硬い便が続き、下剤や浣腸が必要
ホットフラッシュの治療中に便秘が強まり、排便には下剤や浣腸が必要でした。便は硬く、めまい、不眠、倦怠感、肩こりも重なっていました。硬い便だけでなく、骨盤内の巡り、のぼせ、睡眠の乱れを合わせて確認した例です。
コロコロした硬い便しか出ない。何日も便意が来ない。出ても残っている感じがする。便秘薬を飲むと、今度は腹痛や下痢になる。
更年期の便秘は、単に「腸の動きが悪い」だけではありません。女性ホルモンの変動、自律神経の乱れ、腸の乾燥、冷え、胃腸の力の低下、骨盤内の巡り、ストレスなどが重なって起こることがあります。
漢方では、便を強く下すことだけを目的にせず、硬く乾いているのか、張って出ないのか、冷えて動かないのか、熱や血の滞りがあるのかを確認し、8つの体質から比較します。
同じ便秘でも、潤す、巡らせる、温める、緊張を緩める、胃腸を補うなど、整え方が異なります。
血便、黒い便、強い腹痛、嘔吐、発熱、急な便通変化、原因不明の体重減少がある場合は、漢方や市販の便秘薬より先に医療機関へ相談してください。
便秘は更年期に重なることがありますが、大腸疾患、甲状腺機能低下症、糖尿病、婦人科疾患、薬の影響、便排出障害などが隠れていることもあります。
便秘は、排便回数が少ないことだけを指すものではありません。便が硬い、強くいきむ、出し切れない、排便に時間がかかる、便意が弱いといった状態も確認する必要があります。
更年期には、女性ホルモンの変動に加え、睡眠不足、運動量の低下、食事量の変化、筋力低下、ストレス、治療薬やサプリメントの影響などが重なります。そのため、以前は問題がなかった人でも便通が不安定になることがあります。
「毎日出ない=便秘」「毎日出る=問題なし」とは限りません。
2日に1回でも無理なく出てすっきりする場合がある一方、毎日出ていても強いいきみや残便感が続く場合があります。回数、硬さ、出しやすさ、残便感を一緒に確認してください。
水分を飲む量だけでなく、口・肌の乾燥、寝汗、ほてり、食事量、加齢による潤い不足を確認します。
強いいきみ、残便感、下腹部の張り、骨盤底の問題、便を押し出す力の低下を確認します。
ストレス、食事、月経周期、自律神経、腹痛やガスとの関係を確認します。
冷え、疲労、食欲低下、筋力、活動量、服薬状況を確認し、強い下剤で消耗していないかも見ます。
腸の動きは自律神経の影響を受けます。ほてり、不眠、不安、仕事や家庭の負担が重なると、腸の動きが遅くなったり、緊張して不安定になったりします。
加齢、発汗、食事制限、運動不足などが重なると、便の量や水分が不足し、押し出す力も弱くなります。
鎮痛薬、抗コリン作用のある薬、鉄剤など、便秘につながる薬があります。甲状腺や大腸などの病気もあるため、急な変化は確認が必要です。
慢性便秘症の診療では、回数だけでなく、便の硬さ、いきみ、残便感、便意、排出障害、警告症状、基礎疾患や薬剤を評価し、病態に合わせて治療を選びます。
漢方では、便秘を一律に下すのではなく、便の状態と全身の不調から考えます。乾いた便では潤い、張りやストレスでは気の巡り、下腹部の滞りでは血の巡り、冷えや疲労では胃腸を動かす力を確認します。
体質は1つではなく、複数重なることがあります。
硬い便に血瘀や気滞が重なる、冷えに気虚が重なる、湿熱に湿痰が重なるなど、実際の相談では複合的です。体質名や便秘という症状名だけで漢方薬を決めないことが重要です。
| 体質 | 便秘の出方 | 一緒に出やすい不調 | 漢方で見るポイント | 詳しく見る |
|---|---|---|---|---|
| 気滞 | 張る、ガスが多い、便秘と下痢を反復 | 不安、イライラ、喉・胸のつかえ | 緊張と気の滞り | 気滞へ |
| 陰虚 | 硬いコロコロ便、乾いて出にくい | 口渇、乾燥、ほてり、寝汗 | 腸を潤す力の不足 | 陰虚へ |
| 血虚 | 便の量が少ない、乾燥しやすい | 疲労、めまい、肌・髪の乾燥 | 心身を養う血の不足 | 血虚へ |
| 血瘀 | 頑固、下腹部が張る、のぼせを伴う | 肩こり、頭痛、冷えのぼせ、月経歴 | 骨盤内の血の滞り | 血瘀へ |
| 気虚 | 便意が弱い、いきむ力が足りない | 疲労、食欲低下、息切れ、軟便 | 胃腸を動かす力の不足 | 気虚へ |
| 湿熱 | 熱感、腹部脂肪、便やガスの臭い | 発汗、過食、むくみ、肌荒れ | 余分な熱と湿の停滞 | 湿熱へ |
| 湿痰 | お腹が重く張る、すっきりしない | むくみ、めまい、胃もたれ、体重増加 | 水分と痰湿の停滞 | 湿痰へ |
