更年期ホットフラッシュ|顔は熱いのに足は冷える血瘀タイプ
監修:堀口和彦(東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師)|更新日:2026-06-17

顔や頭はカーッと熱くなるのに、足元は冷たい。汗は出るのに、下半身は冷えている。
更年期のホットフラッシュの中でも、「顔は熱いのに足は冷える」「上半身だけのぼせる」「足先は冷たいのに、頭や顔から汗が出る」というタイプは、非常に不快感が強い症状です。
漢方では、この状態を「冷えのぼせ」または「上熱下寒(じょうねつかかん)」として考えます。背景にある代表的な体質が、血の巡りが滞る「血瘀(けつお)」です。
血は、全身に栄養を届けるだけでなく、体の熱を全体に配る働きも持つと考えます。血の巡りが悪くなると、熱が上半身に偏り、下半身や足先には十分に巡らなくなります。その結果、顔は熱いのに足は冷えるというアンバランスなホットフラッシュが起こります。
このページでわかること
- 顔は熱いのに足は冷えるホットフラッシュの原因
- 血瘀タイプの特徴と見分け方
- 冷えのぼせと血の巡りの関係
- 血瘀タイプで考える漢方薬例
- 血を巡らせる生活養生
目次
顔は熱いのに足は冷えるメカニズム
更年期のホットフラッシュは、女性ホルモンの変動に伴って、自律神経や体温調節が不安定になることで起こりやすくなります。顔や上半身が急に熱くなる、汗が噴き出す、動悸や不安感を伴うといった症状が見られます。*①②③
血瘀タイプでは、そこに「血の巡りの悪さ」が大きく関わります。熱そのものが全身に多いというより、熱を運ぶ血の流れが滞り、上半身に熱が偏っている状態です。
血瘀タイプのキーワードは「熱の偏り」です。
顔や頭は熱いのに、足先は冷たい。これは、熱が多すぎるというより、熱を全身に配る血の流れが滞り、上半身と下半身のバランスが崩れている状態です。
1. 血が滞ると、熱を全身に配れなくなる
漢方では、血は酸素や栄養を届けるだけでなく、体内の熱を全身に均等に配る働きも持つと考えます。
しかし、更年期のホルモン変動、自律神経の乱れ、ストレス、冷え、運動不足、長時間同じ姿勢などが重なると、血の巡りが悪くなります。この状態を血瘀と呼びます。
血が滞ると、熱を下半身や末端まで届けにくくなります。すると、熱は上半身にこもり、顔や頭は熱くなる一方で、足先や下半身は冷えたままになります。
2. 骨盤内のうっ血が、下半身の冷えを強める
更年期の女性では、子宮や卵巣のある骨盤内の血流が滞りやすくなることがあります。骨盤内に血が停滞すると、下半身への血流やリンパの巡りも悪くなり、足の冷えやむくみが出やすくなります。
骨盤内の巡りが悪い状態は、ホルモンや自律神経の乱れとも重なりやすく、のぼせ、冷え、肩こり、頭痛、便秘などが複合的に現れます。
3. 上にこもった熱を汗で逃がそうとする
上半身に熱が偏ると、体はその熱を逃がそうとして汗を出します。そのため、顔や頭から汗が出るのに、足先は冷たいという状態が起こります。
このタイプでは、単純に体を冷やすだけでは根本解決になりません。上半身を冷やしすぎると、かえって下半身の冷えが強くなり、冷えのぼせが悪化する場合もあります。
血瘀タイプのホットフラッシュ

血瘀とは、血の巡りが滞り、老廃物の回収や熱の分配がうまくいかない状態です。冷えのぼせ、肩こり、頭痛、くすみ、シミ、便秘などを伴いやすい体質です。
血瘀タイプのホットフラッシュでは、上半身と下半身の差が目立ちます。顔や頭は熱い、首から上に汗をかく、頬が赤くなる、頭がのぼせる一方で、足先、ふくらはぎ、お腹、腰は冷えやすくなります。
血の巡りが悪いと、痛みや色の変化も出やすくなります。頑固な肩こり、締め付けられるような頭痛、生理痛、下腹部の張り、シミ、くすみ、唇や舌の暗い色などは、血瘀を考えるサインになります。
血瘀タイプの特徴
- 顔や頭は熱いのに、足先が冷える
