葛根湯加川芎辛夷とは?鼻づまり・蓄膿症・慢性鼻炎に使う漢方薬

葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)は、葛根湯に、川芎と辛夷の2つの生薬を加えた処方です。ベースの葛根湯は古典『傷寒論』が出典ですが、この加味方は日本で経験的に発展・確立された日本独自の処方として広く知られています。葛根湯の「体を温めて発散する力」に、鼻の通りを良くする辛夷と、血流を整えて頭痛を和らげる川芎を加えています。KanpoNowでは、この処方を「体を温めて、頑固な鼻づまり・蓄膿症・慢性鼻炎の鼻の通りを開く漢方薬」として整理します。
- 鼻づまりが強い慢性鼻炎・蓄膿症(副鼻腔炎)がある
- 肩こりや頭痛・頭重を伴う鼻炎がある
- お風呂に入って温まると、鼻づまりが楽になる
- 鼻水にあまり色がついていない(黄色く粘る鼻汁が中心ではない)
- 体力は比較的あり(中等度以上)、冷えで悪化しやすい
反対に、水のようにサラサラした鼻水が止まらないタイプ(小青竜湯向き)、黄色く粘る鼻汁・熱感・口渇が強いタイプ(辛夷清肺湯向き)、もともと乾燥してほてる陰虚タイプ、胃腸が弱く疲れやすい虚証タイプには向きにくい処方です。
葛根湯加川芎辛夷とは
葛根湯加川芎辛夷は、葛根、麻黄、生姜、大棗、桂皮、芍薬、甘草に、川芎と辛夷を加えた9種類の生薬から構成される漢方薬です。葛根湯の7味に、鼻と頭部に働く2味を加えた組み立てになっています。代表的には、比較的体力がある方の、鼻づまり、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎に用いられます。
「葛根湯の鼻づまりバージョン」として知られていますが、漢方薬剤師の視点では、より正確には「冷えと血行不良で鼻の粘膜がうっ血して腫れ、空気の通り道が塞がっている状態(鼻閉)」に向く処方です。鼻症状という言葉だけでなく、鼻づまりが中心か、温めると楽になるか、鼻汁に色がついていないか、体力が中等度以上かを確認して選ぶことが大切です。
古典における位置づけ
ベースとなる葛根湯は、古典『傷寒論』に由来します。そこに川芎と辛夷を加えたこの処方は、日本の江戸時代以降に経験的に発展・確立された日本独自の処方(経験方)として広く知られています。葛根湯の「首から上の血流を良くし、体を温めて風邪を追い出す力」に、鼻づまりに働く辛夷と、血流を整えて頭痛を和らげる川芎を組み合わせたものです。
現在では、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎、頑固な鼻づまりに広く用いられています。「お風呂に入って温まると鼻づまりが楽になる」タイプに向きやすい、と整理されることもあります。
漢方的な病態とメカニズム
東洋医学では、葛根湯加川芎辛夷が合う状態を、「風寒(ふうかん)」の邪気が頭部・鼻に停滞し、局所の「血瘀(鬱血)」や「湿(水滞)」を伴って鼻づまりを起こしている状態と考えます。
- 風寒:冷えの邪気が体表に取りつき、毛穴が閉じて熱がこもっている状態
- 血瘀(鬱血):冷えと血行不良で、鼻の粘膜がうっ血して腫れ上がっている状態
- 鼻閉:腫れた粘膜が空気の通り道を塞ぎ、鼻がつまっている状態
- 頭部の不調:鼻づまりに伴って、頭痛・頭重・肩こりが出ている状態
葛根湯加川芎辛夷は、葛根・麻黄・桂皮・生姜で上半身を温めて発散し、麻黄が鼻粘膜の腫れを引かせ、川芎が鼻周りの血流を改善して鬱血を取り、辛夷が鼻の通りを直接助けます。だからこの処方を選ぶときは、「鼻炎かどうか」だけでなく、冷え・鬱血・鼻閉があるかを見ることが重要です。
構成生薬と配合バランス
葛根湯加川芎辛夷は、葛根湯の7味に川芎・辛夷を加えた9味の処方です。配合量の中心は葛根で、麻黄・桂皮・生姜が体表を温めて発散し、川芎・辛夷が鼻と頭部に集中して働き、芍薬・大棗・甘草が全体を調和します。
※配合比率は、葛根8g・麻黄4g・大棗4g・桂皮3g・芍薬3g・川芎3g・辛夷3g・甘草2g・生姜1gを基準にしたイメージ(合計の都合で端数を丸めています)。実際の配合量は製品により異なります。
葛根湯加川芎辛夷の味・香り・服用時の体感
葛根湯加川芎辛夷の体験は、ばらばらに「香り」「味」「見た目」を見るより、飲む前から飲んだ後までの流れで捉えると分かりやすくなります。温めて発散しながら鼻の通りを開く処方であり、その性格は香り・味・飲後感にはっきり表れます。
鼻がスッとする香り
