男性の更年期に漢方|やる気低下・疲労感・ED・頻尿を体質別に考える

監修:堀口和彦|更新日:2026-06-24

最近やる気が出ない。疲れが抜けない。うつうつする。夜中に何度もトイレに起きる。男性としての自信も落ちてきた。

男性の更年期は、単なる「年のせい」だけではありません。加齢、長年のストレス、睡眠不足、飲酒、運動不足、メタボ傾向、男性ホルモンの低下などが重なり、心身のバランスが崩れた状態として現れます。

漢方では、男性の更年期を「陽の力が落ちる」「腎の精が消耗する」「気が滞る」「湿熱がたまる」「気血が不足する」といった視点で見ます。

同じ男性更年期でも、冷え・頻尿・EDが中心の陽虚タイプ、不安・不眠・焦燥感が強い気滞・陰虚タイプ、メタボ・高血圧傾向の湿熱タイプ、疲労困憊・うつうつとする気虚・血虚タイプでは、合う漢方薬も養生も変わります。

男性更年期の不調を、体質から確認する

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男性の更年期とは

男性の更年期とは、中年期以降に、やる気の低下、疲労感、うつうつとした気分、不眠、集中力低下、性欲低下、ED、頻尿、冷え、筋力低下、メタボ傾向などが重なって現れる状態です。

医学的には、加齢に伴う男性ホルモンの低下や心身の不調が関係するLOH症候群、つまり加齢男性性腺機能低下症候群として扱われることがあります。症状は性機能だけでなく、活力、睡眠、気分、体型、代謝にも広がります。*①

男性更年期は、精力だけの問題ではありません。

「性欲が落ちた」「EDが気になる」という悩みの奥に、睡眠不足、ストレス、腎の弱り、気血の不足、湿熱の蓄積、自律神経の乱れが隠れていることがあります。

なぜ男性更年期が起こるのか

漢方では、男性の更年期を「陽から陰への転換」として見ます。若い頃は活動力、熱、筋力、性機能、仕事への推進力が前面に出ますが、加齢や過労が重なると、その陽の力が落ち、冷え、だるさ、気力低下、排尿・性機能の衰えが出やすくなります。

1 腎の精が不足する

生命力の土台である腎の力が落ちると、冷え、腰膝の弱り、頻尿、ED、性欲低下が出やすくなります。

2 気が滞る

責任世代のストレス、緊張、焦りが続くと、気が巡らず、不眠、不安、イライラ、心因性の不調につながります。

3 湿熱がたまる

飲酒、脂っこい食事、夜食、運動不足が続くと、体内に湿と熱がたまり、メタボ、高血圧、痛風傾向につながります。

男性更年期では、不足だけでなく、長年ため込んだ滞りも問題になります。補うべき人もいれば、まず余分な湿熱や気滞をさばくべき人もいます。

漢方では男性更年期をどう見るか

漢方では、男性更年期を一律に「精力低下」として扱いません。冷え、頻尿、ED、疲労、うつ感、不眠、メタボ、イライラ、肩こりなど、どの症状が中心かによって体質を見分けます。