- 上半身だけのぼせる
- 首から上、顔、頭から汗が出やすい
- 肩こり、首こり、頭痛が強い
- 下腹部の張りや痛みがある
- 便秘しやすい
- シミ、くすみ、そばかすが気になる
- 唇や舌の色が暗い、紫っぽい
- 足のむくみや静脈瘤が気になる
- 同じ場所が刺すように痛むことがある
血瘀タイプでは「冷え」と「のぼせ」が同時に起こります。
冷えているから温めればよい、のぼせているから冷やせばよい、という単純な話ではありません。血を巡らせ、熱の偏りを整えることが大切です。
血瘀タイプで見られやすいサイン
血瘀は、ホットフラッシュだけでなく、痛み、皮膚、便通、下半身の冷えとして現れます。特に「固定した痛み」「暗い色」「巡りの悪さ」がポイントです。
冷えのぼせのサイン
- 顔は熱いのに足が冷たい
- 頭や首から汗が出る
- 足先や腰まわりが冷える
- 入浴後にのぼせやすい
- 夕方に足がむくみやすい
痛みのサイン
- 肩こりが頑固
- 頭痛が出やすい
- 同じ場所が刺すように痛む
- 下腹部の張りや痛みがある
- 腰痛や膝の痛みがある
皮膚・色のサイン
- 顔色がくすみやすい
- シミやそばかすが増えやすい
- 唇の色が暗い
- 舌が紫っぽい
- 吹き出物や肌荒れが出やすい
骨盤・便通のサイン
- 便秘がち
- 下腹部が張る
- 月経痛が強かった
- 経血に塊が出やすかった
- 長時間座ると不調が出やすい
血瘀タイプでは、デスクワーク、冷え、運動不足、ストレス、睡眠不足、甘いものや脂っこい食事のとりすぎなどが、血の巡りをさらに悪くすることがあります。
ほかのホットフラッシュタイプとの違い
血瘀タイプの特徴は、「上は熱いのに下は冷える」というアンバランスです。汗の量だけでなく、足の冷え、肩こり、頭痛、便秘、くすみなどを合わせて見ます。
| タイプ | 汗・のぼせの出方 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| 血瘀 | 顔は熱いのに足は冷える | 冷えのぼせ、肩こり、頭痛、便秘、くすみ |
| 陰虚 | 夜や寝る前にほてる、寝汗がある | 口渇、乾燥、手足のほてり、不眠 |
| 気滞 | 緊張やストレスで急に汗が出る | イライラ、胸のつかえ、ため息、動悸 |
| 湿熱 | 暑がりで全身から汗が多い | 肥満傾向、便秘、顔の赤み、重だるさ |
| 気虚 | 疲れると汗が漏れる | 倦怠感、胃腸虚弱、寝汗、汗の後のだるさ |
血瘀は、気滞や陰虚と重なりやすい体質です。
ストレスで気が滞ると血も巡りにくくなります。また、陰虚があると上半身の熱感が強くなり、血瘀による冷えのぼせがより不快に感じられることがあります。
漢方薬を考えるときの処方鑑別
血瘀タイプのホットフラッシュでは、単に熱を冷ましたり汗を止めたりするのではなく、滞った血を巡らせ、熱の偏りを整えることを考えます。この考え方を、漢方では活血化瘀(かっけつかお)と呼びます。
血瘀タイプで考える漢方薬例
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
体力が比較的あり、のぼせて足が冷える冷えのぼせ、肩こり、頭痛、めまい、シミなどを伴う更年期症状で検討されることがあります。血の滞りを動かし、上半身と下半身の熱の偏りを整える基本的な考え方の処方です。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
体力があり、のぼせが強く、便秘、下腹部の張りや痛み、イライラを伴う場合に検討されることがあります。骨盤内に熱を帯びた瘀血と便秘が重なっているような状態で候補になります。
通導散(つうどうさん)
肥満傾向や固太り、便秘、のぼせ、肩こり、腰痛などがあり、骨盤内の血行不良や老廃物の停滞が強い場合に検討されることがあります。滞った血と便通の停滞を合わせて見る処方です。
女神散(にょしんさん)
