更年期むくみ|色白・貧血気味・疲れやすい血虚タイプ
監修:堀口和彦|更新日:2026-06-19
手足がむくみやすい。顔色が青白い。貧血気味で、疲れやすく、立ちくらみやふらつきがある。
更年期むくみの中でも、「色白」「貧血気味」「疲れやすい」「立ちくらみ」「手足のしびれ」「眠りが浅い」といったサインが重なる方は、漢方でいう血虚(けっきょ)タイプとして考えることがあります。
血虚とは、全身に栄養と酸素を運ぶ血が不足している状態です。血が不足すると、体を養う力が弱くなるだけでなく、水分を血管内に保つ力も弱まり、細胞のすき間に水が漏れ出しやすくなります。その結果、柔らかく力のないむくみとして現れます。
このページでわかること
- 更年期に色白・貧血気味・疲れやすいむくみが起こる理由
- 血虚タイプの更年期むくみの特徴
- 湿痰・湿熱・血瘀・陽虚・気滞との見分け方
- 当帰芍薬散・十全大補湯などを考えるときの目安
- 血を養い、巡らせる食事・睡眠・運動の養生
目次
血虚によるむくみのメカニズム
更年期には、女性ホルモンの変動に伴って、自律神経、血流、水分代謝、睡眠、気分などが揺らぎやすくなります。更年期の不調は、疲労感、冷え、肩こり、腰痛、不眠、イライラなど多様に現れることがあります。*①
血虚タイプのむくみでは、単に水が多すぎるのではなく、血が不足していることが中心です。血が少ない、あるいは血の中の栄養が不足していると、水分を血管内に保つ力が弱くなり、組織のすき間へ水が漏れ出しやすくなります。
西洋医学的にも、血液中のアルブミンなどのタンパク質は、血管内に水分を引き留める力に関わります。タンパク質や鉄など、体を作る栄養が不足すると、疲れやすさ、貧血傾向、むくみが重なって現れることがあります。*②③
更年期の不調、疲労、ストレス、食欲不振により、食べ物から血を作る力が落ちます。
全身を養う血が足りず、顔色の悪さ、立ちくらみ、疲労感、目の疲れ、不眠が出やすくなります。
血管内に水分を保つ力が弱まり、手足や顔に柔らかいむくみが出やすくなります。
血の不足が、水分保持力を弱める
漢方でいう血は、全身の細胞に栄養と潤いを届け、心身を養う働きを持ちます。血が十分にあれば、筋肉、皮膚、目、脳、神経までしっかり養われます。
血虚では、この血が不足するため、顔色が白い、唇や爪の色が淡い、皮膚が乾燥する、目が疲れる、こむら返りしやすい、眠りが浅いといったサインが出やすくなります。
水を血管内に保つ力も弱くなるため、重く張るむくみというより、柔らかく、力がなく、押すとへこんで戻りにくいむくみとして現れやすくなります。
胃腸の弱りと出血が血虚を進める
血は、食べ物から作られます。更年期にストレスや睡眠不足、胃腸の弱りが重なると、食べていても十分に栄養を吸収できず、血を作る力が落ちやすくなります。
また、更年期には月経周期が乱れ、月経量が多い、出血が長引く、不正出血があるといった変化が起こることがあります。こうした出血が続くと、血虚が進み、疲労感やむくみ、立ちくらみが強くなることがあります。
血虚タイプは「水が多い」のではなく「血が足りない」むくみです。
利尿だけで水を抜くと、ただでさえ不足している血と潤いをさらに消耗し、ふらつきや疲労感、冷えが悪化することがあります。血を補いながら水を整える視点が大切です。
血虚タイプの更年期むくみとは
血虚タイプは、心と体に酸素と栄養を届ける血が不足している状態です。更年期むくみでは、色白、貧血気味、疲れやすい、ふらつき、立ちくらみ、柔らかいむくみとして現れやすくなります。
このタイプの方は、皮膚や筋肉が薄く、華奢な体つきであることがあります。顔や唇、爪の色が白っぽく、皮膚がかさつき、髪や肌のツヤが落ちやすいことも特徴です。
むくみは、湿熱タイプのような熱感や赤みを伴うパンパンとしたむくみではなく、全体的に力がなく、柔らかく、押すとへこんで戻りにくいむくみとして見られることがあります。
血虚タイプで見られやすい症状
- 顔色が白い、青白い
- 唇や爪の色が淡い
- 手足や顔がむくみやすい
- 押すとへこんで戻りにくい柔らかいむくみ
- 疲れやすく、横になりたくなる
