二朮湯とは?四十肩・五十肩・肩から腕の痛みに使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月10日 監修:堀口和彦

二朮湯(にじゅつとう)は、肩や上腕の痛み、四十肩・五十肩で比較される漢方薬です。白朮と蒼朮という2つの「朮」を中心に、体内に停滞した湿痰をさばき、肩まわりの経絡に入り込んだ風・寒・湿を取り除く処方です。KanpoNowでは、この処方を「胃腸の水はけの悪さから生じた湿痰が、肩や腕の通り道を塞いで痛むタイプを整える漢方薬」として整理します。

二朮湯はこんな人に向いています
  • 肩が上がらない、腕を上げると痛む
  • 四十肩・五十肩のように、肩から腕にかけて痛む
  • 肩や上腕が重だるく、動かしにくい
  • 雨の日、湿度の高い日、冷房で肩の痛みが悪化する
  • 胃腸に水がたまりやすく、むくみ・重だるさがある
  • 湿痰タイプで、体が重く、肩まわりがこわばりやすい

反対に、赤く腫れて熱を持つ急性炎症、ガッチリ体型で便秘・のぼせが強いタイプ、乾燥が強い陰虚タイプでは、二朮湯とは別の方向を考えます。

二朮湯とは

二朮湯は、半夏蒼朮威霊仙黄芩香附子陳皮白朮茯苓甘草生姜天南星和羌活から構成される漢方薬です。

白朮・蒼朮・茯苓は、胃腸に停滞した余分な水をさばきます。半夏・陳皮・天南星は、痰飲・湿痰を動かし、肩まわりにこびりついた重だるさを取り除く方向で働きます。威霊仙・和羌活は、経絡に入り込んだ風湿を追い出し、肩から腕にかけての痛みを整えます。香附子は気を巡らせ、黄芩・甘草・生姜が全体を調和します。

ポイント:二朮湯は、肩だけを見る処方ではありません。胃腸の水はけが悪く、湿痰が肩や腕の通り道を塞いだ結果として起こる、重だるい肩・上腕の痛みに向く処方です。

古典における位置づけ

二朮湯は、中国明代の医学書『万病回春』を出典とする処方です。名前は、湿をさばく中心生薬である白朮と蒼朮、2つの「朮」に由来します。

古典的には、湿痰が経絡をふさぎ、肩や腕の動きが悪くなり、痛みやこわばりが出る状態を考えます。単純な筋肉疲労ではなく、胃腸の水はけの悪さから生じた余分な湿や痰が、上半身の関節や通り道に入り込んだ状態です。

現代では、肩が上がらない、動かすと痛む、肩から上腕にかけて重だるく痛むといった、四十肩・五十肩、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群様の症状で比較されます。

二朮湯らしさ:肩が重い。腕が上がらない。雨の日に悪化する。湿気や冷房でこわばる。胃腸に水がたまりやすい。この「湿痰が肩に詰まるタイプ」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、二朮湯が合う状態を、湿痰と痺証が重なった状態として考えます。胃腸の働きが落ちると、水分をうまく処理できず、体の中に余分な水が停滞します。この水が粘って痰となり、肩や腕の経絡に入り込むと、動かしにくさ、重だるさ、痛み、こわばりが出ます。

  • 湿痰:余分な水分が粘り、肩や腕の通り道に停滞する状態
  • 痺証:風・寒・湿が経絡をふさぎ、痛みやこわばりを起こす状態
  • 脾の水はけ低下:胃腸が水を処理しきれず、むくみ・重だるさ・痰飲を生む状態
  • 上半身の経絡閉塞:肩や腕の動きが悪くなり、腕を上げる動作で痛む状態

蒼朮・白朮・茯苓は、胃腸の水をさばきます。半夏・陳皮・天南星は、痰飲を動かして詰まりを取り除きます。威霊仙・和羌活は、風湿による痛みを散らし、肩まわりの経絡を通します。香附子は気を巡らせ、慢性的な張りや痛みをゆるめます。

そのため二朮湯は、「湿を乾かす」「痰を除く」「風湿を散らす」「肩腕の通りを回復する」という4つの方向を持つ処方です。

注意:急に肩が激しく痛む、赤く腫れて熱を持つ、発熱を伴う、外傷後に動かせない、しびれや麻痺が強い場合は、二朮湯で様子を見ず医療機関に相談してください。

構成生薬と配合バランス

二朮湯は、12種類の生薬で構成されます。構成理解としては、半夏・蒼朮・白朮・茯苓・陳皮・天南星の燥湿化痰、威霊仙・和羌活の祛風湿止痛、香附子の理気、黄芩の清熱、甘草・生姜の調和という骨格で見ると整理しやすくなります。