桂皮(シナモン)の香りに、川芎のセロリのような強い香りと辛夷の清涼感が混ざり、飲む前から鼻がスッとするような特異な匂いがします。
淡い褐色
粉末・顆粒は淡い褐色〜褐色。温かいお湯に溶かして、香りを嗅ぎながら飲むと通りを感じやすくなります。
パンチのある味
葛根湯の少し甘辛い味に, 川芎の独特の苦み・えぐみと、辛夷のハーブのような辛味が加わった、少しパンチのある味です。
首〜顔が温まる
胃から上半身(特に首から顔)にかけてカッと温かくなり、首肩のこわばりがほぐれ、塞がっていた鼻の奥の腫れが引いて呼吸が楽になっていく感覚があります。
体験の流れ:鼻がスッとする特異な香り → 淡い褐色の湯 → 甘辛さに苦み・辛味が加わったパンチのある味 → 首から顔が温まり、首肩がほぐれ、鼻の通りが開く。冷えて鼻がつまっているときほど、この温まりと鼻の通りが感じられることがあります。
症状別の向き・不向き
葛根湯加川芎辛夷は、鼻症状という言葉だけで選ぶ漢方薬ではありません。見るべきポイントは、鼻づまり(鼻閉)が中心か、温めると楽になるか、鼻汁に色がついていないかです。これらが揃うほど、処方の輪郭ははっきりします。
鼻づまりが強い慢性鼻炎・蓄膿症
麻黄と辛夷が鼻粘膜の腫れを引き、川芎が血流を改善して鬱血を取るため、「詰まり」がメインの慢性鼻炎・蓄膿症(副鼻腔炎)に向きます。
判断ポイント:鼻づまり(鼻閉)が症状の中心。肩こり・頭痛を伴う鼻炎
ベースが葛根湯のため、首筋や背中のこわばり、川芎が効く頭痛・頭重を伴う鼻炎に適しています。
判断ポイント:鼻づまりに、肩こり・頭痛・頭重が重なる。温めると楽になる鼻づまり
お風呂に入って温まると鼻づまりが楽になるタイプは、温めて発散する本方の方向と合いやすくなります。
判断ポイント:冷えで悪化し、温めると楽になる。風邪に伴う鼻づまり・頭痛
風邪の経過で、鼻づまりや頭痛・首肩のこわばりが前面に出てきた場合に候補になります。
判断ポイント:風邪に鼻づまり・頭痛が伴う。サラサラした水様の鼻水が中心
水のようにサラサラした鼻水・くしゃみが止まらない場合は、水を温めて乾かす小青竜湯がファーストチョイスになります。本方は「詰まり」が主役です。
判断ポイント:水様鼻水が中心なら小青竜湯も検討。黄色く粘る鼻汁・熱感・口渇が強い
粘り気の強い黄色い鼻汁、熱感や口渇が強い実熱の状態は、辛夷清肺湯のような清熱方向が適します。温める本方では悪化することがあります。
判断ポイント:黄色く粘る鼻汁・熱が強いときは避ける。体質別の向き・不向き
葛根湯加川芎辛夷は、体力が中等度以上で、冷えと鬱血を背景にした鼻づまりに向く処方です。温めて発散する薬なので、体質との相性を見ることが重要です。
実証(体力中等度以上)の風寒タイプ
体力が中等度以上で、冷えによって鼻症状が悪化するタイプです。葛根湯加川芎辛夷の中心的な体質像です。
判断ポイント:体力があり、冷えで悪化する。血瘀(鼻粘膜の慢性的な鬱血)
鼻の粘膜が慢性的にうっ血して腫れているタイプに、川芎が血流を改善して滞りを取り除きます。
判断ポイント:鼻粘膜の鬱血・腫れが続いている。冷えで悪化し、温めると楽なタイプ
冷えると鼻がつまり、温まると楽になるタイプでは候補になります。
判断ポイント:冷えと鼻づまりが連動している。陰虚(乾燥・ほてり・虚熱)
麻黄・辛夷・桂皮など温めて発散し乾かす生薬が中心のため、もともと潤いが不足してほてっているタイプでは、さらに乾燥させて虚熱を悪化させることがあります。
判断ポイント:乾燥・ほてりが強いタイプは避ける。虚証(気虚・著しい胃腸虚弱)
麻黄が胃腸に負担をかけるため、疲れやすく胃腸が弱いタイプでは、胃もたれ・食欲不振・強い疲労感の原因になることがあります。
判断ポイント:胃腸が弱く疲れやすいタイプは慎重に。効能・効果
葛根湯加川芎辛夷の効能・効果は製品により表現が異なりますが、代表的には次のような内容が記載されています。
比較的体力があるものの次の諸症:
鼻づまり、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎
※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。
服用上の注意
葛根湯加川芎辛夷は、葛根湯をベースに強力に温めて発散させる薬です。麻黄と甘草を含むため、誰にでも気軽に長く使ってよい処方ではありません。特に、高齢者、高血圧、心疾患、甲状腺機能亢進症、排尿障害がある方、胃腸が弱い方は注意が必要です。
麻黄による注意
