苓桂味甘湯とは?のぼせ・動悸・からぜき・のどや耳のふさがり感に使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月14日 監修:堀口和彦

苓桂味甘湯(りょうけいみかんとう)は、手足が冷えているのに顔が赤くのぼせ、動悸、からぜき、のどのふさがり感、耳のふさがり感が出る方に用いられる漢方薬です。茯苓で水をさばき、桂皮で上に突き上げる気を下へめぐらせ、五味子で咳や呼吸の過敏な反応を収め、甘草で全体を調和します。KanpoNowでは、この処方を「上に突き上げる気と水を、下へ落ち着かせる漢方薬」として整理します。

苓桂味甘湯はこんな人に向いています
  • 手足は冷えるのに、顔が赤くのぼせる
  • 胸から顔へ突き上げるような動悸がある
  • 発作的に込み上げるようなからぜきがある
  • のどがふさがる、詰まるような違和感がある
  • 耳がふさがったような不快感がある
  • 咳や動悸が、ストレス・緊張・発汗後に悪化しやすい

動悸、息切れ、胸痛、強い咳、耳のふさがり感は、心臓・肺・耳鼻科疾患が関係することがあります。胸痛、呼吸困難、失神、血痰、発熱、急な聴力低下、強いめまいがある場合は、医療機関での確認を優先してください。

苓桂味甘湯とは

苓桂味甘湯は、茯苓桂皮五味子甘草から構成される漢方薬です。

茯苓は、体内に停滞した余分な水をさばきます。桂皮は、冷えを温めながら、上へ突き上げる気を下へ降ろし、動悸やのぼせを整えます。五味子は、肺の気を収め、からぜきや呼吸の過敏な反応を落ち着かせます。甘草は、急な突き上げや緊張をやわらげ、処方全体を調和します。

ポイント:苓桂味甘湯は、単なる咳止めではありません。手足の冷え、顔ののぼせ、動悸、からぜき、のどや耳のふさがり感を、「気逆+水毒」から整える処方です。

古典における位置づけ

苓桂味甘湯は、中国の古典『金匱要略』に由来する処方です。処方名は、茯苓、桂枝、五味子、甘草という構成生薬から一文字ずつ取ったものです。日本の製剤では桂枝に相当する生薬として桂皮と表記されることがあります。

苓桂味甘湯は、苓桂朮甘湯とよく似ています。どちらも茯苓・桂皮・甘草を含み、水毒と気逆を整える処方ですが、苓桂朮甘湯は白朮または蒼朮で水を乾かし、めまい・立ちくらみ・ふらつきに寄ります。一方、苓桂味甘湯は五味子で肺気を収め、からぜき・動悸・のぼせ・のどや耳のふさがり感に寄ります。

KanpoNow掲載の効能効果では、体力中等度以下で、手足が冷えて顔が赤くなるものの、のぼせ、動悸、からぜき、のどのふさがり感、耳のふさがり感に用いる処方として整理されています。

苓桂味甘湯らしさ:手足が冷える。顔が赤くのぼせる。動悸がする。からぜきが込み上げる。のどや耳がふさがる感じがある。この「冷えのぼせ+気逆+水毒」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、苓桂味甘湯が合う状態を、気逆、水毒、湿痰、冷えのぼせ、肺気上逆として考えます。下半身や手足は冷えているのに、気と水が上半身へ偏って突き上げると、顔のほてり、動悸、からぜき、のどや耳のふさがり感が出やすくなります。

  • 気逆:気が下へ降りず、胸・顔・のどへ突き上げる状態
  • 水毒・湿痰:余分な水が停滞し、気の流れを邪魔する状態
  • 冷えのぼせ:手足や下半身は冷えるのに、上半身だけ熱く感じる状態
  • 肺気上逆:肺の気が下がらず、からぜきや息苦しさが出る状態

