五積散とは?冷え・胃腸炎・腰痛・神経痛・月経痛に使う漢方薬を体質別に解説

五積散(ごしゃくさん)は、冷えを土台に、気・血・水・寒・食の滞りが複雑に重なった状態に用いられる漢方薬です。体力中等度またはやや虚弱で、冷えがあり、胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒などがある方で候補になります。KanpoNowでは、この処方を「冷えで止まった胃腸・血流・水分代謝・痛みを、温めながら一度に巡らせる総合処方」として整理します。
- 冷房や雨、寒さで、胃腸・腰・関節・神経痛が悪化する
- 冷たい飲み物や冷えで、腹痛、胃もたれ、下痢が出やすい
- 腰痛、神経痛、関節痛があり、温めると楽になる
- 冷えを伴う月経痛、更年期障害、頭痛、肩こりがある
- 気・血・水が全部滞ったように、重だるく、張り、痛み、胃腸不調が重なる
反対に、顔が赤くのぼせ、便秘し、患部が赤く腫れて熱を持つような実熱・湿熱タイプには向きません。五積散は、強く温めて散らす方向の処方です。
五積散とは
五積散は、蒼朮、陳皮、当帰、半夏、茯苓、甘草、桔梗、枳実、桂皮、厚朴、芍薬、生姜、川芎、大棗、白芷、麻黄から構成される漢方薬です。
「五積」とは、気・血・痰水・寒・食の滞りが積み重なった状態を指します。五積散は、胃腸の水湿をさばく平胃散の方向、痰飲をさばく二陳湯の方向、血を巡らせる四物湯の方向、さらに麻黄・白芷・桂皮で体表の冷えを発散する方向が重なった大きな処方です。
古典における位置づけ
五積散は、中国宋代の官製処方集『太平恵民和剤局方』を出典とする処方です。外からの風寒、内側の寒湿、胃腸の停滞、痰飲、気血の滞りが複合した状態に対して用いられてきました。
処方名の「五積」は、気積・血積・痰積・寒積・食積のように、複数の停滞が積み重なった状態を散らすという意味で理解できます。単純な風邪薬、単純な胃腸薬、単純な痛み止めではなく、冷えを中心に、胃腸・気血・水分代謝・体表の不調を同時に見る処方です。
現代では、冷房病、冷えによる胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒など、冷えと滞りが絡む幅広い不調に応用されます。
漢方的な病態とメカニズム
東洋医学では、五積散が合う状態を、寒邪と湿邪が体内に入り、気滞・血瘀・湿痰・食滞が連鎖的に起きた状態として考えます。冷えで体が縮こまり、胃腸の動きが止まり、水分が停滞し、血流も悪くなり、痛みや重だるさが出ます。
- 寒邪:体を冷やし、筋肉・関節・胃腸を縮め、痛みやこわばりを起こす状態
- 湿邪・湿痰:余分な水分が停滞し、重だるさ、頭重、胃もたれ、下痢を起こす状態
- 気滞:胸や腹が張り、気分も塞ぎ、胃腸や呼吸がつかえる状態
- 血瘀:血流が滞り、腰痛、神経痛、月経痛、肩こりとして現れる状態
- 食滞:胃腸に未消化物や食べ過ぎ・冷飲食の負担が残る状態
冷えは、気血水すべての巡りを悪くします。胃腸が冷えれば食べ物と水分が動かず、未消化物や痰飲がたまります。血流が冷えれば腰痛・神経痛・月経痛が出やすくなります。気が滞れば胸や腹が張り、頭痛や更年期の不調にもつながります。
五積散は、麻黄・白芷・桂皮・生姜で冷えを散らし、蒼朮・厚朴・陳皮・半夏・茯苓で胃腸の水湿をさばき、当帰・川芎・芍薬で血を巡らせ、桔梗・枳実で胸腹部の気の滞りを動かします。温める、発散する、巡らせる、乾かす、ほどく、という複数の方向が同時に働きます。
構成生薬と配合バランス
五積散は16味からなる大処方です。冷えを散らし、胃腸の湿を乾かし、血を動かし、気のつかえをほどくために、多層的な構成になっています。
















※円グラフは、五積散の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。
五積散の味・香り・服用時の体感
五積散は、蒼朮・厚朴・半夏の苦み、桂皮・当帰の甘く芳香のある香り、生姜・麻黄の温める刺激が重なる、複雑でパンチのある味です。飲みやすい甘い処方というより、冷えと滞りを動かすスパイシーな印象があります。
苦み・辛み・甘み
蒼朮や厚朴の苦み、桂皮や当帰の甘み、生姜の辛みが重なります。
