四逆散とは?ストレス性の胃痛・腹痛・胸腹部の重苦しさに使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月8日 監修:堀口和彦
四逆散(しぎゃくさん)

四逆散(しぎゃくさん)は、ストレスや緊張で気の巡りが滞り、胸腹部の重苦しさ、胃痛、腹痛、不安、不眠などが出る方に用いられる漢方薬です。「四逆」という名前ですが、芯から冷え切った陽虚の冷えではなく、気が滞って手足の末端まで巡らないタイプの冷えを考えます。KanpoNowでは、この処方を「気滞による胸腹部の張り・痛み・冷えのぼせを整える基本処方」として整理します。

四逆散はこんな人に向いています
  • ストレスで胃が痛くなる、みぞおちがつかえる
  • お腹が張る、ガスがたまる、腹痛が出やすい
  • 胸や脇腹が重苦しく、ため息をつくと少し楽になる
  • 手足は冷えるのに、顔や上半身はのぼせやすい
  • 不安、不眠、神経過敏があり、緊張が抜けにくい

反対に、芯から冷えて水様下痢をするタイプ、体力が著しく落ちているタイプ、胃腸虚弱が強いタイプでは、四逆散だけで考えず、別処方を比較します。

四逆散とは

四逆散は、柴胡芍薬枳実甘草の4つの生薬から構成される漢方薬です。

柴胡がストレスで滞った気をのびやかに巡らせ、枳実が胸やみぞおち、お腹のつかえを下へ通します。芍薬と甘草は、筋肉や内臓のこわばりをゆるめ、差し込むような腹痛や緊張を和らげます。

ポイント:四逆散は、エネルギーが不足した人を温める処方ではありません。エネルギーはあるのに巡らず、胸腹部に圧力がたまっている気滞タイプを整える処方です。

古典における位置づけ

四逆散は、中国の古典『傷寒論』に記載される処方です。「四逆」とは、四肢が冷えるような状態を指しますが、ここでの冷えは陽気そのものが不足している冷えではなく、気が滞って末端へ巡らないために起こる冷えとして理解します。

つまり、四逆散の中心は「冷え」ではなく「滞り」です。ストレスや緊張で気が胸腹部に詰まり、みぞおちや脇腹が張り、胃腸がこわばり、手足まで巡りが届きにくくなる状態を整えるために組み立てられています。

現代では、胃炎、胃痛、腹痛、胃酸過多、胃潰瘍、神経質、不安、不眠、過敏性腸症候群のように、ストレスと胃腸・自律神経症状が重なるケースで比較されます。

四逆散らしさ:胸やみぞおちがつかえる。お腹が張る。ストレスで胃痛や腹痛が悪化する。手足は冷えるのに、顔はのぼせる。ため息が多い。緊張が抜けない。この「気滞による胸腹部の圧力」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、四逆散が合う状態を、気滞、肝気鬱結、胸脇苦満、気滞による厥逆として考えます。生命力そのものが足りないのではなく、巡りが詰まり、胸腹部やみぞおちに圧力がたまっている状態です。

  • 気滞:気の巡りが滞り、胸やお腹が張る、つかえる、痛む状態
  • 胸脇苦満:みぞおちから脇腹にかけて、張りや重苦しさが出る状態
  • 自律神経の過緊張:ストレスで交感神経が高ぶり、胃腸や筋肉がこわばる状態
  • 気滞による冷え:温める力がないのではなく、巡らないため手足に温かさが届かない状態

柴胡と枳実は、気の滞りをほどく主軸です。柴胡が上や外へ気を伸ばし、枳実が胸腹部のつかえを下へ通します。芍薬と甘草は、内臓や筋肉の緊張をゆるめ、急に差し込むような腹痛やこわばりを和らげる方向に働きます。

そのため、四逆散は、胃腸の症状だけでなく、不安、不眠、手足の冷え、顔ののぼせ、PMSの張りなど、ストレスによる巡りの停滞が背景にある症状をまとめて考える処方です。

注意:強い腹痛、発熱、嘔吐、血便、黒色便、胸痛、息苦しさ、急な体重減少がある場合は、気滞と決めつけず医療機関で確認してください。

構成生薬と配合バランス

四逆散は、4味だけで構成されるシンプルな処方です。柴胡5.0g、芍薬4.0g、枳実2.0g、甘草1.5gという配合が確認されています。柴胡・枳実で気を巡らせ、芍薬・甘草で緊張と痛みをゆるめる構成です。

四逆散の構成を、柴胡40%、芍薬32%、枳実16%、甘草12%として合計100%で示した構成イメージです。 四逆
柴胡40%
芍薬32%
枳実16%
甘草12%
四逆散の内部構造
気の滞りをほどき、胸腹部の圧力と筋緊張をゆるめる構成です。
気を巡らせる軸 柴胡 肝気をのびやかにし、ストレスで詰まった胸脇部の気をほどきます。
つかえを下げる軸 枳実 みぞおちや腹部の張り、ガス、重苦しさを下へ通し、内側の圧力を抜きます。
痛みをゆるめる軸 芍薬・甘草 腹部や筋肉のこわばりをゆるめ、差し込むような腹痛や緊張を和らげます。

