芎帰調血飲第一加減とは?産後・月経不順・更年期に使う漢方薬を体質別に解説

更新日:2026年7月6日 監修:堀口和彦
芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)

芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)は、血を補い、滞った血を動かし、気の巡りを整え、胃腸の土台も支える大きな処方です。産後の体力低下、月経不順、血の道症など、女性ホルモンの変動に伴う心身の揺らぎに用いられます。KanpoNowでは、この処方を「血虚・血瘀・気滞・気虚が複雑に絡んだ女性の慢性不調を、補う・巡らせる・温める・立て直す方向で整える漢方薬」として整理します。

芎帰調血飲第一加減はこんな人に向いています
  • 産後に疲労感、冷え、悪露の停滞感、気分の落ち込みが続く
  • 月経不順、重い生理痛、肩こり、冷え、イライラが重なる
  • 更年期に、冷えのぼせ、疲労感、気分の波、肩こりが混在する
  • 血が足りない感じがあるのに、骨盤内や肩まわりに滞りも感じる
  • 胃腸が極端に弱くはなく、多味の処方を受け止められる

反対に、体力が充実し、便秘が強く、顔が赤く、強い熱感や炎症がある実証・実熱タイプには向きにくいことがあります。また、産後や更年期の不調でも、強い出血、発熱、激しい腹痛、強い抑うつがある場合は医療機関での確認が必要です。

芎帰調血飲第一加減とは

芎帰調血飲第一加減は、当帰地黄茯苓烏薬牡丹皮大棗生姜川芎白朮陳皮香附子益母草甘草桃仁紅花枳実桂皮牛膝木香延胡索芍薬から構成される21味の大処方です。

補血・活血・理気・健胃・温め・鎮痛が一つに組み合わさっており、単純な「産後の薬」ではなく、血が不足し、古い血が滞り、気が巡らず、胃腸の土台も落ちているような複雑な女性の不調に使われます。

ポイント:芎帰調血飲第一加減は「血を補う」「瘀血を動かす」「気を巡らせる」「胃腸を支える」「冷えを温める」を同時に行う処方です。産後・月経不順・更年期のように、症状が複雑に重なる場面で候補になります。

古典における位置づけ

芎帰調血飲第一加減のもとになる芎帰調血飲は、中国明代の医学書『万病回春』に由来するとされます。そこから日本の漢方医たちが、産後の悪露、骨盤内の瘀血、冷え、気滞、痛みなどをより広く扱えるように生薬を加減し、日本独自の経験方として発展しました。

「調血」とは、血をただ増やすだけではなく、失われた血を補い、滞った血を動かし、巡りを整え、元の状態へ戻していくという意味で捉えられます。そのため古くから「産後の聖薬」として、出産後の体力低下、悪露の停滞、冷え、痛み、気分の不安定さなどに用いられてきました。

現代では、産後の体力低下に加え、月経不順、血の道症、更年期障害、自律神経失調様の不調、肩こり、冷え、疲労感などにも応用されます。ただし、強い出血、発熱、腹痛、産後うつが疑われる状態では、漢方薬だけで抱え込まず医療機関での確認が必要です。

芎帰調血飲第一加減らしさ:血が足りないのに巡らず、古い血が滞り、気も詰まり、胃腸の土台も弱っている。この「足りない・滞る・巡らない・支えきれない」が重なると、処方の輪郭がはっきりします。

漢方的な病態とメカニズム

東洋医学では、芎帰調血飲第一加減が合う状態を、気血両虚を土台に、気滞血瘀が重なった状態として考えます。

  • 血虚:出産、月経、慢性的な消耗で血が不足し、顔色の悪さ、立ちくらみ、冷え、疲労が出る状態
  • 血瘀:骨盤内や肩背部に古い血の滞りが残り、痛み、重だるさ、月経痛、悪露の停滞につながる状態
  • 気滞:ストレスやホルモン変動で気が巡らず、イライラ、胸のつかえ、落ち込み、腹部の張りが出る状態
  • 気虚:胃腸と体力の土台が落ち、多くの症状を回復させるエネルギーが不足している状態

産後や更年期では、血の消耗、ホルモン変動、自律神経の揺らぎ、睡眠不足、育児や仕事のストレスが同時に重なります。すると、冷え、肩こり、頭痛、イライラ、落ち込み、だるさ、月経不順など、症状が一つに絞れない状態になりやすくなります。