強い芳香
桂皮、当帰、陳皮、厚朴などの香りが立ち、胸や胃のつかえを動かす印象があります。
褐色〜暗褐色
粉末・顆欄は褐色から暗褐色。多くの生薬が合わさった濃い色調です。
内外から温まる
合う方では、胃から温まり、胸腹部のつかえ、腰や関節の冷え痛みがほどける感覚があります。
体験の流れ:温かいお湯で飲む → 桂皮や当帰の香りが立つ → 胃のあたりから温まる → 胸や腹の張りがゆるむ → 冷えで縮こまった腰や関節の痛みがほどける感覚。五積散は「冷えで固まった渋滞」を動かす処方です。
症状別の向き・不向き
五積散は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、冷えが土台にあり、胃腸・痛み・水分代謝・気血の滞りが重なっているかです。
冷房病・夏風邪・冷え腹
冷房で体が冷え、冷たい飲食で胃腸が止まり、腹痛、下痢、胃もたれ、頭痛が出るタイプに向きます。寒・湿・食の停滞を同時に見ます。
判断ポイント:冷房・冷飲食・胃腸不調。冷えると悪化する腰痛・神経痛・関節痛
冷えや湿気で腰や関節が重だるく痛む、神経痛が悪化する、温めると楽になるタイプで候補になります。寒湿痺を考えます。
判断ポイント:冷え・湿気・温めると楽。冷えを伴う月経痛・更年期障害
下半身が冷え、血流が滞り、月経痛や更年期の頭痛・肩こり・腰痛が出るタイプで比較します。強い血瘀なら桂枝茯苓丸料なども見ます。
判断ポイント:冷えと血流停滞が重なる。頭痛・頭重・肩背部のこわばり
冷え、湿気、胃腸の停滞が重なり、頭が重い、肩背部がこわばる、体がだるいタイプで比較します。
判断ポイント:頭重・白い舌苔・胃腸停滞。高齢者・高血圧・心疾患がある方
麻黄を含むため、動悸、不眠、血圧上昇、排尿困難などに注意します。体力や併用薬を確認して慎重に考えます。
判断ポイント:麻黄に耐えられるか。赤く腫れて熱を持つ痛み・実熱
患部が赤く腫れ、熱を持ち、顔がのぼせ、便秘が強いタイプには向きません。温める方向が熱を悪化させる可能性があります。
判断ポイント:熱・赤み・便秘が主役なら不向き。体質別の向き・不向き
五積散は、陽虚傾向の冷えを土台に、寒・湿・気・血・食の滞りが複合した体質で考えます。単純な虚弱だけ、単純な熱だけではなく、複数の不調が積み重なっているかを見ます。
陽虚傾向+寒湿+複合停滞
体が冷え、胃腸が重く、腰や関節が痛み、頭重や月経トラブルも重なるタイプです。五積散の中心像です。
判断ポイント:冷えを起点に複数症状が重なる。脾気虚・胃腸虚弱に寒湿が重なる
胃腸が弱く、冷えると胃もたれ、下痢、腹部膨満が出るタイプに比較します。ただし麻黄を含むため極端な虚弱では注意します。
判断ポイント:胃腸虚弱+冷え+湿。湿痰・水滞
余分な水が停滞し、頭重、むくみ感、胃の重さ、下痢、関節の重だるさがあるタイプです。蒼朮・茯苓・半夏が水湿をさばきます。
判断ポイント:水っぽさ・重だるさ・白い舌苔。血瘀を伴う冷え痛み
冷えで血流が滞り、腰痛、月経痛、肩こりが出るタイプで比較します。血瘀が主役なら桂枝茯苓丸料なども検討します。
判断ポイント:冷えと固定痛がある。陰虚・実熱・湿熱
体液が不足してほてる、口が渇く、便秘、熱感、赤み、強い炎症があるタイプには向きません。温めて乾かす方向が悪化要因になります。
判断ポイント:乾燥・ほてり・強い熱は不向き。効能・効果
五積散の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、KanpoNowでは代表的に次のように整理しています。
体力中等度又はやや虚弱で、冷えがあるものの次の諸症:胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒
※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。
服用上の注意
五積散は、冷えと滞りに幅広く使われる処方ですが、麻黄と甘草を含むため、安全管理が重要です。慢性的な冷え、腰痛、神経痛、関節痛で長期服用する場合は、体調変化を確認しながら使います。
麻黄による注意
