竹筎温胆湯とは?風邪の治りかけの咳・痰・不眠に使う漢方薬を体質別に解説
竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)は、風邪・インフルエンザ・肺炎などの回復期に、咳や痰が残り、気分がさっぱりせず、眠りが浅いときに用いられる漢方薬です。熱は下がったのに、胸の奥に痰と熱が居座り、夜になると咳き込み、神経が昂ぶって眠れない状態を考えます。KanpoNowでは、この処方を「病後に残った痰熱をさばき、胸のつかえと眠りの乱れを整える漢方薬」として整理します。
- 風邪やインフルエンザの後、咳や痰が長引いている
- 熱は下がったのに、気分がさっぱりせず胸がつかえる
- 痰がからんで夜に咳き込み、眠りが浅い
- 病後の疲れが残り、胃腸も弱っている
- 咳・痰・不眠・不安感が一緒に出ている
反対に、風邪の引き始めで寒気が強い、水っぽい鼻水や透明な痰が多い、強い冷えがある、痰がまったくない乾いた咳では、別の処方を考えることがあります。
竹筎温胆湯とは
竹筎温胆湯は、竹茹、半夏、枳実、麦門冬、桔梗、陳皮、柴胡、黄連、人参、香附子、茯苓、生姜、甘草から構成される漢方薬です。
竹茹・黄連で胸に残った熱を冷まし、半夏・陳皮・茯苓で痰をさばき、枳実・香附子・柴胡で胸やみぞおちのつかえをほどきます。人参・麦門冬・甘草は、病後に消耗した体力と気道の潤いを支えます。
古典における位置づけ
竹筎温胆湯は、中国明代の医学書『万病回春』に由来する処方として知られています。温胆湯の流れをくみ、痰と熱が胸中にこもり、胃や胆の働きが乱れ、気分不快や不眠が出る状態を整える処方です。
名前に「温」とありますが、強く温めるというより、「胆を穏やかにする」「乱れた内側の働きを落ち着かせる」という意味合いで理解すると分かりやすい処方です。
現代では、インフルエンザ、風邪、肺炎などの回復期に、熱が長びいたり、平熱になっても気分がさっぱりせず、咳や痰が多くて安眠できない状態に用いられることがあります。
漢方的な病態とメカニズム
東洋医学では、竹筎温胆湯が合う状態を、湿痰、痰熱、気滞、脾気虚として考えます。感染症の後、体力は消耗しているのに、気道には粘り気のある痰と余熱が残ることがあります。これが胸中にこもると、咳・痰だけでなく、胸のつかえ、不安感、寝つきの悪さ、眠りの浅さにつながります。
- 湿痰:痰や余分な水分が残り、咳・痰・胸のつかえが続く状態
- 痰熱:痰に熱がからみ、粘る痰、咳込み、胸のモヤモヤ、不眠が出る状態
- 気滞:胸やみぞおちで気が詰まり、不快感や緊張が続く状態
- 脾気虚:病後に胃腸と体力が弱り、回復力が落ちている状態
竹茹と黄連は、胸の奥に残った熱を冷まし、痰熱による不快感を整えます。半夏・陳皮・茯苓は、痰をさばき、胃のつかえやむかつきを整えます。枳実・香附子・柴胡は、胸やみぞおちの気の滞りをほどきます。人参・麦門冬・甘草は、病後の消耗と気道の乾きに配慮します。
つまり竹筎温胆湯は、痰を取るだけでも、眠りを助けるだけでもありません。病後に残った「痰・熱・気のつかえ・疲労」をまとめて整える処方です。
構成生薬と配合バランス
竹筎温胆湯は、13種類の生薬で構成されます。痰と熱をさばく生薬、胸のつかえをほどく生薬、病後の体力と潤いを支える生薬を組み合わせた、病後回復期向けの処方です。本文では細かい配合量よりも、役割のまとまりとして理解するのが実用的です。












※円グラフは、竹筎温胆湯の構成理解用イメージです。表示比率は合計100%になるように調整しています。実際の配合量は製品により異なる場合があります。
竹筎温胆湯の味・香り・服用時の体感
竹筎温胆湯は、黄連の苦味、陳皮の柑橘系の香り、香附子や柴胡のやや薬草らしい風味、人参・甘草のほのかな甘みが重なる処方です。甘く飲みやすい補剤ではなく、胸のモヤモヤや痰をさばく、少し苦くすっきりした味わいです。
苦味とほのかな甘み
黄連の苦味があり、そこに人参・甘草の甘み、陳皮の爽やかさが重なります。
柑橘系と薬草香
陳皮の柑橘系の香りに、香附子・柴胡・半夏の漢方薬らしい香りが重なります。
