47歳女性(ホットフラッシュ・発汗・冷え・便秘)
更年期前後から、顔や体が急に熱くなり、汗が出る症状に加えて、冷え、便秘、不眠、不安感、体重増加が同じ相談内で見られた相談例です。子宮筋腫や月経の乱れも背景として語られており、体質傾向としては「血瘀」を中心に整理されました。このような相談例では、加味逍遙散、白虎加人参湯などが選定されていた例が見られました。

顔や頭はカーッと熱くなるのに、足元は冷たい。汗は出るのに、下半身は冷えている。
更年期のホットフラッシュの中でも、「顔は熱いのに足は冷える」「上半身だけのぼせる」「足先は冷たいのに、頭や顔から汗が出る」というタイプは、非常に不快感が強い症状です。
漢方では、この状態を「冷えのぼせ」または「上熱下寒(じょうねつかかん)」として考えます。背景にある代表的な体質が、血の巡りが滞る「血瘀(けつお)」です。
血は、全身に栄養を届けるだけでなく、体の熱を全体に配る働きも持つと考えます。血の巡りが悪くなると、熱が上半身に偏り、下半身や足先には十分に巡らなくなります。その結果、顔は熱いのに足は冷えるというアンバランスなホットフラッシュが起こります。
このページでわかること
目次
更年期のホットフラッシュは、女性ホルモンの変動に伴って、自律神経や体温調節が不安定になることで起こりやすくなります。顔や上半身が急に熱くなる、汗が噴き出す、動悸や不安感を伴うといった症状が見られます。*①②③
血瘀タイプでは、そこに「血の巡りの悪さ」が大きく関わります。熱そのものが全身に多いというより、熱を運ぶ血の流れが滞り、上半身に熱が偏っている状態です。
血瘀タイプのキーワードは「熱の偏り」です。
顔や頭は熱いのに、足先は冷たい。これは、熱が多すぎるというより、熱を全身に配る血の流れが滞り、上半身と下半身のバランスが崩れている状態です。
漢方では、血は酸素や栄養を届けるだけでなく、体内の熱を全身に均等に配る働きも持つと考えます。
しかし、更年期のホルモン変動、自律神経の乱れ、ストレス、冷え、運動不足、長時間同じ姿勢などが重なると、血の巡りが悪くなります。この状態を血瘀と呼びます。
血が滞ると、熱を下半身や末端まで届けにくくなります。すると、熱は上半身にこもり、顔や頭は熱くなる一方で、足先や下半身は冷えたままになります。
更年期の女性では、子宮や卵巣のある骨盤内の血流が滞りやすくなることがあります。骨盤内に血が停滞すると、下半身への血流やリンパの巡りも悪くなり、足の冷えやむくみが出やすくなります。
骨盤内の巡りが悪い状態は、ホルモンや自律神経の乱れとも重なりやすく、のぼせ、冷え、肩こり、頭痛、便秘などが複合的に現れます。
上半身に熱が偏ると、体はその熱を逃がそうとして汗を出します。そのため、顔や頭から汗が出るのに、足先は冷たいという状態が起こります。
このタイプでは、単純に体を冷やすだけでは根本解決になりません。上半身を冷やしすぎると、かえって下半身の冷えが強くなり、冷えのぼせが悪化する場合もあります。

血瘀とは、血の巡りが滞り、老廃物の回収や熱の分配がうまくいかない状態です。冷えのぼせ、肩こり、頭痛、くすみ、シミ、便秘などを伴いやすい体質です。
血瘀タイプのホットフラッシュでは、上半身と下半身の差が目立ちます。顔や頭は熱い、首から上に汗をかく、頬が赤くなる、頭がのぼせる一方で、足先、ふくらはぎ、お腹、腰は冷えやすくなります。
血の巡りが悪いと、痛みや色の変化も出やすくなります。頑固な肩こり、締め付けられるような頭痛、生理痛、下腹部の張り、シミ、くすみ、唇や舌の暗い色などは、血瘀を考えるサインになります。
血瘀タイプでは「冷え」と「のぼせ」が同時に起こります。