※円グラフは、四逆散の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:四逆散は、ストレスで気が胸腹部に詰まり、胃痛・腹痛・張り・手足の冷え・不安が出る状態を整える「気滞の基本処方」です。

四逆散の味・香り・服用時の体感

四逆散は、柴胡と枳実の苦みを中心に、芍薬と甘草の甘みが加わります。医療用製剤では味は「苦い」とされ、色調は淡灰褐色、特異なにおいの顆粒として確認されています。

苦みと甘み

柴胡・枳実の苦みに、芍薬・甘草のやわらかな甘みが重なります。

漢方薬らしい香り

香ばしさと、少し苦味を連想させる落ち着いた生薬香があります。

淡灰褐色の顆粒

医療用製剤では淡灰褐色の顆粒として確認されます。製品により色調は異なります。

胸腹部がほどける感覚

合う方では、みぞおちやお腹の張りが抜け、手足の冷えや緊張が少しずつゆるむ感覚があります。

体験の流れ:苦みを感じる → 胸やみぞおちのつかえが少し軽くなる → お腹の張りやガス感が抜ける → 緊張していた腹部がゆるみ、手足まで巡る感覚。四逆散は「詰まった気を通す」印象が強い処方です。

症状別の向き・不向き

四逆散は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、ストレスで悪化する胃痛・腹痛、胸腹部の重苦しさ、張り、不安、不眠、手足の冷えと顔ののぼせです。

ストレスで悪化する胃痛・腹痛

緊張すると胃が痛い、お腹が張る、差し込むような腹痛が出るタイプで候補になります。

判断ポイント:ストレス性・張る痛み・みぞおちのつかえ。

腹部膨満感・ガス・IBS傾向

気が滞り、胃腸がこわばり、ガスや腹部の張りが強い場合に比較します。便秘型・ガス型の緊張性腹部症状で見ます。

判断ポイント:お腹の内側に圧力がたまる。

手足の冷えと顔ののぼせ

芯から冷えているのではなく、気が巡らないため手足が冷え、上半身はのぼせるタイプで候補になります。

判断ポイント:冷えのぼせ・末端に巡らない。

PMSの胸腹部の張り・痛み

生理前に胸が張る、腹部が張る、イライラする、手足が冷えるなど、気滞が前面に出る場合に比較します。

判断ポイント:周期的な気滞・張り・痛み。

便秘・熱感が強い実証タイプ

体力があり、便秘、のぼせ、強いイライラ、胸脇苦満が目立つ場合は、大柴胡湯や柴胡加竜骨牡蛎湯なども比較します。

判断ポイント:四逆散で足りるか、より実証か。
×

芯からの冷え・水様下痢

冷えると腹痛や水様下痢が出る、温めると楽、顔色が悪いタイプでは、人参湯や大建中湯など温める処方を比較します。

判断ポイント:気滞の冷えではなく、陽虚の冷えなら不向き。

体質別の向き・不向き

四逆散は、気滞を中心に、体力中等度以上の方に向きます。極端な虚弱、胃腸虚弱、陽虚の冷え、強い消耗がある場合は慎重に考えます。

気滞タイプ

ストレスで胸やお腹が張る、ため息が多い、イライラしやすい、胃痛や腹痛が出るタイプです。四逆散の中心像です。

判断ポイント:詰まる・張る・ため息で楽。

中間証〜やや実証の緊張タイプ

体力は比較的あり、ストレスや緊張で胃腸・筋肉・自律神経がこわばるタイプで候補になります。

判断ポイント:気の量はあるが巡らない。

冷えのぼせタイプ

手足は冷えるが、顔や胸はのぼせる、掌に汗をかく、緊張で体温調節が乱れるタイプで比較します。

判断ポイント:冷えの正体が巡りの悪さか。

気虚・著しい疲労タイプ

枳実のような気を動かす生薬は、極度に疲れている方には負担になることがあります。まず補う処方を比較します。

判断ポイント:動かす前に補う必要があるか。
×

陽虚・寒冷タイプ

体の芯から冷え、温めると楽、下痢しやすい、気力が乏しいタイプでは、四逆散に温める主薬がないため不向きです。

判断ポイント:本当の冷え症には使いにくい。

効能・効果

四逆散の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、KanpoNowでは代表的に次のように整理しています。

体力中等度以上で、胸腹部に重苦しさがあり、ときに不安、不眠などがあるものの次の諸症:胃炎、胃痛、腹痛、神経症

※医療用製剤では「比較的体力のあるもので、大柴胡湯証と小柴胡湯証との中間証を表わすものの次の諸症:胆嚢炎、胆石症、胃炎、胃酸過多、胃潰瘍、鼻カタル、気管支炎、神経質、ヒステリー」と記載されるものもあります。実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

