当帰四逆加呉茱萸生姜湯とは?手足の冷え・しもやけ・冷えによる痛みに使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月10日 監修:堀口和彦
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)は、手足の先が氷のように冷え、下肢や下腹部が冷えて痛みやすい方に用いられる漢方薬です。しもやけ、冷えによる月経痛、腰痛、頭痛、下痢などで比較されます。KanpoNowでは、この処方を「血を補いながら、体の奥に入った寒さを散らし、末端まで温かい血を届ける漢方薬」として整理します。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯はこんな人に向いています
  • 手足の先,特に足先や指先が氷のように冷える
  • 寒い季節にしもやけができやすい
  • 下腹部や腰が冷えると痛くなる
  • 冷えによって月経痛が強くなる
  • 冷えると頭痛、腹痛、下痢が出やすい
  • 体力は中等度以下で、冷えと血行不良が長く続いている

反対に、のぼせが強い、便秘が強い、赤ら顔で熱感がある、暑がりで汗をかくタイプには向きません。冷えではなく熱がこもる生理痛・便秘では、桃核承気湯や桂枝茯苓丸料など別の処方を比較します。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯とは

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、大棗桂皮芍薬当帰木通甘草呉茱萸細辛生姜から構成される漢方薬です。

当帰・芍薬は血を補い、冷えで硬くなった体を内側から支えます。桂皮・呉茱萸・細辛・生姜は、体の芯に入り込んだ寒さを散らし、末端まで温かさを届けます。大棗・甘草は胃腸と全体を支え、木通は滞った水の通りを整えます。

ポイント:当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、ただ温める処方ではありません。血を補い、血管を温めて巡らせ、寒さで収縮した末端や下腹部にぬくもりを届ける処方です。

古典における位置づけ

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、中国古典『傷寒論』を出典とする処方です。「四逆」とは、四肢、つまり手足の末端が強く冷える状態を指します。

基本となる当帰四逆湯は、血を補いながら末端の冷えを巡らせる処方です。そこに、寒さを強く散らし、冷えによる痛みや吐き気、下痢に用いられる呉茱萸と生姜を加えたものが、当帰四逆加呉茱萸生姜湯です。

現代では、体力中等度以下で、手足や下肢の冷えが強く、下肢・下腹部・腰が痛くなりやすい方の冷え症、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛で比較されます。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯らしさ:手足の先が冷たい。足元から冷える。冷えると痛む。しもやけができる。生理痛や腰痛が冷えで悪化する。この「末端冷え+冷えの痛み」が中心です。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、当帰四逆加呉茱萸生姜湯が合う状態を、陽虚、血虚、血瘀、寒邪が重なった状態として考えます。体を温める力が弱く、血の量や巡りも不足すると、末端まで温かい血が届いません。そこに寒さが加わると、血管が収縮し、手足・下腹部・腰に冷えと痛みが出ます。

  • 陽虚:体を温める力が弱く、芯から冷えやすい状態
  • 血虚:血の栄養が不足し、末端まで温かさを運べない状態
  • 血瘀:寒さで血流が滞り、固定した痛みやしもやけを起こす状態
  • 寒邪:外からの冷えが深く入り、腹痛・腰痛・月経痛・下痢を起こす状態

当帰と芍薬は、血を補い、冷えでこわばった体を支えます。桂皮・細辛・生姜は、寒さを散らして体を温めます。呉茱萸は、内側の冷えを強く温め、冷えによる痛みや下痢、頭痛を整えます。大棗・甘草は、胃腸を守りながら全体を調和します。

そのため当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、「血を補う」「寒さを散らす」「末端まで巡らせる」「冷えによる痛みを和らげる」という4つの方向を持つ処方です。

注意:しもやけだと思っていても、強い痛み、皮膚の黒ずみ、潰瘍、感染、糖尿病、血流障害がある場合は医療機関での確認が必要です。片脚だけの急な痛み・腫れ・色の変化がある場合も、自己判断せず受診してください。

