女性(疲れやすさ・冷え・顔ののぼせ・便秘)
子どもの頃から体力がなく疲れやすいことに加えて、手足の冷え、顔ののぼせ、便秘、動悸、乾燥感が同じ相談内で見られた相談例です。体質傾向としては「気虚」と「陽虚」を含む、支える力と温める力の低下として整理されました。このような相談例では、人参養栄湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、女神散などが選定されていた例が見られました。
監修:堀口和彦|更新日:2026-07-08

暑いわけではないのに汗が出る。少し動いただけで汗が漏れる。夜中に寝汗をかき、汗の後にぐったりする。
更年期のホットフラッシュの中には、強い熱感やのぼせよりも、「汗が漏れる」「冷や汗が出る」「寝汗をかく」「汗の後に疲れる」といった消耗感が目立つタイプがあります。
漢方では、この状態を「気虚(ききょ)」や「陽虚(ようきょ)」として考えます。気虚とは、体を動かし、守り、汗をコントロールする生命エネルギーである「気」が不足している状態です。陽虚とは、気虚がさらに進み、体を温める力まで弱くなっている状態です。
このタイプでは、熱が有り余って汗が出ているのではありません。汗を止める力、毛穴を引き締める力、体表を守る力が弱くなり、栓のゆるんだ蛇口のように汗が漏れやすくなっている状態です。
このページでわかること
目次
更年期のホットフラッシュは、女性ホルモンの変動に伴って、自律神経や体温調節が不安定になることで起こりやすくなります。顔や上半身が急に熱くなる、汗が噴き出す、動悸や不安感を伴うといった症状が見られます。*①②③
気虚・陽虚タイプでは、強い熱がこもって汗が出るというより、汗をコントロールする力が弱くなっていることが問題です。体力の低下、胃腸虚弱、慢性的な疲労、加齢、睡眠不足などが重なると、汗を引き締める力が弱まり、少しの動作や睡眠中に汗が漏れやすくなります。
気虚・陽虚タイプのキーワードは「汗を止める力の不足」です。
汗は熱を冷ますためだけに出るわけではありません。気が不足すると、毛穴を閉じる力が弱くなり、暑くないのに汗が漏れる、冷や汗が出る、寝汗をかくという状態になります。
漢方では、体表を守り、皮膚や毛穴の開閉を調整する気の働きを「衛気(えき)」として考えます。衛気は、体の外側を守るバリアのような働きを持ちます。
衛気がしっかりしていると、必要なときに汗を出し、必要のないときには毛穴を締めて汗が漏れないように調整できます。しかし、気が不足すると、この調整力が弱くなります。
その結果、少し動いただけで汗が出る、暑くないのにじわじわ汗が漏れる、夜中に寝汗をかく、風に当たると冷えてだるくなるといった状態が起こります。
気には、体の中の血や水分を必要以上に外へ漏らさないように引き締める働きがあります。これを「固摂作用(こせつさよう)」と考えます。
更年期のホルモン変動、慢性的な疲労、胃腸の弱り、過労、睡眠不足が続くと、気の固摂作用が落ちます。すると、栓のゆるんだ蛇口のように、汗がコントロールできずに漏れ出やすくなります。
気虚がさらに進み、体を温める陽気まで不足した状態を陽虚と考えます。陽虚では、汗をかくことで体温が奪われ、冷や汗のような不快な汗になりやすくなります。
陽虚タイプでは、汗の後にぐったりする、体が冷える、布団に入っても温まりにくい、夜間頻尿がある、腰や膝に力が入りにくいといったサインが見られます。

気虚とは、体を動かし、守り、引き締める生命エネルギーが不足している状態です。陽虚とは、さらに体を温める力まで弱くなり、冷えが深くなっている状態です。
気虚・陽虚タイプのホットフラッシュでは、強いのぼせよりも、汗の漏れと疲労感が目立ちます。少し動いただけで汗が出る、寝汗をかく、冷や汗が出る、汗をかいた後に力が抜けるといった症状が特徴です。
このタイプの方は、胃腸が弱い、食欲がない、食べると眠くなる、声が小さい、日中だるい、風邪をひきやすいなど、ベースの体力低下が見られることがあります。陽虚まで進むと、冷え、むくみ、夜間頻尿、腰や膝の弱りが加わります。