冷えているから温めればよい、のぼせているから冷やせばよい、という単純な話ではありません。血を巡らせ、熱の偏りを整えることが大切です。
血瘀は、ホットフラッシュだけでなく、痛み、皮膚、便通、下半身の冷えとして現れます。特に「固定した痛み」「暗い色」「巡りの悪さ」がポイントです。
血瘀タイプでは、デスクワーク、冷え、運動不足、ストレス、睡眠不足、甘いものや脂っこい食事のとりすぎなどが、血の巡りをさらに悪くすることがあります。
血瘀タイプの特徴は、「上は熱いのに下は冷える」というアンバランスです。汗の量だけでなく、足の冷え、肩こり、頭痛、便秘、くすみなどを合わせて見ます。
| タイプ | 汗・のぼせの出方 | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| 血瘀 | 顔は熱いのに足は冷える | 冷えのぼせ、肩こり、頭痛、便秘、くすみ |
| 陰虚 | 夜や寝る前にほてる、寝汗がある | 口渇、乾燥、手足のほてり、不眠 |
| 気滞 | 緊張やストレスで急に汗が出る | イライラ、胸のつかえ、ため息、動悸 |
| 湿熱 | 暑がりで全身から汗が多い | 肥満傾向、便秘、顔の赤み、重だるさ |
| 気虚 | 疲れると汗が漏れる | 倦怠感、胃腸虚弱、寝汗、汗の後のだるさ |
血瘀は、気滞や陰虚と重なりやすい体質です。
ストレスで気が滞ると血も巡りにくくなります。また、陰虚があると上半身の熱感が強くなり、血瘀による冷えのぼせがより不快に感じられることがあります。
血瘀タイプのホットフラッシュでは、単に熱を冷ましたり汗を止めたりするのではなく、滞った血を巡らせ、熱の偏りを整えることを考えます。この考え方を、漢方では活血化瘀(かっけつかお)と呼びます。
体力が比較的あり、のぼせて足が冷える冷えのぼせ、肩こり、頭痛、めまい、シミなどを伴う更年期症状で検討されることがあります。血の滞りを動かし、上半身と下半身の熱の偏りを整える基本的な考え方の処方です。
体力があり、のぼせが強く、便秘、下腹部の張りや痛み、イライラを伴う場合に検討されることがあります。骨盤内に熱を帯びた瘀血と便秘が重なっているような状態で候補になります。
肥満傾向や固太り、便秘、のぼせ、肩こり、腰痛などがあり、骨盤内の血行不良や老廃物の停滞が強い場合に検討されることがあります。滞った血と便通の停滞を合わせて見る処方です。
のぼせ、めまい、ふわふわ感、精神不安、イライラ、手足の冷えが入り混じる場合に検討されることがあります。更年期の血の道症として、血の巡りと自律神経の乱れを合わせて見る処方です。
血瘀タイプでも、体力・便通・冷えの強さで選び方は変わります。
便秘が強い方、冷えが強い方、胃腸が弱い方、服薬中の方では、合う処方が異なります。持病がある方、ホルモン補充療法を受けている方は、自己判断で服用せず、医師または薬剤師に相談してください。
堀口和彦先生の過去の漢方相談データには、顔や上半身の熱感、発汗、冷え、便秘、頭痛、肩こり、月経トラブルなどが重なって見られる相談例がありました。ここでは、その中から血瘀タイプの更年期ホットフラッシュに関連する例を、読みやすく要約してご紹介します。
47歳女性(ホットフラッシュ・発汗・冷え・便秘)
更年期前後から、顔や体が急に熱くなり、汗が出る症状に加えて、冷え、便秘、不眠、不安感、体重増加が同じ相談内で見られた相談例です。子宮筋腫や月経の乱れも背景として語られており、体質傾向としては「血瘀」を中心に整理されました。このような相談例では、加味逍遙散、白虎加人参湯などが選定されていた例が見られました。