| 陽虚 | 冷えると悪化、便意が弱い | 腹部の冷え、下痢、夜間頻尿、疲労 | 温め動かす力の不足 | 陽虚へ |
横にスクロールしてご覧いただけます。体質は複数重なることがあります。
気滞は、ストレスや緊張で気の巡りが滞った状態です。便意はあるのに出にくい、お腹が張る、ガスが多い、便秘と下痢を繰り返す形で現れます。
陰虚は、体を潤し熱を鎮める力が不足した状態です。ウサギのふんのような硬い便、口や肌の乾燥、ほてり、寝汗などが重なります。
比較される漢方薬:麻子仁丸料など。
硬く乾いた便で、強い下剤では腹痛や下痢になりやすい場合に、腸を潤しながら便通を助ける処方として比較します。ほてりや寝汗が強い場合は、便秘だけでなく陰虚全体を見ます。
血虚は、心身を養う血が不足した状態です。食事量が少ない、疲れやすい、やせ型、肌や髪が乾燥するといった状態に、少量で硬い便が重なることがあります。
血瘀は、血の巡りが滞った状態です。下腹部の張りや圧痛、肩こり、頭痛、顔ののぼせと足の冷えなどを伴う頑固な便秘として現れます。
気虚は、心身を動かす気が不足した状態です。何日も出なくても強い便意がなく、いきむと疲れ、食欲や気力も落ちている形で現れます。
湿熱は、余分な水分や老廃物に熱が重なった状態です。暑がり、発汗、過食、腹部脂肪、肌荒れ、臭いの強い便やガスなどと便秘が重なります。
湿痰は、余分な水分や痰湿が停滞した状態です。お腹が重く張る、むくむ、胃もたれする、体重が増えやすいといった不調に便秘が重なります。
陽虚は、体を温め動かす力が不足した状態です。お腹や手足が冷え、便意が弱く、温めると楽になる一方、冷たい飲食で便通が乱れやすくなります。
| 漢方薬 | 比較する便秘の特徴 | 一緒に見る不調 | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| 桃核承気湯 | 頑固な便秘、下腹部の張り | のぼせ、イライラ、冷えのぼせ | 大黄を含み、腹痛・下痢、妊娠・授乳などに注意 |
| 通導散 | 強い便秘、骨盤内の滞り | 下腹部痛、月経歴、肩こり | 比較的体力がある方向け。瀉下が強い場合がある |
| 麻子仁丸料 | 硬いコロコロ便、乾燥便 | 口・肌の乾燥、加齢、体力低下 | 下痢しやすい人は量や適否を確認 |
| 柴胡加竜骨牡蛎湯 | 便秘と神経の高ぶり | 不安、動悸、不眠、のぼせ | 製品により大黄を含む。胃腸虚弱・下痢傾向に注意 |
| 大柴胡湯 | 便秘とみぞおち・脇腹の張り | イライラ、肩こり、熱感 | 体力がある方向け。腹痛・下痢に注意 |
| 防風通聖散 | 便秘、腹部脂肪、熱・湿 | むくみ、発汗、肌荒れ、過食 | 麻黄・大黄・甘草などを含み、長期漫然使用を避ける |
| 九味檳榔湯 | 腹部膨満、重さを伴う便通不良 | むくみ、だるさ、動悸 | 便秘だけでなく水分代謝と体力を確認 |
| 大建中湯 | 冷えと腹部膨満、腸の動きの弱さ | 腹痛、冷え、ガス | 強く下す薬ではない。急な腹痛や腸閉塞疑いは受診優先 |
処方名は比較例です。症状名だけで選ばず、体力、腹部所見、持病、服薬、妊娠・授乳の有無を確認してください。
回数だけでなく、硬さ、いきみ、残便感、腹痛、便秘薬の使用を記録します。ブリストル便形状スケールを参考にしてもよいでしょう。
冷えや胃腸虚弱がある方は、冷水を大量に飲むとつらくなることがあります。温かい飲み物も使いながら、日中に分けて補います。
腹部膨満やガスが強い人が不溶性食物繊維を急増させると、張りが悪化することがあります。食事量と便の反応を見て調整します。
朝食後は大腸が動きやすい時間です。便意を我慢せず、足台などで前傾しやすい姿勢を作り、長時間いきみ続けないようにします。
散歩、股関節の運動、無理のないスクワットなどで活動量を保ちます。強い腹痛や術後などは医療者に確認してください。
刺激性下剤を頻回に追加したり、複数の漢方薬を重ねたりせず、便秘の型と服薬内容を医師・薬剤師に共有します。
一つに決めることはできません。硬いコロコロ便、下腹部の張り、便秘と下痢の反復、腹部の冷え、便意の弱さ、むくみや過食など、便秘の出方と一緒に現れる症状から体質を比較します。
女性ホルモンの変動だけでなく、自律神経、睡眠、食事量、運動量、筋力、発汗、ストレス、薬の影響などが重なるためです。更年期だけが原因とは限らないため、急な変化や警告症状は医療機関で確認します。
水分不足が関係することはありますが、それだけではありません。食事量の不足、腸の潤い不足、ストレス、薬、排出障害などでも硬い便になります。冷えや胃腸虚弱がある人は、冷水の一気飲みが合わないこともあります。