- 立ちくらみ、ふらつき、貧血傾向がある
- 疲れ目、かすみ目、ドライアイがある
- 手足のしびれ、こむら返りがある
- 皮膚が乾燥し、髪や肌にツヤがない
- 不安感、不眠、多夢、熟睡感のなさがある
- 物忘れ、集中力低下がある
- 月経量が少ない、月経不順、月経痛、不正出血の経験がある
血虚タイプは「フラフラ・カサカサ・眠れない」が重なります。
むくみだけでなく、顔色、唇や爪、目、睡眠、疲労感、月経歴まで見ることで、血虚のサインが見えやすくなります。
血虚タイプのセルフチェック
以下に当てはまる項目が多いほど、血虚タイプの更年期むくみを考えます。
むくみ方の特徴
- 手足や顔がむくみやすい
- 柔らかく、力のないむくみがある
- 押すとへこんで戻りにくい
- 疲れるとむくみやすい
- 貧血気味のときにむくみが強くなる
体調の特徴
- 顔色が白い、唇や爪の色が淡い
- 立ちくらみ、ふらつきがある
- 疲れやすく、回復しにくい
- 眠りが浅い、夢をよく見る
- 目の疲れ、乾燥、こむら返りがある
血虚タイプでは、むくみだけでなく、血色、疲労感、睡眠、目、筋肉、月経歴を一緒に見ます。水分を減らすだけではなく、血を作り、巡らせ、消耗を防ぐことが重要です。
ほかの更年期むくみタイプとの違い
更年期のむくみは、どこがむくむか、熱いのか冷えるのか、疲れるのか張るのか、便通や尿の状態はどうかを組み合わせて見ます。
| むくみの出方 | 漢方で見たい背景 | よくある体質 |
|---|---|---|
| 足がパンパン、下半身が重い ▶詳しく見る |
水分代謝が悪く、湿や痰が停滞 | 湿痰 |
| 熱感・喉の渇き・便秘を伴う ▶詳しく見る |
湿と熱がこもり、炎症を伴う | 湿熱 |
| 冷えのぼせ、肩こり、足のむくみ ▶詳しく見る |
血の巡りが悪く、リンパや静脈も滞る | 血瘀 |
|
色白、貧血気味、疲れやすい |
血が不足し、水を血管内に保つ力が弱い | 血虚 |
| 芯から冷え、夜間尿や腰痛がある ▶詳しく見る |
陽気が不足し、水を巡らせる力が弱い | 陽虚 |
| ストレスで張る・尿が出にくい ▶詳しく見る |
気が滞り、水の巡りも止まる | 気滞 |
血虚タイプは、湿痰タイプのように「水分代謝の悪さと重だるさ」が中心ではありません。湿熱タイプのように「熱感・喉の渇き・便秘・尿の濃さ」が中心でもありません。
中心にあるのは、血の不足です。血が不足することで、全身を養う力、水分を血管内に保つ力、心身を落ち着かせる力が弱くなり、疲労感やふらつき、不眠とともにむくみが出やすくなります。
血虚タイプは、水を抜くより「血を養う」ことが基本です。
むくみがあるからといって利尿だけに偏ると、疲労感やふらつきが悪化することがあります。補血、健脾、軽い利水を組み合わせて考えます。
漢方薬を考えるときの処方鑑別
血虚タイプの更年期むくみでは、補血(ほけつ)、つまり血を補い養うことを中心に考えます。同時に、胃腸の働きを助け、血を作る材料を吸収しやすくし、余分に漏れ出た水分をやさしくさばくことが大切です。
目安:体力が虚弱で、冷え症、貧血傾向、疲労しやすさ、めまい、肩こり、足腰の冷え、むくみなどを伴う場合に検討されます。*④
考え方:血を補い巡らせながら、余分な水分をさばく処方です。血虚と水滞が同時にある、色白で冷えやすく、むくみやすい女性で候補になります。
目安:病後・術後・慢性的な消耗などにより、気と血の両方が不足し、疲労倦怠、食欲不振、手足の冷え、貧血傾向を伴う場合に検討されます。*⑤
考え方:気力と体力を補いながら、血を養う処方です。むくみの背景に基礎体力の低下があり、回復力そのものを底上げしたい場合に考えます。
目安:体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、貧血、不眠、精神不安、動悸などを伴う場合に検討されます。*⑥
考え方:胃腸の働きを助けて血を作る力を支え、心を養って精神を安定させる考え方の処方です。疲労感、不安感、不眠が強い血虚タイプで候補になります。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