58歳女性(ほてり・口の渇き・冷え・頭痛)
ホットフラッシュに加えて、口や喉の渇き、冷え、便秘、頭痛、不安感、不眠が同じ相談内で見られた相談例です。体質傾向としては「血瘀」を含む巡りの悪さとして整理され、このような熱感と冷え、頭部症状が重なる相談例では、白虎加人参湯、柴胡加竜骨牡蛎湯などが選定されていた例が見られました。
52歳女性(上半身の多汗・むくみ・体重増加)
背中、脇、首から上に強い汗が出ることに加えて、むくみ、体重増加、高血圧傾向が同じ相談内で見られた相談例です。体質傾向としては「血瘀」を含む巡りの停滞として整理され、このような上半身の発汗と代謝の滞りが重なる相談例では、柴胡加竜骨牡蛎湯、女神散などが選定されていた例が見られました。
58歳女性(発汗・肩こり・頭痛・体重増加)
発汗、多汗に加えて、肩こり、頭痛、体重増加が同じ相談内で見られた相談例です。体質傾向としては「血瘀」を含む巡りの悪さとして整理されました。ただし、この例では湿痰や水分代謝の停滞も重なっていると考えられるため、血瘀単独ではなく複合的な相談例として扱います。このような相談例では、九味檳榔湯、続命湯が選定されていた例が見られました。
血瘀タイプでは、血をきれいにし、スムーズに巡らせる生活が大切です。冷えのぼせがあるからといって上半身だけを冷やすのではなく、全身の巡りを整える方向で考えます。
漢方では、血は気の力によって巡ると考えます。ストレスや緊張で気が滞ると、血の巡りも悪くなり、血瘀が悪化しやすくなります。
イライラ、くよくよ、考え込みすぎが続くと、胸やみぞおちがこわばり、呼吸が浅くなります。腹式呼吸、散歩、好きな音楽、軽い掃除などで、まず気を動かすことが、血を動かすことにもつながります。
長時間座りっぱなしでいると、骨盤内や下半身に血が滞りやすくなります。デスクワークが多い方は、1〜2時間に1回は立ち上がり、股関節、膝、足首を動かしましょう。
ふくらはぎは、下半身の血を心臓へ戻すポンプのような役割を持っています。つま先立ち、かかとの上げ下げ、軽いスクワット、階段の利用なども、血の巡りを助けます。
冷えのぼせがあると、つい顔や首を冷やしたくなります。短時間なら楽になることもありますが、体全体を冷やしすぎると、血の巡りがさらに悪くなることがあります。
特に、足首、ふくらはぎ、下腹部、腰まわりは冷やさないようにしましょう。薄着、冷房、冷たい飲み物、素足、短い靴下が続くと、下半身の冷えが強まり、上半身ののぼせも悪化しやすくなります。
血は冷えると巡りが悪くなりやすいと考えます。冷たい飲み物、氷入りの飲料、生野菜ばかりの食事、体を冷やす食材のとりすぎは、血瘀タイプには負担になることがあります。
温かい汁物、火を通した野菜、消化しやすい主食、たんぱく質を組み合わせ、体の中から巡りを整える食事を意識しましょう。
糖分や脂質のとりすぎ、加工食品のとりすぎは、体の重だるさや巡りの悪さにつながることがあります。血瘀タイプでは、便秘、むくみ、肩こり、肌のくすみが強くなる場合があります。
色の濃い野菜、海藻、きのこ、豆類、青魚、ごまなどを取り入れ、血を作り、巡らせる材料を整えましょう。ただし、食事制限を厳しくしすぎると血虚を招くこともあるため、極端なダイエットは避けてください。
シャワーだけで済ませると、下半身や骨盤まわりの冷えが残りやすくなります。のぼせやすい方は、熱すぎる湯ではなく、ぬるめのお湯で短時間から始めましょう。
足湯や半身浴も、下半身を温めながら上半身の熱を逃がす助けになる場合があります。ただし、汗をかきすぎるほど長く入ると、陰虚や気虚がある方では疲れやすくなるため注意が必要です。
