荊芥連翹湯とは?慢性鼻炎・蓄膿症・にきびに使う漢方薬を体質別に解説

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)は、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきびなど、鼻・喉・皮膚に慢性的な炎症を繰り返しやすい方に用いられる漢方薬です。日本では一貫堂医学の森道伯が、青年期以降の「解毒証体質」に対する処方として発展させたものとして知られています。KanpoNowでは、この処方を「上半身の粘膜と皮膚にこもる熱毒・湿熱を冷まし、膿みやすい体質を整える漢方薬」として整理します。
- 慢性鼻炎・蓄膿症・鼻づまりを繰り返しやすい
- 慢性扁桃炎、のどの腫れ、耳鼻科系の炎症が長引きやすい
- 赤く腫れるにきび、膿みやすい吹き出物が繰り返す
- 皮膚の色が浅黒く、手足の裏に脂汗をかきやすい
- 胃腸が極端に弱いタイプではなく、炎症や熱感が前面にある
反対に、透明な鼻水が多く、強い寒気や冷えが中心の風邪初期、胃腸虚弱で食欲が落ちやすい方、下痢しやすい方には慎重に考えます。荊芥連翹湯は、慢性的な熱毒・湿熱を冷ましてさばく処方です。
荊芥連翹湯とは
荊芥連翹湯は、黄芩、黄柏、黄連、桔梗、枳実、荊芥、柴胡、山梔子、地黄、芍薬、川芎、当帰、薄荷、白芷、防風、連翹、甘草から構成される漢方薬です。
大きく見ると、黄連解毒湯の清熱解毒、四物湯の補血・活血、さらに荊芥・連翹・防風・白芷・薄荷などの解表・排膿・鼻通りの方向が重なった大きな処方です。鼻、喉、皮膚など体の上部に炎症が残り、赤み・腫れ・膿みやすさ・くすみとして現れるときに輪郭がはっきりします。
古典における位置づけ
荊芥連翹湯の背景には、明代の医学書『万病回春』に見られる耳鼻咽喉領域の処方があります。ただし、現在日本で使われる荊芥連翹湯は、古典処方そのものをそのまま用いるというより、一貫堂医学を創始した森道伯が、解毒証体質に対する処方として発展させたものと整理するのが正確です。
一貫堂医学では、解毒証体質を、皮膚や粘膜に炎症を起こしやすく、慢性鼻炎、蓄膿症、扁桃炎、中耳炎、にきび、湿疹などを繰り返しやすい体質として見ます。荊芥連翹湯は、その中でも青年期から大人にかけて、顔面・頭部·耳鼻咽喉·皮膚に症状が出やすい方に用いられてきました。
名前にある荊芥と連翹は、どちらも風熱や炎症をさばく方向の生薬です。処方全体では、黄連解毒湯系で熱毒を冷まし、四物湯系で血を整え、さらに鼻·喉·皮膚の出口からこもった熱や膿みを外へ動かします。
漢方的な病態とメカニズム
東洋医学では、荊芥連翹湯が合う状態を、湿熱・熱毒が上焦、つまり顔面・頭部・鼻・喉・皮膚に停滞し、さらに慢性炎症によって血の巡りも悪くなった状態として考えます。
- 湿熱:熱と老廃物が結びつき、脂っぽさ、赤み、膿みやすさ、黄色い分泌物として現れる状態
- 熱毒:炎症が強く、赤く腫れる、膿む、繰り返す、慢性化する状態
- 血瘀:炎症が長引き、皮膚が浅黒い、にきび跡が残る、くすみやすい状態
- 解毒証体質:鼻・喉・皮膚・リンパなどで炎症を繰り返しやすい体質傾向
慢性鼻炎や蓄膿症では、鼻の奥に熱と湿が残り、黄色く粘る鼻汁、鼻づまり、頭重感が続きやすくなります。にきびでは、皮脂と熱が毛穴周囲にこもり、赤く腫れ、膿み、治ってもまた別の場所に出るという流れになります。
荊芥連翹湯は、黄芩・黄連・黄柏・山梔子で内側の熱毒を冷まし、当帰・川芎・芍薬・地黄で血を整え、荊芥・防風・薄荷・白芷・連翹で鼻・喉・皮膚表面の炎症を外へさばきます。柴胡・枳実は気の巡りを整え、桔梗・甘草は咽喉と排膿の方向を支えます。
構成生薬と配合バランス
荊芥連翹湯は17味からなる大処方です。清熱解毒、補血・活血、解表・排膿・鼻通り、気の巡りを一度に見るため、慢性化した鼻・喉・皮膚の炎症に対応しやすい構成です。

















※円グラフは、荊芥連翹湯の17味構成を理解しやすくするための構成イメージです。甘草を4%、その他16味を各6%として合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。
荊芥連翹湯の味・香り・服用時の体感
荊芥連翹湯は、黄連・黄柏・黄芩による強い苦みと、当帰・地黄・川芎のもったりした香り、薄荷・荊芥・防風の軽く抜けるような香りが重なります。甘く飲みやすい処方ではなく、熱毒と慢性炎症をさばく処方らしい苦みが前に出ます。
強い苦みと重み
黄連・黄柏系の苦みに、地黄や当帰のもったりした甘み・えぐみが混ざります。
当帰と薄荷の混合香