気虚・陽虚タイプでは「汗を出してスッキリ」は合わないことがあります。
汗をかくほど気が消耗し、さらに汗が漏れやすくなる悪循環があります。サウナや激しい運動で無理に汗を出すより、休息、胃腸の立て直し、保温が大切です。
気虚・陽虚は、汗だけでなく、疲労感、胃腸、呼吸、免疫、冷え、水分代謝にサインが出やすい体質です。特に「汗の後に疲れる」「冷える」「食べると疲れる」がポイントです。
気虚・陽虚タイプでは、頑張りすぎ、睡眠不足、食べすぎ、冷たい飲食物、サウナ、激しい運動、予定の詰め込みすぎが、汗の漏れや疲労感を悪化させることがあります。
気虚・陽虚タイプの特徴は、熱感よりも「汗の後の消耗感」が目立つことです。のぼせが強いというより、体力が落ちて汗を締められない状態として考えます。
| タイプ | 汗・のぼせの出方 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| 気虚・陽虚 | 寝汗・冷や汗・汗が漏れる | 疲労感、胃腸虚弱、冷え、汗の後のだるさ |
| 陰虚 | 夜や寝る前にほてる、寝汗がある | 口渇、乾燥、手足のほてり、不眠 |
| 気滞 | 緊張やストレスで急に汗が出る | イライラ、胸のつかえ、ため息、動悸 |
| 血瘀 | 顔は熱いのに足は冷える | 冷えのぼせ、肩こり、頭痛、便秘、くすみ |
| 湿熱 | 暑がりで全身から汗が多い | 肥満傾向、便秘、顔の赤み、重だるさ |
寝汗でも、陰虚と気虚では考え方が違います。
夜にほてり、口渇や乾燥、手足の熱感がある寝汗は陰虚寄りです。一方、疲れやすく、冷えがあり、汗の後にぐったりする寝汗は気虚・陽虚寄りとして見ます。
気虚・陽虚タイプのホットフラッシュでは、熱を強く冷ますのではなく、胃腸を立て直し、不足した気を補い、体表を引き締めて汗の漏れを防ぐことを考えます。
疲労倦怠感が強く、食欲不振があり、少し動くだけで汗が出る、寝汗をかく、汗の後にぐったりする場合に検討されることがあります。胃腸の働きを助け、気を補い、体表の引き締め力を回復させる考え方の処方です。
虚弱体質で疲れやすく、寝汗が多い、風邪をひきやすい、汗が漏れやすい場合に検討されることがあります。体表の防衛力である衛気を固め、汗の漏れを防ぐことを重視する処方です。
色白で筋肉にしまりがなく、水ぶとり傾向があり、疲れやすく、汗をかきやすく、むくみや関節痛を伴う場合に検討されることがあります。気を補いながら、余分な水分の停滞をさばく考え方の処方です。
陽虚が強く、足腰の冷え、夜間頻尿、腰や膝の弱り、冷や汗、強い疲労感がある場合に検討されることがあります。体の芯である腎を温め、生命力と水分代謝を立て直す考え方の処方です。
気虚・陽虚タイプでは、強く冷ます処方が合わないことがあります。
のぼせや汗があるからといって、体を冷やす処方を自己判断で使うと、冷え、だるさ、胃腸不調が悪化する場合があります。持病がある方、服薬中の方、ホルモン補充療法を受けている方は、自己判断で服用せず、医師または薬剤師に相談してください。
堀口和彦先生の過去の漢方相談データには、寝汗、冷や汗、汗が漏れる感じ、汗の後の疲労感、冷え、胃腸の弱さ、動悸、不眠などが重なって見られる相談例がありました。ここでは、その中から気虚・陽虚タイプの更年期ホットフラッシュに関連する例を、読みやすく要約してご紹介します。
女性(疲れやすさ・冷え・顔ののぼせ・便秘)
子どもの頃から体力がなく疲れやすいことに加えて、手足の冷え、顔ののぼせ、便秘、動悸、乾燥感が同じ相談内で見られた相談例です。体質傾向としては「気虚」と「陽虚」を含む、支える力と温める力の低下として整理されました。このような相談例では、人参養栄湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、女神散などが選定されていた例が見られました。
女性(ほてり・首から頭部の汗・慢性疲労・冷え)
