血虚タイプ:43歳女性の相談例
むくみ、冷え、重だるさ・疲労感、便通の乱れ、胃腸の弱さ、頭痛、肩こり、めまい、動悸についての相談です。この例では、心身を養う血が不足しやすい血虚の傾向に、体を温める力の弱さと余分な水分の停滞が重なっていました。むくみだけでなく、疲れると現れるふわふわ感や緊張しやすさ、胃腸の状態まで含めて、苓桂朮甘湯と抑肝散が選定されました。
顔色が青白い。疲れると足や顔がむくむ。立ちくらみやめまいがあり、少し動くだけでもぐったりする。
更年期むくみの中でも、色白、貧血気味、疲れやすい、めまい、動悸、眠りの浅さなどが重なる方は、漢方でいう血虚(けっきょ)タイプとして考えることがあります。
むくみだけでなく、疲れやすさ・冷え・めまい・睡眠まで含めて体質を確認しましょう。
AI漢方診断をしてみる(無料)「色白で疲れやすい=すべて血虚」とは限りません。
実際の体質は1つだけに分かれるものではなく、血虚に陽虚や湿痰が重なる、血虚に血瘀や気滞が重なるなど、複数の傾向が同時に見られます。むくみの場所や時間帯だけでなく、冷え、ほてり、便通、胃腸、睡眠、月経歴、服薬状況まで確認することが大切です。
更年期には、卵巣機能の低下に伴う女性ホルモンの変化に加え、睡眠不足、心理的ストレス、胃腸の不調、活動量の低下などが複雑に重なります。更年期症状は、ほてりや発汗だけでなく、易疲労感、肩こり、冷え、不眠、動悸、気分の落ち込みなど多様に現れます。*①②
漢方でいう血は、現代医学の血液だけを指す言葉ではありません。全身に栄養とうるおいを届け、筋肉・皮膚・髪・爪・目・心を養い、精神を落ち着かせる働きまで含む概念です。この血が不足した状態を血虚と呼びます。
血虚タイプでは、全身を養い温める力が弱くなり、疲労や冷えが強くなります。さらに、胃腸の弱りや活動量の低下によって水分を巡らせる力も落ちると、顔やまぶた、手指、足などにむくみが現れやすくなります。
月経の変化、食事量の低下、胃腸の弱り、睡眠不足などが重なり、心身を養う力が不足しやすくなります。
筋肉や末端まで十分に養われにくくなり、冷え、めまい、動悸、息切れ、倦怠感が現れやすくなります。
筋肉を動かす力や胃腸の働きが落ちると、水分を戻し排出する働きも弱まり、むくみが重なります。
血虚と貧血は重なることがありますが、同じものではありません。貧血は血液検査でヘモグロビンなどを確認して診断する医学的な状態です。一方、血虚は、顔色、めまい、疲労、冷え、乾燥、不眠、月経歴などを組み合わせて見る漢方の体質概念です。
顔色が悪い、息切れや動悸がある、立ちくらみが続く、過去に月経量が多かったという場合は、漢方の体質判断だけで済ませず、医療機関で血液検査を受けることが大切です。
血虚タイプのむくみでは、むくみだけが強く出るというより、疲労感、冷え、めまい、動悸、乾燥、不眠などの「養われにくさ」が一緒に現れやすいことが特徴です。
以下に当てはまる項目が多いほど、血虚の傾向を考えます。ただし、症状だけで貧血や病気の有無を判断することはできません。
| 見るポイント | 血虚タイプで出やすい状態 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 顔色・全身状態 | 顔色が青白い。疲れやすく、少し動くと息切れや動悸を感じる。 | 強い息切れ、胸痛、失神、急速な悪化がある場合は早めに受診します。 |
| むくみ方 | 疲労時に顔や足がむくむ。冷えや長時間の立ち仕事で悪化しやすい。 | 片側だけの腫れ、赤み、熱感、痛みがある場合は医療機関で確認します。 |
| めまい・動悸 | 立ちくらみ、ふわふわするめまい、目のかすみ、動悸がある。 | 貧血、甲状腺、心臓、不整脈などの確認が必要な場合があります。 |
| 皮膚・髪・爪 | 肌や髪が乾燥する。爪が割れやすい。抜け毛が気になる。 | 急な脱毛や著しい体重変化がある場合は原因を確認します。 |