芎帰調血飲第一加減は、当帰・地黄・芍薬・川芎で血を補い、桃仁・紅花・牡丹皮・牛膝・益母草などで瘀血を動かし、香附子・烏薬・木香・陳皮・枳実で気を巡らせ、白朮・茯苓・大棗・甘草・生姜で胃腸の土台を支えます。

注意:芎帰調血飲第一加減は守備範囲の広い処方ですが、強い実熱・湿熱、激しい炎症、便秘と強いのぼせがあるタイプには合わないことがあります。産後の強い抑うつ、不正出血、激しい腹痛、発熱がある場合は、医療機関での確認を優先してください。

構成生薬と配合バランス

芎帰調血飲第一加減は21味の大処方です。個別の生薬を一つずつ見ると複雑ですが、大きく分けると、補血、駆瘀血、理気、健胃・利水、温め・鎮痛の5つの役割に整理できます。

芎帰調血飲第一加減の役割別配合比率 補血約21.4%、駆瘀血約22.9%、理気約25.7%、健胃利水約21.4%、温め鎮痛約8.6%とした役割別配合比率イメージです。 芎帰調血飲 第一加減
補血:当帰・地黄・川芎・芍薬21.4%
駆瘀血:桃仁・牡丹皮・紅花・牛膝・益母草22.9%
理気:香附子・烏薬・陳皮・木香・枳実25.7%
健胃利水:白朮・茯苓・大棗・甘草・生姜21.4%
温め鎮痛:桂皮・延胡索8.6%
芎帰調血飲第一加減の内部構造
血を補う、瘀血を動かす、気を巡らせる、胃腸を支える、温めて痛みを緩めるという5方向を一つにまとめた処方です。
補う軸 当帰・地黄・芍薬・川芎 血虚を補い、産後・月経後・更年期の疲労、冷え、ふらつき、乾燥を支えます。
巡らせる軸 桃仁・紅花・牡丹皮・牛膝・益母草 骨盤内の瘀血や古い血の停滞を動かし、悪露、月経痛、肩こり、重だるさを整えます。
気を整える軸 香附子・烏薬・木香・陳皮・枳実 気滞によるイライラ、胸のつかえ、腹部膨満、落ち込みを巡らせ、胃腸の負担も逃がします。

※配合比率は、当帰・地黄・茯苓・烏薬・牡丹皮・川芎・白朮・陳皮・香附子を各2g、大棗・益母草・桃仁・紅花・枳実・桂皮・牛膝・木香・延胡索・芍薬を各1.5g、生姜・甘草を各1gとした構成目安を、役割別にまとめたイメージです。実際の配合量は製品により異なります。

一言でいうと:芎帰調血飲第一加減は、血虚だけでも、瘀血だけでも、気滞だけでも説明しきれない「複雑な女性の慢性不調」をまとめて整える処方です。症状が多く、冷え・疲れ・痛み・気分の揺れが重なるときに候補になります。

芎帰調血飲第一加減の味・香り・服用時の体感

芎帰調血飲第一加減は21味の大処方のため、味も香りも複雑です。地黄や大棗の甘み、桂皮の辛み、牡丹皮や延胡索の苦み、当帰・川芎・香附子・陳皮の芳香が重なります。

甘み・苦み・辛み

地黄や大棗のもったりした甘みに、桂皮の辛み、牡丹皮や延胡索の苦みが混ざります。

濃厚な芳香

当帰・川芎のセロリ様の香り、桂皮のシナモン様の香り、陳皮の柑橘香が重なります。

濃い茶褐色

地黄などを含むため、粉末・顆粒は濃い茶褐色から黒褐色に近い印象になります。

下腹部から温まる

合う方では、胃から下腹部に温かさが広がり、胸のつかえや肩のこわばりが少しずつほどけるように感じることがあります。

体験の流れ:濃い漢方らしい香り → 甘み・苦み・辛みの複雑な味 → 下腹部がじんわり温まる → 胸のつかえやイライラ、重だるさが少しずつ巡る感覚。産後や更年期で、冷え・疲れ・滞りが重なっているときほど、処方らしさを感じやすくなります。