発汗後、緊張、自律神経の乱れ、冷え、ストレスなどで下半身を支える力が不安定になると、気が上へ突き上げやすくなります。そこに水の停滞が重なると、胸がざわつく、心臓がドキドキする、顔が赤くなる、からぜきが出る、のどや耳がふさがるような違和感が出ることがあります。

苓桂味甘湯は、茯苓で水をさばき、桂皮で上衝する気を下へ巡らせ、五味子で肺気を収め、甘草で全体を整えます。強く発汗させる処方ではなく、上へ乱れた気と水を落ち着かせる処方です。

注意:動悸、胸の圧迫感、息切れ、からぜき、のどの詰まり、耳のふさがり感は、心臓病、喘息、逆流性食道炎、甲状腺疾患、不安症、耳鼻科疾患などが関係することがあります。胸痛、失神、強い息苦しさ、急な聴力低下、回転性めまいがある場合は医療機関を優先してください。

構成生薬と配合バランス

苓桂味甘湯は、茯苓・桂皮・五味子・甘草の4生薬で構成されます。水をさばく軸、気を下へ降ろす軸、咳を収める軸、全体を調和する軸が、非常にシンプルにまとまっています。
苓桂味甘湯の構成イメージを示す円グラフです。 苓桂味甘湯
茯苓40%
桂皮27%
五味子20%
甘草13%
苓桂味甘湯の内部構造
水をさばき、気を下げ、咳と動悸を落ち着かせる構成です。
利水の軸 茯苓 体内に停滞した余分な水を整理し、気逆を助長する水毒をさばきます。
降逆・温通の軸 桂皮 冷えを温めながら、胸や顔へ突き上げる気を下へ巡らせます。
収斂止咳の軸 五味子・甘草 肺気を収め、からぜきや過敏な反応を落ち着かせ、全体を調和します。

※円グラフは、茯苓・桂皮・五味子・甘草の配合を、見やすく整数化した構成イメージです。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:苓桂味甘湯は、上に突き上げる気と水を、下へ落ち着かせ、のぼせ・動悸・からぜきを整える処方です。

苓桂味甘湯の味・香り・服用時の体感

苓桂味甘湯は、五味子の酸味、桂皮のスパイシーな甘い香り、甘草の甘みが重なった、甘酸っぱく少しスパイシーな味です。茯苓が多く入るため、重い苦味よりも、酸味・甘み・桂皮の香りが印象に残りやすい処方です。

甘酸っぱくスパイシー

五味子の酸味、桂皮の辛味と甘み、甘草の甘みが重なります。

桂皮と五味子の香り

桂皮のシナモン様の甘い香りに、五味子の酸味を思わせる香りが混ざります。

淡褐色〜褐色

製品により異なりますが、粉末・顆粒では淡褐色から褐色に見えます。

突き上げが下がる感覚

合う方では、胸から顔へ突き上げる動悸・のぼせ・からぜきが、下へ落ち着く感覚があります。

体験の流れ:五味子の酸味と桂皮の香りを感じる → 胸のざわつきや顔のほてりが落ち着く → 込み上げるからぜきが収まる → のどや耳のふさがり感が軽くなる感覚。苓桂味甘湯は、気と水の上衝を整える処方です。

症状別の向き・不向き

苓桂味甘湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、手足の冷え、顔ののぼせ、動悸、からぜき、のど・耳のふさがり感です。