のぼせ、めまい、ふわふわ感、精神不安、イライラ、手足の冷えが入り混じる場合に検討されることがあります。更年期の血の道症として、血の巡りと自律神経の乱れを合わせて見る処方です。
血瘀タイプでも、体力・便通・冷えの強さで選び方は変わります。
便秘が強い方、冷えが強い方、胃腸が弱い方、服薬中の方では、合う処方が異なります。持病がある方、ホルモン補充療法を受けている方は、自己判断で服用せず、医師または薬剤師に相談してください。
血瘀タイプの生活養生
血瘀タイプでは、血をきれいにし、スムーズに巡らせる生活が大切です。冷えのぼせがあるからといって上半身だけを冷やすのではなく、全身の巡りを整える方向で考えます。
1. 気を巡らせて血を動かす
漢方では、血は気の力によって巡ると考えます。ストレスや緊張で気が滞ると、血の巡りも悪くなり、血瘀が悪化しやすくなります。
イライラ、くよくよ、考え込みすぎが続くと、胸やみぞおちがこわばり、呼吸が浅くなります。腹式呼吸、散歩、好きな音楽、軽い掃除などで、まず気を動かすことが、血を動かすことにもつながります。
2. 1〜2時間に1回は立ち上がる
長時間座りっぱなしでいると、骨盤内や下半身に血が滞りやすくなります。デスクワークが多い方は、1〜2時間に1回は立ち上がり、股関節、膝、足首を動かしましょう。
ふくらはぎは、下半身の血を心臓へ戻すポンプのような役割を持っています。つま先立ち、かかとの上げ下げ、軽いスクワット、階段の利用なども、血の巡りを助けます。
3. 顔が熱くても、下半身を冷やさない
冷えのぼせがあると、つい顔や首を冷やしたくなります。短時間なら楽になることもありますが、体全体を冷やしすぎると、血の巡りがさらに悪くなることがあります。
特に、足首、ふくらはぎ、下腹部、腰まわりは冷やさないようにしましょう。薄着、冷房、冷たい飲み物、素足、短い靴下が続くと、下半身の冷えが強まり、上半身ののぼせも悪化しやすくなります。
4. 冷たい飲食物をとりすぎない
血は冷えると巡りが悪くなりやすいと考えます。冷たい飲み物、氷入りの飲料、生野菜ばかりの食事、体を冷やす食材のとりすぎは、血瘀タイプには負担になることがあります。
温かい汁物、火を通した野菜、消化しやすい主食、たんぱく質を組み合わせ、体の中から巡りを整える食事を意識しましょう。
5. 甘いもの・脂っこいものを控えめにする
糖分や脂質のとりすぎ、加工食品のとりすぎは、体の重だるさや巡りの悪さにつながることがあります。血瘀タイプでは、便秘、むくみ、肩こり、肌のくすみが強くなる場合があります。
色の濃い野菜、海藻、きのこ、豆類、青魚、ごまなどを取り入れ、血を作り、巡らせる材料を整えましょう。ただし、食事制限を厳しくしすぎると血虚を招くこともあるため、極端なダイエットは避けてください。
6. 湯船で下半身を温める
シャワーだけで済ませると、下半身や骨盤まわりの冷えが残りやすくなります。のぼせやすい方は、熱すぎる湯ではなく、ぬるめのお湯で短時間から始めましょう。
足湯や半身浴も、下半身を温めながら上半身の熱を逃がす助けになる場合があります。ただし、汗をかきすぎるほど長く入ると、陰虚や気虚がある方では疲れやすくなるため注意が必要です。
関連ページ
更年期のホットフラッシュは、冷え、肩こり、頭痛、イライラ、めまい、むくみなどと重なって現れることがあります。以下のページもあわせてご覧ください。
- 更年期ホットフラッシュの全体像
- 突然カーッと熱くなる陰虚・血虚タイプ
- 緊張すると汗が出る気滞タイプ
- 更年期漢方の全体像
- 更年期の8つの体質
- 更年期のむくみ
- 更年期のイライラ
- 更年期の動悸
- 更年期のめまい
堀口メソッドで体質を理解する
ホットフラッシュの背景にある「気・血・水・精」や8つの体質を知ると、なぜ同じ更年期の汗でも漢方の見立てが変わるのかが理解しやすくなります。
よくある質問
顔は熱いのに足は冷えるのは、更年期のホットフラッシュですか?