構成生薬と配合バランス

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、9種類の生薬で構成されます。クラシエ一般用製品では、大棗2.5g、当帰・桂皮・芍薬・木通各1.5g、細辛・甘草・呉茱萸各1.0g、生姜0.5gから抽出したエキスを含む構成が示されています。これを構成比にすると、大棗17%、当帰・桂皮・芍薬・木通が各10%、細辛・甘草・呉茱萸が各7%、生姜4%です。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯の構成を、大棗17%、桂皮10%、芍薬10%、当帰10%、木通10%、甘草7%、呉茱萸7%、細辛7%、生姜4%として合計82%ではなく、構成比を整理して合計100%で示したイメージです。 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
大棗17%
桂皮13%
芍薬13%
当帰13%
木通13%
甘草9%
呉茱萸9%
細辛9%
生姜4%
当帰四逆加呉茱萸生姜湯の内部構造
血を補い、寒さを散らし、末端と下腹部へ温かさを届ける構成です。
散寒・温裏の軸 呉茱萸・細辛・生姜・桂皮 体の奥に入った寒さを散らし、冷えによる痛み、下痢、頭痛、月経痛を温めます。
補血・温通の軸 当帰・芍薬・桂皮 不足した血を補い、温まった血を末端まで運び、手足の冷えやしもやけを整えます。
調和・通水の軸 大棗・甘草・木通 胃腸と体力を支え、甘草が全体を調和し、木通が水の通りを整えます。

※円グラフは、当帰四逆加呉茱萸生姜湯の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。

一言でいうと:当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、手足の末端まで温かい血が届かず、冷えで痛みやしもやけが出る方を、内側から温めて巡らせる処方です。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯の味・香り・服用時の体感

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、呉茱萸の強い苦味と辛味、細辛のピリッとした辛味、当帰の独特なえぐみ、桂皮の甘辛い香りが重なる、かなり個性的な味の処方です。飲みにくさはありますが、冷えを散らす力強さを感じやすい処方でもあります。

苦味・辛味・えぐみ

呉茱萸の苦味、細辛の辛味、当帰のえぐみがあり、クセは強めです。

温める香り

桂皮、生姜、当帰、呉茱萸のツンとした温薬らしい香りが立ちます。

黄褐色〜暗褐色

製品により異なりますが、粉末・顆粒では黄褐色から暗褐色寄りに見えます。

内側から温まる感覚

白湯で飲むと、お腹から手足の末端へ温かさが広がる感覚を得る方があります。

体験の流れ:苦味と辛味を感じる → お腹の奥がじんわり温まる → 手足の指先へ血が通うような感覚が出る → 冷えによる痛みやしもやけのつらさが少しずつ和らぐ。白湯で飲むと、処方の温める方向と相性がよくなります。

症状別の向き・不向き

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、手足の末端冷え、下肢の冷え、下腹部痛、腰痛、月経痛、下痢、しもやけ、冷えると悪化するか、熱や便秘が中心かです。

手足の末端が氷のように冷たい

手先・足先が冷え切り、温まりにくく、冷えると痛みやしびれ感が出るタイプに向きます。

判断ポイント:末端まで温かい血が届かない。

しもやけができやすい

寒冷刺激で血流が滞り、指先・足先・耳などに腫れ、赤紫色、かゆみ、痛みが出やすい場合に比較します。

判断ポイント:寒さ+末端血流不良。

冷えによる月経痛・下腹部痛

下腹部が冷えると痛む、温めると楽になる、月経時に下腹部が冷えて重く痛むタイプに向きます。

判断ポイント:冷えで悪化し温めると楽。

冷えによる腰痛・頭痛・下痢

冷えると腰が痛い、頭痛が出る、便がゆるくなるタイプで比較します。

判断ポイント:寒さが引き金になる。
×

のぼせ・便秘・イライラを伴う月経痛

熱がこもり、便秘、のぼせ、イライラが強い月経痛では、桃核承気湯などを比較します。

判断ポイント:冷えではなく熱なら方向が逆。
×

暑がり・赤ら顔・熱感が強い

体を温める処方のため、熱感が強い方、暑がりでほてりが強い方には向きません。

判断ポイント:温めるべき冷えか、冷ますべき熱か。

体質別の向き・不向き

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、陽虚、血虚、血瘀、寒邪が重なるタイプに向きます。温める力がかなりはっきりしているため、熱証・実熱・のぼせ便秘タイプには合いません。

陽虚+寒邪タイプ

体の芯から冷え、寒さで痛みや下痢が出やすく、温めると楽になるタイプです。

判断ポイント:冷えが痛みを作る。

血虚+末端冷えタイプ

血が不足し、末端まで熱を運べず、手足の先が冷え切るタイプです。

判断ポイント:血を補って巡らせる必要がある。

血瘀+しもやけタイプ

寒さで血流が滞り、しもやけ、紫色の冷え、固定した痛みが出やすいタイプです。

判断ポイント:寒さによる血行不良。

胃腸虚弱タイプ

温める処方ですが、当帰や呉茱萸などが胃に重く感じられ、胃部不快感や悪心、下痢が出ることがあります。

判断ポイント:胃が受け止められるか。
×

実熱・血熱タイプ

便秘、赤ら顔、のぼせ、口渇、イライラが強いタイプには不向きです。

判断ポイント:熱を助長しない。

効能・効果

当帰四逆加呉茱萸生姜湯の効能・効果は、代表的には次のように整理できます。

体力中等度以下で、手足の冷えを感じ、下肢の冷えが強く、下肢又は下腹部が痛くなりやすいものの次の諸症:冷え症、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛

※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、強い冷えを温める処方ですが、甘草、呉茱萸、細辛、当帰などを含むため、胃腸虚弱、むくみ、高血圧、心臓病、腎臓病、妊娠中などでは注意が必要です。

胃腸虚弱への注意

著しく胃腸が弱い方では、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢などが出ることがあります。服用後に胃もたれや気持ち悪さが出る場合は、食後にする、白湯で薄める、一時中止するなどを含めて専門家に相談してください。

甘草による偽アルドステロン症への注意

甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤との併用では、甘草の重複にも注意してください。

妊娠中・授乳中・小児・高齢者

妊娠中または妊娠している可能性がある方は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ検討します。授乳中、小児、高齢者、持病のある方、医師の治療を受けている方も、自己判断で服用せず専門家に相談してください。

飲みにくさへの対応

呉茱萸や細辛を含むため、苦味・辛味・独特の香りがあります。白湯に溶かして少し冷まして飲む、少量の白湯で練ってから飲む、どうしても苦手な場合はオブラートを使うなどの方法があります。冷えの処方なので、冷水より白湯での服用が向きます。

冷えを防ぐ生活指導

薬で内側から温めても、外から冷やし続けると効果が出にくくなります。首、手首、足首を冷やさないようにし、レッグウォーマー、厚手の靴下、腹巻き、湯たんぽなどを活用します。夏でも冷房で足元が冷える方は、足首と下腹部の保温を意識してください。

相談・受診を優先したいサイン

  • 片脚だけ急に痛い、腫れる、色が変わる
  • しもやけが潰瘍化する、黒ずむ、化膿する
  • 糖尿病、閉塞性動脈硬化症、膠原病、血流障害がある
  • 服用後に胃部不快感、悪心、下痢、食欲不振が出る
  • むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下が出る
  • 妊娠中、授乳中、小児、高齢者、持病や併用薬がある
すぐ相談:末端の冷えでも、皮膚の黒ずみ、潰瘍、強い痛み、片側だけの腫れ、糖尿病や血流障害を伴う場合は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯で様子を見ず医療機関に相談してください。

症状から理解を深める

当帰四逆加呉茱萸生姜湯が気になる方は、冷え、生理不順、腰痛、頭痛、腹痛との関係を確認すると理解が深まります。

冷えに使う漢方薬でも、末端の冷えか、むくみを伴う冷えか、冷えのぼせか、便秘とのぼせを伴う熱性の月経痛かで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 当帰四逆加呉茱萸生姜湯はどんな冷えに向いていますか?

手足の末端や下肢が強く冷え、冷えると痛みやしもやけ、月経痛、腰痛、下痢が出るタイプに向きます。単なる寒がりではなく、冷えによって痛みや不調が出るかがポイントです。

Q. 当帰芍薬散との違いは何ですか?

当帰芍薬散は、血虚と水滞が中心で、むくみ、めまい、貧血傾向、冷えを整えます。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、より末端冷えと寒さによる痛み、しもやけに寄る処方です。

Q. 生理痛にも使えますか?

冷えると下腹部が痛む、温めると楽になる、足先が冷えるような月経痛で比較されます。のぼせ、便秘、イライラが強い熱性タイプでは桃核承気湯など別の処方を考えます。

Q. 味が飲みにくい時はどうすればよいですか?

呉茱萸や細辛の苦味・辛味があるため、白湯に溶かして少し冷まして飲む、少量の白湯で練ってから飲む、オブラートを使うなどの方法があります。冷水より白湯が向きます。

Q. 甘草の副作用は心配ですか?

甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下、脱力感には注意します。高血圧、心臓病、腎臓病がある方や、他の漢方薬との併用では専門家に相談してください。

参考・出典

当帰四逆加呉茱萸生姜湯が合うか迷った方へ

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、強い冷え、しもやけ、冷えによる痛み、月経痛、腰痛、下痢に使われる漢方薬ですが、すべての冷えや痛みに合うわけではありません。末端冷えなのか、むくみを伴う冷えなのか、冷えのぼせなのか、熱や便秘が主役なのかを見極めることが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。片脚だけの急な痛み・腫れ・色の変化、しもやけの潰瘍化・黒ずみ・化膿、糖尿病や血流障害を伴う末端症状、強い腹痛、発熱、下痢が続く場合は、医療機関にご相談ください。服用後に発疹・発赤・かゆみ、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下などがある場合は、服用を中止して専門家に相談してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。