手足が冷えて顔が赤くのぼせる

下は冷えるのに、気が上へ突き上げて顔が赤くなる冷えのぼせタイプに向きます。

判断ポイント:冷えのぼせ。

動悸・胸のざわつき

胸元に気と水が上がり、心臓がドキドキするように感じる場合に比較します。

判断ポイント:気逆+水毒。

発作的なからぜき

痰が多い咳ではなく、下から込み上げるような乾いた咳、のぼせや動悸を伴う咳に比較します。

判断ポイント:五味子で肺気を収める。

のど・耳のふさがり感

実際に腫れているというより、気と水が上部に停滞して、詰まる・ふさがるように感じる場合に比較します。

判断ポイント:上部の気水停滞。
×

めまい・立ちくらみが主症状で咳がない

同じ気逆+水毒でも、めまい・立ちくらみ・ふらつきが中心なら、苓桂朮甘湯を比較します。

判断ポイント:咳か、めまいか。
×

黄色い粘い痰・高熱・激しい熱性の咳

肺熱・痰熱・湿熱が中心の場合は、温めて収める方向が合いません。麻杏甘石湯や清肺湯を比較します。

判断ポイント:冷えのぼせか、肺熱か。

体質別の向き・不向き

苓桂味甘湯は、気逆と水毒が重なり、手足の冷えと上半身ののぼせが同時に出る体質に向く処方です。熱性の炎症や、痰熱・湿熱が強い方には合いません。

気逆タイプ

気が下へ降りず、胸・顔・のどへ突き上げ、動悸、のぼせ、からぜきが出るタイプです。

判断ポイント:上へ突き上げる。

水毒・湿痰タイプ

余分な水が停滞し、気の流れを邪魔して、胸やのど、耳のふさがり感を起こすタイプです。

判断ポイント:気と水が一緒に上がる。

冷えのぼせタイプ

手足や下半身は冷えるのに、顔だけ赤くのぼせるタイプで比較します。

判断ポイント:上下のアンバランス。
×

実熱・湿熱タイプ

発熱、黄色い痰、強い炎症、熱感が前面にある方では、桂皮や五味子で温めて収める方向が合いません。

判断ポイント:熱を閉じ込めない。

強い乾燥・陰虚タイプ

喉が強く乾く、痰がほとんどない乾いた咳、ほてり、寝汗が強い場合は、麦門冬湯など潤す処方を比較します。

判断ポイント:収めるより潤す必要があるか。

効能・効果

KanpoNowの苓桂味甘湯ページ・商品ページでは、効能・効果は次のように整理されています。

体力中等度以下で、手足が冷えて顔が赤くなるものの次の諸症:のぼせ、動悸、からぜき、のどのふさがり感、耳のふさがり感

※小太郎漢方製薬の一般用医薬品情報でも同趣旨の効能・効果が確認されています。実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

苓桂味甘湯は、のぼせ・動悸・からぜき・のどや耳のふさがり感に使われる処方ですが、甘草を含むため、長期服用や他の漢方薬との併用では偽アルドステロン症に注意します。また、動悸・咳・耳のふさがり感には、医療機関で確認すべき病気が隠れることがあります。

動悸・胸部症状の危険サイン

胸痛、強い息切れ、失神、冷や汗、脈の乱れが強い、横になると苦しいなどがある場合は、心臓や肺の病気が関係する可能性があります。漢方だけで様子を見るのではなく、医療機関で確認してください。

咳・からぜきの鑑別

からぜきでも、発熱、血痰、黄色い粘い痰、強い息苦しさ、長引く咳、体重減少がある場合は、感染症、喘息、肺疾患、逆流性食道炎などの確認が必要です。熱の咳には麻杏甘石湯や清肺湯、乾燥の咳には麦門冬湯などを比較します。

耳のふさがり感の注意

急な聞こえにくさ、耳鳴り、強いめまい、耳の痛み、発熱を伴う場合は、耳鼻科での確認を優先してください。突発性難聴など早期対応が重要な病気もあります。

甘草による偽アルドステロン症への注意

甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意してください。

気逆を落ち着かせる生活指導

咳や動悸、のぼせの引き金が、緊張、ストレス、焦り、自律神経の乱れにある場合は、下腹部に意識を置いた腹式呼吸が役立ちます。吸うよりも吐く時間を長くし、胸ではなく丹田に気を下ろすように呼吸します。

冷えのぼせを悪化させない

手足や下半身を冷やしたまま、上半身だけ熱を逃がそうとすると、上下のアンバランスが強まることがあります。足首、下腹部、腰を冷やさず、冷たい飲み物や過度なカフェインを控え、温かいものを少量ずつ摂るようにします。