症状別の向き・不向き

芎帰調血飲第一加減は、症状名だけで選ぶ漢方薬ではありません。見るべきポイントは、血虚・血瘀・気滞・冷え・胃腸の弱りが複合しているかです。

産後の肥立ち不良・産後不調

出産で血と気を消耗し、悪露の停滞、冷え、疲労、イライラ、落ち込みが重なるタイプに向きます。産後ケアの代表的な処方として考えられます。

判断ポイント:産後の疲労・冷え・滞り・気分の揺れ。

更年期障害・血の道症

更年期に、冷えのぼせ、イライラ、肩こり、疲労感、気分の波が混在するタイプに向きます。加味逍遙散だけでは冷えや疲れが残るような、こじれた不調で比較します。

判断ポイント:不定愁訴が多く、冷えと血虚もある。

月経不順・重い生理痛

血の不足と骨盤内の瘀血が重なり、月経周期が乱れる、痛みが強い、経血がすっきり出ないタイプで候補になります。

判断ポイント:血虚と瘀血が同時にある。

肩こり・頭痛・冷えを伴う慢性疲労

血の巡りの悪さと冷え、気滞が重なり、肩こり、頭痛、重だるさ、疲れやすさが慢性化するタイプで比較します。

判断ポイント:巡りの悪さと疲れがセット。

胃腸虚弱・下痢しやすいタイプ

白朮・茯苓・大棗・甘草など胃腸を支える生薬は含まれますが、地黄・当帰など重い補血薬も多いため、胃もたれや下痢に注意します。

判断ポイント:服用後の胃もたれ・軟便に注意。
×

実証で便秘が強く、激しいのぼせがある状態

体力があり、便秘、強い熱感、炎症、顔の赤みが前面にあるタイプでは、補して温める方向が合わないことがあります。桃核承気湯や防風通聖散などが比較対象になります。

判断ポイント:実熱・便秘・強いのぼせは不向き。

体質別の向き・不向き

芎帰調血飲第一加減は、血虚・血瘀・気滞が重なり、さらに気虚や冷えもあるタイプに向く処方です。単純な瘀血だけ、単純な実熱だけではなく、複雑にこじれた虚実錯雑の不調を見ます。

血虚+血瘀+気滞

血が足りないのに古い血が滞り、気も巡らないタイプです。疲れ、冷え、月経不順、肩こり、イライラが重なると中心像になります。

判断ポイント:足りない・滞る・巡らない。

気虚・産後の体力低下

胃腸を支える生薬が含まれ、産後や慢性疲労で気血の回復が追いつかないタイプにも使いやすい処方です。

判断ポイント:消耗後の回復力不足。

胃腸虚弱が強い体質

多味で重い処方のため、極端に胃腸が弱い場合は、食欲低下や胃もたれが出ることがあります。少量や服用タイミングの調整を考えます。

判断ポイント:胃が受け止められるか。
×

湿熱・実熱

熱感、強い炎症、便秘、脂っぽさ、のぼせ、赤ら顔が前面にあるタイプでは、補血薬や温熱薬が重く、悪化することがあります。

判断ポイント:熱とヘドロが強い場合は別処方。

効能・効果

芎帰調血飲第一加減の効能・効果は製品により表現が異なりますが、KanpoNow既存ページでは代表的に次のように整理されています。

体力中等度以下のものの次の諸症。ただし産後の場合は体力に関わらず使用できる:
血の道症、月経不順、産後の体力低下

※血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性ホルモンの変動に伴って現れる精神不安、いらだちなどの精神神経症状および身体症状のことです。実際の効能・効果、用法・用量、注意事項は、購入する製品の添付文書・外箱表示を必ず確認してください。

服用上の注意

芎帰調血飲第一加減は、産後や月経、更年期に関わる不調に広く用いられる処方ですが、多味で作用範囲が広いため、胃腸障害、甘草の副作用、妊娠中・授乳中の使用、産後のメンタル不調には注意が必要です。

地黄・当帰などによる胃腸障害への注意

地黄、当帰などの補血・滋潤の生薬は、体質によって胃もたれ、食欲不振、腹痛、下痢を起こすことがあります。芎帰調血飲第一加減には胃腸を支える生薬も含まれますが、極端に胃腸が弱い方では負担になることがあります。