二朮湯の構成を、半夏9%、蒼朮9%、威霊仙9%、黄芩9%、香附子8%、陳皮8%、白朮8%、茯苓8%、甘草8%、生姜8%、天南星8%、和羌活8%として合計100%で示した構成イメージです。 二朮湯
半夏9%
蒼朮9%
威霊仙9%
黄芩9%
香附子8%
陳皮8%
白朮8%
茯苓8%
甘草8%
生姜8%
天南星8%
和羌活8%
二朮湯の内部構造
胃腸の水をさばき、痰を除き、肩から腕の風湿の痛みを散らす構成です。
燥湿化痰の軸 白朮・蒼朮・茯苓・半夏・陳皮・天南星 胃腸に停滞した水と痰をさばき、肩や腕に重くのしかかる湿痰を取り除きます。
祛風湿止痛の軸 威霊仙・和羌活 肩まわりの経絡に入り込んだ風・寒・湿を散らし、痛みと動かしにくさを整えます。
理気・清熱・調和の軸 香附子・黄芩・甘草・生姜 気の滞りを巡らせ、慢性化した軽い熱をさばき、胃腸と全体の働きを調和します。

※円グラフは、二朮湯の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:二朮湯は、胃腸の水はけの悪さから生じた湿痰が肩や腕に停滞し、四十肩・五十肩のような痛みや動かしにくさを起こすタイプを整える処方です。

二朮湯の味・香り・服用時の体感

二朮湯は、半夏・蒼朮・天南星などの苦味や辛味に、陳皮の柑橘系の香り、香附子の爽やかな香り、甘草の甘みが重なる処方です。湿を乾かし、痰を動かす処方らしく、やや乾いた苦味と薬草感があります。

苦味・辛味・甘み

半夏・蒼朮・天南星の苦味に、陳皮の風味と甘草の甘みが重なります。

陳皮と香附子の香り

柑橘系の陳皮、香附子のすっきりした香り、蒼朮の薬草香があります。

淡褐色〜黄褐色

製品により異なりますが、粉末・顆粒では淡い褐色から黄褐色寄りに見えます。

重だるさが抜ける感覚

合う方では、胃腸の水っぽさや肩にのしかかる重だるさが少しずつ軽くなる感覚があります。

体験の流れ:苦味と柑橘系の香りを感じる → 胃腸の水っぽさがすっきりする → 肩や腕の重だるさ、こわばりが少しずつ抜ける → 動かしやすさが戻る感覚。二朮湯は、肩の痛みを「湿痰の詰まり」として整える処方です。

症状別の向き・不向き

二朮湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、肩から腕の痛み、動かしにくさ、湿気で悪化するか、胃腸の水はけ、むくみ、熱感・腫れの有無です。

四十肩・五十肩、腕が上がらない痛み

肩や上腕に痛みがあり、腕を上げにくい、服の着脱や結髪がつらいタイプで比較します。

判断ポイント:肩や上腕の痛みと可動域の低下。

雨の日に悪化する肩・首・腕の痛み

湿気、低気圧、冷房で痛みや重だるさが強くなる場合は、湿痰や風湿の関与を考えます。

判断ポイント:湿気で悪化する。

肩から腕にかけての重だるい痛み

鋭い痛みだけでなく、肩から腕に何かが詰まったような重さがある場合に比較します。

判断ポイント:重い・だるい・動かしにくい。

胃腸に水がたまりやすい肩痛

胃がチャポチャポする、むくみやすい、体が重い方の肩痛では、湿痰をさばく方向を見ます。

判断ポイント:肩だけでなく水はけを見る。
×

赤く腫れて熱を持つ急性炎症

肩や関節が赤く腫れ、熱を持ち、急に強く痛む場合は、二朮湯で様子を見る段階ではありません。

判断ポイント:熱・腫れ・急性痛は受診優先。
×

便秘・のぼせ・イライラが強い肩こり

実熱や気滞が中心のタイプでは、大柴胡湯や防風通聖散など別の方向を比較します。

判断ポイント:湿痰か、実熱・気滞か。

体質別の向き・不向き

二朮湯は、湿痰と風寒湿による痺証が重なるタイプに向きます。強く乾かす処方であるため、潤い不足が強い陰虚タイプでは慎重に考えます。

湿痰タイプ

体が重い、むくみやすい、胃腸に水がたまりやすい、湿気で不調が悪化するタイプです。

判断ポイント:水はけの悪さが痛みを作る。

痺証・風寒湿タイプ

冷えや湿気が肩や腕の経絡をふさぎ、痛みやこわばりが出るタイプです。

判断ポイント:冷え湿気で動かしにくい。

脾虚・水滞タイプ

胃腸が弱く、水をさばけず、肩や上半身に重だるさが出るタイプです。

判断ポイント:胃腸の水はけを見る。

陰虚・乾燥タイプ

蒼朮、半夏、天南星など乾かす生薬が多いため、口渇、乾燥、ほてりが強い方では慎重に考えます。

判断ポイント:乾かしてよい体か。
×

実熱・湿熱の急性炎症タイプ

赤み、熱感、腫れ、強い急性痛が中心の場合は、二朮湯より熱と炎症を確認する必要があります。

判断ポイント:慢性湿痰か急性炎症か。

効能・効果

二朮湯の効能・効果は、代表的には次のように整理できます。

体力中等度で、肩や上腕などに痛みがあるものの次の諸症:四十肩、五十肩

※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

二朮湯は、湿痰をさばき、肩や上腕の痛みに用いられる処方ですが、黄芩、甘草、半夏、蒼朮、天南星などを含むため、胃腸虚弱、乾燥傾向、持病や併用薬がある方では注意が必要です。