淡褐色〜黄褐色
製品により異なりますが、粉末・顆整理では淡い褐色から黄褐色寄りに見えます。
胸がすっと軽くなる感覚
合う方では、痰が切れやすくなり、胸のつかえや夜の咳込みが軽くなる感覚があります。
体験の流れ:苦味と柑橘系の香りを感じる → 胸の奥のモヤモヤが少しすっきりする → 痰が動きやすくなる → 夜の咳込みや神経の昂ぶりが落ち着きやすくなる感覚。竹筎温胆湯は、病後の「咳・痰・眠れない」を一つの流れとして整える処方です。
症状別の向き・不向き
竹筎温胆湯は、症状名だけで選ぶ処方ではありません。見るべきポイントは、風邪の回復期、長引く咳、痰、胸のつかえ、気分不快、不眠、病後の消耗、寒気の有無です。
風邪・インフルエンザ後の長引く咳と痰
熱の山は越えたのに、痰がからむ咳が残り、胸がすっきりしないタイプに向きます。
判断ポイント:回復期の咳・痰。咳で眠れない・眠りが浅い
痰熱が胸に残り、夜に咳き込んだり、神経が昂ぶって眠れない状態で候補になります。
判断ポイント:痰熱と不眠が一緒にある。気分がさっぱりしない・胸がつかえる
病後に胸の奥が重く、気分不快やみぞおちのつかえが残る場合に比較します。
判断ポイント:胸中の停滞感。病後の疲れと胃腸の弱り
人参・甘草を含み、病後の気虚にも配慮します。ただし、極端な冷えや胃腸虚弱では慎重に見ます。
判断ポイント:治りきらない疲れ。風邪の引き始めで寒気が強い
寒気、透明な鼻水、水っぽい痰、体の痛みが前面にある初期の風邪では、竹筎温胆湯の方向とは異なります。
判断ポイント:初期の寒邪か、回復期の痰熱か。痰がない乾いた咳
痰がまったく絡まず、喉や気管が乾いて空咳だけが続く場合は、麦門冬湯などの潤す処方を比較します。
判断ポイント:痰があるか、乾きだけか。体質別の向き・不向き
竹筎温胆湯は、湿痰・痰熱・気滞・脾気虚が重なるタイプに向きます。病後で体力は落ちているが、胸や気道には痰と熱が残っている、という複合型の状態です。
湿痰+痰熱タイプ
痰がからみ、胸が重く、熱っぽさや不眠が残るタイプです。竹筎温胆湯の中心像です。
判断ポイント:痰と熱が残っている。気滞+不眠タイプ
胸やみぞおちがつかえ、咳や不快感で神経が休まらず、寝つきや眠りの質が乱れるタイプに向きます。
判断ポイント:胸のつかえと眠りの乱れ。病後の脾気虚タイプ
風邪の後に食欲や体力が戻りきらず、咳や痰が長引くタイプで比較します。
判断ポイント:回復力が落ちている。陰虚・乾燥タイプ
麦門冬は入っていますが、半夏・陳皮など痰をさばく生薬も含みます。極端な乾燥咳では別処方を比較します。
判断ポイント:痰熱か、乾燥だけか。寒飲・冷えが強いタイプ
透明で水っぽい痰、寒気、冷え、水様鼻水が強いタイプでは、温めて水をさばく処方を比較します。
判断ポイント:冷えた水か、熱を帯びた痰か。効能・効果
竹筎温胆湯の効能・効果は製品により表現が異なる場合がありますが、代表的には次のように整理できます。
インフルエンザ、風邪、肺炎などの回復期に熱が長びいたり、また平熱になっても、気分がさっぱりせず、せきや痰が多くて安眠が出来ないもの
※実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。
服用上の注意
竹筎温胆湯は、風邪の回復期に一時的に使われることが多い処方ですが、甘草、黄連、半夏などを含むため、体質や服用期間、併用薬によって注意が必要です。
甘草による偽アルドステロン症への注意
甘草を含むため、むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症、こむら返り、筋力低下、脱力感などに注意します。他の漢方薬やグリチルリチン酸含有製剤と併用する場合は、甘草の重複に注意してください。
胃腸が冷えやすい方への注意
黄連などの苦寒性の生薬を含むため、もともと胃腸が冷えやすく、食欲不振や胃もたれが出やすい方では、服用後の胃部不快感に注意します。胃がもたれる場合は、専門家に相談してください。
咳が長引く場合は受診を優先