当帰・川芎のセロリ様の香りに、薄荷や荊芥のスッと抜ける香りが重なります。
褐色〜暗褐色
粉末・顆粒は褐色から暗褐色。清熱薬と補血薬を含む、濃い印象の色調です。
じわじわ整う
合う方では、鼻の奥の重さ、脂っぽいにきび、赤みが、数週間単位で少しずつ落ち着く感覚があります。
体験の流れ:苦みが先に立つ → 当帰・地黄の重さが残る → 薄荷・荊芥が鼻や喉に少し抜ける → 継続すると、鼻の奥の重さ、にきびの腫れ、脂っぽさが少しずつ軽くなる感覚。短期の風邪薬ではなく、体質改善として使う処方です。
症状別の向き・不向き
荊芥連翹湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、鼻・喉・皮膚に慢性炎症が残り、熱感・膿みやすさ·浅黒さ・脂っぽさを伴うかです。
慢性化したにきび・吹き出物
赤く腫れる、膿みやすい、治ってもまた出る、肌が浅黒くくすむタイプで候補になります。熱毒と血瘀が重なったにきびを見ます。
判断ポイント:赤み・膿み・再発・くすみ。蓄膿症・慢性鼻炎・鼻づまり
鼻の奥が重い、黄色く粘る鼻汁、慢性的な鼻づまり、副鼻腔炎を繰り返すタイプで候補になります。湿熱が上部に残る状態を見ます。
判断ポイント:黄色い分泌物・鼻の奥の重さ。慢性扁桃炎・喉の炎症を繰り返す
喉が腫れやすい、扁桃炎を繰り返す、耳鼻咽喉に炎症が残りやすいタイプで比較します。急性の強い喉痛では駆風解毒湯も比較します。
判断ポイント:急性ではなく、繰り返す喉の炎症。皮膚のかゆみ・湿疹・アトピー傾向
皮膚や粘膜が過敏で、赤み、かゆみ、炎症を繰り返すタイプで比較します。ジュクジュクが強く全身性なら消風散なども見ます。
判断ポイント:慢性炎症と過敏さがある。胃腸が弱い方
地黄・当帰などの補血薬と、黄連・黄芩などの清熱薬が胃腸に負担となることがあります。胃もたれ、食欲不振、下痢が出る場合は注意します。
判断ポイント:服用後の胃もたれ・食欲低下。透明な鼻水・強い寒気の風邪初期
水っぽい鼻水、強い寒気、冷え、汗が出ない風邪は風寒タイプです。荊芥連翹湯の強い清熱方向は合わない、小青竜湯など別方向を比較します。
判断ポイント:冷えと水様鼻水が主役なら不向き。体質別の向き・不向き
荊芥連翹湯は、湿熱・熱毒・血瘀を中心に見る処方です。特に、上半身の慢性炎症、皮膚や粘膜の過敏さ、浅黒い皮膚、脂汗、腹壁の緊張が手がかりになります。
湿熱・熱毒
赤み、腫れ、膿みやすさ、黄色い分泌物、脂っぽさがあるタイプです。鼻・喉・皮膚に熱毒が居座る状態に向きます。
判断ポイント:炎症が熱く、粘り、繰り返す。血瘀を伴う慢性炎症
皮膚が浅黒い、にきび跡が残る、くすみやすい、慢性炎症が長引くタイプです。四物湯系の生薬で血の巡りも見ます。
判断ポイント:くすみ・跡・長引く炎症。解毒証体質
皮膚・鼻・喉・リンパなどに炎症を繰り返しやすい体質です。荊芥連翹湯は、青年期から大人にかけての解毒証体質で比較されます。
判断ポイント:鼻・喉・皮膚にまたがる慢性炎症。脾気虚・胃腸虚弱
胃腸が弱く、食欲が落ちやすい、下痢しやすい方では注意します。重い補血薬と苦寒薬が負担になりやすいため、体調変化を確認します。
判断ポイント:胃もたれ·軟便・食欲低下。陽虚・冷え中心
体が冷え切っている、透明な鼻水が多い、温めると楽、寒気が強いタイプには向きません。清熱薬が多いため、冷えを悪化させることがあります。
判断ポイント:寒さが主役なら避ける。効能・効果
荊芥連翹湯の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、KanpoNowでは代表的に次のように整理しています。
体力中等度以上で、皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの次の諸症:蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび
※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。
服用上の注意
荊芥連翹湯は、清熱解毒と補血・活血をあわせ持つ処方です。体質に合う場合は慢性炎症に使いやすい一方、胃腸障害、黄芩を含む処方で注意される間質性肺炎・肝機能障害、甘草による偽アルドステロン症、山梔子長期連用時の腸間膜静脈硬化症に注意します。
胃腸障害への注意
地黄・当帰などの補血薬は、体質によって胃もたれや下痢を起こすことがあります。さらに黄連・黄芩・黄柏などの苦寒薬は、胃腸を冷やして食欲を落とす場合があります。服用後に胃部不快感、食欲不振、下痢が出る場合は、服用方法や処方の見直しが必要です。
黄芩による間質性肺炎・肝機能障害への注意