五積散には麻黄が含まります。麻黄は体表の寒邪を発散する一方、交感神経を刺激することがあります。不眠、動悸、発汗過多、血圧上昇、排尿困難などに注意します。高齢者、高血圧、心疾患、前立腺肥大、甲状腺機能亢進症などがある方は、自己判断で使わないでください。
甘草による注意
五積散には甘草が含まれます。甘草を含む漢方薬を複数併用したり、長く続けたりすると、偽アルドステロン症や低カリウム血症に注意が必要です。
- 手足のむくみ
- 血圧上昇
- 体重増加
- だるさ、脱力感
- こむら返り、筋肉のけいれん
温める養生の徹底
五積散が合う不調では、冷えを避ける養生が重要です。冷たい飲み物を控える、冷房の風を直接浴びない、夏でも腹部と足首を冷やさない、湯船に浸かる、濡れた服を早めに着替えるなど、冷えと湿気を避ける生活が処方の方向性に合います。
相談・受診を優先したいサイン
- 高熱、強い喉の痛み、息苦しさ、胸痛がある
- 激しい腹痛、血便、黒色便、嘔吐・下痢が続く
- 関節が赤く腫れて熱を持ち、強く痛む
- 服用後に動悸、不眠、発汗過多、血圧上昇が出る
- むくみ、脱力感、こむら返り、体重増加が出る
- 妊娠中、授乳中、小児、高齢者、心疾患・高血圧・前立腺肥大がある
症状から理解を深める
五積散が気になる方は、腹痛、下痢、しびれ・神経痛、頭痛、更年期との関係も確認すると理解が深まります。
似ている漢方薬・構成生薬
冷えや胃腸症状に使う処方でも、感冒と胃腸炎が同時にあるのか、冷え痛みが主なのか、水分停滞が主なのか、血瘀が主なのかで選び方が変わります。
よくある質問
Q. 五積散はどんな冷えに向いていますか?
冷えで胃腸が止まり、腹痛、下痢、胃もたれ、腰痛、神経痛、関節痛、頭痛などが同時に出るタイプに向きます。単なる手足の冷えだけでなく、冷えで全身の巡りが停滞している状態を見ます。
Q. 冷房病に使えますか?
冷房で体が冷え、冷たい飲み物で胃腸も冷え、だるさ、頭痛、腹痛、下痢、腰痛が出るような状態で候補になります。ただし高熱や強い炎症がある場合は別方向です。
Q. 腰痛や神経痛に使うときの目安は何ですか?
冷えると痛む、湿気で重だるくなる、温めると楽になる、胃腸の冷えや下痢もある、というタイプで比較します。赤く腫れて熱を持つ痛みには向きません。
Q. 麻黄が入っているので注意が必要ですか?
はい。麻黄を含むため、不眠、動悸、発汗過多、血圧上昇、排尿困難などに注意します。高齢者、高血圧、心疾患、前立腺肥大などがある方は、自己判断で使わず専門家に相談してください。
Q. 長く飲んでもよいですか?
慢性的な冷えや痛みで使われることがありますが、甘草を含むため漫然とした長期連用は避けます。むくみ、血圧上昇、脱力感、こむら返りなどが出た場合は中止して相談してください。
参考・出典
- PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
- PMDA「一般用医薬品・要指導医薬品 添付文書等情報検索」
- 古典:『太平恵民和剤局方』五積散関連条文
- 漢方スクエア「五積散」処方解説
- 一般用漢方製剤製造販売承認基準
五積散が合うか迷った方へ
五積散は、冷え、胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒に使われる漢方薬ですが、すべての冷えや痛みに合うわけではありません。冷えが主役なのか、熱が主役なのか、胃腸の湿があるのか、血瘀があるのか、麻黄・甘草の注意が必要かまで含めて判断することが大切です。

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AI漢方診断をする免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。高熱、強い喉の痛み、息苦しさ、胸痛、激しい腹痛、嘔吐・下痢の持続、脱水、血便、黒色便、赤く腫れて熱を持つ関節痛、動悸、不眠、血圧上昇、むくみ、脱力感、こむら返りなどがある場合は、医療機関にご相談ください。妊娠中・授乳中、小児、高齢者、高血圧・心疾患・前立腺肥大などの基礎疾患がある方、他のお薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。