更年期のほてり、首から頭部にかけての発汗、慢性疲労、手足の冷え、胃腸の不快感、寝ることへの不安が同じ相談内で見られた相談例です。体質傾向としては「気虚」と「陽虚」を含む、自律神経の揺らぎと体力低下として整理されました。このような相談例では、女神散、九味檳榔湯、柴胡加竜骨牡蛎湯などが選定されていた例が見られました。
女性(多汗・だるさ・不眠・動悸・立ちくらみ)
頭、顔、背中に流れるような汗が出ることに加えて、だるさ、不眠、動悸、立ちくらみ、ふらつきが同じ相談内で見られた相談例です。体質傾向としては「気虚」と「陽虚」を含む、水分代謝と自律神経の乱れとして整理されました。このような相談例では、女神散、竜胆瀉肝湯、柴胡加竜骨牡蛎湯などが選定されていた例が見られました。
女性(上半身の汗・夜間の汗・疲労感)
夏が近づくと上半身、特に首まわりの汗が強くなり、夜も汗で目が覚めるほどの状態が相談されていた例です。汗の後の疲労感も強く、体質傾向としては「陽虚」を含む自律神経とホルモンの揺らぎとして整理されました。このような相談例では、柴胡桂枝乾姜湯、温経湯、女神散などが選定されていた例が見られました。
女性(めまい・のぼせ・汗・動悸・疲労感)
めまい、のぼせ、汗、動悸、疲労感、食事量の低下が同じ相談内で見られた相談例です。体質傾向としては「気虚」と「陽虚」を含む、胃腸の力と自律神経の働きの低下として整理されました。このような相談例では、柴胡桂枝乾姜湯、女神散、苓桂朮甘湯などが選定されていた例が見られました。
女性(不眠・動悸・不安感・疲労感・食欲低下)
不眠、眠る前や目覚めの動悸、不安感、気分の落ち込み、強い疲労感、食欲低下が同じ相談内で見られた相談例です。体質傾向としては「気虚」と「陽虚」を含む、胃腸の弱さと自律神経の消耗として整理されました。このような相談例では、柴胡桂枝乾姜湯、加味帰脾湯が選定されていた例が見られました。
気虚・陽虚タイプでは、これ以上気を消耗させないことと、気を効率よく作り出すことが大切です。汗をかいて発散するより、休む、温める、胃腸をいたわるという方向で整えていきます。
漢方では、気を作る中心に胃腸の働きがあると考えます。気虚タイプでは、胃腸を動かす力そのものが不足しているため、体力をつけようとして肉や脂っこいものを無理に食べると、かえって胃腸に負担がかかることがあります。
空腹を感じてから、温かく消化のよいものを適量食べましょう。お粥、味噌汁、煮物、うどん、温かいスープなど、胃腸にやさしい食事を基本にするとよいでしょう。
冷たい飲み物、生野菜ばかりの食事、アイス、氷入りの飲料は、胃腸の働きを冷やし、気を作る力を弱めることがあります。
陽虚タイプでは、冷たい飲食物によって冷え、下痢、むくみ、夜間頻尿、冷や汗が悪化しやすくなります。飲み物は常温または温かいものを選びましょう。
汗は、気と水分を一緒に消耗します。気虚・陽虚タイプの方がサウナ、激しい運動、長時間の半身浴で無理に汗をかくと、疲労感や冷えが強くなることがあります。
運動する場合は、息が上がりすぎない散歩、軽いストレッチ、短時間の体操から始めましょう。汗をかいた後にぐったりする場合は、量や強度を減らしてください。
気虚・陽虚タイプでは、休むことそのものが治療的な養生になります。予定を詰め込みすぎる、疲れているのに頑張る、休日も動き続けると、汗の漏れや寝汗が悪化しやすくなります。
「疲れたら休む」「早めに横になる」「何もしない時間を作る」ことを、怠けではなく体を立て直すための時間として考えましょう。
漢方では、食べ物だけでなく、大気から取り込む清気も体の気を支えると考えます。気虚タイプでは呼吸が浅くなりやすく、胸や肩だけで呼吸していることがあります。
朝晩、仰向けになり、お腹をふくらませるように鼻から吸い、口からゆっくり吐きます。10回ほど繰り返し、呼吸を深くすることで、体表を守る衛気を整える助けになります。
陽虚タイプでは、体の熱が逃げやすくなっています。首回り、手首、足首、下腹部は冷えが入りやすい場所です。
