿熱・熱毒のサイン。
×

透明な鼻水・水っぽい分泌物

アレルギー性鼻炎のような透明な鼻水、水っぽい分泌物は、排膿散及湯の対象ではありません。

判断ポイント:膿か、水か。
×

大きな膿瘍・高熱・急速な悪化

切開排膿や抗菌薬が必要な場合があります。数日で悪化する場合は受診を優先します。

判断ポイント:漢方だけで待たない。

体質別の向き・不向き

排膿散及湯は、局所に熱毒と湿熱が集まり、膿ができるタイプに向きます。著しい胃腸虚弱や冷えが強い方、透明で水っぽい分泌物を開心の方には慎重です。

湿熱・熱毒タイプ

赤み、腫れ、熱感、黄色い膿、ズキズキ痛む化膿があるタイプです。

判断ポイント:熱と膿が局所にこもる。

局所の化膿・腫れ・張りタイプ

局所の炎症と膿を外へ導く力が必要な、初期又は軽い化膿性疾患で比較します。

判断ポイント:局所の実証。

痛みと緊張を伴う化膿タイプ

芍薬・甘草の組み合わせにより、腫れに伴う痛みやこわばりが強い場合にも比較しやすい処方です。

判断ポイント:ズキズキ痛む・張って痛む。

脾気虚・胃腸虚弱タイプ

大棗・生姜で胃腸に配慮していますが、枳実や桔梗が刺激となることがあります。長期連用や空腹時の胃もたれに注意します。

判断ポイント:胃腸が受け止められるか。
×

冷え・水毒タイプ

透明な鼻水、冷えて悪化する水っぽい分泌物、寒証中心の方には方向が異なります。

判断ポイント:黄色い膿か、透明な水か。

効能・効果

排膿散及湯の効能・効果は、KanpoNow商品ページでは次のように整理されています。

化膿性皮膚疾患の初期又は軽いもの、歯肉炎、扁桃炎

※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

排膿散及湯は、初期又は軽い化膿に用いられる処方ですが、重い感染症を漢方だけで引き延ばすのは危険です。また、甘草を含むため、併用薬や長期連用では注意が必要です。

重症化・受診が必要なサイン

大きく腫れて自壊しない膿瘍、高熱、寒気、急速に広がる赤み、強い痛み、顔面や首の腫れ、飲み込みにくさ、息苦しさがある場合は、歯科・耳鼻咽喉科・皮膚科などで確認してください。切開排膿や抗菌薬が必要な場合があります。

甘草による偽アルドステロン症への注意

排膿散及湯は甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意してください。

胃腸虚弱への注意

大棗・生姜で胃腸に配慮された構成ですが、枳実・桔梗は人によって胃腸に刺激となることがあります。胃もたれ、胃痛、悪心、下痢などが出る場合は服用を中止して専門家に相談してください。

妊娠中・授乳中・小児

妊娠中又は妊娠している可能性がある方、授乳中、小児、医師の治療を受けている方、持持病や併用薬がある方は、自己判断で服用せず専門家に相談してください。

引き算の養生

化膿しやすい時期は、脂っこい肉、揚げ物、甘いお菓子、香辛料、アルコールを控えます。これらは体内で湿と熱を助長し、膿や腫れを悪化させる方向に働きます。和食中心のあっさりした食事、睡眠、口腔ケア、患部を清潔に保つことが大切です。

荊芥連翹湯との鑑別

排膿散及湯は、膿を外へ導く急性期の標治の処方です。膿が出て腫れが引いた後に、にきびや扁桃炎、鼻や皮膚の炎症を繰り返す場合は、慢性炎症や解毒証体質を考えて、荊芥連翹湯などを比較します。

漫然と続けない

排膿散及湯は、膿を外へ導く標治の処方です。膿が出て腫れが引いた後に、漫然と飲み続ける処方ではありません。繰り返す化膿や慢性化した皮膚トラブルでは、体質改善の方向を別に考えます。

相談・受診を優先したいサイン

  • 高熱、寒気、強い倦怠感がある
  • 赤みや腫れが急速に広がる
  • 顔面、首、のどが腫れ、飲み込みにくい、息苦しい
  • 歯ぐきの腫れが強く、顔まで腫れている
  • 大きな膿瘍があり、自然に排出されない
  • 糖尿病、免疫低下、抗がん剤治療中など感染が悪化しやすい背景がある
  • 数日服用しても改善しない、又は悪化する
  • 服用後にむくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下、胃部不快感が出る
すぐ相談:膿は「出ればよい」だけではありません。深い膿瘍、歯性感染、扁桃周囲膿瘍、蜂窩織炎などでは、処置が遅れると危険です。悪化傾向がある場合は早めに受診してください。

症状から理解を深める

排膿散及湯が気になる方は、赤み、腫れ、膿、熱感、ズキズキする痛みがあるかを確認すると理解が深まります。今回は未確認の症状ページリンクを増やさず、確認済みの処方ページ・生薬ページを中心に導線を整理しています。

化膿や炎症に使う漢方薬でも、初期の膿を出すのか、慢性の体質改善をするのか、のどの腫れが中心か、透明な水をさばくのかで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 排膿散と排膿散及湯は違いますか?

はい。排膿散は、枳実・芍薬・桔梗を中心とする処方です。排膿散及湯は、排膿散に排膿湯の考え方を合わせた処方で、桔梗・甘草・枳実・芍薬・大棗・生姜で構成されます。痛みや緊張、胃腸への配慮も含めて考えやすい処方です。

Q. どんな膿に向いていますか?

赤く腫れて熱を持ち、黄色く粘る膿がある、または膿が出そうな初期〜軽い化膿に向きます。透明で水っぽい分泌物や冷えによる鼻水には向きません。

Q. 歯ぐきの腫れに使えますか?

歯肉炎など、歯ぐきが赤く腫れて膿が関わるような状態で比較されます。ただし、顔まで腫れる、強い痛み、高熱がある、数日で悪化する場合は歯科受診を優先してください。

Q. にきびやおおできにも使えますか?

赤く腫れて膿ができ始めた初期又は軽い化膿性皮膚疾患で比較されます。慢性化して繰り返す場合は、急性期の排膿だけでなく体質面の見直しも必要です。

Q. いつまで飲みますか?

排膿散及湯は急性期・初期〜軽い化膿を対象にする標治の処方です。膿が出て腫れが引いた後に、漫然と飲み続ける処方ではありません。改善しない場合は受診してください。

Q. 甘草は入っていますか?

はい。排膿散及湯には甘草が含まれます。むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下、脱力感などが出る場合は、服用を中止して専門家に相談してください。他の漢方薬との甘草重複にも注意します。

参考・出典

排膿散及湯が合うか迷った方へ

排膿散及湯は、赤く腫れて膿がある初期〜軽い化膿に使われる漢方薬ですが、すべての炎症や分泌物に合うわけではありません。黄色い膿がある湿熱・熱毒タイプなのか、透明な水っぽい鼻水なのか、重い感染症として処置が必要なのかを見極めることが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。高熱、急速に広がる赤み、強い痛み、顔面や首の腫れ、息苦しさ、飲み込みにくさ、大きな膿瘍、糖尿病や免疫低下がある場合は、医療機関にご相談ください。服用後に発疹・発赤・かゆみ、胃部不快感、悪心、下痢、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下などがある場合は、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。