冷え・頻尿・ED

陽虚・精虚

腎の陽気と精が不足し、体の芯から冷え、排尿・性機能が弱るタイプです。

不安・不眠・焦り

気滞・陰虚

ストレスと過労で気が滞り、潤いが消耗して、心身が落ち着かないタイプです。

メタボ・高血圧傾向

湿熱

飲酒、過食、運動不足により、湿と熱がたまり、代謝が重くなるタイプです。

疲労困憊・うつ傾向

気虚・血虚

胃腸が弱り、気血を作れず、気力・体力・集中力が落ちるタイプです。

男性更年期を体質別に見る

男性更年期では、陽虚・精虚、気滞・陰虚、湿熱、気虚・血虚が中心になります。肩こり、冷えのぼせ、血圧傾向、血流低下が強い場合は、血瘀も合わせて見ます。

芯から冷える

陽虚・精虚

冷え、夜間頻尿、腰膝のだるさ、ED、性欲低下が目立つタイプです。

緊張・不眠

気滞・陰虚

仕事のプレッシャー、不眠、焦燥感、心因性EDが重なるタイプです。

メタボ・熱こもり

湿熱

飲酒、過食、便秘、暑がり、高血圧・高尿酸傾向が目立つタイプです。

気力低下

気虚

胃腸が弱く、疲れやすく、やる気が出にくいタイプです。

精神疲労

血虚

不安、不眠、物忘れ、集中力低下、顔色の悪さが目立つタイプです。

血流低下

血瘀

肩こり、冷えのぼせ、頭痛、下腹部の張り、血圧傾向が重なるタイプです。

男性更年期は、症状の組み合わせで体質が変わります。

疲労感、やる気、睡眠、頻尿、冷え、ED、メタボ、ストレスまで含めて確認します。

男性更年期の体質を確認する
1. 冷え・頻尿・ED型

陽虚・精虚体質の男性更年期

陽虚・精虚は、心身を維持する原動力である腎の陽気や精が不足している体質です。男性更年期では、芯からの冷え、腰や膝のだるさ、夜間頻尿、ED、性欲低下として現れます。

病態の考え方

漢方では、腎は生命力、老化、生殖、排尿、骨や腰膝の働きと関係すると考えます。腎の陽気が弱ると、体を温める力が落ち、下半身、排尿、性機能に不調が出やすくなります。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

腎の働きを補い、冷え、夜間頻尿、腰痛、性機能低下を伴う場合には、八味地黄丸料(はちみじおうがんりょう)などが検討されることがあります。

下半身のむくみ、しびれ、関節の痛み、足腰の弱りが強い場合には、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などを考えることがあります。

深部の冷え、めまい、だるさ、下痢、むくみを伴う場合には、真武湯(しんぶとう)なども候補になります。

養生のポイント

陽虚・精虚タイプでは、睡眠不足と過労が腎の力を消耗します。夜更かしを避け、下半身を冷やさず、無理な精力剤や刺激物に頼りすぎないことが大切です。

2. ストレス・不眠・心因性ED型

気滞・陰虚体質の男性更年期

気滞・陰虚は、仕事のプレッシャーや過労により、気が滞り、心身を潤す陰が消耗した体質です。男性更年期では、不眠、不安、焦燥感、動悸、心因性EDとして現れることがあります。

病態の考え方

強い責任感や緊張が続くと、気が伸びやかに巡らず、頭や胸にこもります。さらに睡眠不足や過労が重なると、陰が消耗し、疲れているのに眠れない、焦る、落ち着かない状態になります。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

心身の緊張、不眠、動悸、不安、血圧傾向、ストレス性の性機能低下を伴う場合には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが検討されることがあります。

体力が落ち、神経過敏、不安、不眠、動悸を伴う場合には、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などを考えることがあります。

怒りっぽさ、緊張、不眠、神経の高ぶりが強い場合には、抑肝散(よくかんさん)なども候補になります。

養生のポイント

気滞・陰虚タイプでは、焦るほど心身が緊張し、眠りや性機能にも影響しやすくなります。朝晩の腹式呼吸、入浴、スマホや仕事から離れる時間をつくり、神経を鎮めましょう。

3. メタボ・高血圧・痛風傾向型

湿熱体質の男性更年期

湿熱は、余分な水分、脂肪、老廃物に熱が加わった体質です。男性更年期では、メタボ傾向、高血圧、脂質異常、高尿酸傾向、便秘、暑がり、多汗、イライラとして現れやすくなります。

病態の考え方

長年の飲酒、脂っこい食事、夜食、運動不足、ストレスが重なると、体内に湿と熱がたまります。これは、足りないから補うタイプではなく、余分なものが停滞して巡りを邪魔しているタイプです。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

腹部に脂肪が多く、便秘、のぼせ、むくみ、肩こりを伴う場合には、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などが検討されることがあります。

胸脇部の張り、便秘、ストレス、肩こり、高血圧傾向を伴う場合には、大柴胡湯(だいさいことう)などを考えることがあります。

のぼせ、強いイライラ、焦燥感、熱こもりが目立つ場合には、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)なども候補になります。