薄手のスカーフ、腹巻き、レッグウォーマー、靴下などを活用し、冷房や外気で直接冷やされないようにしましょう。冷えを防ぐことで、汗をかいた後の冷えやだるさを軽減しやすくなります。
更年期のホットフラッシュは、同じ「汗」「のぼせ」でも、背景にある体質によって考え方が変わります。以下のタイプ別ページもあわせてご覧ください。
ホットフラッシュの背景にある「気・血・水・精」や8つの体質を知ると、なぜ同じ更年期の汗でも漢方の見立てが変わるのかが理解しやすくなります。
どちらも考えられます。夜にほてり、口渇、乾燥、手足の熱感、不眠がある場合は陰虚寄りです。一方、疲れやすく、冷えがあり、汗の後にぐったりする場合は気虚・陽虚寄りとして見ます。
あります。強い熱感よりも、気や陽気の不足によって汗をコントロールできず、冷や汗のように漏れ出るタイプがあります。汗の後に冷えやだるさが強い場合は、気虚・陽虚の要素を考えます。
軽い散歩やストレッチはよい場合がありますが、激しい運動やサウナで大量に汗をかくことは合わないことがあります。汗の後にぐったりする方は、運動量を控えめにし、休息を優先してください。
気虚・陽虚タイプでは、体を冷やすと冷えや疲労感が悪化することがあります。汗を止めるために冷やすよりも、胃腸を整え、気を補い、体表を引き締める考え方が大切です。
併用を検討できる場合もありますが、自己判断は避けてください。ホルモン補充療法を受けている方、持病がある方、服薬中の方は、医師または薬剤師に相談したうえで判断することが大切です。
堀口先生の相談データでは、寝汗、冷や汗、汗が漏れる感じ、疲労感、冷え、胃腸の弱さ、不眠、動悸などが同じ相談内で見られる気虚・陽虚タイプの更年期ホットフラッシュで、人参養栄湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、加味帰脾湯、女神散などが選定されていた例が見られます。実際には、気虚・陽虚だけでなく、陰虚、血虚、気滞、血瘀、湿熱などが重なることもあるため、体質全体の確認が必要です。
汗をかいた後にぐったりする、疲れると汗が漏れる、冷えや胃腸の弱さがある場合、気虚や陽虚の傾向を確認することがあります。気虚では補中益気湯や十全大補湯が検討されることもありますが、相談データでは人参養栄湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、加味帰脾湯などが選定されていた例も見られます。自己判断で決めるのではなく、冷え、胃腸の状態、睡眠、便通、服薬状況まで含めて確認することが大切です。
以下のような症状がある場合は、更年期のホットフラッシュや気虚・陽虚と決めつけず、医療機関を受診してください。
寝汗や冷や汗に見えても、別の病気が隠れていることがあります。
感染症、甲状腺疾患、糖代謝異常、循環器疾患、婦人科疾患などが関係する場合もあります。急に悪化した症状、今までにない症状、生活に大きな支障がある症状は、自己判断せず医療機関に相談してください。
寝汗・冷や汗・汗が漏れるホットフラッシュは、体が「気が不足し、汗をコントロールできていません」と知らせているサインかもしれません。
気虚なのか、陽虚まで進んでいるのか、あるいは陰虚や血虚も重なっているのか。汗の出方だけでなく、疲労感、冷え、胃腸の弱さ、不眠、夜間頻尿まで含めて体質を確認しましょう。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものであり、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。漢方薬は体質や症状、持病、服薬状況によって適否が異なります。持病がある方、服薬中の方、妊娠中・授乳中の方、ホルモン補充療法を受けている方は、自己判断で服用せず、事前に医師または薬剤師にご相談ください。
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。