甘草による注意

芎帰調血飲第一加減には甘草が含まれます。甘草を含む漢方薬を複数併用したり、長期間服用したりすると、偽アルドステロン症と呼ばれる副作用に注意が必要です。

  • 手足のむくみ
  • 血圧上昇
  • 体重増加
  • だるさ、脱力感
  • こむら返り、筋肉のけいれん

妊娠中・授乳中・産後の注意

妊娠中または妊娠している可能性のある方、授乳中の方、産後の出血や発熱、強い腹痛がある方は、自己判断で服用しないでください。産後の強い落ち込み、不眠、不安、希死念慮がある場合は、漢方だけで対応せず、早急に医療機関へ相談してください。

産後の養生:目と脳を休ませる

産後は、血と気を大きく消耗し、自律神経も不安定になりやすい時期です。スマートフォンやパソコンで目を酷使すると、疲労感、不眠、イライラ、気分の落ち込みが悪化しやすくなります。芎帰調血飲第一加減を考えるような産後不調では、服薬だけでなく、目を休め、睡眠と休息を確保することが重要です。

相談・受診を優先したいサイン

  • 産後の出血が多い、悪露の臭いが強い、発熱や腹痛がある
  • 不正出血、過多月経、強い月経痛が続く
  • 強い抑うつ、不眠、不安、希死念慮がある
  • 服用後に胃もたれ、食欲不振、下痢が出る
  • むくみ、脱力感、こむら返り、血圧上昇が出る
すぐ相談:産後の発熱・腹痛・大量出血、不正出血、強い精神症状、妊娠中の服用、甘草による副作用が疑われる場合は、自己判断で継続せず、医師・薬剤師など専門家に相談してください。

症状から理解を深める

芎帰調血飲第一加減が気になる方は、産後不調、更年期、生理不順、冷え、肩こりとの関係も確認すると理解が深まります。

女性の不調に使われる処方でも、血を補うのか、瘀血を動かすのか、気を巡らせるのか、実熱を冷ますのかで選び方が変わります。

よくある質問

Q. 芎帰調血飲第一加減はどんな人に向いていますか?

産後や更年期、月経不順で、疲れ、冷え、肩こり、イライラ、血の滞りが重なるタイプに向きます。血虚・血瘀・気滞・気虚が複合しているかを見ます。

Q. 産後なら誰でも飲めますか?

産後の体力低下には候補になりますが、発熱、強い腹痛、大量出血、強い抑うつ、不眠、不安がある場合は医療機関への相談が優先です。

Q. 更年期障害にも使われますか?

血の道症として、更年期の精神神経症状や身体症状に用いられることがあります。冷え、疲れ、瘀血、気滞が重なるタイプで比較します。

Q. 胃腸が弱くても飲めますか?

胃腸を支える生薬は含まれますが、地黄や当帰など重い生薬も含むため、胃もたれ、食欲不振、軟便が出ることがあります。胃腸が極端に弱い場合は相談してください。

Q. 長く飲んでもよいですか?

1か月程度服用しても改善しない場合は、服用を中止して医師・薬剤師・登録販売者に相談するのが基本です。甘草を含むため、長期服用ではむくみ、血圧上昇、低カリウム血症にも注意します。

参考・出典

芎帰調血飲第一加減が合うか迷った方へ

芎帰調血飲第一加減は、産後、月経不順、更年期のような女性の複雑な不調に使われる漢方薬ですが、すべての方に合うわけではありません。血虚、血瘀、気滞、気虚、冷え、胃腸の状態、妊娠・授乳の有無、甘草の重複まで含めて判断することが大切です。

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免責:本ページは漢方薬に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・服薬指示を行うものではありません。産後の発熱・腹痛・大量出血、強い抑うつ、不正出血、過多月経、強い月経痛、妊娠中・授乳中、基礎疾患がある場合、他のお薬を服用中の場合は、自己判断を避けて医師・薬剤師など専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
堀口和彦

堀口 和彦 東洋医学・漢方薬剤師/鍼灸師

光和堂薬局 院長。埼玉県生まれ。東京理科大学薬学部卒、同大学院修士課程修了。総合漢方研究会 学術部員。元東京大学大学院医学系研究科 客員研究員。公益法人埼玉県鍼灸師会会員。さいたま市学校薬剤師(指扇中学校)。一般財団法人日本漢方連盟 会員。

著書に『やさしい漢方入門』(健友館)、『パプアニューギニアの薬草文化』(アボック社)、『体質で決まる漢方と養生‐気精血水‐』(万来舎)など。