葛根湯加川芎辛夷には麻黄が含まれます。麻黄は交感神経を刺激するような反応が出ることがあり、体質によっては次のような症状が出ることがあります。
- 不眠
- 動悸、頻脈
- 発汗過多
- 血圧上昇
- 排尿しにくさ(高齢者の前立腺肥大などで尿閉のリスク)
高血圧、心疾患、甲状腺機能亢進症、排尿障害などがある方、高齢の方は、自己判断で服用せず医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。
甘草による注意
葛根湯加川芎辛夷には甘草も含まれます。甘草を含む漢方薬を複数併用したり、長期間服用したりすると、偽アルドステロン症と呼ばれる副作用に注意が必要です。
- 手足のむくみ
- 血圧上昇
- 体重増加
- だるさ、脱力感
- こむら返り、筋肉のけいれん
漫然とした長期連用への注意
慢性鼻炎や蓄膿症の薬として長く使われることがありますが、本来は強力に温めて発散させる薬です。数ヶ月単位で漫然と描き続けると、胃腸を荒らしたり、体力を消耗(気虚・陰虚)させたりすることがあります。鼻の通りが良くなったら、体質改善のベース薬への切り替えを検討するのが理想的です。
受診を優先したいサイン
- 高熱が続く、または急に悪化している
- 顔面の激しい痛みや腫れ、目の奥の痛み、視力の異常がある
- 膿性の鼻汁が長引く、血が混じる
- 服用後に動悸、不眠、発汗過多、血圧上昇が強く出た
- むくみ、脱力感、こむら返りが出た
症状から理解を深める
葛根湯加川芎辛夷が気になる方は、鼻づまりだけでなく、花粉症・肩こり・頭痛・冷えとの関係も確認すると理解が深まります。
似ている漢方薬・構成生薬
鼻づまりに使われる処方でも、温めて発散するのか、水様鼻水をさばくのか、熱を冷ますのか、慢性の体質を整えるのかで選び方が変わります。
よくある質問
Q. 葛根湯加川芎辛夷はどんな鼻症状に向いていますか?
鼻づまりが強い慢性鼻炎・蓄膿症(副鼻腔炎)や、肩こり・頭痛を伴う鼻炎に向きやすい漢方薬です。お風呂で温まると楽になるタイプに合いやすく、黄色く粘る鼻汁・熱が強いタイプには向きません。
Q. 葛根湯との違いは何ですか?
葛根湯は風邪のひきはじめ全般に使う処方で、本方はそこに川芎・辛夷を加えて「鼻づまり」に特化させたものです。症状の中心が鼻づまりや、それに伴う頭の重さに移ってきたときに本方が力を発揮します。
Q. サラサラした水様の鼻水が中心のときは?
水のようにサラサラした鼻水・くしゃみが止まらない場合は、小青竜湯がファーストチョイスになります。葛根湯加川芎辛夷は「詰まり(鼻閉)」が主役の処方です。
Q. 黄色く粘る鼻汁や熱感があるときは?
粘り気の強い黄色い鼻汁、熱感、口の渇きが強い実熱の状態には、辛夷清肺湯のような熱を冷ます方向が適します。温める本方を使うと炎症が悪化することがあるため注意が必要です。
Q. 葛根湯加川芎辛夷は長く飲み続けてもよいですか?
麻黄と甘草を含み、本来は強力に温めて発散する薬です。数ヶ月単位で漫然と続けると胃腸を荒らしたり体力を消耗したりすることがあるため、鼻の通りが良くなったら体質改善のベース薬への切り替えを相談してください。
参考・出典
- PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
- PMDA「一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索」
- 古典:ベースの葛根湯は『傷寒論』。川芎・辛夷を加えた本方は日本の経験方。
葛根湯加川芎辛夷が合うか迷った方へ
葛根湯加川芎辛夷は、鼻づまりによく使われる漢方薬ですが、すべての鼻症状に合うわけではありません。鼻づまりが中心か、鼻汁の色、温めると楽になるか、体力、冷えや胃腸の状態、麻黄・甘草への注意点まで含めて判断することが大切です。

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AI漢方診断をする免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。高熱が続く場合、顔面の激しい痛み・腫れ、目の奥の痛みや視力異常、膿性鼻汁が長引く・血が混じる場合、症状が長引く・悪化する場合、基礎疾患がある場合、妊娠中・授乳中、小児・高齢者の場合は、医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。