赤く腫れて熱を持つ痛みへの注意

肩や関節が赤く腫れて熱を持つ場合、急性炎症、感染、外傷なども考えます。二朮湯で様子を見るのではなく、医療機関で確認してください。

黄芩を含む処方の注意

黄芩を含むため、発疹、発赤、かゆみ、発熱、咳、息苦しさ、倦怠感などの異常がある場合は注意が必要です。体調の変化があれば服用を中止し、専門家に相談してください。

甘草による偽アルドステロン症への注意

甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意してください。

乾燥・陰虚タイプへの注意

二朮湯は、湿を乾かす、痰を除く方向の処方です。口が渇く、皮膚が乾く、ほてる、寝汗があるような潤い不足が強い方では、乾燥感が悪化することがあります。

水分摂取と食生活

湿痰タイプでは、水を大量に飲むほどよいわけではありません。喉が渇いた時に、常温または温かいものを少しずつ飲むようにします。冷たい飲み物、生もの、甘いもの、乳製品の摂りすぎは、胃腸を冷やし、湿痰を作りやすくします。

肩の動かし方と保温

急性期の激痛や熱感がある時は無理に動かすべきではありませんが、慢性期では、痛みのない範囲で肩をだましだまし動かすことが大切です。冷えで湿痰が固まりやすいため、首・肩・上腕を冷やさないようにします。

相談・受診を優先したいサイン

  • 肩や関節が赤く腫れて熱を持つ
  • 急に激しい痛みが出て、腕が動かせない
  • 転倒や外傷の後から痛みが続く
  • しびれ、麻痺、握力低下がある
  • 発熱、強い倦怠感、息苦しさを伴う
  • 服用後に発疹・発赤・かゆみ、胃部不快感、悪心、下痢が出る
  • むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下が出る
すぐ相談:肩の痛みでも、急な強い痛み、外傷後の痛み、赤み・腫れ・熱感、しびれや麻痺、発熱がある場合は、二朮湯で様子を見ず医療機関に相談してください。

症状から理解を深める

二朮湯が気になる方は、肩こり、むくみ、冷え、頭痛、症状一覧から関連症状を確認すると理解が深まります。

肩や関節の痛みに使う漢方薬でも、湿痰が中心か、血瘀が中心か、熱と腫れが中心か、実熱・便秘が中心かで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 二朮湯はどんな肩の痛みに向いていますか?

肩や上腕に痛みがあり、腕が上がりにくい、湿気や冷房で悪化する、重だるく動かしにくいタイプに向きます。四十肩・五十肩で比較される処方です。

Q. 肩こりにも使えますか?

肩こりだけでなく、肩から上腕にかけて痛みがあり、動かしにくさがあるタイプで比較します。単なる筋緊張より、湿痰による重だるさや可動域の悪さを見る処方です。

Q. 越婢加朮湯との違いは何ですか?

越婢加朮湯は、関節の腫れ、熱感、むくみ、のどの渇きなどがある場合に比較します。二朮湯は、肩や上腕の痛み、湿痰、風湿、動かしにくさを中心に見ます。

Q. 胃腸が弱くても飲めますか?

胃腸の水はけを整える方向の処方ですが、半夏・蒼朮・天南星などが合わない方もいます。胃部不快感、悪心、下痢などが出る場合は服用を中止して相談してください。

Q. 水をたくさん飲んだ方がよいですか?

湿痰タイプでは、ガブ飲みはかえって水の停滞を増やすことがあります。喉が渇いた時に、常温または温かいものを少しずつ飲むのが基本です。

参考・出典

二朮湯が合うか迷った方へ

二朮湯は、四十肩・五十肩、肩や上腕の痛みに使われる漢方薬ですが、すべての肩の痛みに合うわけではありません。湿痰が中心なのか、急性炎症なのか、血瘀なのか、実熱・便秘が中心なのか、冷えや湿気で悪化するのかを見極めることが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。急な強い肩痛、外傷後の痛み、赤み・腫れ・熱感、発熱、しびれ・麻痺・握力低下がある場合は、医療機関にご相談ください。服用後に発疹・発赤・かゆみ、胃部不快感、悪心、下痢、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下などがある場合は、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

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堀口和彦(漢方薬剤師) 監修:堀口 和彦(漢方薬剤師)

執筆: KanpoNow編集部

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