更年期のホットフラッシュは、冷え、肩こり、頭痛、イライラ、めまい、むくみなどと重なって現れることがあります。以下のページもあわせてご覧ください。
ホットフラッシュの背景にある「気・血・水・精」や8つの体質を知ると、なぜ同じ更年期の汗でも漢方の見立てが変わるのかが理解しやすくなります。
更年期のホルモン変動や自律神経の揺らぎによって、のぼせや発汗が起こることがあります。そこに血の巡りの悪さが重なると、顔や頭は熱いのに足先は冷える「冷えのぼせ」として現れることがあります。
どちらか一方だけでは合わないことがあります。顔が熱いからといって全身を冷やしすぎると、下半身の冷えが悪化する場合があります。血瘀タイプでは、下半身を冷やさず、血の巡りを整え、熱の偏りを改善することが大切です。
関係することがあります。血の巡りが悪いと、肩こり、首こり、頭痛、刺すような痛み、同じ場所の痛みが出やすくなります。冷えのぼせに頑固な肩こりや頭痛が重なる場合は、血瘀の要素を考えます。
便秘があると、下腹部や骨盤内の停滞が強まり、上半身ののぼせやイライラが悪化することがあります。血瘀タイプでは、便通、下腹部の張り、冷えのぼせを合わせて見ます。
併用を検討できる場合もありますが、自己判断は避けてください。ホルモン補充療法を受けている方、持病がある方、服薬中の方は、医師または薬剤師に相談したうえで判断することが大切です。
堀口先生の相談データでは、発汗、多汗、冷え、便秘、頭痛、不眠、不安感、月経トラブルなどが同じ相談内で見られる血瘀タイプの更年期ホットフラッシュで、加味逍遙散、白虎加人参湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、女神散などが選定されていた例が見られます。実際には、血瘀だけでなく陰虚、血虚、気滞、湿熱、気虚などが重なることもあるため、体質全体の確認が必要です。
顔は熱いのに足が冷える、肩こりや頭痛が強い、月経痛や塊がある場合、血瘀の傾向を確認することがあります。血瘀では桂枝茯苓丸や桃核承気湯が検討されることもありますが、相談データでは加味逍遙散、女神散、白虎加人参湯などが選定されていた例も見られます。自己判断で決めるのではなく、冷え、便通、月経歴、胃腸の状態、服薬状況まで含めて確認することが大切です。
以下のような症状がある場合は、更年期のホットフラッシュや血瘀と決めつけず、医療機関を受診してください。
冷えのぼせに見えても、別の病気が隠れていることがあります。
甲状腺疾患、循環器疾患、婦人科疾患、血管系の問題などが関係する場合もあります。急に悪化した症状、今までにない症状、生活に大きな支障がある症状は、自己判断せず医療機関に相談してください。

顔は熱いのに足は冷えるホットフラッシュは、体が「血の巡りが滞り、熱の分配が偏っています」と知らせているサインかもしれません。
血瘀なのか、気滞や陰虚が重なっているのか、あるいは冷えやむくみの要素もあるのか。汗の出方だけでなく、冷え、肩こり、頭痛、便秘、くすみ、下腹部の張りまで含めて体質を確認しましょう。
※本ページは一般的な情報提供を目的としたものであり、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。漢方薬は体質や症状、持病、服薬状況によって適否が異なります。持病がある方、服薬中の方、妊娠中・授乳中の方、ホルモン補充療法を受けている方は、自己判断で服用せず、事前に医師または薬剤師にご相談ください。
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。