血瘀タイプ:54歳女性の相談例
むくみ、水太り・体重増加、冷え、重だるさ・疲労感、便秘、胃腸の弱さ、ほてり、発汗についての相談です。この例では、血の巡りの滞りに、血の不足と冷えの傾向も重なっていました。むくみだけでなく、便通や心身の緊張まで含めて、大柴胡湯と柴胡加竜骨牡蛎湯が選定されました。
夕方になると足がむくむ。顔はカーッと熱くなるのに、足元は冷たい。肩こりや頭痛もつらい。
更年期むくみの中でも、冷えのぼせ、肩こり、頭痛、便秘、下腹部の張り、足のむくみが重なる方は、漢方でいう血瘀(けつお)タイプとして考えることがあります。
足のむくみだけでなく、冷えのぼせ・肩こり・頭痛・便秘まで含めて体質を確認しましょう。
AI漢方診断をしてみる(無料)血瘀タイプのむくみは、「水を抜けばよい」だけではありません。
血の巡りが滞ると、上半身に熱がこもる一方で、下半身は冷え、静脈やリンパの戻りも悪くなります。むくみの背景にある冷えのぼせ、肩こり、便秘、下腹部の張りまで見ることが大切です。
更年期には、女性ホルモンの変化に伴って、自律神経、血流、体温調節、水分代謝が揺らぎやすくなります。そこに冷え、運動不足、睡眠不足、便秘、ストレスが重なると、上半身と下半身の巡りに偏りが生じやすくなります。*①②
漢方でいう血瘀は、血の流れが滑らかでなく、体の一部に滞りが生じている状態です。血は全身に栄養や熱を運ぶため、その巡りが悪くなると、顔や胸には熱がこもる一方で、足先や下腹部には温かさが届きにくくなります。
さらに、血の流れが滞る場所では、水分の回収も進みにくくなります。そのため、冷えのぼせ、肩こり、頭痛、下腹部の張りとともに、夕方の足のむくみが現れやすくなります。
冷え、ストレス、運動不足、長時間の同じ姿勢、便秘などが重なり、骨盤内や下半身の流れが悪くなります。
顔や上半身には熱がこもり、足元や下腹部には十分な温かさが届かず、冷えのぼせが起こりやすくなります。
静脈やリンパの戻りが滞り、足首、ふくらはぎ、太ももに水分が残りやすくなります。
血瘀タイプでは、全身の巡りの悪さが、下半身ではむくみ、上半身では肩こり、首こり、頭痛、のぼせとして現れることがあります。むくみだけを局所の問題として見ず、全身の血と水の巡りとして捉えることが大切です。
血瘀タイプのむくみでは、水ぶくれ感や重だるさだけでなく、こり、張り、痛み、冷えのぼせ、皮膚のくすみなど、巡りの悪さを示す特徴が一緒に現れやすくなります。
以下に当てはまる項目が多いほど、血瘀の傾向を考えます。ただし、片脚だけの急な腫れや胸痛などがある場合は、体質判断より先に医療機関での確認が必要です。
| 見るポイント | 血瘀タイプで出やすい状態 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| むくみ方 | 夕方に足がむくむ。長時間同じ姿勢で悪化する。足が冷えて張る。 | 片側だけ急に腫れる、赤い、熱い、痛い場合は早めに受診します。 |
| 冷え・熱感 | 顔はのぼせるのに、足先や下腹部は冷える。 | 強い動悸、息切れ、胸痛を伴う場合は原因を確認します。 |
| こり・痛み | 肩こり、首こり、頭痛、下腹部の張りがある。 | 突然の激しい頭痛や神経症状がある場合はすぐに受診します。 |
| 便通・腹部 | 便秘がちで、下腹部が張る。排便後に少し楽になる。 | 血便、黒い便、強い腹痛、嘔吐がある場合は医療機関で確認します。 |
| 皮膚・月経歴 | シミ、くすみ、クマがある。月経痛や月経不順の経験がある。 | 閉経後の出血や不正出血は婦人科で確認します。 |
更年期のむくみは、冷えや熱感、疲労、便通、尿、ストレスとの関係から見分けます。
| むくみの出方 | 漢方で見たい背景 | 詳しく見る |
|---|---|---|
| 冷えのぼせ、肩こり、頭痛、足のむくみ | 血の巡りが滞り、水分も戻りにくくなっている | 血瘀タイプ:このページ |
| 足がパンパン、下半身が重い、水太り | 余分な水分が湿や痰として停滞している | 湿痰タイプ |
| 熱感、喉の渇き、便秘、顔の赤み | 余分な水分に熱がこもっている | 湿熱タイプ |
| 色白、疲れやすい、めまい・動悸を伴う | 心身を養う血が不足し、冷えや水分停滞が重なる | 血虚タイプ |
| 芯から冷える、夜間尿、腰痛、足腰の弱り | 体を温め、水を動かす陽気が不足している | 陽虚タイプ |
| ストレスでお腹が張る、尿が出にくい | 気の巡りが滞り、水分の流れも止まっている | 気滞タイプ |
血瘀だけでなく、ほかの体質が重なることがあります。
水太りや胃腸の重さが強ければ湿痰、熱感や便秘が強ければ湿熱、色白やめまいがあれば血虚、芯からの冷えがあれば陽虚、ストレスによる張りがあれば気滞との重なりも考えます。
血瘀タイプの更年期むくみでは、水だけを出すのではなく、滞った血の巡りを整え、冷えのぼせや便通、下腹部の張りまで含めて考えます。
