更年期むくみ|ストレス性の張り・尿が出にくい気滞タイプ
監修:堀口和彦|更新日:2026-06-19
ストレスを感じるとお腹が張る。イライラすると顔や手が張るようにむくむ。尿意はあるのに出にくい。
更年期むくみの中でも、「ストレスで張る」「お腹がガスで苦しい」「胸やのどがつかえる」「尿が出にくい、または近くなる」方は、漢方でいう気滞(きたい)タイプとして考えることがあります。
気滞とは、生命エネルギーである気が不足しているのではなく、体の中で渋滞している状態です。気は血や水を動かす先導役です。気が滞ると、水の巡りも止まり、張るようなむくみや排尿・排便の乱れにつながります。
このページでわかること
- 更年期にストレス性の張り・尿が出にくいむくみが起こる理由
- 気滞タイプの更年期むくみの特徴
- 湿痰・湿熱・血瘀・血虚・陽虚との見分け方
- 分消湯・半夏厚朴湯などを考えるときの目安
- 心身の緊張を解き、気と水を流す生活養生
目次
ストレス性の張りとむくみのメカニズム
更年期には、女性ホルモンの変動に伴って、自律神経、気分、睡眠、体温調節、水分代謝などが揺らぎやすくなります。更年期の不調には、イライラ、不眠、冷え、発汗、肩こり、疲労感など多様な症状があります。*①
気滞タイプのむくみでは、水が多すぎることだけが問題ではありません。水を動かす動力である気が滞り、その結果として水も血も動きにくくなっている状態を考えます。
ストレスや緊張が強いと、胸郭やお腹、骨盤まわりがこわばり、呼吸が浅くなりやすくなります。すると自律神経の働きも乱れ、排尿・排便・発汗などのコントロールが不安定になり、張るようなむくみや尿の出にくさにつながります。
更年期のホルモン変動、精神的ストレス、我慢、緊張により、気の巡りが詰まりやすくなります。
気が水を動かせなくなり、顔・手・お腹・下半身に張るようなむくみが出やすくなります。
尿が出にくい、尿が近い、便やガスが出にくいなど、排泄のコントロールが乱れます。
気が滞ると、水も止まる
漢方では、水や血は、気の働きによって全身を巡ると考えます。気がのびやかに流れていれば、水分も必要な場所へ巡り、不要な水は尿や汗として出やすくなります。
しかし、ストレス、緊張、我慢、怒り、心配が続くと、気の流れが詰まります。気が止まると、水も同じ場所に停滞しやすくなります。
その結果、重だるい水太りというより、風船が膨らむような張り感、顔や手の張り、お腹の張り、胸のつかえ、尿の出にくさとして現れます。
自律神経の乱れと排泄コントロール
ストレスや緊張が強いと、交感神経が優位になりやすく、筋肉や血管、内臓の動きがこわばります。排尿・排便・発汗のリズムも乱れやすくなります。
そのため、尿意はあるのに出にくい、緊張するとトイレが近い、お腹が張るのにガスや便が出ない、胸やのどがつまるといった状態が起こります。
気滞タイプでは、むくみの強さがストレスの度合いによって変わりやすいことも特徴です。嫌なことがあった日、緊張が強い日、予定を詰め込んだ日に、張りやむくみが強くなる場合は、気の滞りを考えます。
気滞タイプは「水が重い」より「張って苦しい」むくみです。
水を抜くことだけでなく、気をゆるめ、呼吸を深くし、排尿・排便・発汗のリズムを取り戻すことが大切です。
気滞タイプの更年期むくみとは
気滞タイプは、気が不足しているのではなく、十分にあっても流れが悪く渋滞している状態です。更年期むくみでは、ストレスによる張り、腹部膨満感、胸やのどのつかえ、尿の出にくさ、イライラとして現れやすくなります。
このタイプのむくみは、湿痰タイプのように水がたまって重だるいだけではありません。張る、つかえる、詰まる、苦しいという訴えが目立ちます。
むくみの部位も一定しないことがあります。ある日は顔や手が張り、別の日はお腹が張る。ストレスが抜けると軽くなる。気分や緊張の波によって、むくみの強さが変わりやすいのが特徴です。
気滞タイプで見られやすい症状
- ストレスで顔や手が張るようにむくむ
- お腹がパンパンに張る
- みぞおちや胸がつかえる
- のどに何か詰まったような違和感がある
- げっぷやおならが多い、または出そうで出ない