荊芥連翹湯には黄芩が含まれます。まれに、間質性肺炎や肝機能障害が報告されることがあります。発熱、空咳、息切れ、強いだるさ、黄疸、尿の色が濃いなどの異常がある場合は、服用を中止して医療機関に相談してください。
甘草による注意
荊芥連翹湯には甘草が含まれます。甘草を含む漢方薬を複数併用したり、長く続けたりすると、偽アルドステロン症や低カリウム血症に注意が必要です。
- 手足のむくみ
- 血圧上昇
- 体重増加
- だるさ、脱力感
- こむら返り、筋肉のけいれん
山梔子の長期連用への注意
山梔子を含む漢方薬では、長期連用により腸間膜静脈硬化症が報告されています。腹痛、下痢、便秘、腹部膨満などが繰り返し出る場合、また長期服用を続ける場合は、医師・薬剤師に相談してください。
本治としての服用期間の考え方
荊芥連翹湯は、1〜2日で痛みだけを止める処方というより、慢性炎症を繰り返す体質を整える本治の処方です。ただし、漫然と長期連用してよいという意味ではありません。症状の変化、副作用、胃腸の負担を見ながら、必要に応じて専門家と見直します。
相談・受診を優先したいサイン
- 鼻づまりや副鼻腔炎が長引き、強い頭痛・発熱・顔面痛がある
- にきびや皮膚炎が化膿し、腫れや痛みが強い
- 服用後に発熱、空咳、息切れ、強いだるさが出る
- 黄疸、尿の色が濃い、肝機能異常を指摘された
- 下痢、腹痛、胃もたれ、食欲不振が続く
- むくみ、脱力感、こむら返り、血圧上昇が出る
症状から理解を深める
荊芥連翹湯が気になる方は、肌荒れ・鼻づまり・アトピー・アレルギー・かゆみとの関係も確認すると理解が深まります。
似ている漢方薬・構成生薬
皮膚や鼻の炎症に使われる処方でも、赤い顔面のにきびなのか、全身のジュクジュクした湿疹なのか、鼻の奥の膿みなのか、下半身の湿熱なのかで選び方が変わります。
よくある質問
Q. 荊芥連翹湯はどんなにきびに向いていますか?
赤く腫れる、膿みやすい、治ってもまたできる、皮膚が浅黒くくすむ、脂っぽいにきびに向きます。乾燥だけが主役のにきびや、胃腸虚弱が強い方では別処方も検討します。
Q. 慢性鼻炎や蓄膿症に使うときの目安は何ですか?
鼻の奥が重い、黄色く粘る鼻汁、鼻づまりが長引く、副鼻腔炎を繰り返すような湿熱・熱毒タイプで候補になります。透明な水様鼻水と冷えが中心なら別方向です。
Q. 温清飲との違いは何ですか?
温清飲は、血を整えながら熱を冷ます処方です。荊芥連翹湯は、その温清飲の方向に、鼻・喉・皮膚表面の炎症や膿みを外へさばく生薬が加わった処方と考えると理解しやすくなります。
Q. どれくらい飲むとよいですか?
慢性的な炎症体質を整える目的では、数日で判断するより、数週間から1〜2ヶ月程度の変化を見ることがあります。ただし、胃腸症状や副作用が出た場合は、継続せず相談してください。
Q. 長期服用で注意することはありますか?
黄芩を含むため間質性肺炎・肝機能障害、甘草を含むため偽アルドステロン症、山梔子を含むため長期連用時の腸間膜静脈硬化症に注意します。漫然と続けず、症状と体調を見ながら専門家に相談してください。
参考・出典
- PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
- PMDA「一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索」
- 古典:『万病回春』耳鼻咽喉関連処方
- 一貫堂医学・森道伯による解毒証体質の処方解説
- 小太郎漢方製薬「荊芥連翹湯」処方解説
- 名城大学「漢方処方解説:荊芥連翹湯」
荊芥連翹湯が合うか迷った方へ
荊芥連翹湯は、慢性鼻炎、蓄膿症、慢性扁桃炎、にきびに使われる漢方薬ですが、すべての鼻炎やにきびに合うわけではありません。湿熱・熱毒が主役なのか、血瘀があるのか、冷えが主役なのか、胃腸が耐えられるか、黄芩・甘草・山梔子の注意が必要かまで含めて判断することが大切です。

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AI漢方診断をする免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。慢性鼻炎、蓄膿症、慢性扁桃炎、にきび、皮膚炎が長引く場合や悪化する場合、発熱、強い痛み、膿、息切れ、空咳、黄疸、強いだるさ、腹痛・下痢、むくみ、脱力感などがある場合は、医療機関にご相談ください。妊娠中・授乳中、小児、高齢者、基礎疾患がある方、他のお薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。