目安:気血両虚に加えて、呼吸器や胃腸の弱り、寝汗、息切れ、手足の冷え、強い消耗感が目立つ場合に検討されます。*⑦
考え方:補気と補血を両立させ、消耗した心身の回復力を支える処方です。十全大補湯に近い方向性ですが、呼吸器の弱りや息切れが目立つ場合に候補になります。
使用前に確認したいこと
血虚タイプでは、自己判断で強い利尿や下剤方向の漢方薬を使うと、ふらつき、疲労感、冷え、胃腸不調が悪化することがあります。複数の漢方薬を併用する場合は、甘草などの重複にも注意してください。妊娠中・授乳中の方、服薬中の方、持病がある方、出血が続く方は、医師または薬剤師にご相談ください。*④~⑧
血虚に見えて、別の処方を考えることがあるケース
- 足がパンパンで、下半身の重だるさと冷えが中心なら、湿痰タイプを考えます。
- 熱感、喉の渇き、便秘、尿の濃さを伴うなら、湿熱タイプを考えます。
- 冷えのぼせ、肩こり、下腹部の張り、シミが強いなら、血瘀タイプを考えます。
- 芯から冷え、夜間尿、腰痛、下痢を伴うなら、陽虚タイプを考えます。
- ストレスで張る、尿が出にくい、胸やお腹がつかえるなら、気滞タイプを考えます。
血虚タイプの生活養生
血虚タイプの更年期むくみでは、血を作ること、血を消耗しないこと、作った血を全身へ巡らせることが大切です。食事、睡眠、目の休息、軽い運動を組み合わせて、血を養う生活に整えていきます。
1. 血になる食材を少しずつ取り入れる
血を養うためには、タンパク質、鉄、ビタミン、ミネラルを含む食材を、毎日の食事の中で少しずつ取り入れることが大切です。
赤身肉、魚、卵、大豆製品、レバー、ひじき、ほうれん草、黒ごま、くるみなどを、胃腸に負担のない範囲で取り入れましょう。血虚タイプは胃腸も弱いことが多いため、一度に大量に食べるより、よく噛んで少量ずつ続けることが大切です。
2. 胃腸を冷やさない
血は食べ物から作られます。胃腸が冷えて働きが落ちると、せっかく食べても血を作る力が弱くなります。
冷たい飲み物、生野菜ばかりの食事、アイス、氷入りの飲料は控えめにし、温かい汁物、煮物、蒸し野菜、味噌汁などを中心にしましょう。胃腸を温めることが、血を作る土台になります。
3. 良質な睡眠を優先する
血虚タイプでは、夜更かしや睡眠不足が大きな負担になります。疲れているのに眠れない、夢が多い、眠りが浅いという状態は、血が心身を十分に養えていないサインとして考えます。
夜はスマートフォンやパソコンを早めに切り上げ、照明を落とし、目と脳を休ませましょう。できるだけその日のうちに布団に入り、睡眠時間を確保することが、血を養い、むくみを整える近道です。
4. 目を使いすぎない
漢方では、目は血と深く関係すると考えます。長時間のスマートフォン、パソコン作業、細かい作業は、血を消耗しやすく、目の疲れ、かすみ、不眠、肩こりにつながることがあります。
1時間に1回は画面から目を離し、遠くを見る、目を閉じる、首肩を回すなどの休憩を入れましょう。目を休ませることも、血虚の養生です。
5. 激しい運動や大量発汗を避ける
汗は、血の一部である津液から作られると考えます。血虚タイプの方がサウナや激しい運動で大量に汗をかくと、少ない潤いと血をさらに消耗し、疲労感やむくみが悪化することがあります。
運動は、昼間の軽い散歩、ストレッチ、ゆっくりした筋トレなど、疲れすぎない範囲で行いましょう。適度に動くことで、作られた血を全身に巡らせ、夜の睡眠にもつながります。
6. 不安を責めず、安心感を増やす
血が不足すると、脳や心が十分に養われず、不安感、心配性、集中力低下、物忘れ、眠りの浅さが出やすくなります。
「自分は弱い」「またむくんだ」と責めるより、食事と睡眠で血を補えば体は少しずつ回復する、と考えましょう。安心感を増やすことは、自律神経を安定させ、胃腸の働きを助け、血を作る力にもつながります。
関連ページ
更年期むくみは、疲労感、冷え、便秘、不眠、肩こり、イライラなどと重なって現れることがあります。以下のページもあわせてご覧ください。
よくある質問
色白で貧血気味のむくみは血虚ですか?