| 月経歴・出血 | 閉経前に月経量が多かった、月経が長引いた、出血が続いたことがある。 | 閉経後の出血や現在も続く過多月経は婦人科で確認します。 |
更年期のむくみは、むくむ場所だけでなく、冷え、熱感、痛み、疲労、便通、尿、ストレスとの関係から見分けます。
| むくみの出方 | 漢方で見たい背景 | 詳しく見る |
|---|---|---|
| 色白、疲れやすい、めまい・動悸を伴う | 心身を養う血が不足し、冷えや水分停滞が重なる | 血虚タイプ:このページ |
| 足がパンパン、下半身が重い、水太り | 余分な水分が湿や痰として停滞している | 湿痰タイプ |
| 熱感、喉の渇き、便秘、顔の赤み | 余分な水分に熱がこもっている | 湿熱タイプ |
| 冷えのぼせ、肩こり、頭痛、足のむくみ | 血の巡りが滞り、水分も戻りにくくなっている | 血瘀タイプ |
| 芯から冷える、夜間尿、腰痛、足腰の弱り | 体を温め、水を動かす陽気が不足している | 陽虚タイプ |
| ストレスでお腹が張る、尿が出にくい | 気の巡りが滞り、水分の流れも止まっている | 気滞タイプ |
血虚だけでなく、ほかの体質が重なることがあります。
強い冷えと夜間尿があれば陽虚、足が重く水太りがあれば湿痰、肩こりや冷えのぼせがあれば血瘀、ストレスや不眠が強ければ気滞との重なりも考えます。
血虚タイプの更年期むくみでは、水だけを強く出すのではなく、心身を養う力を補いながら、冷えや水分の停滞を整えることを考えます。実際の処方は、体力、胃腸、便通、冷え、ほてり、睡眠、持病、服薬状況によって変わります。
使用前に確認したいこと
漢方薬は体質、胃腸の状態、便通、冷え、持病、服薬状況によって適否が変わります。複数の漢方薬を併用すると、甘草など同じ生薬が重複することもあります。治療中の病気がある方、妊娠中・授乳中の方、心疾患・腎疾患・肝疾患などがある方は、自己判断せず医師または薬剤師にご相談ください。
血虚タイプでは、「むくむから食べない」「水を一気に減らす」といった極端な対応は、疲労や冷えをさらに強めることがあります。胃腸に負担をかけず、体を養いながら、筋肉を少しずつ動かすことが大切です。
冷えがある方には入浴や保温が役立ちますが、ほてり、動悸、強い疲労がある場合に長風呂やサウナで大量に汗をかくと、さらに消耗することがあります。ぬるめの入浴を短時間から試し、入浴後にぐったりする場合は方法を調整してください。
以下は、堀口和彦先生による過去の漢方相談から、公開用に要約した代表的な相談例です。個人が特定されないように内容を整理し、血虚タイプのむくみで、どのように複数の症状や体質の重なりを見るのかが伝わる範囲で掲載しています。
血虚タイプ:43歳女性の相談例
むくみ、冷え、重だるさ・疲労感、便通の乱れ、胃腸の弱さ、頭痛、肩こり、めまい、動悸についての相談です。この例では、心身を養う血が不足しやすい血虚の傾向に、体を温める力の弱さと余分な水分の停滞が重なっていました。むくみだけでなく、疲れると現れるふわふわ感や緊張しやすさ、胃腸の状態まで含めて、苓桂朮甘湯と抑肝散が選定されました。
血虚タイプ:47歳女性の相談例
むくみ、冷え、重だるさ・疲労感、胃腸の弱さ、頭痛、肩こり、めまい、動悸、不眠についての相談です。この例では、血虚に血の巡りの滞りと冷えの傾向も重なり、足や顔のむくみだけでなく、ふらつきや肩こりも見られていました。水分代謝と血の不足、冷えを含めて、当帰芍薬散と真武湯が選定されました。
血虚タイプ:女性の相談例
むくみ、尿が少ない・出にくい、冷え、便通の乱れ、胃腸の弱さ、発汗、動悸についての相談です。この例では、血の不足に、体を温めて水を動かす力の低下が重なっていました。むくみと排尿の状態、冷え、動悸まで含めて、五苓散と当帰芍薬散が選定されました。
血虚タイプ:女性の相談例