養生のポイント

湿熱タイプでは、精力剤や栄養補給より、余分な湿熱をためないことが優先です。飲酒、夜食、脂っこい食事を控え、20〜30分のウォーキングなどを習慣にしましょう。

4. 疲労困憊・うつ傾向型

気虚・血虚体質の男性更年期

気虚・血虚は、胃腸が弱く気を作れない、または脳や筋肉を養う血が不足している体質です。男性更年期では、極度の疲労感、気力低下、うつうつ、集中力低下、物忘れ、不眠として現れます。

病態の考え方

気は体を動かす力、血は脳と心身を養う材料です。気血が不足すると、頑張りたいのに力が出ない、考えがまとまらない、気持ちが落ち込む、眠りが浅いといった状態になります。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

胃腸の働きを高め、気力を引き上げ、だるさや気分の落ち込みを伴う場合には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが検討されることがあります。

精神疲労、不眠、不安感、物忘れ、動悸を伴う場合には、加味帰脾湯(かみきひとう)などを考えることがあります。

病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振が強い場合には、人参養栄湯(にんじんようえいとう)なども候補になります。

養生のポイント

気虚・血虚タイプでは、根性で動くほど消耗します。まずは睡眠と胃腸を立て直し、温かく消化のよい食事を摂り、仕事量を調整することが重要です。

5. 血流低下・肩こり・冷えのぼせ型

血瘀体質の男性更年期

血瘀は、血の巡りが滞りやすい体質です。男性更年期では、肩こり、頭痛、冷えのぼせ、手足の冷え、血圧傾向、下腹部の張り、顔色のくすみとして現れることがあります。

病態の考え方

血流が悪くなると、筋肉、脳、内臓に酸素や栄養が届きにくくなります。長時間の座り仕事、運動不足、ストレス、飲酒が重なると、血の滞りが強くなります。

見られやすい症状

漢方の考え方・処方例

血の巡りを整え、冷えのぼせ、肩こり、頭痛を伴う場合には、桂枝茯苓丸料(けいしぶくりょうがんりょう)などが検討されることがあります。

体力があり、下腹部の張りや便秘、血の滞りを伴う場合には、通導散(つうどうさん)などを考えることがあります。

養生のポイント

血瘀タイプでは、同じ姿勢、冷え、運動不足が不調を強めます。肩甲骨、股関節、ふくらはぎを動かし、少し汗ばむ程度の有酸素運動を習慣化しましょう。

男性更年期の漢方薬は、症状の中心で選びます

「男性更年期にはこの漢方」と一律に決めるのではなく、冷え・頻尿・EDが中心なのか、不眠・不安が中心なのか、メタボ・高血圧傾向が中心なのか、疲労困憊が中心なのかを確認することが大切です。

冷え・頻尿・ED

陽虚・精虚を中心に見ます。

八味地黄丸料を見る
不眠・不安・緊張

気滞・陰虚を中心に見ます。

柴胡加竜骨牡蛎湯を見る
疲労困憊・気力低下

気虚・血虚を中心に見ます。

補中益気湯を見る

生活背景から見る男性更年期

責任世代のストレス

40代後半から60代の男性は、仕事、家庭、親の介護、経済的責任などが重なりやすい年代です。長く緊張し続けることで気が滞り、不眠、焦燥感、イライラ、心因性EDにつながることがあります。