咳が長期間続く、息苦しい、血痰が出る、胸痛がある、発熱がぶり返す、夜間の咳が強い場合は、肺炎、気管支炎、喘息、結核などの確認が必要になることがあります。
睡眠と休息を優先する
竹筎温胆湯が合う方は、病後に気が消耗していることが多いです。咳や痰を整えるだけでなく、無理をせず、早く寝る、冷たい飲食を避ける、消化のよい温かい食事を選ぶことが回復を助けます。
相談・受診を優先したいサイン
- 高熱が続く、発熱がぶり返す
- 息苦しい、胸痛がある、血痰が出る
- 咳が長期間続く、夜間の咳込みが強い
- 服用後に胃もたれ、食欲不振、下痢が強く出る
- むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下が出る
- 妊娠中、授乳中、小児、高齢者、持病や併用薬がある
症状から理解を深める
竹筎温胆湯が気になる方は、咳・喘息、気管支炎、不眠、ストレス、食欲不振との関係も確認すると理解が深まります。
似ている漢方薬・構成生薬
咳や痰に使う漢方薬でも、病後の痰熱か、乾いた咳か、冷えた水っぽい痰か、胸のつかえや不眠があるかで選び方が変わります。
よくある質問
Q. 竹筎温胆湯はどんな咳に向いていますか?
風邪やインフルエンザなどの回復期に、痰がからむ咳が残り、胸がつかえ、夜に咳き込んで眠りが浅いタイプに向きます。
Q. 風邪の引き始めにも使えますか?
寒気が強く、透明な鼻水や水っぽい痰が出る初期の風邪には合いにくいことがあります。竹筎温胆湯は、主に回復期に咳・痰・不眠が残る状態で比較します。
Q. 不眠にも使えますか?
痰や熱が胸に残り、咳込みや胸の不快感で眠れない場合に比較されます。単なる慢性不眠ではなく、病後の咳・痰・胸のつかえを伴う不眠が目標です。
Q. 乾いた咳には向いていますか?
痰が少なく、喉や気管が乾いて空咳だけが続く場合は、麦門冬湯などを比較します。竹筎温胆湯は、痰や胸のつかえがある咳に向きやすい処方です。
Q. 甘草の副作用は心配ですか?
短期使用では過度に心配しすぎる必要はありませんが、甘草を含むため、長期服用や他の漢方薬との併用では、むくみ、血圧上昇、こむら返り、筋力低下に注意します。
参考・出典
- PMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」
- ツムラ「竹じょ温胆湯エキス顆粒(医療用)」製品情報・添付文書
- KEGG MEDICUS「ツムラ竹じょ温胆湯エキス顆粒(医療用)」医療用医薬品情報
- 古典:『万病回春』竹筎温胆湯関連記載
- 公益社団法人 東京生薬協会・富山大学 和漢医薬学総合研究所等の生薬資料
竹筎温胆湯が合うか迷った方へ
竹筎温胆湯は、風邪やインフルエンザの回復期に、咳・痰・胸のつかえ・不眠が残る場合に使われる漢方薬ですが、すべての咳に合うわけではありません。痰熱が中心なのか、乾燥が中心なのか、冷えた水っぽい痰なのか、医療機関で確認すべき咳なのかまで含めて判断することが大切です。

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AI漢方診断をする免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。高熱、発熱のぶり返し、息苦しさ、胸痛、血痰、長引く咳、強い倦怠感、服用後の胃もたれ・食欲不振・下痢、むくみ・血圧上昇・こむら返り・筋力低下などがある場合は、医療機関にご相談ください。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中、小児、高齢者、胃腸虚弱、持病がある方、他のお薬や他の漢方薬を服用中の方も、自己判断を避けて専門家にご相談ください。
堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師
光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。
著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。