- 尿意はあるのに尿が出にくい
- 緊張するとトイレが近くなる
- 便秘と下痢を繰り返すことがある
- イライラしやすい、怒りっぽい
- ため息が多い
- 眠りが浅い、不眠がある
- のぼせ、動悸、肩こりを伴うことがある
気滞タイプは、性格の問題ではありません。
イライラや張りは、頑張りすぎた気が滞っているサインです。まずは自分を責めず、気をゆるめて流す方向で整えていきます。
気滞タイプのセルフチェック
以下に当てはまる項目が多いほど、気滞タイプの更年期むくみを考えます。
むくみ方の特徴
- ストレスでむくみが強くなる
- 顔や手が張るようにむくむ
- お腹が風船のように張る
- 日によってむくむ場所や強さが変わる
- リラックスすると軽くなることがある
体調の特徴
- 胸やのどがつかえる
- げっぷ、ガス、便秘がある
- 尿が出にくい、または近くなる
- イライラ、緊張、不眠がある
- ため息が多く、呼吸が浅い
気滞タイプでは、むくみだけを見ても判断しにくいことがあります。気分の波、ストレス、呼吸、胸やお腹の張り、排尿・排便のリズムまで含めて見ていくことが大切です。
ほかの更年期むくみタイプとの違い
更年期のむくみは、どこがむくむか、熱いのか冷えるのか、疲れるのか張るのか、便通や尿の状態はどうかを組み合わせて見ます。
| むくみの出方 | 漢方で見たい背景 | 体質 |
|---|---|---|
| 足がパンパン、下半身が重い ▶詳しく見る |
水分代謝が悪く、湿や痰が停滞 | 湿痰 |
| 熱感・喉の渇き・便秘を伴う ▶詳しく見る |
湿と熱がこもり、炎症を伴う | 湿熱 |
| 冷えのぼせ、肩こり、足のむくみ ▶詳しく見る |
血の巡りが悪く、リンパや静脈も滞る | 血瘀 |
| 色白、貧血気味、疲れやすい ▶詳しく見る |
血が不足し、水を血管内に保つ力が弱い | 血虚 |
| 芯から冷え、夜間尿や腰痛がある ▶詳しく見る |
陽気が不足し、水を巡らせる力が弱い | 陽虚 |
|
ストレスで張る・尿が出にくい |
気が滞り、水の巡りも止まる | 気滞 |
気滞タイプは、湿痰タイプのように下半身の重だるい水太りが中心ではありません。湿熱タイプのように熱感・喉の渇き・便秘・尿の濃さが中心でもありません。
中心にあるのは、気の滞りです。気が詰まることで、水も動かなくなり、張るようなむくみ、腹部膨満感、尿の出にくさ、胸やのどのつかえが出やすくなります。
気滞タイプは、利水だけでなく「理気」が重要です。
水を出すだけでなく、気を動かし、呼吸と自律神経を整え、排尿・排便・排ガスの流れを回復させることが大切です。
漢方薬を考えるときの処方鑑別
気滞タイプの更年期むくみでは、単に利尿だけを考えるのではなく、理気(りき)と利水(りすい)を組み合わせます。滞った気を動かしながら、水の通り道も整えることが重要です。
目安:体力中等度以上で、尿量が少なく、ときにみぞおちがつかえて便秘傾向があり、むくみ、排尿困難、腹部膨満感を伴う場合に検討されます。*⑤
考え方:停滞した水と気を分けてさばくことを考える処方です。水分代謝を整える生薬と、気を動かす生薬を組み合わせ、腹部の張り、尿量減少、むくみを同時に見たいときに候補になります。
目安:気分がふさぎ、のどや食道部に異物感・つかえ感があり、ときに動悸、めまい、吐き気などを伴う場合に検討されます。*⑥
考え方:精神的な緊張や不安を背景に、気が滞り、水分代謝や胃の動きも乱れている状態で考えます。のどのつかえ、胸の圧迫感、腹部の張りが目立つ気滞タイプで候補になります。
抑肝散(よくかんさん)・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
目安:イライラ、精神的緊張、不眠、のぼせ、動悸、不安感などが強く、ストレスがむくみや排尿の乱れに関与している場合に検討されます。*⑦⑧
考え方:直接的に水を抜くというより、自律神経の高ぶりや気の滞りを整える土台として考えます。緊張がほどけることで、排尿・排便・発汗のリズムが整いやすくなります。