便通異常として確認が必要です。ストレスや過敏性腸症候群、便秘薬の影響などが考えられますが、自己判断せず、腹痛、血便、体重減少、夜間症状などがあれば消化器内科へ相談してください。
刺激が強すぎる、量が多い、腸が過敏、便秘の型と薬が合っていないなどが考えられます。市販薬や大黄を含む漢方薬を自己判断で重ねず、使用している薬を医師・薬剤師へ伝えてください。
役立つことはありますが、全員に同じ方法が合うわけではありません。お腹の張りや排出障害がある場合は、急に大量の不溶性食物繊維を増やすとつらくなることがあります。水分、食事量、運動、便の型を合わせて調整します。
日数だけで判断しません。普段と違う急な便秘、強い腹痛、嘔吐、発熱、血便、黒い便、体重減少、腹部の強い膨満がある場合は、日数を待たずに受診してください。慢性的に便秘薬が必要な場合も相談対象です。
便秘や腹痛、血便、腹部膨満など消化器症状が中心なら消化器内科、ほてり、発汗、月経変化など更年期症状全体の相談は婦人科が目安です。迷う場合は、かかりつけ医に服薬を含めて相談してください。
便秘・腹部症状が中心なら消化器内科、骨盤内や婦人科症状が重なる場合は婦人科、薬の影響が疑われる場合は処方医や薬剤師へ相談してください。
堀口和彦先生による過去の漢方相談・処方選定データを整備した「更年期症例」から、便秘が主訴して分類された全65件を整理しました。
体質、併発症状、漢方薬は1人に複数記録される場合があります。
体質判定で最も多く確認されました。
次に多く確認された体質です。
一緒に記録された症状で最も多い項目です。
柴胡加竜骨牡蛎湯が最も多く記録されました。
※1人に複数の体質が記録されるため、合計は65件を超えることがあります。
※処方件数は効果や推奨の順位ではありません。相談時の体質、体力、便通、胃腸、睡眠、持病、服薬状況などを含めた選定記録です。
ホットフラッシュの治療中に便秘が強まり、排便には下剤や浣腸が必要でした。便は硬く、めまい、不眠、倦怠感、肩こりも重なっていました。硬い便だけでなく、骨盤内の巡り、のぼせ、睡眠の乱れを合わせて確認した例です。
排便は2~3日に1回で、量が少なく硬い便でした。むくみと体重増加があり、逆流性食道炎と胃潰瘍の治療も受けていました。便の硬さに加え、水分代謝、体の重さ、胃腸の状態を確認した例です。
便秘と下痢を繰り返し、排尿回数も安定しませんでした。朝の寝汗と動悸、気分の落ち込み、不安感、むくみもありました。腸だけを下すのではなく、自律神経の緊張と水分代謝を合わせて確認した例です。
排便は2日に1回で、硬いコロコロ便が多い状態でした。手足の冷え、皮膚や唇の乾燥、疲労感があり、体格はやせ型でした。便を強く下すより、胃腸の動きと体を養う力を確認した例です。
通常でも排便は3日から1週間に1回ほどで、長いと2週間近くまともに出ないことがありました。逆流性食道炎、胃の痛み、喉のつかえ、肩や首のこり、低血圧もありました。胃腸の働き、上腹部の緊張、骨盤内の滞りを分けて確認した例です。
閉経後、排便は3日に1回ほどで、長いと5日ほど空き、コロコロした便でした。めまいへの予期不安、目の疲れ、血圧の変動も重なっていました。便通だけでなく、閉経後の自律神経の揺らぎと不安を一緒に確認した例です。
※この相談例は、堀口和彦先生による「うち漢方/光和堂薬局」時代の漢方相談・処方選定データを、個人が特定されない形で公開用に匿名化・要約したものです。KanpoNow薬局の販売実績・改善実績を示すものではなく、特定の漢方薬の効果を保証するものでもありません。
更年期の便秘は、同じ「出ない」でも、体質によって考え方が変わります。
硬さ、排便間隔、いきみ、残便感、張り、冷え、乾燥、むくみ、睡眠やストレスまで含めて体質傾向を確認してください。
KanpoNowのAI漢方診断は、堀口先生の漢方相談・処方選定の考え方をもとに、症状と複数の体質傾向から漢方薬の候補を提案します。
AI漢方診断をする(無料)本ページは一般的な健康情報と、匿名化された過去の相談データをもとに漢方の考え方を紹介するものであり、診断・治療・服薬指示を目的とするものではありません。持病がある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方、ホルモン補充療法や便秘薬などを使用中の方は、自己判断で薬を中止・変更せず、医師または薬剤師へ相談してください。血便、黒い便、強い腹痛、嘔吐、発熱、急な便通変化、原因不明の体重減少がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。