血虚が関係することはあります。特に、顔色が白い、唇や爪の色が淡い、立ちくらみ、疲労感、目の疲れ、不眠、月経不順などがある場合は、血の不足を考えます。ただし、腎臓・心臓・甲状腺などの病気によるむくみもあるため、急なむくみや強い疲労感がある場合は医療機関で確認してください。
むくみがあるのに、血を補う必要があるのですか?
血虚タイプでは、水が多すぎるというより、血が不足して水を血管内に保つ力が弱くなっていると考えます。そのため、強く水を抜くより、血を補い、胃腸を整え、余分な水をやさしくさばくことが大切です。
当帰芍薬散は血虚むくみに合いますか?
体力が虚弱で、冷え症、貧血傾向、疲労しやすさ、めまい、むくみなどがある血虚・水滞タイプでは候補になることがあります。ただし、体質や持病、服薬状況によって合わない場合があります。自己判断で続けず、医師または薬剤師に相談してください。
血虚タイプは運動した方がよいですか?
軽い散歩やストレッチはよい場合があります。ただし、激しい運動やサウナで大量に汗をかくことは、少ない血や潤いをさらに消耗することがあります。疲れすぎない範囲で、昼間に軽く動くことを目安にしましょう。
月経量が多い、更年期の不正出血がある場合も血虚ですか?
血虚が進む原因になることがあります。ただし、月経量が多い、不正出血が続く、閉経後に出血がある場合は、漢方だけで様子を見ず、婦人科で確認してください。
受診の目安
以下のような場合は、更年期むくみや血虚タイプと決めつけず、医療機関で相談してください。
- 片脚だけ急にむくむ、痛みや赤みを伴う場合
- 息切れ、胸痛、動悸、強い疲労感を伴う場合
- 顔やまぶたのむくみが強い、尿量が少ない場合
- 立ちくらみ、ふらつき、失神、動悸が強い場合
- 月経量が多い、不正出血が続く、閉経後の出血がある場合
- 食欲不振、体重減少、血便、黒色便、強い腹痛を伴う場合
- 血圧、血糖、脂質、腎機能、肝機能、甲状腺、貧血を指摘されている場合
- 妊娠中・授乳中、服薬中、持病がある、ホルモン補充療法を受けている場合
血虚に見えても、貧血や出血、内臓疾患が隠れていることがあります。
強いふらつき、息切れ、動悸、出血、黒色便、急なむくみ、顔やまぶたのむくみがある場合は、漢方や養生で様子を見ず、医療機関へ相談してください。
参考・出典
- *① 厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト:更年期」
- *② 厚生労働省 e-ヘルスネット「鉄」
- *③ PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
- *④~⑦ PMDA「当帰芍薬散・十全大補湯・加味帰脾湯・人参養栄湯」医療用医薬品情報
- *⑧ PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」および各製剤の使用上の注意
体質チェックへ
更年期の「色白・貧血気味・疲れやすいむくみ」は、身体が「血が不足し、水を保つ力も弱くなっています」と知らせているサインかもしれません。
血虚なのか、湿痰なのか、血瘀・陽虚・気滞が重なっているのか。むくみだけでなく、顔色、疲労感、立ちくらみ、睡眠、月経歴、胃腸の弱さまで含めて体質を見ていきましょう。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものであり、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。漢方薬は体質や症状、持病、便通、胃腸の状態、服薬状況によって適否が異なります。持病がある方、服薬中の方、妊娠中・授乳中の方、ホルモン補充療法を受けている方、出血が続く方は、自己判断で服用せず、事前に医師または薬剤師にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。