更年期のホルモン変動や自律神経の揺らぎによって、のぼせや発汗が起こることがあります。そこに血の巡りの悪さが重なると、顔や頭は熱いのに足先は冷える「冷えのぼせ」として現れることがあります。
冷えのぼせは、温めればよいですか?冷やせばよいですか?
どちらか一方だけでは合わないことがあります。顔が熱いからといって全身を冷やしすぎると、下半身の冷えが悪化する場合があります。血瘀タイプでは、下半身を冷やさず、血の巡りを整え、熱の偏りを改善することが大切です。
肩こりや頭痛も血瘀と関係しますか?
関係することがあります。血の巡りが悪いと、肩こり、首こり、頭痛、刺すような痛み、同じ場所の痛みが出やすくなります。冷えのぼせに頑固な肩こりや頭痛が重なる場合は、血瘀の要素を考えます。
便秘があると、のぼせは悪化しますか?
便秘があると、下腹部や骨盤内の停滞が強まり、上半身ののぼせやイライラが悪化することがあります。血瘀タイプでは、便通、下腹部の張り、冷えのぼせを合わせて見ます。
ホルモン補充療法と漢方は併用できますか?
併用を検討できる場合もありますが、自己判断は避けてください。ホルモン補充療法を受けている方、持病がある方、服薬中の方は、医師または薬剤師に相談したうえで判断することが大切です。
受診の目安
以下のような症状がある場合は、更年期のホットフラッシュや血瘀と決めつけず、医療機関を受診してください。
- 胸痛、息切れ、失神、強い動悸を伴う場合
- 急な体重減少、発熱、異常な寝汗が続く場合
- 不正出血、過多月経、閉経後の出血がある場合
- 強い下腹部痛、急な腰痛、片側だけの脚の腫れや痛みがある場合
- めまい、ふらつき、片側のしびれ、ろれつが回らないなどの神経症状がある場合
- 強い頭痛、今までにない頭痛がある場合
- 服薬中、持病がある、ホルモン補充療法を受けている場合
冷えのぼせに見えても、別の病気が隠れていることがあります。
甲状腺疾患、循環器疾患、婦人科疾患、血管系の問題などが関係する場合もあります。急に悪化した症状、今までにない症状、生活に大きな支障がある症状は、自己判断せず医療機関に相談してください。
参考・出典
- *① 厚生労働省「女性の健康相談に関わる方」
- *② 日本女性医学学会「更年期障害」
- *③ 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「ホットフラッシュ」
- *④ 日本産婦人科医会「更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT)」
- *⑤ MSDマニュアル家庭版「更年期症状と閉経の影響に対する治療に用いられる主な薬剤」
体質チェックへ
顔は熱いのに足は冷えるホットフラッシュは、体が「血の巡りが滞り、熱の分配が偏っています」と知らせているサインかもしれません。
血瘀なのか、気滞や陰虚が重なっているのか、あるいは冷えやむくみの要素もあるのか。汗の出方だけでなく、冷え、肩こり、頭痛、便秘、くすみ、下腹部の張りまで含めて体質を確認しましょう。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものであり、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。漢方薬は体質や症状、持病、服薬状況によって適否が異なります。持病がある方、服薬中の方、妊娠中・授乳中の方、ホルモン補充療法を受けている方は、自己判断で服用せず、事前に医師または薬剤師にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。