使用前に確認したいこと
桃核承気湯や通導散には、便通に関わる生薬を含む製剤があります。便秘がない方、下痢しやすい方、胃腸が弱い方には合わない場合があります。妊娠中・授乳中の方、服薬中の方、持病がある方は、自己判断せず医師または薬剤師にご相談ください。
血瘀タイプでは、血と水を物理的に動かすことが大切です。長時間同じ姿勢を避け、下半身を冷やさず、便通を整えながら、無理のない運動を続けます。
以下は、堀口和彦先生による過去の漢方相談から、公開用に要約した代表的な相談例です。個人が特定されないように整理し、複数の症状や体質の重なりを見る考え方が伝わる範囲で掲載しています。
血瘀タイプ:54歳女性の相談例
むくみ、水太り・体重増加、冷え、重だるさ・疲労感、便秘、胃腸の弱さ、ほてり、発汗についての相談です。この例では、血の巡りの滞りに、血の不足と冷えの傾向も重なっていました。むくみだけでなく、便通や心身の緊張まで含めて、大柴胡湯と柴胡加竜骨牡蛎湯が選定されました。
血瘀タイプ:44歳女性の相談例
むくみ、水太り・体重増加、尿が少ない・出にくい、冷え、重だるさ・疲労感、便通の乱れ、胃腸の弱さについての相談です。血と水の巡り、冷えのぼせまで含めて、桂枝茯苓丸料と温経湯が選定されました。
血瘀タイプ:47歳女性の相談例
むくみ、水太り、冷え、重だるさ、便秘、ほてり、肩こり、めまいについての相談です。血の巡りに気の滞りと水分停滞も重なっていたため、柴胡加竜骨牡蛎湯と桃核承気湯が選定されました。
血瘀タイプ:40歳女性の相談例
むくみ、水太り、尿が少ない・出にくい、重だるさ、胃腸の弱さ、ほてりについての相談です。血瘀に湿熱と気滞が重なり、心身の緊張や胃腸の状態も含めて、柴胡加竜骨牡蛎湯と半夏厚朴湯が選定されました。
血瘀タイプ:45歳女性の相談例
むくみ、水太り、冷え、重だるさ、胃腸の弱さ、肩こり、不安感についての相談です。気のつかえと水分停滞も考慮され、半夏厚朴湯と香蘇散が選定されました。
血瘀タイプ:49歳女性の相談例
むくみ、冷え、重だるさ、便通の乱れ、胃腸の弱さ、肩こり、めまいについての相談です。血瘀に湿熱と血虚が重なり、血と水の巡りを含めて、桂枝茯苓丸料と柴胡加竜骨牡蛎湯が選定されました。
血瘀タイプ:51歳女性の相談例
むくみ、冷え、重だるさ、便通の乱れ、胃腸の弱さ、ほてり、発汗、肩こりについての相談です。血瘀に湿熱と湿痰が重なり、冷えと熱感、胃腸の状態まで含めて、当帰芍薬散と半夏厚朴湯が選定されました。
※上記は、堀口和彦先生による過去の漢方相談・処方選定データをもとに公開用に要約した参考例です。漢方薬の選定は、症状名だけでなく、冷え、胃腸の状態、便通、睡眠、発汗、服薬状況などを含めて総合的に判断されます。KanpoNow薬局の販売実績・改善実績を示すものではなく、効果を保証するものでもありません。
血瘀の傾向を考える材料にはなりますが、それだけでは決まりません。肩こり、頭痛、便秘、下腹部の張り、皮膚のくすみ、月経歴などを合わせて確認します。湿痰、血虚、陽虚などが重なることもあります。
血瘀タイプでは、全身の巡りの悪さが、下半身ではむくみ、上半身では肩こり、頭痛、のぼせとして現れることがあります。水だけでなく、血の巡りを整える視点が必要です。
冷えのぼせ、肩こり、頭痛、しみ、月経不順などを伴う血瘀タイプでは候補になることがあります。ただし、体力、便通、胃腸、持病、服薬状況によって適否が変わるため、医師または薬剤師に相談してください。
体力があり、のぼせ、便秘、下腹部の張りや圧痛などが強い場合は候補になることがあります。ただし、便通に関わる生薬を含むため、下痢しやすい方や胃腸が弱い方には合わない場合があります。
色白、冷え、めまい、疲れやすさ、むくみがあり、血虚と水分停滞が重なる場合に候補になります。血瘀だけが中心の方とは考え方が異なるため、全体の体質を確認します。
長時間同じ姿勢を避け、足首回し、かかとの上げ下げ、短い散歩などを無理のない範囲で行うことは、下半身の巡りを助けます。ただし、片脚の急な腫れや痛み、息切れ、胸痛がある場合は運動せず受診してください。
冷えのぼせでは、顔が熱くても足元や下腹部が冷えていることがあります。全身を強く冷やすのではなく、室温や衣服を調整しながら、下半身を冷やしすぎないことが大切です。
更年期世代のむくみでも、すべてが更年期や体質によるものとは限りません。次のような場合は、漢方薬を自己判断で試す前に医療機関へ相談してください。
本ページは、漢方・東洋医学の考え方を一般向けに解説した情報です。特定の病気の診断や治療、漢方薬の使用を指示するものではありません。症状が強い場合、急に悪化した場合、持病や服薬がある場合は、医師または薬剤師にご相談ください。
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。