四逆散は、気滞による胸腹部の張りや胃腸症状に用いられる処方ですが、甘草を含みます。また、枳実は気を強く動かす方向があるため、著しく体力が低下している方や妊娠中の方では慎重に考えます。

甘草による偽アルドステロン症への注意

四逆散には甘草が含まれます。むくみ、血圧上昇、低カリウム血症、筋力低下、こむら返り、だるさなどが出る場合は、服用を中止し専門家に相談してください。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用にも注意が必要です。

著しく体力が衰えている方への注意

四逆散は、体力中等度以上、または比較的体力のある方に使われることが多い処方です。著しく体力が衰えている方では、副作用が出やすくなるおそれがあります。

胃腸症状が悪化する場合

服用後に胃もたれ、吐き気、腹痛、下痢が強くなる場合は、体質に合っていない可能性があります。特に胃腸虚弱が強い方では、補う処方や温める処方を検討します。

呼吸とリラクゼーションの養生

四逆散が合う気滞タイプでは、薬だけでなく、呼吸で横隔膜を動かすことが大切です。鼻からゆっくり吸い、お腹をふくらませ、口から細く長く吐く腹式呼吸を、朝晩や緊張時に取り入れると、胸腹部の気の巡りを助けます。

相談・受診を優先したいサイン

  • 強い腹痛、発熱、嘔吐、血便、黒色便がある
  • 胸痛、息苦しさ、冷や汗、左腕や背中へ広がる痛みがある
  • 胃痛が長く続く、体重減少、食欲不振が続く
  • 不安や不眠が強く、日常生活に支障がある
  • 服用後にむくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下が出る
  • 服用後に腹痛、下痢、吐き気が悪化する
すぐ相談:強い腹痛、血便、黒色便、胸痛、息苦しさ、体重減少、服用後のむくみ・血圧上昇・筋力低下がある場合は、四逆散で様子を見ず医療機関に相談してください。

症状から理解を深める

四逆散が気になる方は、腹痛、ストレス、不安、動悸、生理不順・PMSとの関係も確認すると理解が深まります。

ストレス性の腹痛や不安に使う漢方薬でも、気滞が中心か、熱が強いか、虚弱があるか、筋けいれんが主役かで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 四逆散は冷えに使う漢方薬ですか?

名前に「四逆」とありますが、芯から冷え切った陽虚の冷えを温める処方ではありません。四逆散が見るのは、気が滞って末端に巡らないために手足が冷えるタイプです。温める力が必要な冷えには、人参湯や大建中湯などを比較します。

Q. ストレスで胃が痛くなるタイプに合いますか?

候補になります。ストレスでみぞおちがつかえる、胃が痛い、お腹が張る、ため息が増える、手足が冷えるような気滞タイプでは、四逆散を比較します。

Q. IBSにも使えますか?

ストレスで腹痛や腹部膨満感が悪化するタイプでは候補になります。ただし、水様下痢が中心、冷えが強い、便秘が強い、血便や発熱があるなどの場合は、別処方や医療機関での確認が必要です。

Q. 柴胡疎肝湯との違いは何ですか?

四逆散は、柴胡・芍薬・枳実・甘草の4味で、気滞による胸腹部の張りや痛みを整える基本処方です。柴胡疎肝湯は、そこに香附子・青皮・川芎などが加わり、胸脇部の張りや痛み、神経痛へより広げた処方として比較します。

Q. 甘草は入っていますか?

はい。四逆散には甘草が含まれます。むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下、だるさなどが出る場合は、服用を中止して専門家に相談してください。他の漢方薬との併用時は甘草の重複にも注意が必要です。

参考・出典

  • PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
  • ツムラ「四逆散エキス顆粒(医療用)添付文書」
  • 古典:『傷寒論』四逆散関連条文
  • 一般用漢方製剤製造販売承認基準
  • 公益社団法人 東京生薬協会・富山大学 和漢医薬学総合研究所等の生薬資料

四逆散が合うか迷った方へ

四逆散は、胃炎、胃痛、腹痛、神経症などに使われる漢方薬ですが、すべての胃痛・腹痛に合うわけではありません。気滞による張りなのか、陽虚による冷えなのか、胃腸虚弱なのか、実熱や便秘が強いのかまで含めて判断することが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。強い腹痛、発熱、嘔吐、血便、黒色便、胸痛、息苦しさ、体重減少、不眠や不安による日常生活への支障、服用後のむくみ・血圧上昇・こむら返り・筋力低下・腹痛・下痢・吐き気などがある場合は、医療機関にご相談ください。妊娠中・授乳中、小児、高齢者、著しく体力が低下している方、胃腸虚弱、基礎疾患がある方、他のお薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。