目安:胸の圧迫感、呼吸の浅さ、気分のふさぎ、胃腸のつかえがあり、ストレスを感じやすい方で検討されます。*⑨
考え方:香りのある生薬で気を巡らせ、胸や胃の緊張をゆるめる方向で考えます。軽い気滞、気分のふさぎ、呼吸の浅さがむくみや張りに関係している場合に候補になります。
使用前に確認したいこと
分消湯などには利水・通便に関わる生薬を含む製剤があります。半夏厚朴湯、抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯、香蘇散も、体質、胃腸の状態、便通、睡眠、服薬状況によって適否が変わります。複数の漢方薬を併用する場合は、甘草・麻黄・大黄などの重複にも注意してください。妊娠中・授乳中の方、服薬中の方、心疾患・腎疾患・高血圧などがある方は、自己判断せず医師または薬剤師にご相談ください。*⑤~⑩
気滞に見えて、別の処方を考えることがあるケース
- 足がパンパンで、下半身の重だるさと冷えが中心なら、湿痰タイプを考えます。
- 熱感、喉の渇き、便秘、尿の濃さを伴うなら、湿熱タイプを考えます。
- 冷えのぼせ、肩こり、下腹部の張り、シミが強いなら、血瘀タイプを考えます。
- 色白、貧血気味、疲れやすさ、めまいが強いなら、血虚タイプを考えます。
- 芯から冷え、夜間尿、腰痛、下痢を伴うなら、陽虚タイプを考えます。
気滞タイプの生活養生
気滞タイプの更年期むくみでは、心と体の緊張をゆるめ、気を流すことが大切です。水分量だけを調整するのではなく、呼吸、感情、姿勢、腹部の緊張、気分転換を整えていきます。
1. 腹式呼吸で気を下ろす
ストレスを受けると、胸や肩に力が入り、呼吸が浅くなります。呼吸が浅くなると、気が上に詰まり、胸やお腹の張り、尿の出にくさ、のぼせが起こりやすくなります。
朝の起床前と夜の就寝前に、仰向けになって下腹部を意識し、腹式呼吸を10回ほど行いましょう。ゆっくり吸って、吐く息を長めにします。横隔膜が動くことで、内臓の緊張がゆるみ、気と水が巡りやすくなります。
2. イライラする自分を責めない
イライラは、性格の弱さではありません。気が多く、頑張っているからこそ、その気が行き場を失って詰まっているサインです。
まずは「今、気が滞っているのだ」と受け止めましょう。イライラする自分を責めるより、深呼吸する、少し歩く、肩の力を抜く、予定を減らすなど、気の逃げ道を作ることが大切です。
3. 声を出して笑う
笑うことは、滞った気を入れ替えるよい養生です。声を出して笑うと、胸郭が開き、呼吸が深くなり、心身の緊張がほどけます。
好きな動画を見る、落語やお芝居を見る、気のおけない人と話すなど、笑える時間を意識的に作りましょう。真面目に頑張りすぎる方ほど、笑いの時間が気を流す助けになります。
4. 音楽・香り・芸術で気を巡らせる
気滞タイプでは、理屈で気分を変えようとしても、かえって考えすぎてしまうことがあります。音楽、香り、映画、舞台、自然、花、散歩など、感覚から気を動かす養生が合います。
好きな音楽を聴く、香りのよいお茶を飲む、季節の花を見る、短い散歩に出るなど、「ふっと緩む」時間を増やしましょう。
5. お腹の「の」の字マッサージをする
ストレスで胃腸が緊張すると、ガスや水がたまり、お腹が張りやすくなります。入浴中や寝る前に、おへそを中心に時計回りで「の」の字を描くように、やさしくマッサージしてみましょう。
強く押す必要はありません。お腹の緊張がゆるむことで、排ガス、排便、排尿のリズムが整いやすくなります。
6. 体を動かして気を流す
嫌なことがあったときに、ずっと座って考え続けると、気はさらに詰まりやすくなります。短い散歩、掃除、ストレッチ、階段の上り下りなど、体を少し動かすことで気が流れやすくなります。
激しい運動で追い込む必要はありません。気分が少し変わる程度、呼吸が深くなる程度の動きで十分です。動いた後にお腹の張りや胸のつかえが軽くなる場合は、気が巡っているサインです。
関連ページ
更年期むくみは、イライラ、不眠、便秘、冷え、疲労感、ホットフラッシュなどと重なって現れることがあります。以下のページもあわせてご覧ください。
よくある質問
ストレスでむくみや張りが強くなるのは気滞ですか?