相談・受診を優先したいサイン

  • 胸痛、強い息切れ、失神、冷や汗がある
  • 動悸が急に強くなった、脈が大きく乱れる
  • 発熱、血痰、黄色い粘い痰、呼吸困難がある
  • 咳が長引く、体重減少がある
  • 急な聴力低下、強い耳鳴り、回転性めまいがある
  • むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下がある
  • 服用しても改善しない、又は悪化する
すぐ相談:苓桂味甘湯は、のぼせ・動悸・からぜきに使われる処方ですが、胸痛、失神、強い息切れ、血痰、急な聴力低下、強いめまいがある場合は医療機関を優先してください。

症状から理解を深める

苓桂味甘湯が気になる方は、のぼせ、動悸、咳・喘息、めまい、冷え、症状一覧をあわせて見ると、気逆・水毒・冷えのぼせの全体像がつかみやすくなります。

気逆や水毒に使う漢方薬でも、主症状が咳なのか、めまいなのか、熱性の咳なのか、乾燥の咳なのか、のどのつかえなのかで選び方が変わります。苓桂味甘湯は、のぼせ・動悸・からぜき・ふさがり感を中心に考える処方です。

よくある質問

Q. 苓桂味甘湯はどんな咳に向いていますか?

顔ののぼせ、動悸、胸の突き上げ感を伴う、込み上げるようなからぜきに向きます。黄色い粘い痰や発熱がある熱性の咳には向きません。

Q. 苓桂朮甘湯との違いは何ですか?

苓桂朮甘湯は、めまい、立ちくらみ、ふらつき、動悸など、水毒が頭や胸へ上がる状態に使います。苓桂味甘湯は、五味子を含むため、からぜき、のぼせ、動悸、のどや耳のふさがり感に焦点が合います。

Q. 動悸にも使えますか?

効能効果に動悸が含まれています。手足が冷え、顔が赤くなり、胸に気が突き上げるような動悸で比較します。ただし、胸痛、失神、強い息切れがある場合は医療機関を優先してください。

Q. のどや耳のふさがり感にも使えますか?

効能効果に、のどのふさがり感、耳のふさがり感が含まれます。ただし、急な聴力低下、耳鳴り、強いめまい、耳の痛みがある場合は耳鼻科で確認してください。

Q. 甘草の注意はありますか?

甘草を含むため、長期服用や他の漢方薬との併用では、むくみ、血圧上昇、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下に注意します。

参考・出典

苓桂味甘湯が合うか迷った方へ

苓桂味甘湯は、のぼせ、動悸、からぜき、のどのふさがり感、耳のふさがり感に使われる漢方薬ですが、すべての咳や動悸に合うわけではありません。気逆と水毒なのか、肺熱なのか、乾燥の空咳なのか、のどの気滞なのか、心臓・肺・耳鼻科の病気が隠れていないかを見極めることが大切です。

AI漢方診断の案内

あなたに合う漢方薬を確認しませんか?

KanpoNowでは、症状と体質をもとに、あなたに合った漢方薬の候補をAIが提案します。苓桂味甘湯が合う気逆・水毒タイプか、苓桂朮甘湯・麻杏甘石湯・麦門冬湯・清肺湯・半夏厚朴湯など別の処方を考えた方がよいタイプかを確認したい方は、【AI漢方診断】をご利用ください。

AI漢方診断をする

免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。のぼせ、動悸、からぜき、のどのふさがり感、耳のふさがり感は、心臓病、肺疾患、喘息、逆流性食道炎、甲状腺疾患、不安症、耳鼻科疾患などが関係することがあります。胸痛、強い息切れ、失神、血痰、発熱、急な聴力低下、強いめまい、耳の痛みがある場合は医療機関にご相談ください。服用後にむくみ、血圧上昇、急な体重増加、こむら返り、筋力低下、脱力感、発疹、発赤、かゆみ、胃部不快感、悪心、下痢などがある場合は、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、心疾患、腎疾患、高血圧、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。