むくみ、水太り・体重増加、冷え、重だるさ・疲労感、便秘、胃腸の弱さ、動悸、不安感についての相談です。この例では、血虚に気の巡りの滞りと水分停滞が重なり、心身の疲労や不安感とともにむくみが現れていました。水分代謝と気の巡りを含めて、五苓散と半夏厚朴湯が選定されました。
血虚タイプ:女性の相談例
むくみ、便秘、ほてり・のぼせ、発汗、頭痛、イライラ、月経の乱れについての相談です。この例では、血虚に余分な熱と気の滞りが重なり、冷えだけでなく、ほてりや発汗も見られていました。便通や熱感、自律神経の状態を含めて、柴胡加竜骨牡蛎湯と竜胆瀉肝湯が選定されました。
血虚タイプ:女性の相談例
むくみ、冷え、重だるさ・疲労感、便秘、ほてり、めまい、不眠、肩こりについての相談です。この例では、血の不足に気の巡りの滞りと熱感が重なり、疲れているのに眠れない、ふらつくといった状態も見られていました。心身の緊張と水分停滞を含めて、加味逍遙散と九味檳榔湯が選定されました。
血虚タイプ:更年期世代の女性の相談例
むくみ、水太り・体重増加、冷え、重だるさ・疲労感、便通の乱れ、胃腸の弱さ、ほてり、めまい、動悸についての相談です。この例では、血虚に気滞と湿痰が重なり、血の不足だけでなく、水分の停滞や胸腹部のつかえも考慮する必要がありました。むくみと気の巡りを含めて、九味檳榔湯と半夏厚朴湯が選定されました。
※上記は、堀口和彦先生による過去の漢方相談・処方選定データをもとに公開用に要約した参考例です。漢方薬の選定は、症状名だけでなく、冷え、胃腸の状態、便通、睡眠、発汗、服薬状況などを含めて総合的に判断されます。KanpoNow薬局の販売実績・改善実績を示すものではなく、効果を保証するものでもありません。
血虚の傾向を考える材料にはなりますが、それだけでは決まりません。めまい、動悸、冷え、乾燥、不眠、月経歴、胃腸の状態などを合わせて確認します。顔色不良や息切れが続く場合は、貧血などを確認するため医療機関で血液検査を受けることも大切です。
同じではありません。貧血は血液検査で診断する医学的な状態です。血虚は、顔色、疲労、めまい、冷え、乾燥、不眠などを組み合わせて見る漢方の体質概念です。両方が重なることはありますが、血虚と考えられるからといって貧血があるとは限りません。
比較的体力が乏しく、冷え、貧血傾向、めまい、動悸、足腰の冷え、むくみなどが重なる場合には候補になります。ただし、強い便秘や熱感がある方、胃腸の状態、持病や併用薬によっては別の考え方が必要です。自己判断で決めず、医師または薬剤師に相談してください。
鉄欠乏性貧血がある場合には医療機関での診断と治療が必要ですが、血虚タイプのすべてが鉄不足とは限りません。むくみには冷え、水分代謝、心臓や腎臓、甲状腺、静脈なども関係します。まず原因を確認し、食事やサプリだけで対応しないことが大切です。
あります。血虚に湿痰や気虚が重なると、水太り、胃もたれ、軟便、体の重だるさが出ることがあります。血を補うことだけでなく、胃腸の働きと水分の巡りも含めて考えます。
極端に減らす必要はありません。脱水はめまい、動悸、便秘、体調不良につながることがあります。喉の渇き、尿量、汗、持病、医師からの水分制限の有無を確認しながら、冷たい飲み物の一気飲みを避け、少しずつとることが基本です。
強い運動で消耗する必要はありません。足首回し、かかとの上げ下げ、短い散歩など、翌日に疲れを残さない範囲で筋肉を動かすことが、下半身の循環を助けます。息切れや動悸が強い場合は、運動より先に医療機関で原因を確認してください。
更年期世代のむくみでも、すべてが更年期や体質によるものとは限りません。次のような場合は、漢方薬を自己判断で試す前に医療機関へ相談してください。
本ページは、漢方・東洋医学の考え方を一般向けに解説した情報です。特定の病気の診断や治療、漢方薬の使用を指示するものではありません。症状が強い場合、急に悪化した場合、持病や服薬がある場合は、医師または薬剤師にご相談ください。
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。