睡眠不足と腎の消耗

夜更かしや慢性的な睡眠不足は、生命力の土台である腎の力を消耗させます。腎の弱りは、冷え、頻尿、腰膝の弱り、性機能低下として現れやすくなります。

飲酒・脂っこい食事・メタボ

冷たいビール、脂っこいおつまみ、夜食、運動不足が続くと、湿熱がたまりやすくなります。湿熱タイプでは、補うよりも先に、余分なものをためない生活が重要です。

運動不足と筋力低下

筋肉は熱を作り、血流を支える大切な場所です。運動不足が続くと、冷え、メタボ、気分の落ち込み、血流低下が重なりやすくなります。

男性更年期を整える生活養生

1. 睡眠で腎の力を回復する

男性更年期では、頑張り続ける生活から、回復する生活へ切り替えることが重要です。夜更かしを避け、睡眠時間を確保し、身体を休ませることが腎の養生になります。

2. 腹式呼吸で自律神経を整える

焦り、不安、緊張が強い方では、胸で浅く呼吸しがちです。朝晩に下腹を意識した腹式呼吸を行い、丹田に意識を置くことで、心身の緊張をゆるめます。

3. 20〜30分の有酸素運動を取り入れる

ウォーキングなどの有酸素運動は、湿熱、気滞、血瘀の改善に役立ちます。苦しくない程度で続けることが大切です。気分の落ち込みやメタボ傾向がある方にも向いています。

4. 冷たいビールと脂っこい食事を見直す

冷たいアルコールと脂っこい食事は、胃腸を冷やし、湿熱をためやすくします。飲酒量を見直し、温かく消化のよい食事を適量摂ることが基本です。

5. 精力剤で無理に燃やし続けない

疲労感や性機能低下があると、刺激の強いものに頼りたくなることがあります。しかし、陰虚や陽虚がある方では、無理に燃やすより、睡眠、休息、胃腸、運動を整えることが先です。

男性更年期の養生は、体質によって変わります。

補うべきか、巡らせるべきか、湿熱をさばくべきか、腎を温めるべきか。まずは体質を確認してみましょう。

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よくある質問

男性にも更年期はありますか?

あります。男性でも中年期以降に、活力低下、疲労感、うつうつ、不眠、集中力低下、性欲低下、ED、頻尿などが現れることがあります。医学的にはLOH症候群として扱われることがあります。

男性更年期には、どの漢方薬がよいですか?

男性更年期だからといって、すべての方に同じ漢方薬が合うわけではありません。冷え・頻尿・EDが中心なら陽虚、ストレス・不眠が中心なら気滞・陰虚、メタボ傾向なら湿熱、疲労困憊なら気虚・血虚を見ます。

EDや性欲低下も漢方で考えられますか?

考えられます。腎の精や陽気の低下、ストレスによる気滞、不安や不眠、湿熱による代謝の滞りなどが関係することがあります。ただし、糖尿病、血管障害、薬の影響などが隠れていることもあるため、必要に応じて医療機関で確認してください。

男性更年期とうつ病は違いますか?

症状が重なることがあります。気分の落ち込み、意欲低下、不眠、集中力低下が強い場合は、男性更年期だけでなく、うつ病や他の疾患も含めて確認が必要です。日常生活に支障がある場合は医療機関に相談してください。

メタボ傾向がある男性更年期では、補う漢方薬がよいですか?

必ずしもそうではありません。湿熱タイプでは、余分な脂肪、熱、老廃物が停滞しているため、まず食事、飲酒、運動を見直し、体内の滞りをさばく方向で考えることがあります。

受診の目安

以下のような場合は、体質による男性更年期と決めつけず、医療機関に相談してください。

男性更年期は、体からの大事なサインです。

年齢や体質による変化もありますが、うつ病、睡眠時無呼吸、甲状腺疾患、糖尿病、心血管疾患、泌尿器疾患、薬の影響などが関係することもあります。症状が強い場合や長く続く場合は、医療機関で確認してください。

参考・出典

AI漢方診断へ

男性更年期は、同じ「元気が出ない」症状でも、体質によって考え方が変わります。

腎の力が落ちているのか、ストレスで気が滞っているのか、湿熱がたまっているのか、気血が不足しているのか。まずは自分の体質を知ることが、漢方選びの第一歩です。

男性更年期に合う漢方を、体質から確認する

疲労感、やる気、睡眠、頻尿、ED、性欲低下、冷え、メタボ、ストレス、生活背景まで含めて確認します。

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※本ページは一般的な情報提供を目的としたものであり、医師・薬剤師等の専門家による個別の医療アドバイスに代わるものではありません。漢方薬は体質や症状、持病、服薬状況によって適否が異なります。男性更年期様の症状には、うつ病、睡眠時無呼吸、甲状腺疾患、糖尿病、心血管疾患、泌尿器疾患、薬の影響などが関係することもあります。持病がある方、服薬中の方、高齢の方は、自己判断で服用・中止せず、事前に医師または薬剤師にご相談ください。強い抑うつ感、自傷念慮、胸痛、息切れ、血尿、急な性機能低下、強い倦怠感などがある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。