気滞が関係することはあります。特に、ストレスでお腹や顔・手が張る、胸やのどがつかえる、尿が出にくい、イライラや不眠がある場合は、気の滞りを考えます。ただし、腎臓・心臓・甲状腺・泌尿器などの病気によるむくみや排尿異常もあるため、急な症状や強い症状は医療機関で確認してください。
尿が出にくいのに、むくむことはありますか?
あります。尿として出す流れが悪いと、体内に水が停滞しやすくなります。気滞タイプでは、ストレスや緊張によって排尿コントロールが乱れ、尿意はあるのに出にくい、または緊張すると近くなることがあります。
分消湯はどんなむくみに使いますか?
尿量が少なく、みぞおちのつかえ、便秘傾向、腹部膨満感、むくみ、排尿困難があるような、気と水が同時に滞るタイプで候補になることがあります。ただし、体質や便通、持病、服薬状況によって合わない場合があります。
半夏厚朴湯はむくみにも関係しますか?
半夏厚朴湯は、気分のふさぎ、のどのつかえ、胸の圧迫感、吐き気などがある気滞タイプで候補になることがあります。直接水を抜くというより、気の滞りをゆるめることで、水の巡りや胃腸の動きを整える考え方です。
気滞タイプは水分を減らせばよいですか?
水分を減らすだけでは不十分です。気滞タイプでは、水の量よりも、気が詰まって水が動かないことが中心です。腹式呼吸、気分転換、軽い運動、腹部マッサージなどで、気と水を流すことが大切です。
受診の目安
以下のような場合は、更年期むくみや気滞タイプと決めつけず、医療機関で相談してください。
- 片脚だけ急にむくむ、痛みや赤みを伴う場合
- 息切れ、胸痛、動悸、強い疲労感を伴う場合
- 顔やまぶたのむくみが強い、尿量が少ない場合
- 尿がほとんど出ない、排尿時痛、血尿、発熱を伴う場合
- 強い腹痛、嘔吐、血便、便が出ない状態が続く場合
- 不安、不眠、動悸、パニック様症状が強く日常生活に支障がある場合
- 血圧、血糖、脂質、腎機能、心機能、肝機能、甲状腺の異常を指摘されている場合
- 妊娠中・授乳中、服薬中、持病がある、ホルモン補充療法を受けている場合
尿が出にくい・むくむ症状には、体質以外の原因が隠れていることがあります。
尿がほとんど出ない、血尿、排尿時痛、発熱、片脚だけのむくみ、息切れや胸痛を伴うむくみは、自己判断せず医療機関へご相談ください。
参考・出典
- *① 厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト:更年期」
- *② 厚生労働省「こころもメンテしよう」
- *③ 日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会「夜間頻尿診療ガイドライン 第2版」
- *④ PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
- *⑤~⑨ PMDA「分消湯・半夏厚朴湯・抑肝散・柴胡加竜骨牡蛎湯・香蘇散」医療用医薬品情報
- *⑩ PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」および各製剤の使用上の注意
体質チェックへ
更年期の「ストレスで張る・尿が出にくいむくみ」は、身体が「気が滞り、水の巡りも止まっています」と知らせているサインかもしれません。
気滞なのか、湿痰なのか、湿熱・血瘀・血虚・陽虚が重なっているのか。むくみだけでなく、ストレス、胸やのどのつかえ、お腹の張り、排尿・排便の状態まで含めて体質を見ていきましょう。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものであり、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。漢方薬は体質や症状、持病、便通、胃腸の状態、睡眠、服薬状況によって適否が異なります。持病がある方、服薬中の方、妊娠中・授乳中の方、ホルモン補充療法を受けている方、心疾患・腎疾患・高血圧などがある方は、自己判断で服用せず、事前に医師または薬剤師にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。